費用対効果とは。マーケティングには欠かせない大事な指標!
ビジネスにおいて重要な費用対効果とはどのようなものか、その重要性や使い方などについて解説します。
ビジネスにおいて、どれくらい費用をかけていくらの利益を得ることができるか、費用対効果を概算することは重要です。
特に、マーケティングにおいて重要視される要素で、経営方針や商品の開発・販売などを決める上で費用対効果は重要な指針となります。
費用対効果の重要性を理解し正しく計算することは、ビジネスを成功に導くポイントです。今回は、費用対効果について解説します。
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この記事の目次
費用対効果とはどのようなものか
費用対効果は、ビジネスを進めるにあたって必要不可欠な指針です。
費用対効果とは何なのかを知ることで、ビジネスに適切に生かすことができるでしょう。
費用対効果とは
費用対効果とは、商品の製造や販売、管理などにかけた費用に対し、効果がどれくらい出たのかを示す数値であり、利益額から費用を差し引くことで求めます。
英語ではbenefit by cost=B/Cと記され、日本ではコストパフォーマンスと呼ばれることもあります。
例えば、費用を極力抑えたのに対して売上げや顧客行動の結果が伸びていれば、費用対効果は良いということです。
事業方針決定において、いくつかの選択肢がある場合、費用対効果が比較対象になることがよくあります。
そのため、目標とする効果に対して費用をどれだけ抑えるかは、重点項目のひとつとなります。
企業として成果を見込む場合、費用をかけて商品を作り、価格に上乗せさせることを考えがちです。
しかし、消費者から見ると、安い価格で高品質な商品を手に入れたいと考えるものです。
このように両者の立場から費用対効果を考えたとき、商品の価格と品質の的確なバランスを取ることが大切です。
費用・効果とは何を指すのか
では、費用対効果の費用・効果とは具体的に何を指すのでしょう。
費用とはコスト全般を意味する
費用対効果で費用の対象となるのは、金額的なものはもちろん、事業にかけた労力や時間も含まれます。
これらをコストと考えたとき、すべてが費用対効果の費用として考慮されます。例えば以下のようなものです。
-
- 製造にかかる費用・時間
- 販売にかかる費用・時間
- 広告活動にかかる費用・時間
- 製造ラインや物流、販売システムなどの導入費用・時間
- 携わった人員の労力・労働時間
など
効果とは費用に対する利益を指す
費用対効果を英訳したBenefit By Costの中で、Benefitは利益や効果を指すものです。こちらも、必ずしも金額的なものを指すだけではなく、ユーザーのアクションなども含まれます。
費用対効果における効果とは、以下のようなものが考えられます。
-
- 商品の売上げによって出た利益
- 広告活動による集客数
- 自社サイトへのアクセス数
- ブランドイメージや信頼感の向上
- 営業活動における契約成立数
など
投資対効果との関係性
費用対効果を語る際に、合わせて投資対効果もよく用いられます。では、両者の関係性とはどのようなものなのか、みていきます。
かけたコストと効果が発現するまでの期間について
費用と投資とは、ビジネスにおいてとても近い位置にあります。いずれも、事業推進につぎ込むコストという点では共通しています。
双方の違いをあげるとすれば、費用は商品の売上げのように直近的な効果を出すためにかけるコスト、投資は長期的な事業運営や成長も含めた効果にかけるコストということです。
事業につぎ込んだコストの効果がすぐに出るか、長いスパンで見た成長の度合いを見るかで、費用と投資の性質が説明されることが多いです。
数値の利用目的の違い
費用対効果と投資対効果で、それぞれの目的に違いを見ることもできます。
例えば、新発売の商品をユーザーに周知させる広告活動にコストをかけると、その目的は直接的に該当の商品の売上げを狙ったもので、そのコストは費用と見ることができます。
一方、同じ広告活動でも会社や商品のイメージをアップさせることが目的であれば、その広告にかけたコストは事業の成長を見込んだ投資であるといえます。
その他、投資利益率(Return On Investment=ROI)と呼ばれる数値が費用対効果・投資対効果と似たものとして用いられることも多いです。
この場合、費用対効果・投資対効果が金額で表されるのに対し、ROIは費用・投資に対する効果を比率(%)で表します。
そのため、ROIではコストと効果のバランスをより正確に見ることができます。
費用対効果はなぜビジネスで重要なのか
ビジネス、特にマーケティングにおいて、費用対効果の数値は重要です。
以下では、ビジネスにおける費用対効果の重要性について解説します。
