副業の経費は計上できる?認められる費用や節税ポイントを解説

創業手帳

副業でかかった経費は認められるものと認められないものに分かれる


副業を始めるにあたって、事業を運営するためには経費がかかります。
副業でかかった経費を計上することで所得金額を抑えることができ、節税につなげることも可能です。ただし、すべての経費が認められるわけではありません。

そこで今回は、副業の経費計上が認められる支出と認められない支出、さらに按分計算や節税ポイントについて紹介します。
どのような費用が経費として計上できるのか知っておきたい人は、ぜひ参考にしてください。

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副業で経費計上が可能な所得の種類


所得は主に10種類に区分されますが、その中でも経費計上が可能な所得は以下の3つです。
また、副業で経費計上が可能な所得も同様です。それぞれの所得の特徴について解説します。

事業所得

事業所得とは、主に農業や漁業、小売業、製造業など、事業によって得た収入を指します。
個人事業主やフリーランスとして行っている事業を本業としている場合、所得の大半は事業所得になります。

一方、副業が事業所得にあたるのか判断できない人もいるかもしれません。
国税庁によると、事業所得は記帳や帳簿書類をきちんと保存しており、営利性・継続性・企画遂行性を有する事業の所得と定めています。
そのため、副業でも事業所得に該当するケースもあれば、そうでないケースもあります。

雑所得

雑所得は、所得税法によって区分された9種類に該当しなかった所得のことです。
副業による所得も、事業所得に当てはまらない場合は雑所得として計上することになります。
例えば、インターネットオークションやフリマアプリで商品を出品して売れた時の利益やFXなどの利益、年金収入などです。

なお、事業所得以外で不動産貸付による所得があった場合も、雑所得に分類されます。

不動産所得

不動産所得とは、集合住宅や駐車場、土地などの貸付から、船や飛行機などの貸付による所得です。
例えば、所有するマンションの一室を入居希望者に貸し出して得た家賃収入は不動産所得に分類されます。
ただし、建物や土地を売ったことで発生した売却益は不動産所得に該当しません。代わりに譲渡所得に当てはまるので注意してください。

副業で経費計上が可能な支出


経費として認められる範囲について金額に制限はないものの、用途や種類には制限が設けられています。
ここでは、副業で経費計上が可能な支出の種類について解説します。

家賃

貸店舗を利用して副業を始めた場合や賃貸で借りている自宅の一部を副業するスペースとして活用している場合は、家賃を経費として計上できます。
基本的に事業所として使っている場所の家賃は経費として認められることがほとんどです。

ただし、賃貸で借りている自宅の一部を副業するスペースとして活用する場合、家賃全額を計上できるわけではありません。
この場合は下記で詳しく説明する「按分計算」を行い、副業で活用した分の家賃だけを計上することになります。

水道光熱費

副業をするにあたって、水道や電気、ガスを使うこともあるでしょう。
例えば自宅での作業だったとしても水道や電気は欠かせませんし、飲食業を始めるならガスを使う機会も多くなります。
水道光熱費は、販売商品と違って間接的に収入を得るために必要な支出といえます。そのため、経費計上が認められているのです。
ただし、家賃と同様に自宅で副業を行っている場合は、按分計算をして副業で使用した分の水道光熱費のみを計上します。

通信費

副業を行う環境として、通信環境の整備も必要です。特に、プログラミングやWebライティングなど、通信環境が必須となる副業もあります。
そのため、通信環境を構築・整備するために必要な費用も、通信費として経費計上が可能です。

なお、通信費というとインターネット環境をイメージする人もいるかもしれませんが、それ以外にも通信費に分類される費用があります。
例えば、固定電話や携帯電話の通話料、郵便・宅配関連の費用、有線放送の利用料、ケーブルテレビの契約料などが挙げられます。

PC・タブレットの購入費用

副業の種類は多岐にわたりますが、多くの場合PC・タブレットなどの端末が必要となることが多いです。
PC・タブレットは購入に多額の費用がかかります。所得税法において取得価額10万円未満のものなら消耗品として経費計上が可能です。
取得価額が10万円以上の場合は、減価償却によって必要経費にすることもできます。

