経営戦略とは?立案から実行までプロセスをまとめました

創業手帳

経営戦略を策定して事業に活かそう!


グローバル化の進展や消費者ニーズの多様化により、企業も変化を求められています。
市場シェアのトップ企業でも、市場や社会の変化によってどうなるかはわかりません。
新製品や新サービスのリリースがよりスピーディーになっていく中で、企業が長く存続し続けるためには経営戦略が必要です。

政治や経済などのマクロの動向から、顧客の変化や他社競合、自社の持つ経営資源を明確に意識し、経営戦略を策定しましょう。

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経営戦略とは?


社会情勢の変化や技術革新のスピードは、時代を進むごとに増していっています。
ビジネス環境も大きく変わる中で、経営目標を達成するためのシナリオや経営戦略の重要性は高まる一方です。
経営戦略とはそもそも何か、どうやって策定するのかを紹介します。

経営戦略の定義

経営戦略とは、その企業において経営目標を達成できるようにするための方策全般を指して使う言葉です。
英語では、「management strategy」といい、もともとは軍隊用語として生まれた言葉でした。

経営戦略は、企業全体の活動の方向性や指標、そのほかルールや組織づくりも指した言葉です。
民間企業に限らず、行政や非営利組織でも必要な考え方です。

経営計画や経営戦術との違いは?

日本語では、戦略と戦術を似た言葉として使うこともありますが、その意味は大きく違います。
戦略は英語で「Strategy」といい、経営目標を達成するための、ストーリーを戦略といいます。

一方で、戦術は英語で「Tactics」といい、その戦略を達成するために必要となる具体的なアクションを指す言葉です。

企業は戦略によってビジネスの方向性を示し、戦略に対応する戦術を立てて、戦略実現を目指します。

戦略と戦術は似た言葉ではありますが、意味合いは大きく違います。
例えば、戦術を現場に導入したとしても、そこに戦略がなければ個々の動きに統率がなく、ひとつの方向に進むことはできません。
進むべき道である戦略が必須です。

反対に、戦略だけあったとしても、具体的なアクションである戦術がなければ戦略のシナリオは実現不可能です。
戦略と戦術の両方が噛みあうことによって、組織が一丸となって目標に進むことができます。

経営理念とはどのように違う?

経営戦略、経営戦術という言葉とは別に、経営理念も企業でよく使われている言葉です。
経営理念は、戦略や戦術の背景にあるものです。
経営の基本となる企業文化や組織風土をいいます。

経営トップが何のために企業が存続しているのか、どういったビジョンがあるのかを明確にしたのが経営理念です。
経営理念は、経営戦略と経営戦術の裏付けとして欠かせません。

経営戦略のプロセスは?

経営戦略は、企業の方向性を定める重要なものです。
経営戦略のプロセスは、戦略の策定、実行、評価の順で進みます。

具体的なアクションとしては、分析からスタートします。
自社の能力と資源、さらに、自社にはない競合他社の能力や資産を洗い出してください。

企業が保有する経営資源は、人・物・資金に大別されます。
有限の資源を選択的に分配することは、経営戦略の要です。
内的要因を分析してから、景気や社会情勢などの外的要因を分析します。
経営戦略を策定するには、長期的な目標と短期的な目標の両方を考えてください。

経営戦略の実行には、予算や人材など資源の分配を行います。
命令系統やグループを組織して、必要となる権限や責任を割り当てましょう。

実行には、シナリオが遂行されているか確認する仕組みも必要です。
状況を報告、把握することによって適宜修正を加えながら進行します。

経営戦略は、必ず定期的に評価してください。
戦略がうまく実行されていない場合には、その原因を追求します。
また、市場の変化などで経営戦略自体の有効性も変わっていきます。
状況に応じて分析、経営戦略の修正や再策定も行いましょう。

経営戦略を策定する目的とは?


