「こんな時、資金調達は難しい」専門家が見た融資が難しくなる4パターン

創業手帳

実録!現場だから見える創業融資あれこれ

(2017/05/22更新)

創業者にとって頼もしい存在になるのが、創業融資の支援を行なってくれる専門家の存在です。実は、そんな専門家でも「こういうパターンだと融資は難しい・・・。」という場面に出くわすことがあるそうです。今回は、その中でよくある4つのパターンを専門家に取り上げてもらいました。4つのパターンの対応策についても解説していただきましたので、これから資金調達を考えている創業者の方はしっかりチェックしておきましょう。

1.自己資金が少ない

1つ目のケースは、融資希望金額に対して自己資金が極端に少ないケースです。このような場合、融資自体ができなかったり、希望金額から減額されることがあります。

例えば、融資希望金額が1,000万円でも、自己資金を50万円しか用意していなかった場合、融資は不可能です。
ですが、同じ融資希望金額でも、自己資金が400万円の場合、融資を受けることができる可能性はあります。このように、自己資金は創業融資において非常に大切な要素です。

自己資金が少ない中での資金調達に関しては、過去にこんな事例がありました。

ある日、融資希望金額500万円、自己資金20万円という条件の依頼がありました。
過去の事例から推測すると、この場合はひとつの金融機関から100万円の融資が下りれば良いという感覚です。

実際に手続きを行った結果、日本政策金融公庫(以下、公庫)から200万円+信用保証協会付きの融資で200万円、合計で400万円を受けることができました。

この方は自己資金こそ少なかったものの、お客様から受注を多く、その証拠となる契約書がありました。また、公庫の中小企業経営力強化資金を使い、支援体制があることをアピールしたため、400万円の資金調達に成功しました。ですが、最初に希望した500万円という金額には届きませんでした。

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自己資金が少ない場合の解決方法は?

このように、自己資金が極端に少ないと、融資は厳しくなります。そうならないための解決方法は、以下のようなことが考えられます。

  • 毎月少しずつ給料を貯める(基本的なことですが・・・。)
  • 親族から少し援助してもらう
  • 株や車など資産を売却して自己資金にする

やはり、一番理想的なのは毎月少しずつ給料を貯めていくことだと思います。

2.開業する業種の経験がない

融資が難しくなる2つ目のケースとして、開業する業種の経験がない場合が挙げられます。

創業融資の審査では、開業する業種の経験というのも重視されており、業種経験がない場合は大きな金額の融資を受けることが難しくなります。
「経験があった方が事業に成功しやすい」という考え方があるわけです。また、雇用形態が正社員・アルバイトの違いでも、融資に影響があるように感じます。

業種の経験に関しては、過去にこんな事例がありました。

この時ご相談に来たのは、リフォーム業を開業される方で、業種の経験はアルバイトだけ、という方でした。ですが、リフォーム業の会社を定年退職したお父様も一緒に事業を行うということで、お父様の経歴や実績がプラスに評価されました。(※公庫の担当職員談)

「アルバイトはどうなの?」という意見が公庫の支店内にあったそうですが、結果として希望金額の融資ができました。開業業種の経験が少なく、本人以外にパートナーがいる場合は、パートナーの経歴などをアピールしてみるのも一つの方法です。

経験がない場合の解決方法は?

このように、開業する業種の経験がない場合もなかなか難しくなります。このような時の解決策として、以下の点を意識すると良いでしょう。

  • パートナーがいる場合は、パートナーがいることとその人の実績を伝える
  • フランチャイズに加盟して経験不足を補う
  • 数年間開業しようとする業種の経験を積む

3.自己資金だけで開業したが大赤字

ここまでご紹介した2つのケースは開業前の創業融資についてでしたが、ここからは開業後の融資で難しいケースをご紹介します。

融資が難しくなるケース、3つ目は開業後の実績が大赤字だった場合です。
自己資金だけで開業して数か月営業したが、毎月赤字が続いたことで資金不足に陥ってしまい融資を申し込む、というケースです。

この場合、数か月とはいえ「経営がうまくいっていない」という実績が出てしまっています。これから開業するという方を「ゼロ」とするならば、赤字続きで申し込む段階は「マイナス」の状態ということになります。
このケースの支援はとても難しく、公庫の担当職員も「このようなケースが一番難しい」とおっしゃっていました。

