Brave group 野口圭登|事業立ち上げ、売却、エンジェル投資家を経て気づいた自分に合った戦い方
日本が世界で戦えるのはエンタメだ。伸びる会社にどんどん投資し、戦力統合へ
「80億の、心をうちぬけ」をミッションに、メタバース領域でさまざまな事業を展開している株式会社Brave group。
代表の野口さんは、学生起業や自社事業の売却、エンジェル投資家などの経歴を持ち、経営事情に深く精通しています。事業の立ち上げや再建を通じて気づいたのは「自分の強みを活かす戦い方」でした。
今回はそんな野口さんに、会社の立ち上げの経緯、今後の展望についてお伺いしました。
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株式会社Brave group 代表取締役CEO
2011年の在学中に株式会社Vapesを創業。
2016年に同社を株式会社ベネッセホールディングスへ事業譲渡、50社以上のスタートアップへのエンジェル投資、共同創業を経て、2020年に株式会社Brave group代表取締役に就任(現任)。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
受託会社と自社事業の立ち上げで感じた「限界」
大久保:まずは生い立ちから伺っていきたいと思います。小さい頃から起業に興味はおありだったのですか?
野口:実家が代々鮨屋を営んでおり、幼少期は自分が後継になるという話も上がっていました。
そんななか、中学受験で慶應の附属中学に合格し、周りがお金持ちだらけの環境でカルチャーショックを受けたんです。
学生起業をする先輩もいて、自然と自分も起業に興味を持つようになりました。
ちょうどリブセンスの村上さんが最年少で上場したことが話題になっていて「自分も最年少上場を目指して頑張りたい」と意気込んでいました。
大久保:そこから、どんな会社を立ち上げられたんですか?
野口:1社目は、ウェブマーケティングやコンサルティング事業を軸に、SEO対策やリスティング広告、ホームページやアプリ制作などを行っていました。
いわゆる受託会社なのですが、売り上げを一気に伸ばすためには自社事業が必要だと感じるようになったんです。
当時、価格.comやクックパッド、アットコスメなどのtoC向けサービスが注目されていたことから、ペット版のメディアを立ち上げました。
大久保:反応はいかがでしたか?
野口:全く知見がないなかサービスを立ち上げたので、とにかく何が当たるのかを考えながら試行錯誤を重ねました。
無事に売却できるほどまでにはサービスは成長しましたが、マーケット自体がそこまで大きくなく、天井が見えているような状態でした。
また、自分が想定していた企業規模や従業員数にも満たず、より大きな規模の会社を作っていくためには、まずは私が大企業の論理やルール、組織作りを学ぶ必要があるのではないかと考えるようになったんです。
当時の私は20歳で起業したため、就職活動はもちろん社員として企業に勤めた経験もゼロ。そのため一度事業を売却して、修行を積みながら自分の本当にやりたいことを見つめ直すことにしました。
投資先の再建でマイナス→プラスの苦労を知る
大久保:そこから、ベネッセホールディングスに事業譲渡されたんですね。ベネッセグループに入られて、どんなことを感じましたか?
野口:ベンチャー企業やスタートアップのスピード感を改めて実感したのと、大企業の全てがしっかりと仕組み化されてそれが機能している点には驚かされました。
また、福利厚生や働きやすさの重要性にも気付かされましたね。
これまで、休みなどないに等しい環境で働くことが当たり前になっていましたが、より大きな組織を作るためには、ワークライフバランスを保ちながら働ける環境も大切だと痛感しました。
大久保:大企業に入るからこそ、学べたこともあったのですね。
野口:それと同時に、どんな会社が、どんなマーケットが伸びるのかを徹底的に学ぶため、エンジェル投資家としての活動をスタートさせました。
とはいえ資金はそこまで多くなかったので、自分でアイデアを考えたり、社長をアサインしたり、スタートアップスタジオのような活動もしていましたね。
大久保:投資したうちの1社がBrave groupだったのですか?
野口:当時のBrave groupは、私がエンジェル投資や共同創業で携わった会社の中でも群を抜いて伸びており、応援していた会社でした。
元々社外CFOのような立ち位置で携わっていたのですが、主力のVTuber事業が大炎上して売り上げがゼロになってしまったんです。
このままだと会社も潰れてしまうので私が立て直すことになり、自分のポケットマネーや先輩方から借りたお金で、月8,000万円ほどの赤字をなんとかしていました。
いろんな方にお願いして8億円ほどを調達し、従業員のリストラや社名変更、リブランディングなどを経て、2020年の頭から再スタートを切りました。
0→1ではなく、マイナスを0に戻し、さらにプラスを目指すのはかなりチャレンジングで、軌道に乗るまでは本当に大変でした。
事業をつくるより、経営することが得意だと気づいた
大久保:事業を再建するなか、新たな気づきはありましたか?
