「起業したばかり」だからこそ必要なのが経営計画書【飯島氏連載その4】

創業手帳

スパッと解決・経営改善のプロ、飯島彰仁氏に聞く、社長のための経営計画作り・超入門


コロナの影響で、2020年7月時点の統計では、新たに開業届けを提出した件数は例年の7割減という結果になりました。先行きが不透明な状況下で、開業を見送る人が増えているのでしょう。また、起業して間もない人たちのなかには、コロナの影響で苦戦を強いられている方もいることでしょう。まさに、起業家にとっては冬の時代。どのようにこの苦境を乗り越えるのか、起業家にとっては大きな課題です。

そんなタイミングだからこそ「経営計画書」が大事だと古田土経営の飯島代表取締役は語ります。時間がなく忙しくても少しずつ進めて、経営計画書を徐々に形にしていくことが、安定的な経営には欠かせないのだそうです。

今回は、起業家にターゲットを絞った「経営計画書」の作り方を紹介します。時間的、リソース的に制約があるなか、PDCAを回すことで経営計画書ができあがっていくそうです。詳しくお話をうかがいました。

飯島彰仁(いいじまあきひと)株式会社古田土経営 代表取締役社長
2005年に古田土会計公認会計士・税理士事務所(現 税理士法人古田土会計)に入所。現在は、同法人含むグループ企業の株式会社古田土経営 代表取締役社長。経営計画を主力商品とする古田土会計グループにおいて、営業活動することなく年間100~150社の新規開拓をするスキームを作り上げ、現在2,300社超の中小企業を指導する。経営計画書の作成については毎年400社以上を指導しており、作成した会社の黒字割合85.8%を実現している。(日本企業の黒字率 34.2% 国税庁H29年より)また、同ノウハウを同業者である会計事務所にも提供する会計事務社経営支援塾を運営。同業者に対する経営計画作成支援実績330事務所は日本No.1を誇る。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計150万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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起業家こそ経営計書が必要


大久保:本シリーズの初回にもおうかがいしましたが、大切なことなので、もう一度うかがいます。忙しいといわれる起業家や起業したての時期にも「経営計画書」は必要なのでしょうか。

飯島:起業したての時期だからこそ、むしろ必要なのです。経営計画書は、起業家にとって進むべき方向を示した「道しるべ」のような存在となります。忙しく課題も多い時期だからこそ、視点が短期的なところにばかり向いてしまいがちです。そういう時にこそ、経営計画書で進むべき方向を見定めることが大切なのです。

大久保:なかなかそうは言っても短期的な利益を追求しがちになるのは仕方ない気もしますが。

飯島:繰り返しになりますが、経営計画書には「こうありたい、こうなりたい」という思いを記載します。その思いを目に見えるカタチにすることで、板に書いた餅にならないよう、「自分ゴト」として捉えられるようになります。そうすることで、目指すべき姿に近づいていきます。まずは、しっかり自分の意識の中に「ありたい姿」をイメージさせるためにも、経営計画書は必要になるのです。

大久保:創業手帳では、起業を目指す人を対象としたセミナーで「自分の人生の事業計画の作り方」という講座を検討しているのですが、起業家にとっての経営計画書とはそれに通じるところがありますか。

飯島:おもしろいアイディアですね。たしかに、新たに事業を始めた時は「自分だけ」が経営計画書を目にすることになりますので。ありたい姿とは自分の将来像とイコールでもあります。ライフプランのようなイメージに基づき、作成するというのもありかもしれません。ただし、もう少し踏み込んで、事業を通じてどのような社会を実現したいのかといった未来像も含むとよいでしょう。

起業家にとって経営計画書をつくるメリットとは

大久保:経営計画書が、起業家にとって覚悟を決めて自分の決めた道に専念するためにとても大切なことがよくわかりました。これ以外にも作成するメリットはありますか。

飯島:融資を受けようと思ったときに有利になることがあります。銀行からの融資を受ける場合には、「信用」できる相手として審査を通過しなくてはなりません。信用できる相手というのは、その会社がきちんと未来を描けているかどうかにかかっています。まさに、経営計画書は、会社がどうやって目標の利益を実現するか、道筋や考え方を示していますので、信用を得るには必要になるでしょう。

大久保:銀行は具体的に経営計画書のどこを見ているのでしょうか。その他の書類も審査の対象として重要だと思いますが。

飯島:確かに、銀行は決算書を見て格付けをしながら融資先を検討します。しかし、決算書類などは過去のこと、もしくは現状を示すものでしかありません。融資先の安全性や返済能力があるかどうかを判断するには、経営計画書が必要なのです。経営計画書では、経営者の能力や姿勢といった数値化できない情報や、販売や技術開発など計画性が高いかどうかなど、利益計画に関する部分がよく見られていると思います。

