DONUTS 假屋 勝|経営者必見!困難な状況を乗り越えるための「假屋流マインドセット」とは?

創業手帳
※このインタビュー内容は2023年08月に行われた取材時点のものです。

叩き上げの假屋さんはなぜいつも上機嫌なのか?その根底にあるものに迫る

現在、株式会社DONUTSの執行役員経営企画室長として事業拡大や若手人材の育成に邁進されている假屋さん。そのキャリアは決して順風満帆ではなく、前職では創業メンバーとして新たな会社にジョインするも約800億円あった売上のほとんどを事業売却で失い、新規事業にも失敗、上場廃止猶予も受けました。しかし、假屋さんが代表取締役に就任し、5年間再建に尽力。見事、V字回復を果たします。

これほどまでに困難な状況が続いているにもかかわらず、常に目の前のことに全力で立ち向かうことで、幾度となく困難を乗り越えてきた根底には、假屋さん独自のマインドセットがありました。

そこで今回の記事では、假屋さんがDONUTSに入社するまでの経緯や、困難を乗り越えた際に意識したマインドセットについて、創業手帳の大久保が聞きました。

假屋 勝(かりや まさる)
株式会社DONUTS 執行役員経営企画室長

大手営業会社に新卒入社し、営業マンとして奮闘。その後、先輩や仲間内で会社を創業、2年半で上場を果たし、時価総額3,000億企業まで成長させました。しかし、その後経営危機に陥り、そのタイミングで代表取締役に就任しました。社長として5年間再建に取り組み、後進に道を譲るため社長交代し、自分自身のさらなる成長の為に、新たな環境に踏み出す決意で転職をいたしました。

2020年に人材紹介サービス経由で、60社程の選考を受ける中で株式会社DONUTSに出会い、現在は執行役員経営企画室長として、グループ全体の事業拡大と新卒を始めとした若手人材の育成を担っています。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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新卒で大手の営業会社に入社

大久保:これまでのご経歴を教えて下さい。

假屋:私のキャリアの最初は、新卒入社した大手の営業会社でした。

当時扱っていた商材としては、最初にコピー機とFAX機、次にビジネスフォン、携帯電話という流れで、ここで営業の基本を徹底的に叩き込まれました。

大久保:大手企業で営業職をご経験されて、営業で一番大事にしていたことは何ですか?

假屋:会社としては「数」を大事にする方針で、1日ごとに60〜80社に提案することを目標に、ひたすら電話をかけていました。このやり方で、ひたすら数字を追いかける手法でした。

会社としては数を重視していたのですが、私としては「質」を掛け合わせる重要性を感じ、自分なりに工夫をしていました。

大久保:具体的にはどのような工夫でしょうか?

假屋誠実以上に強いものはない、ということが一番に言えます。

無理に数字だけ積み上げても、結果的に誰もハッピーにはなりません。

上手くいかなかった時は、それを認めることも大事です。

物を売る仕事も、単に売れば良いわけでもありません。

考えて売ることが必要で、そうすると「質」も大事になってきます。

自分の限界を知るためにも若い時には「背伸び」すべき

大久保:営業における質とは何でしょうか?

假屋:過大に伝えたり、嘘をついたりしないことです。本音で話すことが大事です。

大久保:世の中が成熟して「質」を求めている時代になってきた気もしています。

假屋:おっしゃる通りだと思います。

もちろん、スピード重視で市場を押さえる戦法も大事です。

ですが、今ではインターネットも普及して、情報伝達もされていきます。

嘘や誤魔化しが通じない時代になっていますよね。

大久保:大変な時代だったとは思いますが、得たものを挙げるとすれば、何でしょうか?

假屋若いうちに思い切り「背伸び」をしておいて良かったです。

これにより、大人になってから「適正な背伸び」がわかったように感じます。

あとは、自立精神が大事で「目標達成のためには誰も助けてくれない」という気持ちで、全てを自己責任で考えることも重要だと学びました。

2社の会社員経験を経て「フォーサイド」の創業メンバーとして参画

大久保:大手企業で営業職をした直後に起業したのでしょうか?