野口:自分は事業をつくるよりも、起業家を支援することや、いわゆる社長業の方が得意だと気づきました。
実は、再建してから事業は一度もつくっていません。社内で事業をつくりたい人に投資する形で事業を大きくしてきました。
同じ方法で勝負をするよりも、自分の得意や強みを活かした方が良いと気づいたからなんです。
大久保:最近はマージ型のビジネスも増えてきていますよね。
野口:資金調達したお金で会社を買うなんて生意気だ、なぜ事業に使わないんだ、というご意見もあるかもしれませんが、自分はそうは思いません。
実際GENDAさんのような成功事例も増えてきていますし、今後はこのような手法がもっとスタンダードになると思っています。
大久保:複数企業を見ているなかで、伸びる会社の共通点はどんなところにあると感じますか?
野口:何より大切なのは土俵選びだと思います。
市場の大きさはもちろん、今後伸びる可能性があるかも重要です。
例えばアパレルのyutoriさんは、当時は競合の少なかったInstagramやTikTokでの販売に乗り出してアパレルD2C(インターネット上で顧客に直接自社の商品を売る形態)を確立させました。
Coincheckさんも仮想通貨の取引所というマーケットを作って事業を成功させています。
また、組織の強みや得意なことに振り切ることも大切ですね。
私の投資先の一つであるTWOSTONE&Sonsさんは、元々は受託開発からスタートした会社ですが、人材に特化しようとSESに振り切ってから急成長を遂げ、今では上場もしています。
リアルでないからこそ実現できる。日本エンタメの無限の可能性
大久保:VTuber事業の魅力は、ズバリ何だと思われますか?
野口:VTuber事業の魅力はいくつかありますが、まずタレントさん視点でいうと、リアルとは違う「もう一人の自分」として生きられると言う点でしょうか。バーチャル世界の芸能人のような存在になって夢を叶えている方々がたくさんいらっしゃいます。ビジネス視点でいうと、我々のような企業に所属することによるメリットをタレントさんたちに提供できる点ですかね。最近は視聴者の目が肥えていることもあり、コンテンツのクオリティが求められています。生配信や3Dライブには特殊機材が必要不可欠ですが、個人でやるには技術面でもコスト面でも限界がありますので。そこをサポートできている自負はあります。
大久保:リアルな世界と違い不祥事で降板、といったリスクも少なそうですよね。
野口:定期的にキャラクターのオーディションを行っていますが、毎回びっくりするほど多くの応募をいただくんですよね。
メタバース領域の広がりと、そこで表現したい人の多さなどを総合的に考慮しても、まだまだ伸びるマーケットだと感じています。
大久保:ITの元気がない今、VTuberや漫画、アニメなどのエンタメ業界が強い印象があります。
野口:IT企業のバブルも終息し始め、起業のネタも枯渇してきています。
そんな厳しい状況下で生き残るためには海外展開は欠かせない、そうなると日本文化や日本の強みが活きる土壌は、やっぱりエンタメなんですよね。
ソニーさんでさえ売り上げの6割はエンタメで、ウマ娘以降のサイバーエージェントさんの盛り上がりやサンリオさんの株価を見ても明らかです。
大久保:AIの台頭による可処分時間の増加も、エンタメの勢いを加速させていますよね。
野口:その分、ユーザーリテラシーも年々上がっていて、制作単価も高まり続けています。
VTuberのライブ配信も2Dから3D化が進み、より高いレベルで機材投資や技術力などが求められるようになりました。
これまで個人でやっていた方が会社に所属する事例も増えてきて、タレントさん確保という意味でも、まだまだ伸び代があると思いますね。
目指すはエンタメ界の「ソフトバンク」
大久保:今後の目標を教えてください。
野口:エンタメ企業の経営統合をどんどん行い、ソフトバンクさんような規模の会社を目指したいですね。
伸びている会社にどんどん投資して、時価総額1兆円クラスの会社を作るのが目標です。
もちろん将来的にはエンタメにこだわらず、伸びる業界や日本から世界に挑戦できるような業界が出てくれば、どんどん経営していきたいという想いがあります。
大久保:それでは最後に、読者の方に向けてメッセージをお願いします。
野口:起業や経営において大切なのは、いかに自分の強みを活かせるかだと思います。
私自身、受託開発事業での創業や自社事業の立ち上げ、エンジェル投資家などのさまざまな経験を経て、自分の力が一番発揮できる経営手法に出会えました。
自分の強みと、マーケットのパラダイムシフトが起こるタイミングがバッチリ合えば、事業も爆発的に成長すると思います。
Team Brave「勇気の経営」 野口圭登 ダイヤモンド社
日本発のコンテンツで世界的にも注目されている、「バーチャルYouTuber」(VTuber)。
同業界で積極的な海外展開を行い、独自路線を開拓しているBrave groupは、数年前に業界最大の炎上を起こし、倒産寸前の危機に瀕していた。当時の経営陣とVTuberとの軋轢がSNSで拡散され、一気に炎上。業界で最高記録となる月間動画再生数を誇ったブランドは一夜にして失墜した。100名いた社員は15名になり、資金はショート寸前。
そんなタイミングで代表取締役に就任した野口が、いかにどん底の状況からV字回復を果たしたのか。野口の情熱と仕事の流儀、そして何より大事にしている仲間づくりとチームビルディング。Brave groupの軌跡と、その根底にある野口のビジネス観に迫る一冊。
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(取材協力:
株式会社Brave group 代表取締役 野口圭登)
(編集: 創業手帳編集部)