WE UP 伊藤 宏志|東京都港区の頭で機能を考えるな!仲間内の「イケてる」よりユーザーの現実。日本のDXここがポイント

創業手帳人気インタビュー

メルカリから起業。日本全体の生産性の底上げに挑む。自社プロダクト開発・DXコンサルに挑む若き起業家

ソフトウェア・プロダクトの開発に挑む方であれば、「クールなものを作りたい」と誰しもが思うことでしょう。しかし、本当の意味で「クール」なソフトウェア・プロダクトとは何でしょう。

メルカリ出身の伊藤宏志氏は、「デジタル格差を是正し、人の可能性を底上げする」ことをテーマに掲げ、株式会社WE UPを2021年に創業されたばかりの若き起業家です。メルカリ在籍時には「メルカリNOW」や「メルペイ」などのサービス開発に携わされました。

そんな伊藤氏に、メルカリで学んできたことや、現在の日本のDXに足りない視点、次の5年のDXはどのように展開されていくのかなどについて、創業手帳の大久保が聞きました。

伊藤 宏志(いとう ひろし)株式会社WE UP 代表取締役 / CEO
熊本県出身。高専、筑波大学で電気電子、情報工学を学び、2018年株式会社メルカリに新卒入社。子会社ソウゾウでの新規事業、メルカリNOWの立ち上げやカスタマーサービスの改善を担当し、金融事業メルペイで不正検知システム、与信事業のプロダクトマネージャーを務める。2021年、株式会社WE UPを創業。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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WE UPの事業概要

大久保:御社はどのような事業を展開されているのでしょうか。

伊藤:要件定義から開発まで一気通貫で請け負う受託開発・DXコンサルティング事業と、プロダクト運営事業の2本の柱で展開しています。

プロダクトについては、ガイドサポートプラットフォーム「WE UP」というプロダクトをリリースしたばかりです。

大久保:なるほど。それでは、現状は受託開発がメイン、といった感じですかね。

伊藤:そうですね。基本的には2021年4月に起業した当初から受託開発をメインでやってきて、同時並行でガイドサポートプラットフォームの「WE UP」の開発を進めてきました。ようやくプロダクトとしてベータ版を3/14に正式リリースできて、ホッとしているところです。

生き生きと働く社員に感化されメルカリ入社

大久保:伊藤さんは高専、筑波大学ご出身と伺いましたが、もともとプログラミングを勉強されていたのでしょうか。

伊藤:勉強はしていましたが、アプリ開発が専門というわけではありませんでした。メルカリのインターンシップに参加することになって、本格的に勉強を始めたんです。

大久保:最初はインターンに行かれたんですね。インターンに参加しようと思われたきっかけは何だったのでしょうか。

伊藤:大学3年生だった当時の私は、個人でECサイト運営をしていました。アメリカから商品を安く仕入れて販売するモデルです。そのECサイトのマーケティングツールとして、メルカリを活用していました。

当時はそのビジネスに熱中していたこともあり、あまり積極的に就職活動をしていませんでした。

そんな風に悩んでいた折に、ふと「スマートニュース」のアプリを見たらメルカリのインターンシップの募集についての情報が目に入りました。内容は、アメリカ現地に50人の日本人学生を送り出して、「メルカリをアメリカで普及させるにはどうすればいいか」というテーマで現地調査をする、というもの。それを見て、「面白そうだな」と思い、とりあえずインターンシップに応募しました。

大久保:面白そうなインターンですね。

伊藤:はい。ランダムでアメリカの50州に学生が派遣されたのですが、私はアリゾナ州でしたね。アリゾナ州の田舎でどうすればメルカリを普及させられるのか、現地の学生たちにヒアリングするなどして調査しました。

メルカリのインターンシップに参加して社員の方々とお話したときに、社員の方々が「日本初の世界的なインターネットサービスを作りたいんだ」とすごく生き生きと話されていたことに感動したんです。高専時代に他の企業のインターンシップにも参加したのですが、その時に接した社員さんたちとあまりに対照的だったので、余計に。