假屋:勤めていた営業会社の常務が独立して、女性の健康情報サービス「LunaLuna(ルナルナ)」で有名なエムティーアイという会社を立ち上げました。

まずはエムティーアイに後に起業する先輩と転職しました。その後、その先輩と3名ほどで「フォーサイド」という会社を2000年に立ち上げました。

フォーサイドに関しては、先輩が100%資本を出し創業社長になり、私を含めた3名ほどが創業メンバーだったのですが、フォーサイドは、すぐに上場をすることを前提として会社を立ち上げたので、創業直後に外部の取締役の方が何名か入られました。そこで、私は課長というポジションで現場の営業などの事業推進を担当しました。

しばらくして、売上800億円ほどに成長しましたが、事業のほとんどを売却して、次の一手として選んだのが「電子書籍」のマーケットへの進出です。

しかし、なかなか収益化できず経営危機に陥り、2014年ごろに上場廃止寸前となりました。そのタイミングで私が代表取締役に就任し、社長として5年間再建に取り組みました。

困った時、苦しい時こそ目の前のことに全力で取り組む

大久保:本当にきつい時期だったと思いますが、どのように乗り越えられましたか?

假屋:悩んでいる場合ではなかったので、全力全開でがんばるだけでした。

売り上げや従業員のことなど、とにかく目先のことでできることをやっていました。

がむしゃらにやっていたこともあり、仕事が楽しかったです。

大久保:不安はありませんでしたか?

假屋会社としては無借金でお金もある程度持っていたため、会社が潰れる状況ではありませんでした。

そのため、今でも講演会の時に話していますが「困った時、苦しい時は全力全開で働き続ける」という考え方を大事にしています。

結果として、会社としては黒字化して、上場廃止猶予も取り消しになりました。

キャッシュフローも改善して、決算書へのゴーイング・コンサーン(※1)の注記を取り除くこともできました。

大久保:このタイミングで社長も変わられたということですが、どういった経緯なのでしょうか?

假屋フェーズごとに求められる社長の役割は違うと思っています。

そのため、一番の理由としては、事業の柱を着実に作っていくことが必要だったため、そのようなフェーズに適した次世代の社長に交代するべきだと考えました。

大久保:社長のタイプによっても、向き不向きがありますよね。

假屋野球のリリーフと同じ考え方ですよね、その時のシチュエーションに合わせて誰が適正化を決める感じです。

※1:ゴーイング・コンサーン・・・金融用語で会社が将来にわたって事業継続していくとの前提のこと

フォーサイドのV字回復を見届けた後に「DONUTS」入社

大久保:そこから転職されたんですよね?

假屋:コネや紹介ではなく、通常のルートで転職サイトに登録して、2020年4月DONUTSに入社しました。

大久保:入ってみてどうでしたか?

假屋:とにかく人が良いです。またそれだけではなく、すごい人が集まっています。

大久保:DONUTSの歴史についても少し教えて下さい。

假屋事業化できることを、積極的に実現するべく突き進んできていますね。

まず、ゲームを作るために、受託開発でお金を集めました。

借入もせず、外部の株主も入っていないため、自分たちの稼いだお金でゲームを作るというスタートでした。

そこからエンジニアさんの勤怠管理を仕組み化し、サービスとしてローンチしたら、それも売れました。

このように、1つのサービスから横展開していくような形で、成長している会社です。

大久保:堅実に前に進んでいくスタイルの会社なんですね。

假屋:そうですね。現在は、ホールディングスのような形態にもなっており、グループ内にキャッシュを生める事業があった方が良いという考え方もあり、いくつか子会社も構成しています。

M&Aは今ある事業を拡大するために推進

大久保:M&Aに関して、単純に事業を増やせば良いというわけではないと思いますが、気をつけている点を教えてください。

假屋:売り上げをスケールさせるために、事業を増やしていく考えではありません。

今ある事業を伸ばすためにM&Aを推進しています。

今年の1月に、ライブ配信プラットフォーム「OPENREC」の事業譲渡を受けて、グループ化しました。理由としては、当社でeスポーツチーム「VARREL」を運営しており、シナジーを求めるためです。

