起業家注目!エフェクチュエーションとは?5つの原則などをわかりやすく解説!

創業手帳

起業家の意思決定プロセスや思考に関する考え方がエフェクチュエーション


エフェクチュエーションは、成功した起業家の考え方や行動の中にある共通点を体系化したものです。
目標を最初に設定するのではなく、今行っている方法や状況を活かしながら新しい可能性を見出すことを重視しているため、起業家をはじめ、様々なビジネスの場で注目を集めています。

今回は、エフェクチュエーションの概要や注目度が高まっている理由、5つの原則、実践方法、具体的な事例について解説していきます。

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エフェクチュエーションとは?概要


注目度が高まっているエフェクチュエーションですが、初めて知った方もいるかもしれません。
そこでまずは、サラス・サラスバシー氏が提唱した考え方であることなど、基本的な部分から解説します。

サラス・サラスバシー氏が提唱した考え方

エフェクチュエーションは、インド人の経営学者であるサラス・サラスバシー氏の研究で発見されました。
研究の内容は、27人の起業家(大成功を収めたとみなされる人物)を対象として起業時の10の意思決定に関する17の質問を行い、出てきた回答から共通する思考プロセスを分析するというものです。

サラス・サラスバシー氏は、この研究で得られた結果を体系化することに成功し、著書である『エフェクチュエーション:市場創造の実効理論』にまとめています。
未来の予測が難しく、目標が明確になっていない状態で、豊富な経験を持つ起業家はどのような意思決定を行うのか分析し、そのプロセスなどを体系化したのは大きな功績だといえます。

コーゼーションからエフェクチュエーションへ

これまでは、コーゼーションが有効な手段とされてきました。
コーゼーションは、予測に基づく機会の特定を行い、成功する可能性が高いプロジェクトに対して経営資源を効率的に配分するためのアプローチです。
しかしこれは、目的が明確になっていて、環境分析に基づく予測ができる場合に限ります。
つまり、環境の不確実性が高かったり、使える資源に限りがあったりする場合には、コーゼーションのアプローチをしても行き詰まる可能性が高いです。
目的が明確になっておらず、未来の予測が難しい場合は、前述したエフェクチュエーションのほうが適しています。
しかし、0→1にはエフェクチュエーション、1→10のフェーズではコーゼーションが有効だという考え方もあるので、どちらが優れているとは言い切れません。

エフェクチュエーションの注目度が高まっているのはなぜ?


近年、エフェクチュエーションの注目度が高まっています。続いては、なぜ注目度が高まっているのか、その理由について解説していきます。

あらゆる人が起業家になれる環境が整ってきた

エフェクチュエーションが発表される前は、起業家の特性について「持って生まれた才能や家庭環境による」のように抽象的な説明のみとなっていました。
しかし、エフェクチュエーションが発表されてからは、起業家の思想が体系化され、誰でも起業家精神を学べるようになりました。
つまり、あらゆる人が起業家になれる環境が整ってきたため、注目を集めるようになったといえます。

起業というとハードルが高そうなイメージを持つかもしれません。
しかし、エフェクチュエーションに基づいた学習であれば、誰もが起業家を目指すことは可能であり、高く評価されている理由のひとつです。
働き方が多様化している現代社会において、エフェクチュエーションの考え方に同調する方も増えています。

激化するビジネスにおいて臨機応変に対応する必要がある

激化するビジネスにおいて臨機応変に対応する必要があることも、エフェクチュエーションの注目度を高める要因のひとつです。
ビジネス環境は刻一刻と変化していて、最初に目標を決めるという従来型のアプローチでは成果が出にくい状況になりつつあります。

現状に対して臨機応変な対応をするためにも、エフェクチュエーションは重要だと考えられるようになってきました。
過去のデータや予測に頼ることももちろん大切ですが、現在のリソースを最大限活かして新しい可能性を見つけることのほうが重要だと考える方も増えています。
ビジネスが激化し、先行きが不透明なので、正確な分析や調査が難しいという状況もエフェクチュエーションが推奨される後押しになっています。