このケースに関しては、過去にこんなことがありました。

半年前に開業したが売り上げが低迷し、資金が底を尽きそうになったところでご相談に来た方がいました。「集客も支援してくれるフランチャイズに加盟するので、加盟に関連する資金と今後の運転資金を調達したい」という内容でした。

この時は、「フランチャイズに加盟するという大きな変革を起こして、その後の収益も見込めるなら融資できる。(※公庫の担当職員談)」と判断されて、希望通りの融資ができました。
逆に言うと、何も変えなければ融資をしても延命するだけなので、希望通りの融資は難しかったかもしれません。

赤字続きの時の解決方法は?

実績が大赤字での融資は、当然厳しくなります。その場合、下記のような対応が必要になるでしょう。

  • 赤字続きで傷口を広げてしまう前に収益の改善とそれに必要な融資を申し込む
  • フランチャイズに加盟するなど、根本的に経営を改善させる

また、赤字続きの場合でも月を経るごとに赤字幅が減っていき、黒字に転じそうであれば融資の可能性は出てきます。
何も経営の改善をせずに申し込んでも、倒産の時期を遅らせることしかできません。何らかの経営改善が必要でしょう。

4.開業後に確定申告してない

融資が難しくなるケース、最後にご紹介するのは開業後に確定申告してない場合です。

実は、確定申告をしていなくても融資ができる場合とできない場合があります。
融資が可能なケースにおいて代表的なのは、「確定申告をしなくてもいいですよ」と国が認めている場合です。例えば、「年収が20万円以下の時は申告しなくてもよい」というケースがそれにあたります。ただし、確定申告をしていないという事実は変わらないので、融資の際の印象は悪くなってしまいます。

それに対して、融資を受けることができないのは、「税金を払いたくないので申告しない」と言って申告をしない場合です。
公庫の融資金は、もともと国のお金です。「本来するべきことをしない人になぜ国のお金を使って融資するのか」という考えになりますし、開業後に使う融資制度において、確定申告書が必要になります。つまり、「確定申告してない=利用できる融資制度が無い」ということになります。

確定申告に関しては、過去にこんな事例がありました。

この時相談に来た方は、2年前に開業してから売り上げがほとんどなかったので、確定申告をしていませんでした。ですが、「相談に来る2ヵ月前から売り上げが立ってきたので、各種支払いにあてるための資金がほしい」というものでした。

この場合、収入が少ない場合は確定申告をしなくてよいと国が認めているケースだったので、申告していない理由を公庫の職員に説明し、2年分の申告をさかのぼって行いました。
その結果、融資を受けることができました。

確定申告してない場合の対策は?

このような時の対策としては、下記のようなことが考えられます。

  • 確定申告しなくてもよいと国が認めている場合は、理由を正直に伝える(ただし、印象は悪い)
  • 「税金を払いたくない」などの理由で申告していない場合、すぐに融資を行うのは難しいと考える

ちなみに、「期限後でも申告すればいいのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、融資の審査において期限後の申告は「アウトに近いマイナス」なので、直近ではあまり意味がないと思います。
ですが、この先ずっと融資ができないわけではありません。今後3期分をしっかりと期限内に申告していけば、3期を経過後からの融資は可能です。融資で必要な確定申告書は3期分だからです。

もちろん、どちらにせよ確定申告は期限内に済ませるというのがベストですね。

まとめ

今回は、創業融資が難しくなる4つのケースについて解説しました。

こうならないための対策をまとめると、開業前の場合は「自己資金は起業を考え始めたらコツコツ貯め始める」、「開業する業種の経験を積んでいく。なければ経験を補う方法を考える」。開業後の方は「赤字でも傷口が広がる前に少しでも黒字にする(難しいですがやるしかない!)」、「確定申告は期限内に行う」といったことを実践しないといけません。

特に、開業前の方は「準備期間に何をしていたか」が融資を受けるうえで重要です。
事前に対策を打っておくと、融資だけでなく開業後の資金繰りも楽になるので、しっかり対策していきましょう。

(監修:かきざき行政書士事務所 柿崎 満佳(かきざき みつよし)
(編集:創業手帳編集部)

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