脱サラして飲食店経営を成功させる秘訣は?開店までのステップと失敗の原因も解説

飲食開業手帳

脱サラして飲食店を成功させるためには念入りな準備と計画が必要


飲食業は、開業率が高い一方で廃業も多い業種です。
飲食店は原価率の上昇やライバルとの競争によって廃業するケースも多く、継続するためには開業する前の入念な準備が欠かせません。

ここでは脱サラから開業までの行程や、成功させるためのコツを紹介しています。情報を集めて念入りに戦略を立ててください。

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脱サラして飲食店を経営するのは難しい?


飲食店は私たちの生活に身近な存在で、将来的に飲食店を経営したいと考える人は決して少なくありません。一般的に、飲食業は開業しやすく廃業しやすい業種です。

中小企業庁の『小規模企業白書(2022年版)』によると、2020年に開業した事業者のうち「宿泊業、飲食サービス業」は17%と一番高い割合を占めました。
2位が生活関連サービス業,娯楽業の7.6%と続きます。

飲食店の開業が多い一方で、廃業率は「宿泊業、飲食サービス業」で5.6%と高い数字です。
飲食店の廃業が多い理由は、開業率が高くて競争が激しいことが原因といわれています。
さらに、原材料費や人件費などの経費が高騰することによって原価率が上昇して、利益を出しにくくなっていることも大きな要因です。

そのため、これから飲食店を経営するのであれば、どのようにして倒産を避けるか、競争力を高めるため、利益率を上げるために何ができるかを考えておかなければいけません

脱サラからの飲食店経営を成功させる秘訣は?


脱サラして飲食店経営を始める場合、資金面が気になる人は多いでしょう。初期費用はできるだけ抑えて、開業してからの運転資金も準備しなければいけません。
また、初期費用を抑える以外にも飲食店経営を成功させる秘訣はあります。どういった秘訣があるのかまとめました。

ライバルが少ない業種や場所を選ぶ

飲食店は、どれだけの顧客を集めるかがポイントです。例えば、すでに人気がある定食屋の近くで定食屋を始めても集客は難しくなります。
出店エリアを決める際には、エリア内の飲食店はすべて確認しておくようにおすすめします。

開業する時には、そのエリアにある繁盛店とかぶらないタイプの飲食店を選ぶか、自分が提供したいメニューがかぶらないエリアを選ぶようにしてください。
業態が違ったとしても販売価格が同価格帯、もしくは同じランチ需要を狙った飲食店が競合になることもあります。
エリア内の飲食店の業態やメニュー、販売価格をチェックしておきましょう。

飲食業の経験を積み業界の知識をつけておく

脱サラ後に開業して失敗するケースとして多いのが、ノウハウや知識が足りないまま開業してうまくいかないケースです。
飲食店未経験からの開業は、調理や接客など開業してから初めて覚えることも多くなってしまい、飲食店経営まで手が回らないことがあるかもしれません。

アルバイトでもいいので開業前から飲食業の経験を積み、調理のスキルだけでなく、接客や発注業務など飲食店経営に関わる知識をつけておくことがおすすめです。
また、飲食店オーナーのように店舗運営をしている人に相談してアドバイスを受けることも飲食店経営に役立ちます。

脱サラをする目的と軸を明確にしておく

脱サラしてうまくいかない理由としてよくあるのが「想像とのギャップ」で、モチベーションを維持できないケースです。
脱サラする理由として「会社員に向いていない」、「自由に働きたい」といった理由が挙げられます。

しかし、これらの理由は会社を辞めることを目的としていて、飲食店を開業する理由にはなっていません。開業する理由が曖昧では、開業してからギャップに悩まされます。
脱サラをして何を始めたいのか、目的やビジネスの軸を明確にしておくようにしてください。

必要資金の金額と調達法を決めておく

飲食店経営の鍵を握っているのが資金計画です。
飲食店なら簡単と自分を過信して、お店やメニューにこだわりすぎて初期資金計画をしないままにスタートして失敗するケースは多くあります。
開業費用といっても業態や規模によって違いますが、目安は1,000万円といわれます。
大切なのは、初期費用だけでなく開業してからの運転資金まで考えておくことです。

また、開業して顧客から認知され、売上が安定するまでにある程度時間がかかります。
飲食店の中には、売上が安定するまでに運転資金が尽きてしまって倒産するケースが珍しくありません。

そして、食材費や人件費に加えて家賃や光熱費といったランニングコストが発生します。
あらかじめどれだけの資金が必要になるのか、資金が足りない時にどうやって調達するかも考えておくようにしてください。

