【VC設立】テックベンチャーに特化した革新的プラットフォームが誕生
ベンチャー支援の革新的プラットフォームを目指す
(2016/06/24更新)
2016年2月、リコー、オムロン、SMBC-VCの三社が「合同会社テックアクセルベンチャーズ」を設立しました。事業会社とグローバル市場で競争力のあるテクノロジー系ベンチャー企業の連携に対し、技術シーズの事業化に向けたオープンイノベーション型支援を行っています。現在のファンド規模は総額50億円。
今回のインタビューでは、テックアクセルベンチャーズの革新的なベンチャー支援の仕組みと、ベンチャー企業に期待することについて詳しくお話を伺いました。
技術領域の視点を備えた投資家が少ないという課題を解決したい
CVCとしてリコー・オムロンの課題
外山:リコーもオムロンもベンチャー投資を行ってきましたが、それぞれ課題を認識していました。
例えばリコーの場合、既に直接投資も行ってきましたし、LP出資も行ってきました。情報を集めて我々に必要なものを得るという形の活動も行ってきました。またオムロンも、オムロンベンチャーズという形でCVCを持ってますし、実際に投資業も行っています。
オムロンベンチャーズの役割は自社の成長戦略をオープンイノベーションで実現していくための手段の一つです。そのため、投資テーマに対しても自社の戦略とのシナジーが明確にあることが求められますので、支援できる領域が絞られるという課題がありました。
テックベンチャーを取り巻く問題とは
また、多くのテックベンチャー企業は、技術アイディアだけではなかなか試作や量産に結び付かず、それに対する知見や経験も足りていません。或いは、B to Bだと彼らだけでは顧客ニーズの把握が難しいという課題もあります。
ベンチャーキャピタルも、技術バックグラウンド、テック系というのは時間もかかりますし、ある程度知見や経験も必要です。その目利きというような視点、或いはR&Dに関わるような視点がまだまだ足らないという認識があります。
それぞれが抱えている課題として、そもそも技術系ベンチャーの数が少ないということも言えます。北米ですと、技術系ベンチャーに対してVCなどが入り、ある程度持ちあげていくようなエコシステムが成立していますが、日本ではなかなかできていないということは大きな課題です。
リコーとオムロンが同じ様な問題意識をもっていたことで、何とかしていけないかということに対して、SMBCさんや産業革新機構さんにも趣旨に賛同していただいた形でこのファンドの設立に至りました。
技術あるベンチャーが世界で戦うためのエコシステムへと成長させたい
投資パートナー:外山 正邦 氏
日本の技術力×ベンチャー経営を伸ばしていきたい
外山:そうですね。特に産業革新機構さんや国としても何とかそこを伸ばして行きたいという意向があります。
日本は、技術力はあるのですが、ベンチャー経営が厳しいところがあります。ですので、むしろそこを何とか育成して伸ばしていきたいですし、世の中で役立てて欲しいという期待があります。
外山:はい。そこを何とかしていこうということで、リコーとオムロンで、ベンチャーを支援するプラットフォーム、エコシステムを創り上げていきます。今はまずこのような形で始めて、最終的には多くの企業に賛同いただいて大きくしていきたいと思っています。
今までのVCと違う点は、技術的に面白いかを見ている
投資パートナー:大場 正利 氏
投資領域は広く考えている
大場:投資の領域は、社会トレンドや技術革新等、広く考えています。しかし、基本的にはやはりリコーやオムロン、或いは入っていただく事業会社が支援できる領域という形で、ヘルスケアや農業のIT化、ロボット化、安全安心の社会インフラを注力ターゲットとして投資していこうと考えています。
産業構造を変えてしまうようなベンチャーが入って来たら嬉しいですね。特に社会課題解決系は難しいと思うので、チャレンジし甲斐がある領域ですね。逆に言うとWEBサービスや、単にWEBで立ちあげる様なサービス等は対象と考えていません。
技術的に支援できることがファンドの特徴
大場:恐らく無いと思います。
ベンチャーに対して、バリューアップという形で技術的に支援することも今までありませんでした。ですから、複数の事業会社が上手くタッグを組んでいくというところがこのファンドの特徴になると思います。
大場:条件が良ければ、特に形にこだわりません。自社としてM&Aすることもあるでしょうが、私たちの競合会社がM&Aしても良いわけです。ファンドとしての中立性は維持しつつ、オムロン、リコーだけではなく、他の事業会社と組む等、様々な形でファンドとして役割を担っていければ良いですね 。
今までのVCと大きく違う点は、私たちは本当に技術的に優れているかどうか、世界的に見ても面白いかどうかを見極め、良いところに対してはきちんと技術を育て、且つ事業を大きくしていけるように支援したいと考えている点です。
大場:それはケースバイケースですね。大学から出てきたもので事業化が不慣れなところに対しては、こちらからもアドバイスするつもりです。他にこんなところがありますということや、自分たちの会社を使ってこういうマーケットもありますということ、全く違う知り合いの会社を紹介するというアドバイスもできると考えています。
大場:必要に応じて提供します。複数の事業会社が関わることができるということと、事業会社の開発部門が入って研究することや、我々が持っている大企業ならではのアセットを上手く使っていただくという形で、オープンイノベーション型の支援をしたいと考えています。
多くの事業会社にも支援者として参画してほしい
それぞれの持ち味を活用できるプラットフォームへ
外山:そういう意味ではバランスが取れていますね。これが先ほどからお伝えしているとおり、我々がプラットフォーム的に支援できるというイメージなのです。
コンセプト検証をして行く中で、リコー、オムロン、それに事業会社さんに入っていただいて、それぞれの持ち味を活用して支援するプラットフォームを作りあげていくというところが一番のポイントです。
そういう意味では、技術や市場の幅が広がることによって、我々がベンチャーを一緒に立ちあげていくというオープンイノベーション型のプラットフォームが強化されていくのだと思います。
多くの事業会社が入ることで支援の幅が広がっていく
外山:そうですね。今のメンバーは、リコーから3名、オムロンから3名、SMBCから1名という形でこのファンドを運営しています。ベンチャー企業をよりバリューアップできるよう、事業会社をもう少し強化する為に、今LPとして事業会社の追加募集を行っているところです。
多くの事業会社が入ることで、しっかりと立ち上げの支援をしていきたいですし、最終的には日本の中でベンチャーが育っていけるようなエコシステムを創る一助になりたいと思います。
(取材協力:合同会社テックアクセルベンチャーズ)
(編集:創業手帳編集部)