多くの企業が、独自の経営戦略を打ち出して、事業を実施しています。
利益が上がっていれば経営戦略を策定しなくても問題ないと考えるかもしれませんが、経営戦略は大切なものです。
どうして経営戦略を策定するのか、その理由を紹介します。

環境の変化に対応するため

経営戦略がなくても、企業が右肩上がりの成長をしていた時代もあります。
戦後の日本経済は、高度成長期で人口もどんどん増加していきました。
豊富な需要があったため経営戦略がなくても、物を作れば売れる時代です。

しかし、現代はかつての高度成長を期待した戦略は通用しません。
金融危機や社会情勢の変化、国際競争激化のため商品やサービスを提供しても売れるかどうかはわからないためです。
新興企業や異業種参入によって、自社の市場が脅かされるケースは多く、10年以上先を見据えて動かなければ、時代変化に取り残されてしまうリスクもあります。
経営戦略は、変化する経済環境に応じて将来を予測し、企業の将来を見据えるために重要な意味があります。

自社の強みや特性を理解するため

経営戦略に自社分析は欠かせません。
自社の強みや特性を理解していないと、経営において何を重要視すべきか、何に資源を割くべきかという優先順位があいまいになってしまいます。
自社の特性を有効に活用するためにも、経営戦略を策定して必要な戦術を選ばなければいけません。

将来にわたって安定的に事業を行うため

経営戦略は、将来にわたって安定的に事業を継続させるために必要です。
人口が減少し、経営環境は厳しくなることが予測されます。
企業が保有する施設や工場などの資産も老朽化が進むほか、提供しているサービスや商品が市場にマッチしなくなる場合もあります。

企業が安定的に事業を継続するためには、事業自体の意義・将来性・採算性を検討し続けていかなければいけません。
企業が存続し続けるための長期的な計画として、経営戦略は重要です。

経営戦略を立案するためのステップ


経営戦略の重要性はわかっていても、実際に立案するとなると頭を抱えることも珍しくありません。
やみくもに経営戦略を立てたとしても、有効性に乏しい場合もあります。
経営戦略を立てるためには、どうすれば良いのでしょうか。
スモールステップで立案できる経営戦略について紹介します。

1.内部環境の分析

経営戦略は、内部環境の分析からスタートします。
自社が保有する経営資源には、財務基盤・技術力・組織の風土・文化も含まれます。

内部環境の分析には多角的な視点が必要です。
市場で競争優位性が本当にあるのか、顧客にとってはどうか、事業撤退になるようなリスクはないかという客観的な事実を見極めなければいけません。
内部環境の分析は経営戦略を考える上で、前提となる部分でもあるので、時間をかけて行ってください。

2.外部環境の分析

外部環境の分析は、自社の業態や市場、競合他社の動向のほか、市場や技術革新など幅広いフィールドの分析です。
ここで特に注力しなければならないのが、技術革新やイノベーションといった潮流の見極めです。
異業種や新規の参入も増えているため、視野を広く持って分析してください。

3.フレームワークによる分析

経営戦略の立案には、フレームワークによる分析もよく使われています。
その中でも、自社の強みや弱み、外部環境を分析する方法として使われているのが、「SWOT(スウォット)分析」です。
「SWOT分析」とは、内部環境を強み(Strengths)・弱さ(Weaknesses)に、外部環境を機会(Opportunities)・脅威(Threats)の4つのカテゴリーで分析する方法です。

戦略の仮説を立ててから、仮説から考えられる構成要素を分類していきます。
要素をポジティブかネガティブか考えながら分類して、整理します。
「SWOT分析」は、競合他社との比較やリスクマネジメントにも有効な手段です。

さらに、自社が顧客に対して提供する付加価値を届けるまでの過程を整理する「バリュー・チェーン分析」もよく使われている方法です。
メーカーであれば、原材料の調達・商品の製造と加工・出荷配送・販売・アフターサービスの一連の流れを価値と考えます。
企業が付加価値を与えるためにどれだけの資源を配分すれば良いのか、削減できるコストがどこにあるのかを考えるためにも有効な方法です。

4.顧客分析

顧客分析は、企業の商品やサービスをどのような経緯で顧客が利用したのか、継続的に利用しているのかという動向の分析です。

人気がある商品やサービスがあったとしても、どうして売れているのかがわかっていないと事業の戦略は立てられません。
反対に、売れていない商品も何が原因で売れていないのかがわかれば、事業の方向を修正できます。

