ランサーズ 秋好陽介|日本一ハイブリッドワークのノウハウが進んだ会社の仕事術とは?

創業手帳

コロナ禍で働き方が劇的に変化。これからの社会で伝統的な中小企業が生き残るために必要なこととは?

フリーランスのオンラインマッチングサービス最大手、ランサーズ。IT関連を中心とした仕事の受発注プラットフォームを運営する企業であり、コロナ禍以前よりリモートワーク中心の先進的な働き方を実践されてきた数少ない上場企業のうちの一つです。

コロナ禍ですべての企業がリモートワークに対応しなければならなくなったなかで、ランサーズの業績も大幅に伸びました。これまでランサーズが提供してきたプラットフォームの価値が、いよいよ発揮される段階に日本の雇用環境が突入しつつある、ということなのではないでしょうか。

今回は、そんなランサーズを率いる代表取締役社長執行役員CEOの秋好陽介氏に、コロナ禍での雇用環境の変化やリモートワークにおけるマネジメントのコツ、起業家が気をつけなければならない組織マネジメントのポイントなどについて、創業手帳の大久保が聞きました。

秋好 陽介(あきよし ようすけ)ランサーズ株式会社 代表取締役社長執行役員CEO
大学時代、インターネット関連のベンチャービジネスを起こす。2005年にニフティ株式会社に入社。インターネットサービスの企画/開発を担当。仕事の受託者・発注者の立場を経験したことから、個人と法人のマッチングサービスを思い立ち、2008年4月に株式会社リート(現・ランサーズ株式会社)を創業。同年12月、日本初のクラウドソーシングサービス「Lancers(ランサーズ)」をリリース。その後、テクノロジーによる個のエンパワーメントを推進するべく、フリーランス・副業向けマッチングサービスや企業のスマート経営を推進する人材サービスを展開。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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コロナ禍で劇的に変わった働き方が追い風に

大久保:前回は5年前に取材させていただきました。5年前と比べて、雇用環境も大きく変化しましたね。

秋好:そうですね。やはりコロナ禍がが一番大きかったと思います。ミーティングもオンラインで実施することが当然になり、いろいろな仕事がデジタル化しましたよね。

今までは「フリーランスに発注したいけれども、やり方がわからない」、「自社の業務を発注したいけれども、仕事を分解できない」などとおっしゃっていた方も多かったですが、否応なしにリモートワークを強制されることになったために、企業側の意識も変化しました。自社の社員に仕事を振るにしても、業務を分解しないといけなくなったためです。

大久保:仕事の定義、つまり、ジョブディスクリプションが必要になったということですね。

秋好:そうですね。そもそも日本全体でIT人材が不足していつつも、デジタル化が必須になったために、必然的にIT系のフリーランスへの発注も増えてきています。

ジョブディスクリプションは確かに必要になったのですが、ベンチャー企業などはまだしも、大企業ではまだまだ仕事の定義、分業化が進んでいないようです。

大久保:そもそも、不必要な仕事に従事している大企業の方などもまだまだ多そうですね。

秋好大企業ということでいうと、副業禁止の会社も減ってきているので、スキルがある方はランサーズなどを通じて稼ぎやすい時代になってきていますよね。それこそ、InstagramやYouTubeなどでも稼げるようになってきていますし。

大久保:やはり5年前と今とで、ランサーズで発注される仕事の内容も変わってきていますか。

秋好:以前はSEO集客を目的としたメディアを作るためにWebライターの募集が多かったですが、最近はインターネットでものを売る需要が増えたためか、Webマーケティング系の仕事の募集が増加してきています。InstagramやYouTube、ECツールを使って売上を伸ばす仕事や、インサイドセールスの仕事などですね。

大久保:フリーランスの質も変化してきましたか。

秋好:プロフェッショナルな人材が増えてきています。以前はただタスクをこなすだけのワーカーも多かったですが、弊社もブランディングを変更して施策を打ってきたなかで、より高付加価値な仕事に従事するフリーランスが増えてきました。競合に比べても、ランサーズの一人当たり報酬は高くなっています。

大久保:なるほど。

秋好:今まではもともとスキルがあった人がランサーズを利用していましたが、最近はそうした稼ぎやすいスキルを学んでから活躍される方も増えてきています。ランサーズでも、仕事連動型・教育サービス「Lancers Digital Academy」を昨年に始め、そちらで最先端のデジタルスキルを学んだ方も続々と仕事を獲得されています。

