出向起業とは?制度の概要を紹介します

創業手帳

出向起業を選択する起業家が増える?メリット・デメリットと出向起業等創出支援事業を紹介

出向起業
経済産業省の出向起業等創出支援事業では、大企業に身を置きながら起業する出向起業を支えています。この事業は、これまでにはなかった試みであり、日本での起業を促す目的があるものです。日本のこれまでスタンダードであった働き方とのすり合わせや、起業のリスク回避など、起業家創出のハードルとなっていた問題をクリアにし、起業を促進させる効果が期待されます。次回公募〆切は、令和4年9月予定ということなので、今のうちにしっかりと制度を理解しおきましょう。

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出向起業等創出支援事業とは


出向起業等創出支援事業とは、出向起業を目指す人と企業をサポートし、起業家の創出を後押しする事業です。出向起業とは、会社を辞めることなく事業を立ち上げ、出向という形で経営者として新会社で働くスタイルを言います。出向起業等創出支援事業は、経済産業省の事業であり、「一般社団法人環境共創イニシアチブ」が公募の募集を行う本補助事業の執行団体となっています。

出向起業等創出支援事業で「出向起業」とするのは、以下の条件を満たすものです。

  • 所属企業以外の資本が80%以上(所属企業資本比率20%未満
  • 退職せずに新会社へ出向し、フルタイムで経営者として実務にあたる
  • 設立後は独立、事業を買い戻してもらう(所属企業に戻る)計画が用意されている

補助金額は最大500万円(ハードウェア開発を含む支出の場合1,000万円)、補助率は2分の1以内、新規事業の経費の一部を補助します。

新規事業を立ち上げられる人材育成のサポート

出向起業等創出支援事業の目的には、新規事業を立ち上げられる人材育成のサポートが挙げられています。

現代の日本では、大企業に一度就職してしまうと、事業のスタートアップを経験することがありません。リーダーシップのチャンスも、大企業では限られた人材にのみ与えられ、能力のある人がチャンスを手にすることなく埋もれていくことさえあります。

出向起業等創出支援事業は、こうした優秀な人材にチャンスを与え、新規事業を立ち上げる能力のある人材を育てる企業のバックアップにもなるものです。

大企業の中では十分ではなかった新規事業への挑戦のチャンスとして事業を活用することで、事業を立ち上げ経営していく人材を育てることができます。大企業にいながらにして、出向によって経営を経験することで、本人のリスクを抑えつつ経営人材を育成していきます。

大企業等の経営資源の開放に資するエコシステムの構築

日本では、多くの人材が大企業に集まり、多くの人が経営資源として大企業内にプールされています。

人材は商品を企画し新しいビジネスを生み出すことも営業先の新規開拓することもできますが、大企業の中ではフットワークを軽くして動くことができず、無為に歯車となることもあります。

そんな大企業の人材を開放し、外部の動きやすいシチュエーションを手に入れられる方法が出向起業です。

出向起業等創出支援事業では、こうした大企業の人材開放と新しい活躍の場をリスクなく与える仕組みを後押しします。多様化するサービス、ビジネスの在り方に柔軟に対応できる人材を育て、起業家として輩出することで、日本のビジネスや働き方も多用になっていくことが期待できます。

起業家が出向を選択するメリット


起業を目指す人にとって、勤務している企業を退職することなく出向によって新事業を興すことには、いろいろなメリットがあります。

出向起業等創出支援事業で「出向起業」に注目が集まりましたが、それだけでなく日本では企業に勤めるビジネスパーソンが企業を退職せずにできる出向起業には魅力が感じられます。

出向という形で企業を目指すメリットを紹介します。出向元企業では被雇用者であり、出向先では自らが経営者になるという少々変わった働き方の魅力をチェックしてみましょう。

