Natee 小島 領剣|「TikTokマーケティング」で個性と才能が生きる社会に挑戦

創業手帳
※このインタビュー内容は2022年07月に行われた取材時点のものです。

クリエイター共創型のTikTokマーケティングで個人の可能性を信じる。ユニークな生き方をする人が増える社会に


「TikTok」でマーケティング事業を展開しているのがNateeです。時代の流れを象徴するプラットフォーム「TikTok」で、クリエイターと広告コンテンツを製作しています。

代表取締役の小島氏に、学生時代の起業経験やNateeへの想い、TikTokマーケティングの詳細を聞きました。

小島 領剣
株式会社Natee 代表取締役
早稲田大学国際教養学部卒業後、2016年に株式会社ビズリーチ(現VISIONAL)に新卒入社し、新規事業のプロダクト開発にエンジニアとして携わる。ショートムービーの勃興と、個がメディアになり活躍する未来を強く信じ2018年に株式会社Nateeを創業。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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学生起業後に一度就職し、伸びる会社の空気感を知る


大久保:起業の経緯を教えてください。

小島:実は学生の時に一度起業しているのです。高校生向けのキュレーションメディアを運営していましたが、上手くいきませんでした。そこで、一度スキルや経験をしっかり身に付けようと、企業にエンジニアとして就職しています。それが新卒のキャリアですね。エンジニアとして、新規事業領域に参画していました。2年後に退職し、その半年後の2018年11月に、TikTokに特化したマーケティング事業のNateeを設立しています。

Nateeのミッションとして掲げているのは「人類をタレントに」です。学生起業のときも、個性と才能が生きる社会を作りたいと考えていました。今回も、ユニークな生き方をする人を増やしたいという想いを強く持っています。

最初に思いついたのはYouTuberでしたが、今からYouTubeに参入するより、次にくるプラットフォームで輝く才能を発掘していこうと考えました。そのプラットフォームがTikTokですね。TikTokで活動する人が、自身のユニークな生き方でお金を稼げるようにできればと、Nateeを立ち上げました。

大久保:キュレーションメディアは昔ブームでしたよね。上手くいかなかった原因はなんでしょうか。

小島:反省しているのは、くだらないプライドがあったことです。大人を頼れなかったですし、周りの仲間にも頼れませんでした。つらかったですね。上手くいかない原因もそこにあったと思っています。

大久保:学生起業もそうですし、起業したらどんどん人の力を借りるべきということですね。

小島:そうですね。自分で仕事をするスタンスから、周りの人と一緒に成し遂げるというスタンスに変える必要があります。学生時代の部活や受験では、個人のスキルが大切です。会社に入っても、基本的には個人のスキルで働いていくことが多いと思います。そこから、人と一緒にやっていく考え方に変えることが必要ですね。私も、今は意識が大きく変わっています。

大久保:学生起業のあと、一度エンジニアとして就職したのですよね。視野が広がったり、基礎的な力がついたりといった、スキルアップの手応えは感じましたか。

小島:私が入社した会社は、当時ちょうど成長期でした。経営陣の思想は会社のさまざまな部分に現れますから、伸びていく会社の空気感をリアルに味わえたのが良かったです。その空気感から、たくさんのことを感じ取ったり学んだりしましたね。

大久保:成長期の会社ならではの空気感というのはありますよね。毎日のようにその空気感に触れられたのは、貴重な経験ですね。

小島:カルチャーや意思決定など、どれも素晴らしかったですし、何よりユニークでした。大学では学べないことばかりでしたね。

TikTokマーケティングで個性と才能が活きる社会の創出に再度挑戦

大久保:成長期の会社で学んで再度チャレンジをされたわけですが、今のビジネスモデルについてもくわしく教えてください。

小島:TikTokで活躍する人をクリエイターと呼んでいますが、クリエイターと一緒に広告を作り、その広告を商品提供している会社に買ってもらうビジネスです。インフルエンサーマーケティングを、TikTokで行っているイメージを持ってもらうと、わかりやすいかもしれません。