その他費用

上記で説明した支出以外にも、副業で使用した支出で経費として認められれば計上できます。
例えば、取引先と打ち合わせをする際に使ったカフェでの支払いや、副業を行うために必要な知識を得るための書籍代、取材するための移動にかかった交通費などです。
これらの費用はプライベートとの線引きが難しく、場合によっては経費として認められないケースもあります。
しかし、副業に必須だったかどうかで、経費かどうかが判断できます。

副業で経費計上ができない支出


副業でも経費計上ができる支出がある一方で、できない支出もあります。具体的にどのような項目が経費として認められないのか紹介します。

プライベートでの支出

経費とは、事業活動に必要となる費用を指します。そのため、事業に関係のないプライベートでの支出は経費として認められません。
自宅で副業をしている場合の家賃や水道光熱費などは、事業で使った分とプライベートの分とで線引きが曖昧になりやすいので注意が必要です。

また、副業で営業をするためにスーツを購入した場合やクリーニング代、散髪代なども経費計上はできません。
そのスーツをたとえ副業でしか使わなかったとしても、過去に裁判で経費計上が却下された判例が出ているため、認められる可能性は極めて低いです。

医療費・生命保険料

通院するためにかかった医療費は、基本的に経費として認められていません。また、生命保険料や健康維持のためにかかった諸経費なども計上できません。

ただし、常時雇用の従業員が1名以上いる法人・個人事業主の場合、医師による年1回の健康診断が安全衛生法によって義務付けられています。
さらに、人間ドックや予防接種も以下の条件を満たしていれば経費として計上できます。

  • 雇用形態に問わず対象となる労働者すべてが対象になっている
  • 常識の範囲内の費用である
  • 医療費を事業者から直接医療機関に支払っている

副業とプライベートで使った費用は按分計算が必要


通信費などを副業とプライベートの両方で使用した場合、副業の分だけを経費計上するためには按分計算が必要です。
ここで、按分計算とはなにか、どのように計算すれば良いのかを解説します。

按分計算とは

按分計算とは、事業費とプライベートでの生活費が混在している場合に、事業費分を計算して生活費と分ける方法です。
各支出に対して計算式のようなはっきりとした基準はないものの、按分した費用を経費計上する場合には以下の要件を満たしていなければなりません。

  • 事業費と生活費が混在する「家事関連費」の中で、主な支出(50%超)が所得を得るために必須の費用である
  • 上記で、所得を得るために必須の費用であることの根拠を提示できる
  • 主な支出ではなかった(50%以下)場合、業務に必要でその分の費用を明確に分けられる

また、按分計算を行った場合、税務署から説明を求められる場合もあるので、根拠と共に合理的な説明ができるようにしておくことが大切です。

按分計算の方法

実際に按分計算をどのように行えば良いのか、家賃を例に計算方法を紹介します。

例えば副業を自宅の一室で行っており、その部屋の面積が家全体の4分の1を占めていたとします。
この場合、家の4分の1を副業用として利用しているため、家賃も25%分が経費として計上できることになります。
もし家賃が20万円であれば、20万円×25%=5万円を経費として計上できるでしょう。

また、面積で計算するのが難しい場合は時間の割合から按分計算を行うことも可能です。
自宅で副業をしている時間が1週間で10時間の場合、1週間の総時間(24時間×7日=168時間)で按分率を求めます。
10時間÷168時間=約0.05(約5%)になるため、1カ月の家賃20万円×5%=1万円が計上できる金額になります。

固定資産として判断されるものは「減価償却」を行おう


副業のために購入したPC・タブレットなどは、条件を満たすことで固定資産として判断される場合があります。
固定資産になると減価償却を行うことが可能です。ここで、固定資産の判断基準や減価償却のやり方について解説します。

固定資産の判断基準

固定資産かどうかを判断する基準は、取得価額10万円以上で、なおかつ1年以上使用するものです。
PC・タブレットで取得価額が10万円以上で、副業で1年以上使用する場合は固定資産として認められます。
一方で、取得価額が10万円未満だったり、使用年数が1年未満だったりした場合は消耗品費として計上することになります。

固定資産として判断されやすいものは、PC・タブレット以外にもコピー機やオフィス家具、自動車などです。

減価償却のやり方

減価償却のやり方は、主に定額法と定率法の2種類に分けられます。

・定額法
減価償却資産の金額に対して一定の割合を掛けることで減価償却費を求める方法です。この割合は耐用年数によって異なります。
定額法の場合、毎回同じ割合で減価償却費を求めるため、計上する金額は毎年同じになります。
定額法の計算式は、取得価額×定額法の償却率=減価償却費です。