「辞めて起業」よりリスクが少ない

出向起業には、起業家の身分保障と出向元企業の安定経営を両立できるというメリットがあります。

そのため、起業したい人は退職を選ばずに、堂々と会社に勤めながら起業できます。

会社員の企業というと、会社に黙って副業などで準備を進め、最後は退職して独立するイメージが強くありました。

しかし、出向起業では、会社と起業家の双方の利益を目指すことができ、win‐winの関係が成り立つため、起業したい人は会社に黙ってこっそり起業準備をする必要はありませんし、会社も喜んで応援してくれます。

大企業に勤めている人は、退職してまで起業の希望を叶えることも難しいものです。

海外では、起業のために一度退職しても、カムバックのチャンスやサポートがありますが、日本では一度退職してしまうと復職のチャンスがありません。

そのため、起業したくても、失敗した時のリスクが大きすぎて、立ち止まってしまう人も多いです。「わざわざリスクを冒さなくても」「大企業を辞めなくても」と家族の反対に遭うこともあります。

ところが、出向起業であれば今勤めている企業に籍を置きながら、自分の立ち上げたスタートアップ企業へ出向することができます。立ち上げた事業が上手くいかなかった場合でも、立場はあくまでも出向なので、起業した人は元の企業に戻ることが可能です。

子会社より自由度が高い

出向起業は、起業する人が勤務先の企業を辞めることなく、新しい会社を立ち上げるため、子会社と少し似ているとも言えます。

しかし、出向起業によって立ち上げた会社は、出向元企業からの出資は20%未満と決められています。外資が入ることも多く、本事業を活用して出向起業した企業の中には100%外資のところもありました。

一方、子会社は会社法で「会社がその総株主の議決権の過半数」を持ち、「その経営を支配」されている会社と定められています。議決権を親会社が持ち、子会社の財務及び事業の方針の決定は親会社が支配しています。

そのため、基本的に子会社の責任は親会社に追及され、親会社の指示が強く子会社に反映することは多いものです。

このことから、出向起業で興した会社は、子会社よりも自由度の高い経営や事業展開ができ、経営者の起業家としての思いやスキルをぞんぶんに投影することができるでしょう。

出向起業等創出支援事業のメリット


出向起業等創出支援事業は、経営人材の育成や輩出、さらに大企業が自社の業績影響を気にせず、若き起業家をバックアップするための下地を作る事業です。

この事業によってもっと多くの人が出向起業へ目を向け、さらに多くの起業家を生み出すきっかけになると考えられます。また、出向起業等創出支援事業には、起業家に対してより具体的で実質的なメリットがあります。

出向起業等創出支援事業のメリットを理解して、出向起業の手掛かりの一つにしましょう。出向起業を検討する上で、本事業の活用は避けて通れないかもしれません。出向起業等創出支援事業のメリットを紹介します。

500万円の補助金による経営の安定

出向起業等創出支援事業の具体的な支援内容として、最大500万円の補助金があります。補助金は、新規事業立ち上げにかかる経費の一部をサポートするためのものです。

補助の対象となるのは、事業開発にかかる外注費や消耗品費、材料費などです。

起業時にかかる費用を補助することで、自己資本の少なさをカバーし、よりスムーズな経営をスタートさせる効果が期待できます。

また、スタートアップ時の数カ月はどんなに素晴らしい事業でも、どうしても売上が少なく、不安定になることがあります。そこで最大500万円の補助が得られると、売上の少ない月も乗り切ることが可能です。

初期の売上の不安定さをサポートし、経営を軌道に乗せるまでの期間を金銭的な不安なく事業に集中できるでしょう。

経済産業省に採択された信用

出向起業等創出支援事業の採択は経済産業省が行っています。

経済産業省の事業であり、交付には審査があり、選考を経て支援が決定します。このため、選考を通過して、出向起業等創出支援事業の事業費補助金の交付を受けられることは、事業内容が経済産業省から高く評価されたことを示すものとも言えます。

また、公募の募集を行う本補助事業の執行団体決定事業者である「一般社団法人環境共創イニシアチブ」によって、交付決定した事業者が発表されます。一次公募、二次公募とも、事業者名と補助事業の名称が明らかにされているので、今後も追加募集などがあれば、再び発表されることが考えられます。