開業資金は融資の活用も視野にいれるとよいでしょう。日本政策金融公庫の融資制度については2024年3月に変更が入り、以下の記事に詳しくまとめています。

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日本政策金融公庫の新創業融資制度が2024年3月で廃止に!今後の資金調達方法や審査に通過するコツを解説

脱サラして飲食店を開店するまでの手順8つ


脱サラからの失敗を防ぐためには、事前の事業計画が重要です。ここでは、飲食店を開業するまでの基本的な流れをまとめています。

1. 開業する業種・業態を選ぶ

飲食店開業にあたって、どういった業種、業態にするかを決めてください。店舗型にするのであれば、自分で土地や居抜き物件を探すことになります。

移動式のカフェやキッチンカーといった選択肢もあります。また、すでにブランドイメージがあるフランチャイズで開業することも可能です。

飲食店の経験を積むために多店舗で修業して店長を目指すなど、開業までの道のりはいろいろあります。
自分にどのようなこだわりがあるのか、活用できるスキルや準備期間、予算などの条件からどうやって開業するのが自分に合っているかを考えてください。

2. 事業計画の設定をする

事業計画は、経営の骨組みになる部分なので作成には時間をかけてください。商品のアイデアや、販売法、手順といった内容を決めていきます。
また、予算や資金計画も開業に向けたスケジュールも重要です。

開業日はいつでも問題ありませんが、あらかじめ余裕をもって設定しないと焦ってしまうことになります。
退職してすぐに開業しようと計画する人もいるかもしれません。
しかし、開業準備や経営の勉強、飲食店などでのアルバイトなど、準備期間にしかできないことも多くあります。
開業してからは長期休暇もなかなか取れないので、旅行や帰省などもこの期間にしておくのがおすすめです。
退職から1年以上経過してからの開業であれば、仕事もプライベートも余裕ができます。

3. 店のコンセプトを考える

飲食店を始める時には、店のコンセプトを考えてください。コンセプトを土台として、メニュー作成や内装の設計が行われます。
コンセプトは飲食店経営の核になる部分であり、コンセプトが明確であればターゲットや出店エリアも決めやすくなります。
コンセプトはトレンドに流されず、自分が好きなもの、好きなことを中心に据えてください。

もちろん、顧客目線で魅力的でなければ事業として続きません。
しかし、厳しい時にも続けられるように、自分が気に入っていることや好きであることのコンセプトを貫くことは重要です。

4. 物件や土地を探す

開業を決めたらすぐにでも物件探しをスタートしてください。出店するエリアや物件によって売上は大きく影響されます。
競合店舗はあるか、人目につくか、駅からの距離などを考慮して目星をつけてください。

また、開業する土地によって飲食店に求めることも変わります。
回転率を上げるのであれば路面店が有利ですが、客単価を上げたい、ゆったりと安らいでもらいたい場合には、大通りを離れているほうが適しています。
ターゲットとなる層が利用しやすいかどうかも考えてください。

5. 内装工事を行う

物件が決まったら、いよいよ内装の準備に進みます。施工業者を決めて内装のイメージを伝えてください。

デザインのイメージ図を作成して、コンセプトやメニュー、ターゲット層と合っているかを確認します。問題がなければ見積もりをとって、契約・着工に進みます。

ただし、営業許可の申請には保健所の立ち入り検査が必要です。
工事後に不備が出るとやり直しになってしまうので、工事がスタートする前に図面をもって保健所で事前相談してください。

6. メニューを決める

お店のメニュー開発は、ターゲットの好みや購買行動を意識しながら行います。周囲の競合店を調べて、人気のメニューや価格帯をチェックすると参考になります。
顧客がどのような場面で何を食べたいのか、競合店と差別化できるかを考えながらメニューを開発してください。

メニュー開発には、仕入れや原価率も考慮しなければいけません。実際に作ってみて、オペレーションや作業効率も考えておきます。

7. お店のスタッフや細かい備品の準備をする

飲食店は規模や客数によって、スタッフを雇用する必要があります。残念ながら飲食店は休みが少なく忙しいイメージがあり、人材確保が難しい業種です。
人手不足が慢性化すれば、少ないスタッフに負担が集中してそれが原因となり辞めてしまうこともあります。
工事やメニュー開発に時間をとられて人材集めをしていないと、人が集まらずにオープンできなくなってしまうので、余裕をもって募集してください。

また、並行してお店のカトラリーや食器、ペーパータオルといった備品、消耗品を準備します。
順調にオープンできるようにリストを作って、タスクを消化してください。

8. 開業に必要な届け出を行う

飲食店の開業には、各機関への届け出が必要です。主なものを以下でまとめました。
他にも従業員を雇用する場合には、労働基準監督署やハローワークでの手続きが必要です。
飲食店の形態や規模、従業員の有無によって必要な手続きが違うので確認してください。

