タスクと進捗を見える化!マネジメントを効率化するKPI管理シート200%活用術【浜田氏連載その2】
GoogleやFacebookなどでも使われるマネジメント手法をITコンサルタント浜田篤氏が具体的に解説
前回の記事では、目標設定におけるKPIやOKRについての基本的な内容を学びました。マネジメントの現場においては、知識を実務へ落とし込むことが難しく、結局マネージャーが経験や勘に頼ったマネジメントを行っているケースも少なくありません。
今回は、KPIやOKRでのマネジメントを助けるKPI管理シートの作成方法や使い方について浜田氏に解説いただきます。ぜひ自社での運用をイメージしながら読み進めてみてください。
東京理科大学電気電子情報工学科卒。大手自動車メーカーに就職後、教育ITベンチャーにCTOとして転職を経て個人事業主として独立。スタートアップ企業で培ったシステムのアウトソーシング(外注)ノウハウを活かしてインドの開発パートナーとアライアンスを結び、中小企業のコーポレートページなどの受託開発を中心に行うようになる。さまざまな中小企業経営者の方々と接する過程で、エンジニアのマネジメントや評価、組織設計、ITシステムの事業計画の作り方、といったノウハウに需要があると気づき、現在は経営者向けにITコンサルティングを展開している。
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この記事の目次
KPI管理シートとは?
一般的にマネージャーには何かのKPIを達成するようミッションが与えられています。そのミッションの達成のためには、具体的に何を行えばいいのか、その要素を洗い出し、各要素を誰が担当するのか、などの情報をまとめたものが「KPI管理シート」です。あるKPIに対するチームのToDoリストだと考えればイメージしやすいでしょうか。
上の図は「KPI」「KPI達成に必要な要素」「担当者」「成果物のリンク」「具体的なToDo」「進捗」「備考」といった項目からなるKPI管理シートの例です。最低限、これらの要素が含まれていればKPI管理シートとして機能しますし、必要に応じて項目を追加するなど自社に合わせて運用してください。
KPI管理シートは、マネージャー自身が利用するだけでなく、部下と共有し、進捗管理やコミュニケーションのためのツールとしても活用します。同じKPIだとしても、部署や担当者が違えばやるべきことは変わってきます。基本的にKPI管理シートのたたき台はマネージャーが作っていいのですが、関係者とのコミュニケーションの中で完成させていくのがよいでしょう。
KPI管理シートを利用するメリット
KPI管理シートを利用するメリットには次のようなものがあります。
- ココ重要!
-
- タスクと進捗を「見える化」できる
- コミュニケーションツールとして利用できる
- 報告資料を削減できる
タスクと進捗を「見える化」できる
KPI管理シートには目標達成のための要素がタスクとして記入されています。KPI管理シートを作成することで、大体のタスク量がわかり、そのタスクの完了度合いから進捗状況が見えてきます。KPI管理シートを利用することで、タスクと進捗の「見える化」になるわけです。
タスクが見えてくると実務経験のあるマネージャーなら、どの程度の工数が必要になるという予想もできるでしょう。しかし一方で、現場で実務に当たる部下が予想した工数で完了できるとは限りません。タスクと進捗の「見える化」ができることで、こうしたズレをいち早く見抜き、サポートするといったマネジメントの役割も果たしやすくなるわけです。
そして、手を入れた部分や、予定とおりに進められなかった部分を通し、自身のマネジメントについても「見える化」することができます。うまくいかなかった部分は改善を積み重ねていくことで、マネジメントの質が向上していくのもメリットです。
コミュニケーションツールとして利用できる
KPI管理シートはタスク管理に利用するだけではなく、コミュニケーションツールとして利用できるのもメリットです。KPIやそのために必要な要素を示した資料を共有することによって、同じ目標を共有した状態でコミュニケーションをとることができます。
専門性の高い分野では、現場の従業員の方が具体的で効果的なアイデアを持っていることも多いものです。マネージャーがすべてのタスクを決定するよりも、部下と同じ目標に向かってより良い方法論について議論することも組織文化を作る上で大切ですし、ノウハウの伝達も進みやすくなります。また、部下の側からも、上司ごとに何度も報連相を行うといったムダも減るので、コミュニケーションの質が向上します。
報告資料を削減できる
例に挙げているKPI管理シートには、「成果物へのリンク」という項目があります。このようにしておくことで、会議での進捗報告用に別途エクセルやパワーポイントで資料を作成せずとも、このKPI管理シートをそのまま報告資料として利用可能です。
また、人事評価などの際には「誰が」「どのような仕事」を「どのくらい」したのかを考える必要があり、複数人で検討したり確認を求めたりする場合には資料が必要になります。こういった場合でも、検討用の資料を作成せずとも、KPI管理シートから「担当者」でデータを絞り込めば一目瞭然ですので、資料作成に費やす膨大な時間を削減できるメリットも大きいです。
KPI管理シートの作り方
KPI管理シートに入れるべき項目や数値目標の指標、作成段階における項目の埋め方などを具体的に見ていきましょう。
管理シート作成の流れ
まずはKPI管理シートのテンプレートを準備しましょう。「KPI」「KPI達成に必要な要素」「担当者」「成果物のリンク」「具体的なToDo」「進捗」「備考」程度の項目があれば最低限機能します。