大久保:以前と比べてランサーズ社としての仕事の内容も変わりましたか。

秋好:以前は大企業などからアウトソーシングを受注し、弊社社員がフリーランスをディレクションすることも多かったのですが、現在はそうした仕事は減ってきています。逆に、コロナ禍を経て、中小企業も含め、自ら発注される企業が増えてきていますね。

大久保:なるほど。大企業の仕事は減ったけれども、中小企業の仕事が増えたのですね。

秋好:受注側の個人と発注側の中小企業、両方が増えました。特に地方のケーキ屋さんのような、ITリテラシーがそこまで高くないような中小企業の発注者の方々が劇的に増加しています。

大久保:それは自然とそうなってきているのですよね。

秋好:そうですね。あとは弊社社員が地方に出向いてご挨拶させていただくことでご認知いただき、そこからランサーズをご利用いただくことも多いです。

リモートワークにおけるマネジメントのコツ

大久保:コロナ禍でリモートワークが多くの企業に浸透しました。もともと御社はそうしたノウハウを持っていらっしゃると思います。リモートワークの際に気をつけるべきことは何でしょうか。

秋好:共通のルールを作るようにしています。リモートワークだと、同僚が何をしているのかわからないですからね。例えば18時過ぎにチャットしてもいいのかとか、そういった細かなことをルールで決めていきます。そうすると、ルールに基づいて遠慮しなくていいコミュニケーション環境ができますから。

あとは、業務の見える化も徹底しています。その日、その週にどういった業務をこなすかチャットで報告してもらったり、1on1を実施したりすることで、コミュニケーションを綿密に取ります。

大久保:完全にリモートですか。

秋好もともと私はエンジニアで、エンジニアについてだけ言えば完全リモートのほうが生産性が高くなることもありますが、現在は完全リモートにはしていません。何曜日には会社に来るようにするとか、少なくとも週に何回かは定期的に出社するように決めています。出社するモチベーションを引き出すために、イベントを作ったりもしていますね。例えば、シャッフルランチを開催するとか。

大久保:なるほど。オフィスに行く機会を作るのですね。

秋好:そうですね。オフィスも以前とは変えて、より社員同士が交流しやすいデザインに変えました。

大久保:やっぱりオフラインで会うことは大事ですよね。

秋好:そうですね。仕事の話はいいのですが、人間関係や感情的なことなど、ウェットな話題はやっぱりオフラインで会って話さないとわからないことも多いです。そのため、1on1をやるだけではなく、コロナ禍でも四半期に1回は経営合宿もしています。そうした機会にコンセンサスを作っておくことはすごく重要です。もし間違った方向に進んでしまっていたり、意見が割れてしまったときにそれを修復するのがすごく大変ですから、オフラインで会ってそうした芽をつぶしています。

大久保:経営合宿ではどのような話題を話しているのでしょうか。

秋好:ネガティブなことも含めて、本音を聞いています。ウェットな話題ですよね。経営合宿には社外役員との目線合わせという役割もあります。

拡大する組織のマネジメントで苦労した

大久保:上場までで一番苦労した時期はいつ頃ですか。

秋好やっぱり、社員が20〜30人くらいのときですかね。それまではワンマンで、エンジニア兼プロダクトオーナーとしてサービス全体を見れていたのですが、その辺りから自分一人ではできなくなり、組織をマネジメントしなければならないフェーズに入りました。

そこで不平不満が一気に出て、営業部門が部長ごといなくなってしまったんです。もう大変でした。社内メンバーも動揺するし、私もどうしていいかわからず、相談相手もいなくて。途方に暮れていました。

大久保:それは大変でしたね。マネジメントの相談相手はほかに見つからなかったのでしょうか。

秋好:組織マネジメントの研修も受けましたがいまいちピンときませんでした。そこで、知人の経営者の方に紹介していただいた経営コーチングを受けたところ、それが非常によかったんです。

大久保:いい経営コーチの選び方のポイントを教えてください。

秋好:経営のスキルは必要なく、経営コーチングのスキルで選ぶのが重要です。本当に悩んでいる課題は何なのか、気づかせてくれるようなスキルを持っているか、ですね。あとは相性もやはり重要です。

