起業家が「破壊的イノベーション」を起こすために必要な3つの考え方【起業家のための経営学講座】

創業手帳

大企業に対抗するために押さえておきたい知識とは

(2018/02/19更新)

ベンチャー企業などの規模の小さい企業が大企業に対抗するためには、イノベーション(技術革新)を起こすことが重要です。ですが、「イノベーションなんてそんなに簡単に起こせない…。」と思っている人も多いかもしれません。
そんな方のために、今回は、大企業に対抗するためのイノベーション理論「破壊的イノベーション」をご紹介します。さらに、破壊的イノベーションを起こすために頭に入れておきたい3つの考え方も、あわせて解説します。

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破壊的イノベーションとは

破壊的イノベーションとは、米ハーバード・ビジネス・スクールのクレイントン・M・クリステンセン教授が提唱したイノベーションモデルで、「“メインの性能では従来の製品・サービスよりも劣るものの、新しい価値を創造できる製品・サービス”を提供することでイノベーションを起こすことができる」というものです。

例えば、「機能が限定されている代わりに価格が安い」といった一部の価値(機能・技術・性能など)に特化したものが、破壊的イノベーションを起こしやすいと言われています。

破壊的イノベーションと持続的イノベーション

破壊的イノベーションを解説する際に、よく「持続的イノベーション」という言葉が出てきます。

「持続的イノベーション」とは、「市場のリーダー的地位にいる企業が、顧客の要望に応え、製品・サービスの改良を継続していく」というイノベーションモデルですが、これを継続して顧客の要求する性能を超えてしまった場合、顧客にとってその製品・サービスはもう、さらなる改良の必要がないものになってしまう恐れがあります。つまり、それ以上に改良された製品・サービスが出ても、顧客にとってはあまり魅力的なものには映らなくなってしまうのです。

そのような時に、破壊的イノベーションによって進出した企業が現れると、シェアを奪われてしまうという現象が起きます。しかし、大企業はずっと持続的イノベーションだけでやってきましたから、自社の既存の製品・サービスを根本からくつがえす可能性がある「破壊的イノベーション」を行うことができません。持続的イノベーションを推進しているだけでは、いつかは破壊的イノベーションに対抗できないことがあるということです。

このことをクリステンセンは「イノベーションのジレンマ」と呼んでいます。

破壊的イノベーションの事例

フィルムカメラとデジタルカメラの関係は、破壊的イノベーションの事例としてよく挙げられます。

デジタルカメラは、フィルムカメラが主流だった時代に生まれましたが、当時は画質や操作性が悪く、見向きもされない存在でした。

しかし、デジタルカメラは現像が手軽で、写真の編集もフィルムで撮った写真よりも簡単にできる、という長所がありました。次第に「もしかしたら、デジタルカメラの画質・操作性が向上すれば、フィルムカメラは廃れてしまうのでは?」という考えが、写真業界に広まっていったそうです。

しかし、当時の写真業界の最大手「コダック社」は、デジタルカメラに注力することはできませんでした。デジタルカメラは出現したものの、依然としてフィルムカメラを利用する顧客のほうが圧倒的に多かったからです。

その顧客の要望に応えるために、コダック社はフィルムカメラに注力せざるを得ませんでした。
また、当時は「デジタルカメラが成長するかどうか」を予想することは困難で、そのような分野に投資することは、大企業としては難しい状況でした。

そして、デジタルカメラは、性能が向上するにつれて画質も良くなり、ついにはフィルムカメラに取って代わるようになりました。フィルムカメラの市場を破壊するに至ったのです。
この変化に対応することができなかったコダック社は、2012年に経営破綻を迎えてしまいました。

破壊的イノベーションは2通りに分かれる

破壊的イノベーションは、「ローエンド型破壊」と「新市場型破壊」の2パターンにわけることができます。

ローエンド型破壊

ローエンド型破壊とは、「従来の製品・サービスより劣るものの、安価に製品・サービス」を提供することで起きるイノベーションです。
その性能の低さも徐々に改良されることにより、最終的には大きなシェアを獲得するに至ります。