STPマーケティングが限界を迎えている

ビジネス環境は変化を続けていて、その変化にSTPマーケティングが追いつけなくなってきたことも、エフェクチュエーションが注目されるようになった要因のひとつだといえます。
STPマーケティングは、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の頭文字を取った言葉です。
市場を細分化し、ターゲットを定め、自社の立ち位置を明確にするためのアプローチとして取り入れられている方法です。
STPマーケティングは分析に時間がかかってしまうので、ビジネス環境の急激な変化についていくのが難しくなってしまいます。
そのため、現状に適合するエフェクチュエーションの注目度が高まっています。

エフェクチュエーションは、小さい規模で試しつつ、市場に適合させていくという手法です。変化し続けるビジネス環境においても効果的だと考えられています。

エフェクチュエーションの5つの原則とは?


エフェクチュエーションには、成功者と呼べる起業家たちが不確定な状況下で市場をつむぎ出すために活用している5つの原則があります。
続いては、その原則がいったいどのようなものか、説明していきます。

①「手中の鳥」の原則

ビジネスチャンスを生み出すために新たな人脈や手法を見つけたり、開拓したりすることは簡単ではありません。
しかし、成功している起業家は、能力や社会のネットワーク、専門性といった既存のリソースをうまく活用し、新たなビジネスチャンスを手にしている傾向があります。
そして、すでに手中にある方法を見定めるために、私は誰なのか(who I am)、何を知っているのか(what I know)、誰を知っているか(whom I know)を再度考えることも重要です。
そうすることで、何ができるのかを発想しやすくなります。そのためこのプロセスは「手中の鳥」の原則と呼びます。

②「許容可能な損失」の原則

何ができるかというアイデアを行動に打つためには、どのくらいのリターンが期待できるのかではなく、うまくいかなかった時のリスクを考慮する必要があります。
そのリスクにともなって起こり得る損失を受容できるか否かがポイントです。

予測できない未来に起こり得る損失を受容できるか、すり合わせることを「許容可能な損失」の原則と呼びます。
受け入れられる損失を上限に設定して行動すれば、リスクコントロールがしやすくなるためです。
いきなり大きな投資をするのではなく、少額からスタートしてトライ&エラーを繰り返す中で、次のプロセスへと進んでいくことの重要性を意識するためのプロセスです。

③「クレイジーキルト」の原則

クレイジーキルトは、サイズや柄が異なる布切れを縫い合わせて作られた布です。
そのクレイジーキルトのように、異なる特徴・考え方を持つ顧客や競合他社、社員など起業家を取り巻くステークホルダーと良好な関係を保ち、パートナーシップを構築して目標達成を目指すことを「クレイジーキルト」の原則と呼びます。
関係者の中に競合他社が含まれている点が大きな特徴です。予測不能な状況において、対立して断絶するのではなく、パートナーとして巻き込むことの重要性を私たちに伝えようとしています。
それが事業拡大の第一歩になります。

④「レモネード」の原則

「When life gives you lemons, make lemonade(人生がレモンをくれたら、レモネードを作ればいい)」というアメリカのことわざがあります。
このことわざの中に出てくるlemonには、「良くないもの」や「うまくいかないこと」といった意味も含まれています。
手間をかけてレモネードを作るみたいに、うまくいかないことであっても工夫次第で生まれ変わらせることが可能であるといった意味になるのです。

このことわざにあるように、失敗してしまったものや欠陥品も見方や使い方を工夫すれば、新たな価値を生み出せるという考え方を「レモネード」の原則と呼びます。
つまりエフェクチュエーションは、失敗を恐れて躊躇するのではなく、失敗してしまった時にそれをどのようにしてチャンスにつなげられるかが重視されていることがわかります。

