今だからこそ必要! 「経営計画書」があなたの会社を変える理由【飯島氏連載その1】

スパッと解決・経営改善のプロ、飯島彰仁氏に聞く、社長のための経営計画作り・超入門

(2020/10/05更新)

生き残りをかけた厳しい経営を迫られるこれからのウィズコロナ時代、会社に必要なものはなんでしょうか? 古田土経営の飯島代表取締役は「経営計画書」が経営者には欠かせないと言います。

2020年の上半期は、新型コロナによって経済的に大きなダメージを受けました。倒産件数は500件以上(2020年9月時点)にも達し、先行きが不透明な状況は今後も続くことが予想されます。

しかし、ピンチはチャンスでもあります。この厳しい状況を乗り越える過程で自社のビジネスを見つめなおし、逆境に強くしていくための「経営計画書」について、創業手帳の経営者でもあり、数多くの起業家を見てきた大久保が、古田土経営の飯島代表取締役に話を聞きました。

古田土経営は、日本で400社以上の経営計画書の策定を支援してきた実績があり、多くの中堅中小企業が経営計画書による企業経営の改善を実現しています。

これから、6回に分けて経営計画書の必要性から具体的な作り方や事例などをご紹介します。今回は、なぜ会社に経営計画書が必要なのかについてうかがいました。

飯島彰仁(いいじまあきひと)株式会社古田土経営 代表取締役社長

2005年に古田土会計公認会計士・税理士事務所(現 税理士法人古田土会計)に入所。現在は、同法人含むグループ企業の株式会社古田土経営 代表取締役社長。経営計画を主力商品とする古田土会計グループにおいて、営業活動することなく年間100~150社の新規開拓をするスキームを作り上げ、現在2,300社超の中小企業を指導する。経営計画書の作成については毎年400社以上を指導しており、作成した会社の黒字割合85.8%を実現している。(日本企業の黒字率 34.2% 国税庁H29年より)また、同ノウハウを同業者である会計事務所にも提供する会計事務社経営支援塾を運営。同業者に対する経営計画作成支援実績330事務所は日本No.1を誇る。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計150万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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経営者が知っておくべき「経営計画書」の真の必要性

大久保:コロナの影響で景気が落ち込んでいる今、売上や顧客が減り、対応に追われている企業が増えています。こんな時に経営計画書を作る必要性はあるのでしょうか。

飯島:こんな時代だからこそ必要なんです。経営計画書とは、そもそも誰のために作るものだと思いますか。社員のため?それとも融資先のためでしょうか。いいえ、経営計画書とは実は「経営者」自身のために作るものなのです。

後述しますが、経営計画書には経営理念から向こう5年くらいの利益計画書、さらには各事業の目標までを細かく分析したものを記載します。まさに、会社の未来そのものを文書にするプロセスなんです。市場トレンド、競合の動向、自社の強み・弱み、制約など、あらゆることに思案を巡らして計画を考えることになります。このプロセスを経ることで、経営者の「意思」が固まるのです。

大久保:つまり、経営計画書は「経営の動機付け」ということでしょうか。覚悟というか。

飯島:その通りです。ウィズコロナのこの時代、先行きは皆不安ですし、どうすればよいのかわからないという経営者は多いでしょう。しかし、正直迷っている時間はありません。

たしかに、現状は政府や自治体の補助金により会社を維持ができているかもしれませんが、それもずっとは続きません。「今ある事業のうち何を残し何を捨てるか」を考え、「生き残りをかけて絶対にこの事業だけは頑張ろう」という集中投下の選択が迫られます。

そのため「この山に登ろう!」と自分を信じて進む強い「意思」や、ぶれない軸が必要であり、そのためには経営計画書が最適なのです。

目標がはっきりしていると、社員も経営者を信じて一緒に進んでみようという気持ちになります。自分の会社、もしくは社長がどのようなことを考えているのかが「文書」という形になることで、非常にわかりやすくなるからです。

経営計画書は作っておしまいではありません。特に、社員に対して自社が向かう方向や力を入れるものを「伝える」手段として、あらゆる場で活用していくとよいでしょう。弊社では、経営計画書を作ったクライアントさんには、発表会を実施するように勧めています。