長期的なビジョンを見通しリスクを予測できる
商品の売上げのように直接的に得られる効果に対し、その費用が繰り返し長期的に使用されることを考えると、一定期間までの売上げや費用について予測を立てることが求められます。
過去の実績や市場相場をもとにして費用対効果を概算することで、将来的なビジョンを見通すことができ、利益が見込んだ事業計画を立てられます。
それと同時に、結果的に無駄な費用になってしまったというリスクの予測も立つことから、現時点の事業計画の問題点を見直し改善策を立てるきっかけにもなり得ます。
売上げ額の大小にかかわらずパフォーマンスの良し悪しを測れる
例えば、単価が高い商品と低い商品の売上げを見たとき、同数が売れてもその金額は大きく異なり、単純な比較はできません。
しかし、費用対効果を考えることにより、規模を問わずパフォーマンスの良し悪しを判断することが可能です。
売上額の規模だけではなく、かけた費用の規模でも同様のことが言えます。
費用を多くかけた商品と安価で作った商品を比較したときにも、費用対効果を見ればより効率的に売れた商品を見極められます。
費用と利益についての意識が高まる
商品開発の企画を考える時、そこに携わる開発者や製造者などの従業員に対しても、費用対効果の概念を周知させることが大切です。
従業員間で、費用と利益のバランスについて考える意識が高まれば、おのずと費用対効果の良い商品作りに向かって進めるでしょう。
費用対効果が重要視されるようになった理由とは
ビジネスの中で、マーケティングに目を向けた時、近年ではコンサルティングやマーケティングツールが豊富になっています。
一方で、それを十分に生かしきれず、効果を出すまでに複雑なプロセスを経なければならないケースが見られます。
これでは、マーケティングに注力しすぎて、意思決定までに時間がかかってしまうでしょう。
しかし、これでは利益を上げる作業として本末転倒であり、マーケティングで利益をスピーディーかつ効率的に得られなければ意味がありません。
そこで、費用対効果の概念が注目されるようになりました。これを取り入れることで、マーケティングをより効果的に生かせる施策を立てることにつなげていった背景があります。
費用対効果を測る指標の計算方法
費用対効果は、単純に売上げから費用を差し引いた金額以外に、以下に解説する3つの指標の計算から確認することが可能です。
それぞれの数値の意味を理解し、適切に活用することでよい精度の高い分析を行えます。
以下では、費用対効果を分析する3つの計算方法を紹介します。
ROIは投資金額に対する利益の比率を求める
ROI(Return On Investment 投資利益率)は、事業への投資金額に対する利益の比率を計算するものです。ROIは投資対効果と似た位置で扱われることもあります。
計算式は、利益÷投資金額×100であり、出た数値は%表示です。この数値が100%以上であれば、利益率が大きく良好な費用対効果を得ていると判断できます。
ROASは広告費に対する利益を計算する
費用対効果の指標の中で、特に広告費に対する利益率を求めるものがROAS(Return On Advertising Spend)です。
これにより、かけた広告費1円あたりに対しどれくらいの利益を上げられたかを見ることができます。売上げ÷広告費×100で求め、%で示します。
ROASは、打ち出した広告がいかに効果的であったかを測れる指標です。
CPAはコンバージョン1件あたりに対するコストを算出する
もうひとつの指標・CPA(Cost Per Acquisition)は、Webサイトの構築にかけた費用に対するコンバージョン数(Webサイトに対するユーザーのアクション数)を見ます。
この場合のコンバージョンは、アクセス数や会員登録数、また商品購入へのアクションを含みます。
計算式は、Webサイト構築費÷コンバージョン数であり、数値は金額です。
この式により、コンバージョン1つあたりの費用を見ることができ、数値が低いほど費用対効果が高いことになります。
指標としての費用対効果の使い方を解説
上記で算出した指標を、実際にビジネスに生かす方法にはどのようなものがあるでしょう。3つの指標を算出するにあたっては、明確な目的が存在しています。
こちらでは、費用対効果の指標について、使い方を解説します。
費用対効果はこのように使われる
費用対効果の指標を使う時は、利益をより上げるためのあらゆる方法を検討する場合です。そのための意思決定にとって、費用対効果の指標は重要な要素です。
費用対効果の指標の使い方には、主に以下のようなものがあります。
-
- 商品価格・販売数の決定
- 製造原価の見直し
- 販売管理費・広告費の削減
- マーケティング費用や手法の改善
