クック・ビジネスラボ 森 琢也|レゴ®シリアスプレイ®を使った企業研修で「ワクワク働く大人」を増やす
自己理解が深まれば人生もキャリアも豊かになる
世の中には自分で自分を認められず、成果が出せない、成長できないと悩んでいる方が多くいます。トヨタ系大手自動車部品メーカーのデンソーで約10年過ごしてきた森琢也さんも、そんな悩みを抱えていた一人でした。
森さんは自身の経験を踏まえ、レゴ®ブロックを用いた画期的な研修手法「レゴ®シリアスプレイ®メソッドと教材を活用した研修」(以下、LSP)を広めています。自己理解を深めることで他者理解につなげるこの手法は、森さんの志す「ワクワク働く大人を増やす」の一環でもある取り組みです。
今回は森さんがLSPを使った研修事業を始めるまでの経緯や、出版された書籍『トヨタで学んだハイブリッド仕事術(青春出版社)』の魅力について、創業手帳の大久保が聞きました。
株式会社クック・ビジネスラボ 代表取締役
1984年生まれ。2007年より約10年間、トヨタ系大手自動車部品メーカーのデンソーにて経営企画や事業企画に従事。2010年中小企業診断士試験に合格。翌年から複業にて、大手資格予備校中小企業診断士講座 講師をスタート。
当時、講師としては最年少かつ税理士資格保有の同僚講師もいる中、「財務・会計」「経済学」の難関2科目を担当。大手企業役員から、大学生まで幅広い層の受講生から好評を得る。2015年にコーチングを学び、士業や起業家向けにコーチングを提供開始。 2016年LEGO®SERIOUS PLAY®トレーニング修了認定ファシリテータ取得。経営コンサルタントとして活動しながら、経済産業省認定中小企業診断士「理論政策更新研修」等の研修講師を務め、多数の中小企業診断士の指導に携わる。
また2021年からは、採用率10%以下と言われる、東進ビジネススクール講師として「決算書の読み方」講座を担当。講師業を行いつつ、スモールM&Aや組織開発、人材育成を通じた企業支援を精力的に行っている。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
大手企業2社を経験し、経営コンサル業・講師業で独立
大久保:起業までの経緯を教えてください。
森:実家が自営業だったので昔から起業やビジネスには興味があり、大学進学時には経営やマーケティングを学ぶために商学部に進みました。
大学のゼミメンバーの大半が大企業へ就職しており、私も同じく大企業に焦点を当てて就職活動をしていました。
ただ10年後には自分で起業したいという想いもあった中で、日本が世界に誇るノウハウやスキルを学びたい、事業の手触り感のあるところで働きたいと思い、トヨタグループの大手自動車部品会社「デンソー」への就職を決意しました。
大久保:デンソーではどのようなことを学びましたか?
森:デンソーでの新人配属先が経営企画部署で、入社当初は事業採算管理業務に従事していました。
仕事上の必要性に迫られて、学生時代に挫折した簿記2級を取得しましたが、その過程で経営につながる勉強が楽しくなり、翌年には国家資格である中小企業診断士の資格も取りました。
大久保:デンソーではずっと同じ部署でしたか?
森:入社当初は経営に近い部署でしたが、扱う数字が数億円単位で実感が湧きづらく、もっと現場に近い部署で経験を積みたいと思い、希望を出して製品事業企画の部署に異動しました。
担当製品は、樹脂部品からメカ部品、電子部品、ソフトウェアまで様々な部品や要素を組み込んだ製品だったため、膨大な見積書を作ったり周辺知識を習得したりとかなり大変な業務でした。
またグローバルで生産を行っていたため、海外の複数拠点とのやりとりも多く、時差の異なる海外拠点と朝夜通して仕事をしていました。
転職した大手研修会社で講師採用の応募数を20倍に増やす
大久保:その後、大手研修会社に転職されていますが、転職を決意したきっかけをお聞かせください。
森:入社して9年目のころ、電車でたまたまた会った同期に「お前、すぐに会社を辞めると思っていたよ」と言われ、ハッとしました。
同期の言葉で、「入社10年を一区切り、自分で何かをはじめよう」と考えていたことを思い出し、今後のキャリアプランについて改めて考えるようになりました。
独立か転職かと考えたのですが、中小企業診断士の取得をきっかけに講師の副業を始めて、人材教育分野への関心が高まっていたので、大手研修会社に転職することにしました。
大久保:研修会社ではどのような業務を担当しましたか?
森:主に研修講師の採用と育成を担当しました。
具体的に実施した施策の1つとしては、ハイクラス転職サイトが流行り始めていたタイミングだったので、そのサイトにインタビュー記事広告を出し、講師業を始めることでどう人生が変わったかについて発信しました。「100人に1人、響けばいい」、そんな割り切りで取り組みましたが、それが成功の一因になりました。
人事や採用の仕事はまったくの素人でしたが、周囲の協力も得ながら、トヨタグループで学んだスキルやノウハウを活用し、採用コストや残業時間を大幅に削減しつつ、半年で20倍近くも応募者数を増やすことができました。
大久保:研修会社の後に独立という流れですか?
森:はい。研修会社でも十分な経験を積めましたし、2010年から始めた副業の収益も安定してきたため、2020年に経営コンサル業・講師業で独立しました。
大久保:独立してすぐに軌道に乗りましたか?
