500 Startups Japanから「コーラル・キャピタル」へ 再出発したVCの2トップが「どんな起業家に投資していきたいか」を語る

創業手帳

看板を変えて再スタートしたコーラルキャピタルの代表2人にインタビューしました

(2019/05/17更新)

世界的ベンチャーキャピタル(VC)500 Startupsの、日本での代表・マネージングパートナーとして多くのスタートアップを支援してきた、ジェームズ・ライニー氏と澤山陽平氏が、このたび看板を「Coral Capital(コーラル・キャピタル)」に変えて新たなスタートを切りました。
2015年から約3年、500 Startupsで支援をしてきたノウハウの蓄積から、二人は今後どんな起業家に投資をしていきたいと考えているのでしょうか。最新のスタートアップ支援の事情について、創業手帳代表の大久保が話を聞きました。

James Riney(ジェームズ・ライニー)
Coral Capital創業パートナーCEO。JPモルガンを経て、日本でSTORYS.JPを運営するレジュプレス株式会社を創業。その後、株式会社DeNAの投資部門にて、アーリーステージのグローバル投資を担当。SmartHRのアーリーインベスターでもあり、約15億円のシリーズB資金調達ラウンドをリードし、現在、SmartHRの社外取締役も務める。2014年よりDeNAで東南アジアとシリコンバレーを中心にグローバル投資に従事。

澤山 陽平(さわやま ようへい)
Coral Capital 創業パートナー。2015年より500 Startups Japan マネージングパートナー。シードステージ企業へ40社以上に投資し、総額約100億円を運用。500以前は、野村證券にて IT セクターの未上場企業の調査/評価/支援業務に従事し多くのテックIPOを手がけた。さらに以前はJ.P. Morganの投資銀行部門でクロスボーダーM&Aのアドバイザリーなどに携わった。現在でも継続的にコーディングを行っており、おそらく国内で唯一ハッカソン優勝した実績を持つベンチャーキャピタリスト。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。

500での知見を活かして、VCでありながら起業家を支援するプラットフォームへ

大久保:新しいファンドでの投資先は、どういった領域を想定しているのでしょうか?

ジェームズ:まだ公開できる案件はないのですが、何件かすでに投資実行は決まっています。投資先の領域は絞らず、幅広く見ていますが、中でも保険・物流・ヘルスケアなどこれまで起業する人が少なかった“レガシー領域“で戦っている起業家への投資が多くなると思います

最近の日本のスタートアップ界隈のトレンドは、大手企業などに属してバリバリのキャリアを持っている人が、自身が所属している業界の課題に気づいて、それを解決するために起業するというケースが増えています。我々はそういう人たちを応援していきたいです。

大久保:お二人も、もともと大企業を経て事業を起こしていますよね。その頃から変わったと感じる点はありますか?

ジェームズ:僕が前職のJPモルガンを辞めて起業した時、周りは心配する声が多かったです。しかし、最近は時代が変わり、JPモルガンの元同僚やキャリアを持った人たちが、どんどんスタートアップを立ち上げたり、参入したりしていますね。

大久保:コーラル・キャピタルで、どんな新しいチャレンジをしていきたいですか?

ジェームズ:看板は変わりましたが、やることは基本的に変わりません。ただ、500 Startups Japanで3年間やってきて見つけた僕たちの強みや、日本の起業家が求めていることは把握できたので、アクセラレーター(短期の事業拡大を支援するサービス)のような支援ではなく、ファンドレイジング、採用、PR、コミュニティといった、会社ごとに違う悩みを支援できるようになりたいです。

澤山:支援の枠となるメニューは用意しているので、その中から必要な要素を起業家にカスタマイズして選んでもらうイメージでしょうか。
VCの数がどんどん増えていく中で、サービス内容も差別化・多様化していくと思います。その中で、僕たちが一番尖っているのは、VCでありながら起業家をサポートするプラットフォームを作ってきた、というところかなと思います。

大久保:確かに最近、VCの投資が急激に増えていますよね。投資家の立場から見て、出資元がどんどん増えている現状をどう捉えていますか?過当競争を意識したりすることはありますか?