月次決算書を作成すると、さらに銀行からの信用があがりますが、いきなりそこまでするのは過剰になる場合もあります。参考までにしていただければと思います。

まずはPDCAから始めて計画書に落としこんでいく


大久保:起業家をはじめとして、時間やリソースに制約がある場合、時短テクのような何か経営計画書を簡単に作成できるコツがありますか。

飯島:初回にも申し上げましたが、最初から100点のものをつくることは難しいのです。そこを目指そうとするから時間がかかる、労力がかかると嫌煙されてしまうのです。労力をかけなくても出来る方法があります。まずは、シンプルな利益目標を立て、PDCAサイクルを回すことです。

大久保:起業したてのころだからこそ利益目標を立てるのが難しいように思います。

飯島:売上げがどのくらい立てられるか、不明なところも多いのですが、まずは数字に慣れることが大切かと思います。我々が開発した「カンタン未来図」という手法を用いて、利益がどのように出るかをイメージし、これに基づきPDCAサイクルを回していきましょう。慣れてくると経営計画書が書けるようになるのではと思います。

「カンタン未来図」とは、経営に必要な利益構造への理解を深めるために当社が開発したツールです。どの項目を増やしたり減らしたりすれば利益が最大化できるかを一目できるようにしました。構成は以下の通りです。
● 売上高
● 変動費
● 粗利益額
● 固定費
● 経常利益


実際に「カンタン未来図」を使ってシミュレーションをしてみましょう。たとえば、粗利益率が25%で固定費が2000万円、売上げが1000万円の会社の場合、変動費が750万円で経常利益が50万円だったとします。経常利益を100万円にしたい場合、固定費を勘案すると300万の粗利が必要になります。25%の粗利率なので売上げは1200万必要となり、現状よりも200万円アップが必要という結論になります。

こうして、具体的な利益目標や売上目標額が算出できれば次はPDCAを検討しやくなりますね。この一連の流れが経営計画書を作成する最初の一歩になります。

大久保:今の事例でいうと売上げを200万円増やすためにはどうしたらよいかを考え、アウトプットすることが経営計画書につながるということでしょうか。

飯島:そうです。こうして、利益を算出することに慣れてきたら、現状の改善案を考えてみましょう。まず、現状の取り組みで、結果が出ていないと思われるものを特定します。例えば、売上げがかんばしくない取引先があった場合は、

  • 商品・サービスあたりの質を上げ単価をあげる
  • 別の販売先を探す
  • 一時的な単価をさげる

上記のような具体的な手立てを列挙して「計画」を検討します。そして、この計画を実践しながら、また改善策を講じる。このような「判断・見直し・実践」を繰り返すことがPDCAにほかなりません。

PDCAサイクルを繰り返す過程で、考えたことや計算したことを「アウトプット」として残しておけばそれがまさに初期段階での利益計画書であり、「経営計画書」の一部になっていくのです(経営計画書の構成は第2回、3回のインタビューをご参照)。

スモールステップでも前に進めることが大事


大久保:まずは利益目標を立てること、PDCAサイクルに慣れることとステップを踏まえて経営計画書に着手するとよいのですね。

飯島:まずは前に進めることを意識されると良いと思います。起業したての頃は、組織も小さいので計画書を作ることが目的になりがちですが、事業を発展させる過程で必要になる思考プロセスを残すだけで良いのです。

繰り返していくうちに、もっとこういう理念を入れておいた方が第三者に説明しやすいとか、もっと中長期にこういうことをしてみたいとか、ビジネスを拡大する過程で、自然と経営計画書を作成するためのアイディアが出て来るでしょう。最初の小さな一歩がいかに大切かお分かりいただけるはずです。

大久保:組織の成長に伴い「経営計画書」も発展していくイメージですが。

飯島:確かに、組織が大きくなるタイミングで、経営計画書には「人材育成・開発」といった社員の未来像を記していくことになります。組織が小さいうちは、利益を実現するための計画書という側面が強いですが、大きくなるにつれて、一緒に事業を運営するメンバー同士の共感や理解を深めるためのコミュニケーションツールにもなりえます。

このように、組織の成長とともに、経営計画書の役割も変わっていくのです。なお、中長期的な視点で考えた時に、今から経営計画書の作成に慣れておけば、組織が大きくなりコミュニケーションが重要になってきても対応ができます。

大久保:中長期的な視点で考えると経営計画書が担う役割が大きいので、起業家も将来を見越して経営計画書に慣れておきたいですね。次回は、経営計画書を活用している具体的な事例をご紹介いただきます。

(次回に続きます)

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(編集:創業手帳編集部)

(取材協力: 株式会社古田土経営代表取締役社長 飯島彰仁
(編集: 創業手帳編集部)

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