例えば、機内食などのサービス内容を廃止し、特定の路線に絞り込むことで超低価格を実現した「LCC(格安航空会社)」や、“家族で気軽に利用でき、わかりやすい価格で安心して食べられる”という新しい価値を提供した「回転寿司」が大きな市場を作ることができたのも、この「ローエンド型破壊」によるものです。

新市場型破壊

新市場型破壊とは、「従来の商品に備わっていなかった新たな価値」を提供することで起こるイノベーションです。新たな価値を提供することで、今まで製品・サービスを消費しなかった顧客に対してアプローチをします。

例えば、吸引力や使い勝手の良さを追求してきた掃除機の分野で、“勝手に掃除してくれる”という新たな価値を提供した「ルンバ」や、“リラックスしたまま、どんな体勢でもインターネットを見ることができる”という新たな価値を提供した「iPad」が大きな市場を持ったのも、「新市場型破壊」の成功事例ですね。

破壊的イノベーションを起こすための「3つのヒント」

では、破壊的イノベーションを起こすためには、具体的にどのような部分に着目すれば良いのでしょうか?今回は、そのポイントを3つ挙げてみました。

1.商品・サービスを今まで使われていなかった顧客層とその理由は何か?

破壊的イノベーションの中でも、新市場型破壊を起こすことができる市場を見つけるためには、「無消費」を探す方法が有効です。
「無消費」とは、なんらかの制約によって製品・サービスが使われていない状態のことで、「資力による制約」、「スキルによる制約」、「アクセスによる制約」、「時間による制約」の4つに分かれています。

資力による制約

欲しいけど高すぎて買えないという状況のこと。

スキルのよる制約

使いたい製品・サービスがあるのに、扱うためのスキルを持っていないため使えないという状況のこと。専門家の手助けが必要であるため、顧客にとって大きな壁が存在することになります。

アクセスによる制約

製品・サービスが、特定の場所・状況に閉じ込められているため、そこでしか使えない状況になっていることを指します。
ちなみに、アクセスによる制約を解消してシェアを拡大した一例として、ソニーのウォークマンが挙げられます。ウォークマンの登場により、ステレオを使って屋内で聴くことしかできなかった音楽が、いつでもどこでも聴けるようになりました。

時間による制約

その製品・サービスを消費することが面倒であったり、時間がかかり過ぎたりする状況のことです。

2.満足度がこれ以上向上しない顧客層はないか?

破壊的イノベーションは、既存の製品・サービスに顧客が過剰に満足してしまっている市場で起こります。つまり、その市場には、「今までと比べて劣った品質・サービスでも、安価であれば乗り換える」という顧客がいる可能性が高いと言えます。
この市場に安価な製品・サービスを投入できれば、将来的に大きなシェアを獲得するチャンスがあるでしょう。

3.既存の判断基準・評価基準の影響を受けないようにするには?

破壊的イノベーションは、先行きが不透明な市場に向けたものであるため、既存の顧客を視野に入れた判断だけでは、上手くいかない可能性があります。
そのため、独立した新たな組織で行えると、既存の判断基準の影響を受けずに破壊的イノベーションを進めることができる場合が多いのです。

例えば、ソニーは家庭用ゲーム機「プレイステーション」でゲーム業界に参入した際、ソニー社外に「ソニー・コンピュータエンタテインメント」という新しい組織を作りました。既存の判断基準の影響を受けずに事業を進めていった結果、シェアの獲得に成功しました。

まとめ

持続的イノベーションから抜け出しにくい大企業に対抗するために、破壊的イノベーションはとても有効な手段です。
前述した4つの制約や、製品・サービスの性能が顧客の要求を超えてしまっている市場を見つけ出すことで、破壊的イノベーションを起こせる可能性を探ることができます。そのためには、顧客がどのような立場におかれているのか寄り添いながら考えることが必要となるでしょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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