その経験を経て、「こうやって自分の思いを持ちながら生き生きと働いている人たちのなかで、自分も一緒に働いてみたい」と思い、メルカリへの入社を決めました。

当時のメルカリは上場前でチャレンジを求めて入社してくる方がたくさんいらしたので、多様なバックグラウンドを持った方々の経験を知れることもまた、魅力でしたね。

起業するのが「当たり前」な環境

大久保:メルカリは卒業生が起業されることが多い会社ですが、伊藤さんの同期の方々はいかがですか。

伊藤:私の新卒同期が25名ほどいたんですがその中でも既に何人かが起業していますね。私が起業する前にも、すでに3名ほど起業していました。

大久保:すごいですね。本当に起業する方が多いんですね。

伊藤:そうですね。同期だけではなく、先輩や後輩にも起業する人は多いです。尊敬している先輩はたくさんいますが、自分で立ち上げた事業での学びや経験を世の中に発信されている方が多く、社会に対して自分の経験を還元したいという軸を持っている方が多い印象があります。

大久保:それだけ起業される方が身近に多いと、起業しやすいですか。

伊藤そういう面はあると思います。相談もしやすいですし、仲間集めもやりやすいですからね。

他にも副業で会社を持っている方もいて、「起業」することが当たり前な環境が、当時のメルカリにはありました。

メルカリで学んだこと

大久保:メルカリで働いてみて、どんな点がよかったですか。

伊藤:働いてみて驚いたのは、情報がオープンであることです。インターンとして働いていた当初から、経営会議での意思決定プロセスの情報にアクセスできました。これには衝撃を受けましたね。

あとは、働いている社員の方々がみんな自立している点にも感銘を受けました。みんなモチベーション高く「メルカリを日本初の世界的なプロダクトにする」という気概で働いていました。私の見た印象では、生計を立てるためだけに働いている、という人がいなかったんです。

大久保:社員みんなが自立して働けている組織は、理想的なあり方ですね。

伊藤:はい。気持ちよく働ける環境でした。

当時のメルカリは急拡大期にありました。多様なバックグラウンドを持つ人を急激に吸収しているのに、組織として壊れず、きちんとクオリティの高いものが作れている。その組織運営ノウハウからも学ぶところは大きかったです。

大久保:それは起業してからも役に立つものですね。

伊藤:そうですね。あとは、人事や経理など、バックオフィス業務についても知ることができました。そういう職種の方々も「会社をよりよくするために何をすればいいのか」と自立して考えて動いている姿勢からは学びが多かったですね。

地に足つけて受託開発からスタート

大久保:独立してからはどのように事業を展開されてきたのでしょうか。

伊藤:受託開発の業務を受注しつつ、その脇で自社プロダクトの開発も進めてきました。受託開発は私自身が担当し、プロダクト開発は外注のエンジニアの方々にお願いしています。

プロダクトはB to Bなので、受託開発をしながらプロダクトのターゲットとなる企業や自治体が業務で抱える悩みについても吸収してきました。

大久保:最初から資金調達してプロダクト開発に集中的に取り組む、という道もありましたよね。

伊藤:そうですね。でも私としては、最初は外部資本を入れずに自己資本でやっていきたかったんです。地に足つけて堅実に売り上げを立てられる会社を作りたい、という思いがあったので。

また、周囲の先輩たちが「プロダクトがリリースできるまではまだ資金調達しないほうがよかった」と言っているのを聞いてきた、というのもあります。

大久保:資本政策に失敗して後から大変なことになるスタートアップも多いですからね。賢い選択だと思います。

「港区の頭で機能を考えるな」

大久保:今、受託開発やプロダクト開発に取り組まれているなかで、メルカリで学ばれたことを生かされているのでしょうか。

伊藤:そうですね。一番役に立っているのは、「顧客の課題を解くものを作る、顧客に受け入れられないものを作らない」という思想です。

私が新卒で入社してすぐ、メルカリで創業してまもない頃から勤務されている女性のデザイナーに新サービスのデザインを持っていったら「こんなもの誰も使わん。港区の頭で機能を考えるな」と叱られたんです。

現に、メルカリの初期のデザインは「クール」なデザインというよりも、「ガチャガチャ」しているイメージになっていました。その女性デザイナー曰く「ユニクロのチラシのように作れ」という思想のもとで、あえてシンプルではない形で作られていたとのことでした。

私はこの「港区の頭で機能を考えるな」という言葉を常に胸に秘めて開発しています。

大久保:すごくキャッチーで、いい言葉ですね。

伊藤:はい。入社してすぐに言われた言葉ですが、今でもずっと覚えています。

私は熊本県阿蘇市の出身なんですが、地元に帰ると両親や身近な人たちに「パソコン教えて」、「スマホ教えて」なんて言われて、いろいろと機能の説明をすることがよくあります。