ジェームズ:まず、VCの数が増えていることは、市場としていいことだと思います。そもそも日本のスタートアップ市場ってあまりにも規模が小さいので。出資元が増えることによって過当競争の問題が出る段階には、まだまだ至っていないと思います。

世界で一番大きいスタートアップの投資家は日本企業のソフトバンクなのに、国内でのスタートアップ投資がとても少ないのは皮肉ですよね。

だからこそ、僕たちのファンドが日本のスタートアップ支援市場のシェアをどれだけ取れるかじゃなくて、みんなで一緒に市場を拡大していくほうが重要です

ポイント

VC市場全体を拡大していくことが重要

日本でのM&Aの現状

大久保:ここで話題を変えて、日本でのM&Aについても聞きたいと思います。先日、コーラル・キャピタルのブログで「会社を売却するタイミング」についての記事を書いていましたよね。よく、「日本の起業家は売却を決意するタイミングが遅い」という話がありますが…。

ジェームズ:売却は戦略的に動かないと実現できません。しかし、日本の場合多く見受けられるのは、会社のキャッシュが1~2か月で尽きるという段階になって初めて、「売却を始めなければいけない」と相談されるパターンです。

資金を調達できるのか、売却するのか、同時戦略でどちらもやるのかなど、意識して計画的にエグジットを進める必要があります。

澤山:売却に関しては、準備に何か月必要なのかとか、どれくらいコストがかかるのかなど、M&Aについて情報を知らなすぎる起業家が多いですね。売却の話がまとまりそうなのに、直前でキャッシュアウトしてしまうとか。

大久保:確かに出資に比べると、M&Aって倍くらい時間がかかる感覚ですよね。M&Aのほうが2倍切羽詰まっているけれど、2倍時間がかかる、みたいな。

ジェームズ:まさにそうです。あとは、M&Aにあまり前向きでない人も多いので、後回しにしてしまうというのもあるのかもしれませんね。

大久保:IPO(上場)とM&Aでいうと、M&Aのほうが確率としては起こりやすいですよね。

ジェームズ:実際に順番として先に出てくるエグジットはやはりM&Aですが、ファンドのリターンのほとんどはIPOから来ます。ただ、IPOのような大きなリターンを得られるホームランは、7~10年と時間がかかるのが当たり前です。

大久保:あとは、創業者としては自分が立ち上げた事業を売却したくない、という人も多いですよね。投資家から客観的にみて売却のほうが良さそうだけど…という時、創業者にどんなアドバイスをしていますか?

ジェームズ:ウチの場合、意見は言いますが、最後の判断は経営者に委ねます。ただ、VCから資金を調達した時点で、いつかはIPOかM&Aでエグジットをするのが必然です。創業者が事業を進める上で売却したくない、という方針を持つことはいいのですが、だとしたら、VCからは資金を調達しないほうがいいと思います。

澤山:日本でもM&Aに対するイメージは少しずつ変わってきているとは思います。売却したからといって事業から完全に離れるのではなく、元の経営者が、売却後も引き続き運営に関わるというケースも増えてきました。

僕たちは出資を判断する時によく、「会社を作りたいんですか?事業を作りたいんですか?」と聞きます。事業を作りたいです、という人たちに出資するケースが多いんですが、そういう人たちは、経営についてより冷静に判断している感覚があります。追加で出資を受けるより、どこかの会社の傘下に入ったほうが事業として求める結果につながるとか。大企業をうまく利用して、自分たちの事業を伸ばしていこうとか。

このタイプの起業家は、M&Aをポジティブに進めていますね。

ポイント

最近では、M&Aを戦略的に活用するケースも増えている

コーラル・キャピタルが投資したい起業家の条件

大久保:投資のプロとして、良い起業家を見抜くチェックポイントみたいなものはありますか?