⑤「飛行機の中のパイロット」の原則

最後に紹介するのは、「飛行機の中のパイロット」の原則です。
これは、飛行中に操縦桿を握っているパイロットのように、常に変化する数値などを確認しながら、刻一刻と変わりゆく状況を観察し、臨機応変に対応することを意味しています。
ここまでに紹介した4つの原則を網羅していることが前提条件となっています。エフェクチュエーションが効果を発揮するのは、不確実な状況下です。
どのような状況になっているか日々観察したり、周りの人に働きかけたりすることで、起業家自身がコントロールできる活動に集中することが重要という考え方です。

成功している起業家は、自分自身がコントロールできる行動を選択するため、予測ではなくコントロールで最善な結果を生み出そうとするのが「飛行機の中のパイロット」の原則だといえます。

エフェクチュエーションの実践方法について


エフェクチュエーションの実践方法について知りたい方もいると考えられます。続いては、どのような実践方法があるのか解説していきます。

現場の行動規範を設定する

成功している起業家の行動パターンや思考プロセスを行動規範に設定すると、これまでには思いつかなかった斬新な発想を生み出しやすくなります。
特に、「クレイジーキルト」の原則を実践して多くのステークホルダーと接客的にかかわりを持ち、良好な関係を築くことでビジネスチャンスは広がりやすくなります。
異なる企業などと連携・協力することで、今まで以上に多くのアイデアやリソースを得られる可能性も高いです。

行動規範を設定する時は、行動規範とミッション・ビジョンを連携させたることがポイントになります。
また、何を大切にする組織なのか言語化したり、すでに実践されている良い行動規範を確認したりするのも効果的です。

アスキングの重要性を理解し、練習する

エフェクチュエーションのアスキングは、パートナー獲得を目的とした問いかけです。他社に対して、資源や協力の提供をお願いできないか尋ねる行為です。
多くの方にアスキングを行うことは、自分自身が求めている協力を引き出すためのスキルでもあるので、ビジネスシーンでも役に立ちます。
アスキングは、実践を重ねていくと上達していきます。
繰り返しトレーニングを行い、相手に資源の提供を求める姿勢や適したタイミング、表現方法を身に付けていくことで効果的なアプローチが可能となるでしょう。

アイデンティティの可視化と共有を行う

エフェクチュエーションを活用した事業を行う場合、アイデンティティもアスキングスキルと同じくらい重要です。
アイデンティティは、事業の方向性をはっきりさせたり、ビジネスパートナーやチームが持つ目標・ビジョンを示したりする役割を有しています。
アスキングでは関係を築きますが、アイデンティティの可視化ではビジネスパートナーと共通の目標を共有できるので連携力が高まります。

アイデンティティのひとつであるコーポレートアイデンティティ(CI)は、ブランドイメージ戦略に大きな影響を与えるものです。
コーポレートアイデンティティを取り入れれば、ブランドイメージや個性などを社内外にアピールできるようになります。

エフェクチュエーションの具体的な事例


エフェクチュエーションについてより理解を深めるには、具体的な事例を確認するのが効果的です。最後に、どのような事例があるのかご紹介します。

大手テーマパークの事例

とある大手テーマパークでは、トラブルが重なって業績が低迷しました。
そのような中で、経営陣を新規事業やマーケティングに精通している起業家タイプへと切り替えたのです。
また、アニメとコラボするなど顧客を楽しませる方向へシフトしたこともあり、業績は回復しました。

大手食品会社の事例

「レモネードの原則」を活用して、失敗を成功へと転じた大手食品会社もあります。
人気商品のせんべいが型抜き機の不調で本来とは違う形になってしまったのですが、納期の関係でそのまま出荷しなければいけませんでした。
失敗作を出荷した形になりますが、消費者からが「食べやすい」などの声が聞かれ、ヒット商品になったというケースです。

まとめ・起業家を目指すならエフェクチュエーションへの理解を深めよう

エフェクチュエーションは、起業家を目指すなら理解しておきたい要素です。
成功した起業家の考え方や行動の中にある共通点を体系化したものなので、これから起業を考えている方にとっても有益です。
起業家になっても全員が成功できるわけではありませんが、エフェクチュエーションを知っているかどうかで大きな差が生まれます。

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(編集:創業手帳編集部)

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