・定率法
未償却残高に対して一定の割合を掛けることで減価償却費を求める方法です。未償却残高は毎年支払っていけば徐々に減っていくため、減価償却費も徐々に少なくなります。
ただし、一定額を下回ったら定額法と同じく毎年同じ金額になるのが特徴です。
定率法の計算式は、(取得価額-前年までの減価償却の合計金額)×定率法の償却率です。

一括償却資産として計上することも可能

取得価額が10万円~20万円未満であれば、減価償却ではなく一括償却資産として計上できます。
一括償却資産として計上する場合、耐用年数は取得したものの種類や時期を問わず、一律3年になります。

例えば18万円でPCを購入した場合、本来耐用年数は4年になりますが一括償却資産として計上する場合は3年で計算します。
1年間の減価償却費を計算する場合、18万円×12カ月÷36カ月(3年)=6万円です。つまり、3年間6万円ずつ経費として計上することが可能です。

副業における節税方法


副業で得た所得の節税を行うためには、経費計上だけでなく以下の方法も活用できます。それぞれの節税方法について紹介します。

青色申告する

副業でも青色申告で確定申告を行った場合、節税メリットが得られます。特にメリットとして大きいのが、「青色申告特別控除」です。
青色申告特別控除とは、一定の条件を満たすことで最大65万円の特別控除が受けられる特典です。

65万円の特別控除を受けるためには、複式簿記による記帳と決算書類の作成、さらにe-Taxを利用した電子申告が必要となります。
もしe-Taxによる電子申告を利用しない場合でも55万円、複式簿記による記帳を行っていない場合は10万円の控除を受けることが可能です。

青色申告特別控除以外にも、家族従業員に支払った給与を経費計上できる特典(青色事業専従者給与)や、赤字を最大3年間繰り越して翌年以降の利益と相殺できる特典もあります。

赤字なら損益通算する

副業が赤字の場合は損益通算を行うことで所得を抑えられ、節税につながります。損益通算とは、副業で出た損失を本業や他の所得の黒字と相殺できることです。
例えば副業で10万円の赤字、本業の給与で30万円の黒字となった場合、事業所得の赤字と給与所得の黒字を相殺して所得を20万円にできます。

ただし、損益通算が可能なのは以下の4つに限られています。

  • 事業所得
  • 不動産所得
  • 山林所得
  • 総合課税の譲渡所得

雑所得は損益通算ができないため、損益通算を行いたい場合は副業による所得を事業所得として扱えるようにしましょう。

少額減価償却資産の特例を活用する

少額減価償却資産の特例とは、取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合に、費用をまとめて経費として計上できる制度を指します。
設備などを購入した年にまとめて経費計上できるため、その年の利益を大幅に圧縮することができ、節税につながります。この特例が適用されるのは2026年3月31日までです。

個人で少額減価償却資産の特例を利用するためには、青色申告の承認を受けている必要があります。
また、特例を受けられる上限は1年で300万円までです。
もし1年で30万円未満の減価償却資産を複数取得しており、その合計が350万円だった場合は、全額をまとめて経費計上できません。

短期前払費用の特例を活用する

短期前払費用の特例とは、前払費用の中でも1年以内に役務(労働やサービス)を受ける分の費用に関して、その事業年度にまとめて費用計上できる制度です。
前払費用とは、企業が労働・サービスを受けるために支払った費用のうち、支払った事業年度の中で提供を受けていない分にかかる費用を指します。

例えば家賃やシステムのリース料、副業に活用する雑誌の年間購読料など、継続的に同一の労働・サービスの提供を受けるのに支払った費用が対象になります。

まとめ・副業でかかった経費を計上して所得金額を抑えよう

副業であっても経費計上によって所得税額を抑えることも可能です。
ただし、経費として認められない支出があったり、按分計算をして副業に使用した根拠を示さなくてはいけなかったりするなど、対策も必要となります。
それでも税負担を軽減できることから、副業でかかった経費はできるだけ計上して節税を目指してください。

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(編集:創業手帳編集部)

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