ジェームズ:我々のマニフェストにも書いているのですが、「ディープシンカー」つまり、どれだけ物事を深く考えられる人かどうかを大事にしています。我々が何を質問しても深く自分の考えを説明できるし、仮に「違うでしょ」と言われても、そこで心折れるのではなく、むしろ興奮して食い下がってくるような(笑)。

澤山:起業家との1時間くらいのミーティングの中で、根堀り葉掘りいろんな角度からの質問に対して、答えを考え尽くしているような人がやっぱりいるんですね。その業界にどっぷり浸かって、心から何かを変えたいと思っている人が。そういう人はやっぱり生き残りやすいですね。

大久保:これから事業を立ち上げる人が、もしコーラル・キャピタルからの出資を考えているとして。その人達にどんな経験を積んでから来てほしい、というポイントはありますか?

ジェームズ:個人的には、過去のキャリアだけでなく、そこで何をしたのかを見ます。どこで働くかは大事ですが、「そこでどういう成果を出すか」ということはもっと重要です。

何をやりたいかにもよりますが、いつか絶対起業したいというのであれば、今のキャリアで例えばモノを作れる人になるのか、モノを作れる人を採用できる人になるのかとか。目的に合うアクションを起こしてきたという結果を見せてほしいです

澤山︰なにかの領域で起業しようと考えている人が、起業の前に実際に現場に弟子入りして体験して業界の課題を見つけてきたとか。本やWebの知識だけじゃなく、生の感覚を持っているのかどうかは大事です。そういう行動ができる、もしくはそれに向けた準備をしている人がいいですね。

ポイント

大事なのは、キャリアだけではなく、目的に向かって何をしてきたか

大久保:経営していると、様々な問題が起きますよね。起業家の横にいる立場として、困難に悩む起業家にどういうアドバイスをすることが多いですか?

澤山僕はまず、同じ困難を経験した経営者に繋ぎますね。もちろん相談にも乗りますが、特に上手くいかない場合は、起業家どうしでないと分からない話も多いので。

ジェームズ:コーラル・キャピタルに来る人は、問題があったとしても、どう解決するか冷静に考えられる人が多いので、フランクに議論して、助けが必要であれば誰かにつないだりします。

ウチとしては起業家どうしのコミュニティづくりを意識して行なっているので、交流の場をたくさん設けるようにしています。気軽に連絡してもらえるような体制を整えています。

本当に優秀な人は、いろんなアドバイスを聞いて、「この人はこういう経験があったからこう考えている」って自分で分かるんです。このトピックはこの人に、といった感じで、投資家や起業家の人脈を使い倒す力がある。

澤山:どんなに優秀な、大成功した人のアドバイスも、結局は自分の状況とは違うので、あくまで参考情報の一つです。だから、自分に必要なアドバイスを自分で選べる力を持った人に投資していきたいですね

ジェームズ:僕らがしたアドバイスやフィードバックについて、「そうですか!分かりました」っていう人には投資したことがないかもしれません(笑)。

ポイント

優秀な起業家は、自分に合ったアドバイスを選べる

大久保:これまでたくさんの起業家を見る中で、少人数で立ち上げた企業が、大きくなっていく過程でうまくいく場合と、そうでない場合の違いみたいなものはあるのでしょうか?

ジェームズ:うまくいっている会社の条件は、まず「うまくスケールできている」ということ。社長がCEOというか、CRO(Chief Recruit Officer)になっているような組織ですね。代表が、創業時に自分でやっていた様々な仕事を、優秀な人を採用することで、どんどん任せていく力を持つ必要がありますね。

あとは、CCO(Chief Culture Officer)であることも大事です。人が増えると、会社のカルチャーを守るのが難しい。新しい人をリクルートした時、会社の文化を理解した上で仕事に取り組んでもらえるような。

大久保:投資先を決める上で、譲れない条件は何ですか?

澤山チームですね。創業者一人しかいない会社や、チームワークに不安を感じる会社は、投資を見送ります。

ジェームズ:もちろん、チームに不安を感じて見送った案件でしたが、その後チームをブラッシュアップして再び訪れた起業家に投資したというケースはあります。

チームワークは譲れないですね。

ポイント

一番大事なことは「良いチームワークを築けてるか」

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(取材協力:コーラル・キャピタル/James Riney・澤山 陽平
(編集:創業手帳編集部)

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