森:それが、独立と同時に新型コロナウイルスが流行し、受注していた研修案件が立て続けにキャンセルとなり、独立直後はかなり苦労しました。
ベンチャー企業のハンズオン支援でお仕事を頂いたり、講師の仕事にいち早くオンラインを取り入れたりしたことで、なんとか食いつないでいきました。
LEGOブロックを使った企業研修「レゴ®シリアスプレイ®」とは
大久保:クック・ビジネスラボで今注力している事業について教えてください。
森:組織開発を中心とした経営コンサルと人材育成事業です。
大久保:具体的にはどのようなことをやられてますか?
森:個人の自己理解やチームビルディングを目的とした、企業研修(LSP)をメインに行っています。
チーム分けをしてあえて曖昧なテーマをお渡しします。みなさまにはレゴ®ブロックを使ってテーマに合う作品を作っていただき、作った本人が作品に意味を付けます。
なんとなくレゴ®ブロックを用いて作った作品にもその人の潜在意識が働いていて、説明するうちに自分の考えや思いが明確になっていきます。
本人が本当にやりたいことや、大事にしていることが明確になり、周りもそれを理解し、自己理解と相互理解が進みます。リモートワークなどでコミュニケーション課題が表出し、組織内連携の停滞、エンゲージメント低下、離職増加、採用苦戦、などなど、ますます人的資本経営が重要視されている中でLSP研修の人気が非常に高まっています。
大久保:具体的にはどのようなテーマでレゴ®作品を作るのでしょうか?
森:例えば「理想のリーダー象」「3年後の自分」などのテーマを設定します。これらは、紙に文字で書くより、レゴ®ブロックを用いてまず作品を作り、後から説明付けを行った方が圧倒的に思考整理や言語化がしやすいのです。
スタートアップ向けだと「会社の将来ビジョン」や「本当の顧客は誰だ」といったテーマで取り組んでみても面白いですね。
自己理解を習得すれば他者理解も可能になる
大久保:この研修を通じて伝えたいことを1つ挙げるとしたら何になりますか?
森:自己理解です。
自分が得意なことや自身の変化・成長に気づくことができれば、仕事への対処やチャレンジも変わってきます。
弊社の研修では、最後にチーム内で互いに褒め合うワークを行います。レゴ®ブロックを用いてお互いを理解し、良い点に着眼して、フィードバックするという狙いです。
そうすることで、自分が他者から認められていた部分を知ることができ、どのように見られていたかに気づくこともできます。
多くの方が普段あまり感謝を言われたり、褒められたりしないと思うのですが、会社を辞める最終日になって初めて「君の〇〇なところがいいと思っていた」「■■で助かっていたよ」と褒め言葉や感謝の言葉をかけられると、「もっと早く言ってくれれば辞めてなかったのに」と思ったりしますよね。
私自身の実体験も踏まえつつ、弊社の研修を通じて、働いている人たちがもっと働きがいを持ったり、もっと頑張れたりするきっかけを提供していきたいと思っています。
著書『トヨタで学んだハイブリッド仕事術』に込めた想い
大久保:最近出版された書籍についてのメッセージをお願いします。
森:2024年9月25日に『トヨタで学んだハイブリッド仕事術(青春出版社)』という書籍を発売します。この書籍のペルソナ(想定顧客)は、会社員時代に苦しんでいた過去の自分です。
真面目だけど不器用でなかなか成果が出ない、そんな私に似た方々が、過去の私のように長く苦しまずに、もっと早く成長したり成果を出せたりできればいいなと思っています。
大久保:様々なメソッドが書かれていると思いますが、どのような内容になりますか?
森:この書籍で書いたのは、トヨタグループで仕事の出来る上司・同僚から学んだ仕事術です。
例えば、自分自身を見つめ直す際に、自分の問題点ばかりを探すのではなく、まずはありたい姿や目標をしっかりと思い描く、という思考ステップをご紹介しています。
また、仕事をする中で、ムダな時間・手間・ストレスをどのように取り除くのか、効率を上げつつ成果を最大化するためのカイゼンの方法なども多くご紹介しています。
書籍の中ではより具体的なメソッドや事例を解説しているので、ぜひ手にとっていただけると幸いです。
大久保:最後に、森さんの今後の展望について教えてください。
森:今の仕事でワクワク働く大人を増やすために、私自身もスキルや経験を広げていきたいです。先々、50歳で一度仕事を抑えて、経営大学院に行きたいと考えています。
私が50歳になるころにはちょうど、子どもたちが大学に進学するため、一方的に子どもに受験勉強をしなさいというのではなく、楽しく学ぶことの大切さを背中で語っていきたいです。
トヨタで学んだハイブリッド仕事術 森琢也 青春出版社
2023年度決算で日本企業として初の5兆円超えの営業利益を出した、世界ナンバーワン自動車メーカーのトヨタ。そのトヨタグループで仕事の基本を学び、現在はそれを活かしてコンサルティング&コーチングを行う著者。そんな著者による、いつ、どこに行ってもつぶしが利く絶対的な仕事スキルを大公開。ムダな時間・手間・ストレス…を徹底的に取り除き、効率を上げつつ、成果を最大化するための33のノウハウ。
(取材協力:
株式会社クック・ビジネスラボ 代表取締役 森琢也 )
(編集: 創業手帳編集部)