- 製造や販売システム、物流システムなどの検討
- 商品や企業規模に制限されない利益率の算出
など
上記のような目的で費用対効果の指標を用いれば、事業における部門ごとに具体的な目標を立てられるだけではなく、その目標に向かうための方向性を決めることが可能です。
費用対効果を上げるために行うべきことの例
こちらでは、広告を打ち出す時に考える費用対効果を例に取り、具体的な施策をあげていきます。
広告にかけている費用を抑える
費用対効果が思わしくない時、まずは広告にかける費用の見直しから始めます。無駄に出している広告がないか、広告費をかけすぎていないかを判断します。
例えば、リスティング広告を出す場合、設定したキーワードがユーザーのニーズと合致していれば上位に表示されますし、競合がいる場合は広告費をかけた会社がより有利となるでしょう。
そこで、広告を上位に表示されるようにするために、設定したキーワードの中であまり効果が得られていないものを除外する・絞り込んだキーワードにつぎ込む費用を調整するといった施策を採ります。
Webサイトのコンバージョンを向上させる
Webサイトを公開しているのであれば、より効果的にコンバージョンを上げる施策を打つのもひとつの方法です。
例えば、ユーザーが広告をクリックした先のランディングページについて、ユーザーが広告に対して抱いた期待を維持できるデザインやレイアウト、操作性を見直します。
また、会員登録や商品購入に至るまでの入力フォームの使い勝手を向上させることで、ユーザーが途中で諦めることなくコンバージョンに結果を残してくれやすいです。
費用対効果の改善策を具体的に立てる
上記のように、Webサイトのコンバージョンを上げるための施策にはいくつか考えられますが、目標とした効果を上げるためにどの施策を採るか、改善策を具体的に絞り込むことも重要となります。
様々な施策を試し、問題があればそれを検証した上で改善策を立てる作業を繰り返し、最適解を見つける方法です。
自社でのコストと外部委託のコストを比較する
Webサイトを構築するためには、効率的な運用について専門的な知識を持った人員と時間、費用が必要です。
これらすべてのコストを鑑みたとき、自社内での対応では思うような費用対効果を得られないと判断することもあります。
そこで、ユーザーの興味を引きコンバージョン数を上げる知識と技術に長けた、Webサイト制作会社に外部委託することも検討してみてください。
このとき、外部委託した際のコストと、質の高いWebサイトによる効果の向上を合わせて考えることは、まさに費用対効果のバランスを考慮することにつながります。
外部委託により、目標とする費用対効果を得られるかどうかを分析すれば、自社のリソースを割くリスクを避けることもできるかもしれません。
従業員の生産効率を考える
もちろん、商品を製造するのは社内の従業員です。そして、従業員たちが商品をどれくらいの効率で製造できるかも、費用対効果を検討する要素のひとつとなります。
従業員それぞれの生産効率が上がれば、できあがる商品の個数に対する人件費や製造時間を削減することができ、結果的に費用対効果が向上します。
そのためには、従業員のモチベーションや作業スピードなどのパフォーマンスを上げる施策を考えるのが有効です。
例えば、残業を減らして従業員をしっかり休ませることや、福利厚生制度を手厚くして従業員がリフレッシュできる環境を整えること、より使いやすい製造システムの導入などがあげられます。
従業員の立場に立った施策が、結果的に費用対効果を上げることにつながります。
業務のオートメーション化を検討する
事業におけるマーケティングには、どうしても手間や時間、費用をかけなければならないものです。
そのリソースに見合う結果が得られなければ、費用対効果は上がりません。
そこで、近年ではマーケティングをオートメーション化できるシステムが登場しています。
このマーケティングオートメーションでは、ターゲットとするユーザーおよび潜在的なユーザーの情報を自動的に洗い出してくれます。
それぞれの属性に応じた販促などのアプローチの方法やタイミングを自動で分析することが可能です。
そのため、狙ったユーザーごとにより的確で効率的なマーケティングが実現するだけではなく、そこに人員を割く必要もなくなります。
まとめ
ビジネスにおいて、マーケティングおよびそれをもとにした意思決定は、今後の業務の方向性を決める重要なポイントとなります。
その検討のために用いられる数値が、費用対効果です。この費用対効果を十分に考慮した上で事業の方向性や施策を決定しなければ、効率の良い利益の向上は見込めません。
健全な会社経営を行うためにも、費用対効果の計算方法や使い方を知って、それぞれの場面で適切な方針を決めていきましょう。
(編集:創業手帳編集部)