・飲食店営業許可
保健所に事前相談した上で、申請書と図面、食品衛生責任者の資格証明書に申請料をお添えて提出する

・防火管理者選任届
店舗の収容人数が30人を超える場合には消防署に提出する

・火を使用する設備の設置届
厨房機器の電気、ガスの入力の合計が、キッチンひとつあたり350キロワット以上の時は消防署に設置届を提出する

・深夜酒類提供飲食店営業開始届出書
深夜12時以降に酒類を提供する時は警察署に提出する

・個人事業主の開業届
個人が事業を始める時に税務署に提出する。青色申告を選ぶ場合には、青色申告承認申請書も必要

【失敗例】脱サラから飲食店経営して失敗するケースは?


脱サラして飲食店経営を始めたものの、うまくいかずに撤退するケースはよく起こります。なぜ失敗したのか、事例で紹介します。

例1:集客や販促活動に力を入れなかったケース

失敗例として多いのが、集客や販促活動をしていなかったケースです。
おいしい料理や素晴らしい接客を用意しても、お店が認知されなければ意味がありません。

時代の変化によって、消費者の行動は変化しています。インターネットですぐに飲食店を検索できるようになり、来店前に口コミやお店の情報を調べる人も増えました。
調べることが当たり前になることで、HPやSNSでお店の情報を伝えていない飲食店は来店数が伸び悩みがちです。

例2:初期投資をしすぎてしまったケース

資金計画はどの事業でも重要です。
お店やメニューにこだわりすぎて初期投資にお金をかけすぎると、経営が軌道に乗る前に倒産してしまうことがあります。
開業する時には、初期投資に加えて運転資金も確保しなければいけません。顧客がつく前に倒産することがないように、資金計画は厳しめにしておくようにします。

例3:自分本位でこだわりがつよすぎたケース

せっかく自分で開業するのであれば、夢や憧れ、こだわりを店舗づくりに反映したいと思う方もいるでしょう。
理想とするお店の外観や自分がこだわっているメニュー、コンセプトなどがあることは悪いことではありません。
しかし、顧客優先の店づくりができていなければ失敗のリスクは高まります。

趣味ではなく利益を出そうとする以上は、妥協があっても経営を続けられるような店を目指してください。
自分目線のこだわりだけでなく、地域や客層に適したメニュー、お店の雰囲気づくりも大切です。

例4:店舗の立地が悪かったケース

料理がおいしくてお店の雰囲気が良くても顧客が定着しないケースは多々あります。
お店が提供するメニューやコンセプト、料理の価格帯がエリアに適していなければ集客は難航します。

例えば、駅から距離がある住宅街にバーや居酒屋を出店しても立ち寄るのが困難です。
立地と店のコンセプトには相性があるので、自分が開業したいと思っている飲食店にマッチしたエリアを選ぶようにしてください。

例5:知識や経験がないまま開業したケース

飲食店で働いたことがない場合には、飲食店経営の知識を勉強して、他の飲食店で経験を積むことをおすすめします。
飲食店業界についてよく調べずに勢いで開業すると、必要な書類や手続きをせずに罰則を受けたり、立ち入り検査で注意されたりするケースもあります。

飲食店で働いたことがあったとしても、経営するためには資金繰りや人材マネジメントの知識も必要です。
店の経営が危うくなってから勉強し始めても遅いケースもあるので、早めにスタートしてください。

例6:困った時に頼れる人がいなかったケース

飲食店を経営していれば、どうすればいいのかわからないことなど、迷って決められないようなことが必ずあります。
そのような時に相談できる人が周りにいないケースは失敗例としてよくあります。

会社員の時は、上司や同僚がいるのでイメージしにくいかもしれません。しかし、脱サラすることで相談相手がいなくなります。
頼れる人や相談相手は精神的に安定するためにも必要です。
飲食店のオーナーやコンサルタントなど相談できる相手を探しておくようおすすめします。

脱サラして飲食店経営を失敗させないために事前準備を進めよう!

脱サラして飲食店経営を続けていくのは簡単なことではありません。失敗しないためには、事前準備やスケジューリングを入念に行ってください。
飲食店経営で失敗しないためには、入念に事前準備するだけでなく、飲食店での経験を積んだり、コネクションを作ったりといった取組みも有効です。
できることからスタートし、脱サラから開業までの計画を立ててください。


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(編集:創業手帳編集部)

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