KPIについては経営層や経営企画、マネージャーなどで決めてしまいます。このとき、具体的な数値目標については、業界の一般的な数字があればその数字でもよいですし、現場のマネージャーが実務知識やメンバーの実力から妥当と思われる目標を決めるのもよいでしょう。
経営者は各マネージャーから「うちの部署では何%を目標とする」といったKPIの提案を受けます。このとき、経営者は各マネージャーの実績から信頼できる数字かを判断するとともに、その必要経費や工数、効果の持続性といったところからKPI提案の承認・非承認を判断します。
KPIが決まったら、細かいタスクの分解や担当者といった残りの部分についてはマネージャーがたたき台を作ります。しかし、これはあくまでたたき台であり、決定ではないことに注意してください。
次回で触れますが、KPI管理シートを使って部下とコミュニケーションを行いながら項目を埋め、シートを完成させていきます。KPI以外の項目は相談しながら埋めていくようにしましょう。
ToDo(タスク)のブレイクダウンは追加しながら
ToDoのブレイクダウンは細かくしすぎると資料作成や入力の際の負担になります。「面倒は最大の敵」ですので、業務と進捗がわかる程度にしておきましょう。ToDoの目的は、仕事の進捗を見ながら直属の上司や、より上の人が気付いてサポートしたり、業務への適性や評価を行ったりすることにあります。
必要以上にToDo項目を入力していた場合はマネージャーから「進捗がわかればいいからそこまで丁寧に書かなくて大丈夫だよ。サポートが必要なときは言ってね。」と声をかけてあげてください。
なお、業務を進める中で必要な項目が新たに見つかる場合もあります。その場合は、見つかったタイミングで項目を追加して充実させていくとよいでしょう。
KPI管理シートの効果的な使い方
KPI管理シートは、ToDoを洗い出すだけでなく、作成過程で担当者をアサイン(割り振り)していくためにも使います。メンバーとToDoについて相談していると、メンバーが自ら案を出したり、担当に名乗り出てくれたりするケースも多いです。KPI管理シートの作成を通じ、主体的に業務に取り組めるようにモチベートしていくとよいと思います。
また、KPI管理シートは作成したら関係者と必ず共有します。このとき、クラウド上にKPI管理シートを置き、関係者がいつでも確認・編集できることが望ましいです。マネージャーは進捗状況を確認しながらスケジュール管理や業務のサポートを行い、実務の担当者は進捗を入力し、成果物を掲載します。
このようにすることで、進捗をチームで共有でき、一体感が生まれます。各種の報告・検討用資料としても利用できますので、コミュニケーションも大きく効率化されるでしょう。
直属の上司以外が関わっている場合も、できるだけKPI管理シートを使ってもらうよう勧めてください。もし何か聞かれたときに、「日々の業務進捗に関してはここ見ておいてください!」で片付けることができるようになり、互いに負担が減ります。
KPI管理シートを使う上での注意点と必須項目
会社として未経験の、未知の業務についてはKPI管理シートがうまく機能しないことがあります。そうならないための注意点と業種ごとに必要となる項目を見ていきましょう。
KPI管理シートを効率よく使うための注意点
会社として未経験の分野の場合などは、ゴール(KPI達成のための要素の最終地点)部分だけを入力し、ToDoが見えてきたタイミングで追加していくような運用がよいでしょう。
また、新人などで自らToDoを設計できない場合は、過去のKPI管理シートをテンプレとして提案したり、マネージャーがToDoを設計して進捗と備考欄だけを彼らに記入させたりという運用でも構いません。
KPI管理シート作成における必須項目
基本的には数字として表せるKPIです。KPIさえ設定できれば他のことはおおよそ決まってきます。このKPIは、ビジネスの種類によって異なり、どのように設定するかで具体的なアクションが大きく変わります。
【例1】テレアポ会社
売上 = 架電数 x 商談数
のようにシンプルに考えることができ、KPIとして「架電数」「商談化率」「成約率」を設定し、その向上に向けて日々頑張るという流れです。
【例2】ECサイト
売上 = PV x CVR
※PV:ページビュー。Webサイトのページが訪問された数
※CVR:コンバージョンレート。ページの訪問者が期待する行動をした割合
とシンプルに考えることもできますが、厳密には、PVには新規アクセスとリピートアクセスがあり、このどちらかによってCVRが変わります。そのため、
売上 = 新規アクセス x CVR1 + リピートアクセス x CVR2
の方がより良い改善がしやすいでしょう。このような数字の取り方をすることで、現場ではCVR1に注目し、新規アクセスにおける会員登録や商品購入といった行動のストレスの軽減策を実施するという動きが加速する可能性があります。
その他にも、流入経路によってユーザーの属性が異なることも多いため、流入経路ごとのCVRも追えるようにしておくと、分析と改善のためのToDoも出やすくなるでしょう。
魅力満載のKPI管理シートを自社仕様にして効率的に利用する
- まとめ
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- KPI管理シートとは、KPIとその達成のための要素、担当者、具体的なToDo、進捗などをまとめた資料
- KPI管理シートは、進捗管理だけでなくコミュニケーションツールや報告資料としても利用できる
- KPI管理シートは必ずチームメンバーで共有して利用する
今回はタスク管理に便利なKPI管理シートについて紹介しました。次回は、このKPI管理シートを利用した人材マネジメントの方法について紹介します。
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(取材協力:
Aeru.me株式会社 代表取締役社長 浜田 篤)
(編集: 創業手帳編集部)