こういった機会があることで、社員の理解が進み、ひいては取引先や顧客までその意思が浸透していくのです。

大久保:確かに、私も一人の経営者として、一緒に働いているメンバーたちに計画や方針などをしっかり理解してもらうには、どう伝えたらよいのか考えることがあります。経営計画書という共通言語があるとよいのですね。

飯島:実際、足元の社員に自分の意思などを伝えることは難しいですよね。私も、社長になってみて意外と伝わらないことを痛感しています。弊社では、あらゆる場面で経営計画書を活用しています。営業会議に始まり、打ち合わせの時にはすぐ見られるように横に置いてあります。

こうして、何回も経営計画に実際に触ったり、人に伝えることで、どんな社員もそれが「自分ごと」になっていきます。そして経営者自身も、これだけ形にしてしまったからには「やらなければならない」という気持ちが湧いてきます。こうして、経営計画書を伝えるというプロセスもまた、経営者の「未来への覚悟」を強固なものにしてくれるんです。

押さえておきたい経営計画書の基本的な構成

大久保:経営計画書の本来の目的がよくわかりました。厳しい状況だからこそ、実際に作るとなると時間がかかりそうですが。

飯島:そうですね。分量や人員リソースにもよりますが、弊社のクライアントさんだと1カ月くらいで、経営理念から数字目標のところまで作り上げる方が多いと思います。ただ、時間に追われずにできるところから徐々に作り上げていくとよいでしょう。

完成品を作ろうとすると時間も労力もかかってしまうので、最初からすごいものを作る必要はありません。経営計画書の目的は経営者が進むべき道を選択するのに必要な思考プロセスなのであって、素晴らしい作品を完成させることではありません。目的が手段化することがないように、注意しましょう。

初めて経営計画書を作るという場合は、まずは、20ページぐらいで「数字」から作るとよいでしょう。この数字とは、ずばり5年後の利益目標のことです。利益目標は、売上の予測と原価や販管費などの管理費用も差し引いた、純粋な利益をどのくらい得たいかを設定します。こういう話をすると「そんな先のことは分からないよ」「達成できるか分からないので設定できない」という方が多くいらっしゃいます。

経営計画書は予測ではなく、経営者の意思です。つまり、実現するためにあれこれ策を尽くすことが重要なのです。万一、実現が厳しいということが分かれば、そのタイミングで計画を変えて再考すればよいのです。

大久保:なるほど、最初はまずできるところからということですね。完成形の経営計画書の構成はどのようになるでしょう?

飯島:経営計画書の構成にはこれという正解はありませんが、弊社では前半が理念や方針などの定性的な情報、後半が目標などの数字に関する定量的な情報が大きな柱となると思っています。具体的な構成は、以下をおすすめしています。

  • 経営ビジョン・・・顧客や取引先向けに自社が誇りを持っていることや価値観を示すもの。1行ですっきりと表現するのがよい。
  • 経営理念・・・社内向けにどのような価値観や使命感をもって経営しているかを示すもの。社員で共有することが重要。
  • 経営基本方針・・・会社の進んで行きたい方向を示した基本方針
  • 個別方針・・・経営理念、経営基本方針を実現するための項目別方針。例)「商品・サービスに関する方針」「顧客に対する方針」「販売促進に関する方針」
  • 中長期計画・・・3年後、5年後に目指す会社の姿を示すもの。
  • 当期経営目標・・・1年間に必要となる利益と目指すべき売上高
  • 当期数値目標・・・利益や売上などの細分化(月別、顧客別)した数値目標。例)月別利益計画、商品別販売計画、顧客別販売計画

前半の経営理念や方針の部分は、毎年大きく変わることはありません。むしろ、概念的なものなので、最初に作ったものを時代に合わせて少しずつ解釈を変えていく柔軟な理解が必要です。経営理念(ミッション、バリュー、ビジョン)は、経営の土台であり重要な要素ではありますが、凝った表現などにこだわる必要はありません。シンプルなものがよいでしょう。

一方、後半の数字の部分は、経済環境の変化に合わせた目標になりますので、単年度で見直したり設定し直したりすることが必要です。あくまでもこれは理想なので、とらわれる必要はありませんが、上位概念としての経営理念が土台となり、その上に方針があり、さらにそれを具体的な目標として事業や活動にブレークダウンしていく、といった構造だと、理解や浸透がしやすい計画書になるでしょう。