大久保:そこから組織の規模が大きくなると、楽になりましたか。

秋好:気持ち的にはすごく楽になりました。課題を共有できる仲間が増えたからですね。課題の量は増えても、課題解決に一緒に取り組める仲間がいると心強いです。

大久保:マネジメントのコツは何かありますか。

秋好:そうですね。とりあえず直感で任せてみることですかね。任せないとわからないことも多いです。これまでの経歴やスキルなどではなく、直感的に「この人ならイケそう」と感じた人に任せることですね。これまでの経験では、直感が正しいことが多かったです。

自転車の例えをよく使うのですが、最初はマネジメントされる側の社員は補助輪つき自転車に乗っています。その社員に「任せよう」となったら、徐々に補助輪を外していくイメージです。自転車で自走できるようになれば、時折「もっとこうしたほうがいいんじゃない」などとアドバイスすることもあり、徐々に独り立ちしていく。権限を委譲していく感じですね。

大久保:組織が大きくなると、いわゆる大企業病になってしまう可能性もありますよね。そこはどう対処されていますか。

秋好:企業オーナーである私が現場に乗り込んで解決するのは簡単ですが、その後、社長を降りたらそれができなくなってしまいますので、カルチャーとか考え方を変えようとしています。

起業家は「スペース」を作ろう

大久保:秋好さんは『超集中ハック!: 習慣マニアの経営者が実践する100のライフハック』というご著書のなかで仕事に役立つ習慣を披露されています。ご著書で紹介されている習慣のなかでも、とりわけ重要な習慣は何でしょうか。

秋好まとめれば要点は1つなんです。「スペース」を作ることが重要、ということだけです。考える時間だったり、筋トレの時間だったり。経営者って、足下の数字ばかり考えてしまって、ほとんど「スペース」がなくなりがちじゃないですか。意図的に時間の余裕、精神の余裕、肉体の余裕を作ることで、本当に大事なことを考える「スペース」を作らないといけません。緊急度の高いことばかりに取り組んでいると、会社も起業家自身もダメになっていってしまいますから。

大久保:「スペース」を作ることは重要ですよね。そのために筋トレやサウナもされているのですね。

秋好:そうですね。最近は一人旅にもハマっています。「スペース」が広がる気がしていて。誰にも気を使わないし、精神的にも余裕ができます。いろいろとアイデアを思いついたりすることも多いです。

大久保:「ディープワーク」という仕事の方法も実践されていると聞きました。

秋好:4〜5日休みをとって、山小屋にこもり、初日はまったく何も考えません。その後、考える時間を作っていきます。「ディープワーク」はビルゲイツさんも実践されている集中力を高めるための方法です。とにかく「スペース」を作ることが大事です。

2022年の今、起業できる人は恵まれている

大久保:これから起業される方にメッセージをお願いします。

秋好2022年の今は、すごくいろいろなテーマが盛り上がっていて、起業するにはこれとない環境だと思います。Web3やDX、宇宙やナノテクなど、さまざまなテーマがありますよね。今勝負できる人が羨ましいです。昔はITくらいしか起業する領域がありませんでしたから。

あとは、創業手帳を読んだほうがいいですね(笑)。私も創業当時、弁護士さんや税理士さんのことなど、わからないことだらけでしたが、創業手帳を読んで解決しました。

大久保:言わせたみたいで悪いです(笑)。ありがとうございます。ぜひランサーズも使ってください(笑)。

秋好:ありがとうございます。あとはできることを積み重ねることですね。私も今では「成功した起業家」という風に言われることもありますが、かつてはただのエンジニアでした。マネジメント経験も、輝かしい実績もありませんでしたから。そこから一つずつできることを積み重ねてきただけです。今この記事を読まれている方も、できることを積み重ねていけば、きっとなりたい自分になれるはずです。

大久保:いいお話ですね。

秋好最後に、解決できないことは課題ではありません。例えば、戦争や環境問題などは個人レベルでどうこうできることではないですよね。だから課題と感じることができる方はあまりいないはずです。

もしあなたが今、課題と感じていることがあるのなら、それはあなた自身がその課題を「解決できる」「もっとよくしたい」と考えているからだと思います。「神様は解決できない課題を与えない」などとよく言われますが、今悩んでいることも解決できると思って、ぜひ頑張っていただきたいです。

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(取材協力: ランサーズ株式会社 代表取締役社長執行役員CEO 秋好 陽介
(編集: 創業手帳編集部)

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