このように、国の大々的な事業であり、注目度も高いため、ここで事業者として発表されることは知名度をアップするために大変効果的です。

出向起業等創出支援事業のデメリット


出向起業等創出支援事業は、メリットの多い事業であり、魅力があります。一方では使いにくい面もあるため、具体的に利用を考えている人は注意が必要です。

支援事業を活用して出向起業を検討する場合には、以下の点を踏まえた上で起業のタイミングを選び、準備を進めましょう。

次回の予定が決まっていない

出向起業等創出支援事業の公募は、一次公募を2020年の春に、2次公募を2020年の夏頃に終わりました。出向起業等創出支援事業は起業を考える人に有益な事業ですが、公募が行われないと利用することができません。公募がないと申し込みすらできず、補助金を受け取ることは叶いません。

出向起業等創出支援事業の執行団体決定事業者である「一般社団法人環境共創イニシアチブ」のサイトでは、追加募集の可能性も告知されています。

しかし、はっきりとした予定は立っておらず、今後の計画も発表されていません。そのため、現在出向起業を検討している人は、次回の募集を待って出向起業するか、支援事業を待たずに自力のみで(もしくは出資者を募り)起業するかの検討も必要です。

ただし、2次公募での補助対象事業者の条件の一つに「出向起業を2017年月4月以降に行った、または交付決定日までに行う計画がある事業者」とあったため、3年程度は先に起業していても応募できる可能性が高くなります。

今起業したとしても、次回公募が3年以内であれば、補助金を受けるチャンスはありそうです。判断は難しいところなので、補助金を使いたい場合には慎重にタイミングを見計らいましょう。

公募期間が決まっている

出向起業等創出支援事業の公募期間は、約1カ月程度となっています。前回の公募期間は2022年5月11日~2022年6月17日となっています。その間に公募情報公表を閲覧し、交付申請書類を作成し、提出することが必要です。

出向起業の公募では申請後、審査・選考が行われ、面談などを経て支援の可否を決定します。補助金の交付は交付決定後、事業を開始し、対象となる経費の支払いが完了した後です。

また、補助事業期間は交付決定日からとなり、交付決定日前に発生した費用は補助対象外となります。反対に、交付決定日までに出向起業を行うことのできない事業者も対象外です。

出向起業等創出支援事業を利用する上では、事業で定められた手順や期間に合わせて起業準備や経費の発生のタイミングを図ることも大切になります。また、補助金は助かりますが、期間に縛られて、自由な動きが取れないと感じることもあるかもしれません。また、設立からの期間によって、補助率も変わるため、起業のタイミングによっては補助金の額が少なくなることもあります。

まとめ

出向起業はこれからの日本の起業のあり方として期待できる方法です。

日本では、勤めている会社を一度辞めて起業をするのは大きなリスクを伴います。起業に失敗した時には、安定した収入を得る手立てを失い、再び同じ待遇で職に就くのも難しくなります。そうしたリスクを失くし、日本人の好む安定志向を損なわずに行える起業が出向起業です。

出向起業は、大企業に眠る起業スキルや人材を掘り起こす可能性を持ち、企業内の経営人材を見出し、育成することで日本のビジネスをより発展させるきっかけにもなりそうです。企業にも起業家にもメリットがあり、出向起業によってwin‐winの関係を築き、どちらも発展していくことができます。

出向起業等創出支援事業は、メリットの多い出向起業を後押しする事業です。一次、二次の公募ではすでにユニークで自由なアイデアを持つ起業家が誕生しています。出向起業の仕組みと出向起業等創出支援事業を活用し、自分のアイデアをビジネスに変えてみてはいかがでしょうか。これまでリスクの高さから起業に踏み切れなかった人も、検討の余地がありそうです。

出向起業等創出支援事業の次の募集は2022年9月締め切りにて公募予定となっています。支援を受けて出向起業を目指したい人は、今後の情報の更新に注意しておきましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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