また、現在はジョブカン会計というサービスを提供していますが、それまでジョブカンシリーズは、「勤怠管理」、「ワークフロー」、「経費精算」、「採用管理」、「労務HR」、「給与計算」、「BPO」の7サービスで、会計機能はありませんでした。

そこで、会計ソフトを作っている会社さんを、事業譲渡をしていただく機会があり、ジョブカン会計のスタートとなりました。

大久保:相乗効果を生むことが狙いなんですね。

假屋:はい。もしくは新規で別事業の立ち上げを検討している時に、M&Aをして始めることも検討しています。

DONUTSでの「会議中は誰が何を言っても許される文化」がある

大久保:今までに経験した企業と比較して、DONUTSに入られて感じたことを教えてください。

假屋思ったことを、何も気にせず発言できる会社だと思います。

これまでのやり方にこだわらなくても良いですし、DONUTS流というものもありません。逆に、自分流を出しても、反発を受けることもありません。

1つの例として、当社には「会議室では何を言っても良い」というルールがあります。逆に発言しない人は、参加している意味がないので、会議に出られなくなるという文化があります。

社長に対しても、これまでの経験などに囚われず発言し合うことで、お互いに思いを改めることも多々あります。

オーナー社長になると、ワンマン的なスタイルになる会社も少なくないと思いますが、西村はとても腰が低く、周りの意見よく聞き、むしろ積極的に取り入れる姿勢です。

これが採用の数にも現れていて、様々な経験をしてきた頼もしい人材がDONUTSに集まっています。

大久保:西村さんは、メディアに積極的に出ているイメージはありませんね。

假屋:そうですね、それより会社やプロダクトを前に出したいというスタイルだと思います。

自分のテンションで、人のテンションを下げるな

大久保:假屋さんの今後の展望、やりたいことなどがあれば教えていただけますか?

假屋55歳までに1兆円を手に入れて、マンハッタンに移住して、投資家になることです。

それはDONUTSの假屋として実現したいため、会社としての事業をもっと大きく、グローバルに展開していきたいと考えています。

大久保:なぜマンハッタンなのでしょうか?

假屋:働くなら1軍で、という想いがあります。日本だったら東京。世界に出るならマンハッタンで仕事をしたいなと思っています。

あの狭い空間に、すごい人たちが集まっている感じが、良いなと思っています。

大久保:最後に、起業家に伝えておきたいことをいただけますか?

假屋:まずは「全力全開でがんばることが大事」ということをお伝えしたいです。

もう1つ、私が社会人なりたての時から守っていることがあって「自分のテンションで、人のテンションを下げるな」ということです。

暗い人の周りには、人は集まって来ないですし、自分が暗いとチームが暗くなって、どんどんネガティブになって業績も下がってきます。

社長たるもの、いかにチームを明るくするかということを意識してほしいです。

大久保写真大久保の感想

創業手帳の大久保です。
假屋さんによくお会いしますが、いつも人を喜ばせるサービス精神が旺盛で、ハイテンションで元気です。印象ではいつもゴキゲンという感じです。

でも単に元気で上機嫌なだけでなく、その根底にあるお話を伺えました。事業は良いとき悪い時がありますが、そういう状況を乗り越えてきた根底にあるマインドを伺えました。

厳しい状況ほど空元気、上機嫌でいるからこそ人もチャンスも寄ってくるのでしょう。大きな夢を持って全力で走り続けている假屋さんの今後が楽しみですね!

▼ここがポイント
・営業は数×質 今は質がより大事な時代に
・社長も、立ち上げ、立て直し、安定期で必要な資質が違う
違うステージになったら自分をモデルチェンジするか進んで世代交代するか。
・上場をする必要すらない事業の仕方もある
・カラ元気でも良いので苦しいときほどトップは元気で明るく。
・大きな夢に向かって全力で走り続ける

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(取材協力: 株式会社DONUTS 執行役員経営企画室長 假屋 勝
(編集: 創業手帳編集部)



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