そういった状況を見るにつけ、私のなかで「港区の頭で機能を考えるな」という言葉が思い起こされますね。

私としては、そういったITに強くない人でもITの恩恵を享受できるような世の中を作っていきたいんです。「日本全体のITリテラシーを底上げしたい」という意味を込めて社名にもWE UPと名付けました。

システムの仕組みを知っていることが重要

大久保:メルカリ出身の起業家の方々には、やはりプログラミングのスキルを生かして起業されている方が多いのでしょうか。

伊藤:そうですね。そういう方は多いかもしれません。

ただ、先輩起業家の皆さんを見ていてもそうですが、「顧客の課題を見定め、具体的なシステム要件に落とし込む力」がすごいと思います。当の本人がコーディングそのものをめちゃくちゃできる、というわけではありません。

作るサービスがユーザーのどんな課題を解くものなのかを高い解像度で考える。その上で、多くの打てる手の中から最低限の機能でより多くの課題を解く機能を作る。そして、作るもの全体のマネジメントが出来る、といったイメージですね。

大久保:なるほど。起業するにあたって、プログラミングを勉強しておいたほうがいいのでしょうか。

伊藤:直接コードは書けなくても、ソフトウェアがどう動いているのか、裏の仕組みを理解しておくと役に立つはずです。

そうすれば、「ITサービスを開発しよう」となったときに、コーディングを担当するエンジニアと協力していいサービスを作れるのではないでしょうか。

ガイドサポートプラットフォームWE UP

大久保:独立されてから開発されてきたサービスが最近リリースされたと伺いました。サービスの概要について教えてください。

伊藤:今、企業や自治体で次々と社内向けのクラウドサービスが導入されてきています。しかし、to B向けのデジタルサービスのなかには使い手のことを考えられておらず、使いにくいサービスも少なくありません。

これは、作り手が「使いやすいだろう」と思って作ったものを、ユーザーが実際に使って「使いにくい」と感じても、作り手にフィードバックできない日本のITサービスベンダーを取り巻く環境に一因があると個人的には考えています。

そこで我々は、to B向けのデジタルサービスを企業や自治体の従業員の方々が簡単に使いこなせるような操作ガイドをノーコードで手軽に作れるガイドサポートプラットフォーム「WE UP」を開発しました。

ブラウザ上のソフトウェアの操作マニュアルを、画面のキャプチャやポップアップなどを入れて簡単にノーコードで作成できるツールです。多くの自治体や企業様に使ってもらうことを目指しています。

大久保:SaaSなど他社製のシステムに乗っかってガイドを作成できる、ということでしょうか。

伊藤:そうです。ブラウザ上で動くソフトウェアであればどんなシステムでも対応できます。

次の5年のDXは「点を線にする」がテーマ

大久保:これからのDXはどのように進んでいくとお考えですか。

伊藤:将来的には、人間のやらなくていいことは一通り自動化されるところまでいくと思います。

例えば、入社時の資料展開や請求書の作成・受取など、手続き的なものは全自動で処理されるようなイメージです。そういう未来があと3年以内に必ずやってくる、と私は見ています。

今は会計や人事など、各業務別にSaaSやクラウドサービスが導入されていっています。つまり、業務の「点」ごとにソフトウェアが導入されているわけですね。

これからの数年間は、これらの「点」を「線」にしていくフェーズです。我々が提供するガイドサポートプラットフォーム「WE UP」も、まさに「点」である各種ソフトウェアを一気通貫で使いやすくして「線」にするためのもので、これからの日本全体におけるDXをよりスピーディーなものにするために、一翼を担えるものと考えています。

大久保:すべての業務系ソフトウェアが統合されていくわけですね。

伊藤:そうです。そもそも、業務ごとに使うソフトウェアが違うのは不便じゃないですか。だから最終的にはこれらを「線」にすることでより便利にしなければいけない。

「WE UP」を使ってもらうことで我々にデータが貯まり、業務の無駄がより鮮明に炙り出されていくはずです。そのデータを利用して、さらにDXを進められる。

大久保:作り手と使い手のフィードバックループが回り出すわけですね。

伊藤:そうです。そのようになっていくことで、人間は人間にしかできないクリエイティブな業務により集中できるようになっていくはずです。

大久保:本日はDXコンサルティング事業などを手がけるWE UPの伊藤さんから、これからのDXの動向など貴重なお話をお伺いできました。

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(取材協力: 株式会社WE UP 代表取締役 / CEO 伊藤 宏志
(編集: 創業手帳編集部)

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