一般社団法人の資金調達方法とは?融資のポイントや利用できる補助金・助成金4選

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一般社団法人の収入源や資金調達方法をチェックしよう


非営利法人に分類される一般社団法人は、設立時の登記手続きが簡単であり、なおかつ法人格を持つことで社会的信用度も増します。
そのため、任意団体や個人で活動してきた人で、一般社団法人を設立するケースもあります。
しかし、非営利法人ということもあり、融資は受けられるのか不安に感じている人もいるかもしれません。

そこで今回は、一般社団法人の資金調達方法や成功させるポイントをご紹介します。さらに、資金調達に役立つ補助金・助成金も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

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一般社団法人ができる資金調達方法


一般社団法人でも利用できる資金調達方法はいくつかあります。それぞれの資金調達方法について、詳しく解説していきます。

公的機関からの融資

公的機関からの融資として、日本政策金融公庫の「創業融資(新規開業)」があります。
これは創業した際に低金利かつ無担保・無保証人で借入れができ、創業時に多くの人が利用する融資制度になります。
基本的に創業融資(新規開業)は法人から個人事業主まで、どの法人格でも利用でき、一般社団法人も融資を申し込むことは可能です。
ただし、創業融資は営利を上げることが目的ではないため、融資を受けるのは難しいと考えられます。

日本政策金融公庫で融資を受けたい場合は、「ソーシャルビジネス支援資金」の活用を検討してみてください。
ソーシャルビジネス支援資金は保育サービス事業や介護サービス事業、その他社会的課題の解決を目指す事業を手がけている場合、一般社団法人でも利用できます。

また、地方自治体と金融機関、信用保証組合が連携して融資を行う「制度融資」は、原則一般社団法人は利用できないものの、自治体の中には利用を認めようとする動きも見られます。
対象者は非常に限定的ではあるため、利用できない可能性が高いですが、一度自治体の制度融資を確認してみても良いかもしれません。

民間の金融機関からの融資

民間の金融機関はそもそも創業時の融資を敬遠する傾向にありますが、中にはプロパー融資を実施してくれる金融機関もあります。
プロパー融資とは、信用保証協会の保証などがない状態で、直接金融機関から融資を受けることです。
保証制度を利用しないため、金融機関が貸し倒れのリスクを負うことになります。そのため、一般社団法人がプロパー融資を借りる場合、厳しい審査が行われます。

融資を受けるのに厳しい条件にはなってくるものの、絶対に融資が受けられないというわけではありません。
これまで金融機関から借入れを利用した実績や、返済を滞りなく行ってきたという実績があれば、金融機関側も「融資をしてもきちんと返済してくれるだろう」と考える可能性も高いです。

基金制度

一般社団法人は株式投資を行えないものの、基金制度を活用することで株式投資に似た形で資金を調達できます。
基金制度は従業員や第三者から活動資金を集める方法です。一般社団法人にとって基金制度は必ずしも設置するものではなく任意です。

基金制度を利用するメリットは、現金だけでなく不動産や動産などを基金として集められる点が挙げられます。
ただし、拠出された基金に対して返還する義務があり、それが現金以外だった場合に搬出時の価額に相当する金額を支払う必要があります。
基金の返還が求められてから実際に返済するタイミングは自由に設定でき、利息などもありません。

手続きの方法は一般社団法人法によって規定されていますが、この規定に沿わないと拠出が無効になるので注意が必要です。

役員借入金

役員借入金とは、経営者や役員が持つ個人資金の一部を会社へ一時的に入金し、資金に余裕が出てきたタイミングで返却する借入金です。
金融機関からの融資を受けると利息が付き、本来借入れた金額よりも多く返済していく必要があります。
しかし、役員借入金は役員から許可を得られれば無担保・無利子で資金調達を行うことが可能です。
返済するタイミングも役員と相談しながら決められるので、一般社団法人にとっては魅力的な資金調達方法といえます。