大久保:きっかけや想いも教えてください。

小島学生起業した当時から、個性と才能が生きる社会を作りたいという想いがずっとあったんですね。今回も、個性的でユニークな人を増やしたい想いで始めました。また会社を辞めたあと自由な時間を過ごしたのですが、自由だった分、仕事をしたい欲求が湧き上がってきました。起業にネガティブなイメージもなかったので、働きたい欲求がそのままNatee設立という形に繋がったという認識です。

大久保:TikTokと YouTubeの違いはなんでしょう?

小島:YouTubeは検索が前提で、TikTokはAIを使ったレコメンドエンジン(ユーザーに適した商品やサービスが表示されるシステム)が特徴です。検索せずにユーザーに必要な動画が届くのがTikTokです。指の移動だけですべてが完結するサービスですね。ようやくAIを前提としたプロダクトが世界で生まれたと感動しました。ぼくのなかでパラダイムシフトがおこったのがTikTokです。

興味のあるものでさえ、検索する必要がないのです。動画を好んで見たり、「いいね」をしたりすれば、どんどん同じような動画が表示されるのですから。まさにAIのパーソナライゼーション(個人向けに最適化していること)のようなサービスですね。

大久保:レコメンドエンジンのほかに、TikTokの強みはなにがありますか。

小島:YouTubeやInstagramは、基本的にフォロワーを増やさなければいけません。特に最初のフォロワー1万人を増やすところがとても大変です。良質なコンテンツをずっとあげていかなければ、フォロワーは増えないでしょう。

TikTokの場合、1つ目の動画から百万回再生も可能です。動画が再生されて「いいね」がたくさんついたら、今度はもっと大勢に再生されます。1000人、1万人と段階を追って自動的に再生回数が伸びていく仕組みですね。ですからTikTokには、一発逆転のチャンスがあることになります。

クリエイターと広告を共創してクライアントの売上を伸ばしていく


大久保:TikTokのマーケティング事業で、具体的にはどのようなことをされているのですか。

小島::YouTubeのようなアドセンスの広告収入はTikTokにはありません。ですから、何百万回動画が再生されても、自力で収入を得るのは難しいのです。クリエイターのなかには、ファンに対しての熱量が大きく、魅力的な人がたくさんいます。

そのクリエイターと一緒に広告を作りませんか?と、クライアントに提案する形です。私たちはクライアントから見れば、きちんと商品の訴求が出来る提案をしてくれる会社だと思いますし、クリエイターからすると、案件を届けてくれる会社ですね。そんな立ち位置です。

大久保:テレビCMに比べても効果がありそうですね。

小島:まさにそのとおりです。テレビCMだと、最近は録画視聴が8割で、なおかつCMをスキップして録画を見ています。仮にCMを流していたとしても、大半の人がスマホを見ているのではないでしょうか。けれどTikTokを見ているときは、TikTok以外はスマホを見れません。全画面の強さはすごくあると思っています。実際の案件でも、本当に売上が伸びた例がいくつもあります。ユーザーの心に響いている感覚はかなりありますね。

大久保:コンテンツの内容もお手伝いされるのでしょうか。

小島:クリエイターに任せきりでは商品の訴求が難しくなりますから、内容のディレクションもしています。ただし押し付けてしまうと、クリエイターの良さがなくなってしまいます。クリエイターのテイストに合わせつつ、商品の訴求を実現するのはなかなか難しい作業ですね。創業期からこの事業をやっているからこそ、私達はノウハウを持っています。ノウハウが、クライアントにとってもクリエイターにとっても大きな価値になっていると思っています。

大久保:コンテンツの内容までディレクションするとなると、かなり人手が必要だと思います。

小島:私達は、クライアントに広告を提案するセールスと、受注後に納品をしていくディレクターの2職種で成り立っています。特徴的なのは、データベースの活用ですね。クリエイターのデータや手がけた案件のデータがたまっている状態です。データが活躍してくれています。