経営計画書の項目ごとの具体的な作り方の説明は、次回以降に譲ります。まずは、経営計画書には「1.定性的な情報」と「2.定量的な情報」の2部構成であることが、経営に必要なことを網羅するために重要ということを理解していただけたらと思います。

経営計画書はいかなる場面でも読み返そう。活用してこそ効果が高まる。

大久保:経営計画書はまさに持ち運びできる「会社経営のよりどころ」ですね。古田土経営さんにも経営計画書があると思うのですが、具体的にどうやって活用されていますか。

飯島:先ほど少しお伝えしましたが、経営計画書は伝えてこそ意義が高くなりますので、日々の実務においてももちろん活用しています。役員会、営業会議、QCなど、あらゆる打ち合わせで全員が経営計画書持参で参加しますし、経営上の課題について議論する際には、経営計画書に立ち戻って確認しています。

例えば、営業会議で成約数が伸びないのでどうしようかという議論の場合、経営計画書での目標が高すぎるのか、営業アプローチがよくないのか、計画書を確認しながら話し合っています。計画と実際とに差が出るのはしばしばあることです。その時にどうしたらいよいかは、経営理念や方針に立ち返って考えなおせばよいのです。

ほかにも、お客様からの問い合わせやご要望にどう対応するかを議論する際にも、経営計画書の顧客方針を何度も確認し、解釈しています。こうして日々動いている実務を解決するために、経営計画書を活用しています。

弊社の経営計画書は200ページ以上もあり、年間4000冊以上配布しています。全社員があらゆる場面で使用しているので、ボロボロですよ。中には、自分が一番ボロボロだと、使い込んだことを誇らしげに語る者もいます。それだけ使い倒しているからか、不況の時代も乗り越えて業績を伸ばし続けています。

大久保:経営計画書は作るのも使うのも思考のプロセスが伴いますね。不確定要素が多いこれからの社会では「考える」人が強いでしょうから、ますます経営計画書の必要性を感じます。どうしたら、経営計画書を作成する会社が増えるのでしょうか。

飯島:経営計画書の必要性を分かっていながら実行に移せないのは、最初から立派なものを作ろうとしているだけでなく、他にも要因があると思います。経営計画書は、確かに経営者の意思を固めるにも重要なものですが、経営者が「一人」で考えて作るものでもなければ、担当部署に丸投げ、もしくは外部のコンサルに依頼するものでもありません。

経営者と幹部の役割分担をきちんと分けていないため、経営者が負担に感じてしまっているのです。経営者は、全社的な方向性や戦略を立て、幹部社員が部門別の目標を立てる。一見、簡単そうに見えますが、これまで踏襲して新しいことをしてこなかった企業や、人的リソースが限られる中小企業ではなかなか難しいため、皆さん断念してしまいます。

しかしウィズコロナのような時代に、負担だからという理由だけで思考プロセスを手放すのはあまりももったいない。負担になると思うのであれば、負担の原因を探し、軽減して経営計画書のための時間を捻出できないか考えてみる、これだけでも経営計画書策定の大きな一歩になります。

まずは、3行でもよいので、社員と経営者で協力し合いながら小さい目標を立てるところから始めれば、徐々に慣れてきて経営計画書の策定につながるでしょう。

大久保:企業にとっては厳しい時代にこれから突入します。改めて乗り越えていくには経営計画書が必要であると強く思います。最後に、メッセージをいただけますか。

飯島:会社の業績はすべて社長の責任。社員の未来を守らなけれなりません。未来を作るためには、何の計画もなしにはできません。

これまでの過去、置かれた現状、そしてこうなりたいと思う未来をひとつのストーリーにして伝えれば、社員はみんなワクワクし、士気も高まります。そして、色のついていない透明な未来に向かって日々積み上げて力を付けていければ、難局にあたっても砕けずにいられるはずです。

経営計画書によって強固な意志と、柔軟な対応を得ることができるのです! さあ、今からでも遅くありません。ぜひ経営計画書を作りましょう。

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(取材協力:株式会社古田土経営代表取締役社長 飯島彰仁)
(編集:創業手帳編集部)

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