現役学生がドローンの自動運行システムを開発 「ドローンポール」
「ビジコンNARA2019」審査委員長賞受賞!ドローンポールの革新的な構想に迫ります
(2019/03/05更新)
1月19日に奈良県で開催されたビジネスコンテスト「ビジコンNARA2019」で、大阪大学の現役学生が主体となって開発したドローンの自動運行システム「ドローンポール」がIoT部門で審査委員長賞を受賞しました。大手企業によるドローンの実用化に向けた取り組みが進む中、安全で長時間飛行が可能な離発着装置を武器に物流業界への実装を目指しています。
事業をプレゼンした阪大工学部現役学生の松井奈々さんに、事業のユニークポイントや、今後の展望などについて聞きました。
大阪大学工学部4年生。ドローンを用いたレスキューロボットコンテストJapan Innovation Challenge2016にてドローンの自動運転地図を作成。その後、ロボコンのメンバーの開発物ドローンポールを用いて、国内のドローンの展示会Japan Drone 2018やバルセロナで行われた国際展示会Smart City Expo Word Congress2018に出展。ドローンポールの財務や広報を担当。
高価なセンサーを使わずとも、自動で正確・安全な離着陸を可能に
松井:人間や建物より高いエリア、安全なエリアまで伸びるポールに、ドローンが結合します。そのあと、ポールを伝ってドローンが安全に降下し、着陸後、全自動の装置でバッテリーを交換します。そして再度、安全な高さまでポールをつたって上昇し、ポールとの結合を解除し、任務を再開するというものです。
ARマーカー(※1)や高精度GPS等で目標地点への着陸を誘導する既存技術では複雑な制御が必要ですが、ポールに結合するこの技術はシンプルな制御で運用するため、高価なセンサーを使わずとも、全自動着陸における位置合わせの困難さを解決することができます。障害物が多い地上付近でドローンが正確に離着陸できる上、バッテリー交換による、安全、正確な長時間飛行を実現するので、物流をはじめ、点検業務や災害救助現場などでの、ドローンサービスの実用化を促進すると考えています。
※1
ARマーカー:画像認識機能を使い、指定した位置にARコンテンツを表示させる技術
松井:大阪大学の学部生がJST(科学技術振興機構)が展開している、大学発新産業創出プログラムの”H28 START技術シーズ選抜育成プロジェクトIoT分野”というプロジェクトに採択され、頂いた予算で開発を行いました。その後も主要な開発メンバーで開発を続け、事業化の流れになった際に私もドローンポールに参加したという形です。
松井:需要・供給のニーズがともに大きい物流市場を考えています。急成長するEC(※2)市場の大きさや、高齢化による過疎地域への宅配需要はとても大きく、2016年には年間40億個の宅配物が輸送されています。また、既存のトラックなどの宅配サービスは限界を迎えており,倉庫から自宅まで、つまりお客様へ商品を届ける物流の最後の区間をドローンに置き換える必要があります。都内の宅配便送料と宅配物の個数を掛け合わせると約3.2兆円にもなり,この市場に大きなインパクトを与えることができると考えます。
※2
EC:インターネットを通じて決算や契約を行うこと
販売拡大の戦略としては、まず、国内企業のドローンの機体メーカーに試験販売を行い、ドローンポール組み込みシステムの共同開発を行うための提携を結びます。共同で各種サービスに向けた改良開発を行った後、ドローンを用いた物流サービス企業への国内普及、海外展開を行います。
事業は大学からドローンベンチャーへ
松井:ドローンポールは、モノづくりの好きな学生同士が声を掛け合い集まったチームです。私はエンジニアでなかったんですが、2016年に開発メンバーと一緒に参加したレスキューロボットコンテストで交流があったため、「新しく出来た開発物(ドローンポール)使って、一緒に何かやろう」と声をかけてもらって参加しました。ドローンポールのチームでは広報や財務として関わっています。
松井:展示会に参加した際に、ありがたいことにも取材して頂きました。テレビ報道は、バッテリーの大手企業マクセル様に声をかけて頂き、ドローンの国際展示会「Japan Drone 2018」に出展した際に報道して頂きました。
また、けいはんなリサーチコンプレックス様主催の、日本のスタートアップがバルセロナで行われる展示会「Smart City Expo World Congress2018」に出展するというプロジェクトに参加させて頂いたことから、海外への発信も叶いました。
松井:少子高齢化が進む日本で、今後労働力不足や過疎地域への宅配需要の高まりにドローンが大きく貢献する可能性を感じます。また、日本は国土が狭く、地震も多いため、災害救助などの分野でヘリコプターなどの既存技術とは異なる形で空からのアプローチができるのではないかと考えています。
法規制が厳しく、安全性に特に感度の高い日本で、産業用ドローンが普及するために必要不可欠なインフラとして、貢献できると思います。
松井:1番のプラスは、審査員の方々から貴重なフィードバックを頂けたことです。ドローンポールに転用できる可能性がある他業界のビジネスモデルや、実用化に必要な技術的課題について的確なアドバイスをいただき、今後に活かせる学びをたくさん得られました。他にも、大久保さんを始め熱量ある審査員、参加者の方々と交流できて、とても良い刺激を頂きました。
松井:ドローンポールは今後、お世話になっているエアロジーラボというドローンベンチャーにて、事業化を進める予定です。同社は大型ドローンを用いた過疎地域への配送実績や大阪大学との結びつきも強いため、学生団体を超えた発展ができると思います。私自身は金融機関に就職する予定で、いずれはベンチャー企業に携わる部署で働きたいと考えています。
松井:技術力の高いメンバーや協力頂いたベンチャーの方、大学関係者の方に本当に恵まれ、展示会出展やビジコン参加など、貴重な経験ばかり積ませて頂きました。私個人は特別な技術などを持っているわけではありませんでしたが、チャレンジ精神で未知の分野に飛び込んでみた結果、2年前には想像もつかない学生生活となりました。ドローンポールでの活動を通して、寝食忘れて開発に打ち込むメンバーや、いくつになっても溢れる情熱を仕事に注ぐ方に出会い、沢山の刺激と学びを得ることができ、感謝してもしきれません…本当にありがとうございました!
松井:新規メンバー(特にエンジニアの方)大募集中です!また、ご自身の事業にドローンポール活用の可能性を感じた方はぜひ、お声がけ頂ければ嬉しいです!
(取材協力:ドローンポール/松井 奈々)
(編集:創業手帳編集部)