GOODIE 岸原 秀行|クラウドファンディングで成功!「釣り×アパレル」という新たなニーズの開拓に挑戦

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年07月に行われた取材時点のものです。

機能性と撥水性に優れた「釣りに特化」したアパレルブランドで、釣りをもっと身近に


コロナ禍の影響もあり人気が高まっている「釣り」に特化したアパレルブランドを運営しているのがGOODIEの岸原さんです。ゴルフやキャンプのおしゃれなアパレルブランドは増えていますが、釣りの分野はまだ開拓の余地があると挑戦しています。

「釣り×アパレル」という新しい分野を開拓する戦略や、大成功を納めたクラウドファンディングで行った工夫について創業手帳代表の大久保が聞きました。

岸原 秀行(きしはら ひでゆき)
株式会社GOODIE 代表取締役
大日本印刷、ロームを経て、家業である婦人靴メーカーの小売事業会社を設立。約14年間の経営し、2020年に釣りに特化したアパレルブランド「Bywater」を運営する「GOODIE」を創業。初めて実施したクラウドファンディングでは、目標達成率3152%で630万円以上もの支援額を集めて大成功を収める。その後も全7回のクラウドファンディングを実施し、その全てでプロジェクト成功を収めている。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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大手企業や婦人靴販売の会社経営を経て「GOODIE」を創業

大久保:起業までの経緯を教えてください。

岸原:大日本印刷からキャリアをスタートさせて、次に半導体メーカーのロームに転職しました。

その後、家業の婦人靴メーカーの子会社で婦人靴の小売を行う会社の経営を任されました。

14年ほど経営をしていましたが、2020年に独立し「GOODIE」を起業したという流れです。

大久保:どのような思いで起業しましたか?

岸原婦人靴のEC事業の弱点を補う形でのビジネスモデルの構築を目指しました。

当時は300〜400種類の婦人靴を取り扱っており、比較的安価でトレンドを意識したブランド戦略でした。年間で数億円は売り上げていたのですが、常に在庫をどう捌くかを考える必要があったんです。

そこで、「レディース」に比べてトレンドに左右されにくい「メンズ向けのアパレル」に、私の趣味である「釣り」を掛け合わせることで、さらにトレンドに左右されにくく、在庫リスクを抑えることができるのではないかと考えました。

ECサイトでの婦人靴販売を通じて、ユーザーのニーズの多様化を肌で感じていました。特にキャンプやゴルフの分野では、機能的でおしゃれなファッションアイテムのニーズが高まっているため、今後は「釣り」の分野でもニーズが高まると予想しています。

コロナ禍で人気が高まっている「釣り」に特化したアパレルブランド

大久保:釣り人口は今どれくらいいますか?

岸原2020年の統計データだと約670万人で、ピーク時の約1,200万人と比較すると半減していることになります。しかし、コロナ禍の影響でニーズが高まっており、2022年現在の釣り人口は700万人を超えていると言われています。

大久保:釣り人口の男女比はどれくらいですか?

岸原:最近は「釣りガール」という言葉も広まってきており、SNSを見ても釣りを楽しむ女性が増えてきた印象があります。

しかし、現状の釣り人口の8割程度を男性が占めており、GOODIEが運営している「Bywater」という釣りに特化したアパレルブランドの顧客もほとんどが男性です。

大久保:釣りに特化したアパレル商品とはどのような特徴がありますか?

岸原:釣りでは色々な道具を使うため、できるだけ多くの道具を入れられる方が便利です。そこで、ポケットが多い「ペインターパンツ」をベースに、普段使いもできるデザインを取り入れています。

また、釣りをする際には水がかかることも多いので、撥水性の高い生地を採用しています。

過去に実施したクラウドファンディングの累計では、1,300万円以上の売上を達成しました。

大久保:ユーザーからはどんな感想が届いていますか?

岸原:一般的なペインターパンツはダボっとした太身のデザインなのですが、Bywaterのパンツは普段使いがしやすいように細身のデザインにしています。私自身も毎日使っています。

ユーザーからの感想としては、撥水性が高い生地なので「雨の日でもパンツが濡れなくて嬉しい」や「コーヒーをこぼしてもすぐに拭き取れて助かった」という声を頂いています。

釣りの時だけでなく、日常生活の中でも機能的に活用していただけていますね。

「達成率3152%」で「630万円以上」を集めてクラウドファンディングを成功

大久保:クラウドファンディングはどこで実施しましたか?

岸原:MakuakeとCAMPFIREを併用して実施しています。

大久保:どのような使い分けをしていますか?

岸原:それぞれに特徴が異なります。

Makuakeは世の中に出ていないモノに特化したクラウドファンディングのプラットフォームなので、CAMPFIREで実施したアイテムをMakuakeに出すことはできません。

なので、両方のプラットフォームで実施したい場合は、Makuakeで先にクラウドファンディングを実施する必要があります。

また、Makuake機能性やデザイン性が高く商品としてのクオリティとポテンシャルが高い商品がより応援購入される傾向があり、CAMPFIREプロジェクトオーナーの思いや活動に共感して支援していただける傾向が強いと感じます。

大久保:クラウドファンディングは何回実施されたのですか?