求められるのは生活感のある等身大の情報


大久保:TikTokはどのような人に向いているのでしょうか。

小島:TikTokというとダンスとか、インパクトのある動画をイメージされるかもしれませんが、実は生活感ある動画が重要だったりします。税理士の方が節税の話をしていたり、不動産会社が内見の様子を配信したりするケースもありますよ。創業するタイミングでも有効ですね。いろいろな職種の方がチャレンジできます。

ただ、動画に対しての馴染みは必要かもしれません。あまり気にせずに動画を投稿できる人が向いていると思います。

大久保:セットがある場所でしっかり撮るというより、ライトに撮ったほうが良さそうですね。

小島:家で撮るのもいいですね。後ろに置いてあるキャラクターのぬいぐるみとか、文脈と関係のない小物が意外に反応あったりします。あまりカチッとやらないのがおすすめです。

大久保:ユーザーは、加工されていない等身大の情報を求めているのですね。

小島:私達はコスメ系の案件を多く扱っていますが、Instagramのようなキラキラ感や、雑誌のような完成された憧れ訴求は意識していません。TikTokで求められているのはレビューとか、リアルな感想です。使ってみての感想や、ビフォーアフターがわかりやすいものですね。そういったコンテンツのほうが再生回数も多くなります。実際にコスメ商品が置いてある店舗で、TikTokの検索をする人もいます。

自分のスタイルに合ったマネジメントの重要性に気づく。「人に頼る」もできるように

大久保:起業してからこれまでで、特に大変だったことを教えてください。

小島:意思決定が鈍らないように、リーダーシップを取る人間は、ほかの人と仲良くなり過ぎない方がいいという記事を目にしたのです。尊敬する人の話でしたから、1年半くらい社員と距離を置きました。やってみたら、全然上手くいかずおどろきましたね。みんなそれぞれ違うのだとわかりました。

自分には、自分に合ったスタイルがあると気づいたのです。よくよく考えてみたら、私はさみしがりやですし、社員とコミュニケーションがないと逆にやりにくい性格でした。

今はすごく自然体で経営できています。パフォーマンスも良くなっていると感じていますね。自分の性格が会社のカラーになるので、合わないものに無理にスタイルを変えていくとマネジメントが難しくなると知りました。失敗というよりは学びですね

世の中に経営者はたくさんいますが、みんなそれぞれです。同じようにはできません。だからこそ経営者に合った会社が出来ていくのだと思います。

大久保:逆に楽しかったエピソードはなんですか。

小島:最初のころはTikTokがまだ知られていなかったので、案件を取ろうにも難しい時期がありました。そこで一緒に創業した友人のお母様に、主婦の傍らアルバイトとして働いてもらったのです。上場企業の経営者向けに手紙を書いてもらっていました。バイト代の1,000円にとても感動されましたね。手紙から案件が受注できたのもありますが、困ったら母親の手でも借りるという感覚が、なんだか楽しかったです。

今はテキストでされていることもいずれ動画になる。大きな変化を予測


大久保:時代の変化を象徴しているプラットフォームに参画する1人として、これから世の中がどのように変わっていくと思われますか。

小島:今は4Gから5Gと、どんどん通信規格の容量が大きくなっています。2006年にテキストのTwitterが誕生して、2010年に画像を投稿するInstagramが、そして2016年に動画メディアのTikTokがでてきています。通信規格の容量が大きくなって、みんながスムーズに見られるようになったからこそ、こういう変化が起こっているわけです。

これからも情報量の大きさに合わせてメディアは変わってきます。今はテキストでされていることが動画に代替されていくといった大きな変化が、さらに起こっていくと感じていますね。

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(編集:創業手帳編集部)

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(取材協力: 株式会社Natee 代表取締役 小島 領剣
(編集: 創業手帳編集部)



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