顧客分析は、マーケティング施策を評価するためにも有効です。
ダイレクトメールを送付した顧客の反応率や動向を知れば、ターゲットが適切に設定されているか、アプローチが有効かを判断できます。
結果として、より精度が高いプロモーションを実施できるようになるでしょう。

顧客分析は、現状の把握と実行・施策の評価・改善のサイクルを繰り返すことで、より精度が上がって効率的になります。

5.提供できる付加価値や課題を考える

自社が他社に対して優位性があるのか、顧客がどうして自社を選択したのかを考えることは、提供できる付加価値の掘り下げにもなります。

オリジナル商品や技術で差別化している場合でも、優位であり続けるとは限りません。
競合他社に真似されてしまったり、他社との価格競争になってしまったりするケースは多くの業界で起こります。
提供できる付加価値が本当にほかにはないのか、将来的な課題も含めて分析してください。
課題はできるだけ細かく挙げていくと解決策も立てやすくなります。

6.経営戦略を共有する

分析によって経営を改善するための戦略が固まったら、戦略を共有するステップに進みます。
企業の経営戦略、事業改善は経営トップだけで行うことではありません。

経営陣と従業員のコミュニケーションとしても、経営戦略を共有する場を設けてください。
経営戦略とそのために必要な戦術や従業員が求められることをまとめ、資料を作成するなどして必ず全社で共有するようにします。

7.経営戦略を実行する

経営戦略がどれだけ素晴らしいものでも、実行が伴わなければ意味がありません。
戦略は良かったものの、うまく実行できなくて失敗した例はたくさんあります。

経営戦略を実行するためには、そのための組織体制と資源配分が不可欠です。
まず、戦略の実行を主導するリーダーを登用します。
リーダーは時間をかけて人材育成する場合もありますが、社内にそのスキルを持つ従業員がいない場合には、社外から登用されることもあります。

次に、予算を組んで、人・物・資金を配置し、戦略実行のための仕組みを構築してください。
KPI(重要業績評価指標)の設定と、評価のためのモニタリング体制も用意します。
経営戦略を実行するためには、組織構造も改善が必要になるかもしれません。

経営戦略は、経営資源を各事業に分配する「企業戦略」に、事業ごとに戦略を策定する「事業戦略」、さらに、営業・マーケティング・人事のような機能組織ごとに考える「機能別戦略」のように細分化されることもあります。

経営戦略は、企業戦略・事業戦略・機能戦略の3つのレベルに細分化して、企業戦略を事業に落とし込み、機能戦略で具体化するとスムーズです。
どのような経営戦略が企業にとって必要なのか、どのような部署や組織で実行するための経営戦略であるかまで、戦略策定段階で考えておきましょう。

経営戦略を成功させるポイント


経営戦略を成功させるポイントとなるのは、実際に実行することとなる人材です。
人材は企業の生命線といえます。
経営戦略を理解して実行、周囲のマネジメントまでできるように育成していくことが、経営戦略を成功させるためのポイントでしょう。

加えて、イノベーションとソリューションは重要な要素です。
今まで発掘されてこなかった顧客のニーズや市場、企業価値の開拓も経営戦略を策定する目的のひとつです。

残念ながら、イノベーションだけでは顧客までつながりません。
価値の創造や顧客獲得につながらない、経営戦略に沿わないイノベーションでは企業の自己満足になってしまいます。
顧客の視点に立って課題の解決の道を探る視点を持つことが重要です。

企業にはそれまで培ってきたノウハウ・経験・資源があります。
それらを活用して、ソリューションとなる新しい価値を生み出すように意識してください。

まとめ

企業独自の経営戦略には、新しい市場開拓や世界規模での事業拡大を目指すグローバル戦略、競合他社と差別化された商品やサービスに注力する差別化戦略など、様々なものがあります。

経営戦略は、自社の強みや外部環境、顧客などを適切に分析して生まれます。
自社にとってどのような戦略がふさわしく実行しやすいかを考えましょう。
経営資源の効率的活用や競争激化への対応のためにも、経営戦略を活用してください。

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(編集:創業手帳編集部)

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