岸原:全部で7回実施しました。

大久保:繰り返し実施することのメリットはありますか?

岸原:過去の商品を買っていただいたお客様に、クラウドファンディングで新商品リリースのご案内ができるのは良いです。だからと言って、リピーターさんばかりでもなく、毎回新規顧客の獲得にもつながっているのは、クラウドファンディングのメリットだと思っています。

大久保:クラウドファンディングを成功させた際に行った工夫を教えてください。

岸原:クラウドファンディングはプロジェクトを開始した初日の支援額がその後の支援に大きな影響を与えます。そのため、事前にメルマガに登録してもらい、プロジェクトの内容を発信したり、地道な個別の声かけも行いました。

また、プロジェクト開始初日に一定数の支援を集めることができれば、クラウドファンディングのプラットフォーム上での表示順位が上がることもあるので、支援が集まりやすくなります。

経験のない「アパレル業界」での起業は苦労の連続

大久保:事業を始めて苦労した点を教えてください。

岸原:大きく2点あります。

1点目は、前職でグループ会社の社長を務めていましたが、資金繰りについては親会社と相談しながら進めていました。自分で融資や投資を受けることを考える必要がなかったので、GOODIEを起業して「資金繰り」については苦労しました。

2点目は、婦人靴の販売を行っていたとは言っても、「靴」と「アパレル」は近そうで全く違う業界です。

靴を製造する場合は、靴本体から箱までを1社で作り上げることが一般的ですが、アパレルはパターンや縫製、生地などの全て別の業者に依頼し、自社でディレクションする流れが一般的です。

しかし、私はアパレルの商品を作った経験がなかったため、OEMで製造してくれる業者を探しました。

最初は展示会に参加すればすぐに業者が見つかると思っていましたが、このタイミングでコロナ禍になり展示会が開催されず、OEMで製造を委託する業者を見つけるのにとても苦労しました。

展示会がないので、インターネットで検索して1件ずつ問い合わせをするしか業者を探す方法がありませんでした。

過去に婦人靴の販売をしていた実績はあるもののGOODIEとしては実績がなかったため、最初の1社と契約を取り付けるまでがとても大変でした。

1社目の業者での製造が決まった後は、クラウドファンディングの影響もあり色々な業者さんから逆に提案いただけて、スムーズに進み始めました。

大久保:起業してすぐのタイミングにやっておくべきだったと思うことはありますか?

岸原:創業時の資本金の全額を自己資金で始めたのですが、最初の1年弱でそのほとんどを使ってしまったので、そこからは融資やVCからの出資を検討し始めました。

実はクラウドファンディングを見たVCの方からお声がけを頂いたことがあるのですが、私の中で外部から資金を調達すべきかを決めかねていたので、出資を受けることはありませんでした。

この点も含めて創業する時に、融資や出資をどのタイミングで受けるべきかという将来的な資金計画を立てておくべきだったと思いますね。

「自分の強み」が生かせる「好きな分野」での起業が成功の鍵

大久保:渋谷区や富山県などに商品を置いていますが、都市部と地方のどちらに注力していますか?

岸原:都市部で暮らしている方々は新しいモノを目にすることに慣れているので、どのブランドも埋もれやすい印象があります。

一方で地方都市の方が注目を集めやすいですし、釣り人口は地方にも多いので、今は地方での販売にも力を入れたいと思っています。

大久保:PRについてはどのような工夫をしていますか?

岸原:プレスリリースは積極的に活用しています。単にプレスリリースを発信しても見てもらえないと意味がないので、実績を全面に押し出したり、キャッチーなタイトルをつけて、興味を持ってもらう工夫をしています。

クラウドファンディングの実施と、またその実績もPRとしての役割を担っており、「プロジェクトの達成率」や「釣りに特化したパンツ」のようにエッジの効いた発信は効果が出ていると思います。クラウドファンディングを見て問い合わせをいただくことも多いですね。

また、今はSDGsに注目が集まっているため、商品の「社会性」に特化した発信も効果的だと思います。

大久保:取引先の開拓をする際に気をつけていることがあれば教えてください。

岸原:商品を作っていただく工場や商品を取り扱っていただく店舗にも共通することですが、ブランドコンセプトやブランドに込めた思いだけでなく、ビジネスとしての「実現可能性」を明確にすることには気をつけています。

私の場合は、前職での経験や実績を元に実現性を説明しましたが、一般的にはブランドオーナーが持っているスキルや経験など強みとなることを明確にしつつ実現性の説明をすると良いと思います。

大久保:最後に読者へメッセージをお願いします。

岸原:私は前職で婦人靴を販売していた時の商品の選定スキルやマーケティングの経験を生かしてGOODIEを起業しました。

婦人靴という商品に関しては、私の強みを発揮できる場面は多くなかったのですが、GOODIEでは趣味である「釣り」の知識や経験、そして釣りが好きだという思いを強みに商品開発を行っています。

今後、起業を考えられている方には、ご自身の強みを生かせる分野での起業をおすすめしたいと思います。

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(編集:創業手帳編集部)

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(取材協力: 株式会社GOODIE 代表取締役 岸原秀行様
(編集: 創業手帳編集部)



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