役員借入金のデメリットは、資金を調達するにも限界があるという点です。
あくまで個人の資金を融資してもらうことになるため、銀行のように何千万円も融資を受けるのは難しいです。
また、役員借入金は貸借対照表で負債の部に計上されますが、多額の借入金を計上することで債務超過に陥る可能性もあります。

ファクタリング

ファクタリングとは、一般社団法人が所有する売掛債権を売却し、もともと取引先と取り決めていた支払期日より先に売掛金を受け取る資金調達方法です。
民間の金融機関からの融資が難しい場合でも、ファクタリングなら売掛債権を売却するだけなので利用するハードルは低いです。
スピーディーに資金調達を行いたい場合にはファクタリングの活用を検討してみてください。

注意すべきポイントとしては、手数料の高さが挙げられます。
融資などに比べて割高な手数料が設定されている場合も多く、多用することで資金繰りの悪化を招く恐れもあります。
また、2社間ファクタリングなら一般社団法人とファクタリング会社の間だけで取引きが行われることから、売掛先の企業に知られず売却可能です。
しかし、3社間ファクタリングだと売掛先も交えて取引きすることになり、関係性が悪くなってしまう可能性があります。

一般社団法人の資金調達が難しい理由


一般社団法人が利用できる資金調達方法はありましたが、公的機関や民間の金融機関からの融資を受けるのは難しい傾向にあります。
なぜ一般社団法人だと資金調達が難しくなってしまうのでしょう。その理由は、一般社団法人の活動目的が「利益を上げること」ではないためです。
一般社団法人でも利益を得ることは可能ですが、株式会社のように株主に余剰利益を分配することは認められていません。

金融機関の視点で考えると、融資は企業に貸し付けた際に発生する利子から利益を得ているため、返済が滞ってしまえば利益どころか貸し付けた資金分がマイナスになってしまいます。
万が一返済が滞るリスクがあったとしても、保証協会を利用できれば融資も受けられた可能性が高いです。
しかし、全国保証協会では一般社団法人の利用を制限しているため、公的機関や民間の金融機関から融資を受けるのは難しいといえます。

一般社団法人が融資による資金調達を成功させるポイント


一般社団法人でも融資による資金調達を成功させるためには、どのようなポイントを押さえておくべきなのでしょう。
ここでは、資金調達を成功させるポイントについて解説します。

融資を受けるなら日本政策金融公庫がおすすめ

上記で公的機関から融資を受けるのは難しいとご紹介しました。
しかし、それでも民間の金融機関や制度融資を利用するより、日本政策金融公庫を利用したほうが融資を利用できるハードルは低いです。
特にソーシャルビジネス支援資金は、対象の事業は限られるものの、該当していれば非営利の一般社団法人でも7,200万円(うち運転資金4,800万円)を上限に融資してもらえる可能性があります。

また、非営利型の一般社団法人とは異なり、収益事業をメインに扱う普通型の一般社団法人であれば、融資へのハードルはさらに低くなります。

更に詳しく融資について知りたい方は「融資ガイド」もあわせてご覧ください。融資の基本や審査の通過率をUPさせるコツなども掲載しています。無料でご覧いただけます。



実現性の高い事業計画書を作成する

一般社団法人に限らず、日本政策金融公庫なら絶対に融資を受けられるわけではありません。
融資を申し込んでから審査が行われ、返済できると判断された場合に受けられるようになります。
返済できるかどうかの判断は事業計画書によって行われることも多いため、審査を通過するためにも実現性の高い事業計画書を作成することが重要です。

実現性の高い事業計画書を作成するには、単に事業計画を立てるだけでなく具体的な根拠と数字を使って示さなくてはなりません。
何が影響してどのタイミングで利益が出るのか、利益が出た場合どれくらいの数字になるのかなどを具体的な根拠をもとに、丁寧に説明してください。

一般社団法人の資金調達に役立つ補助金・助成金4選


一般社団法人の資金調達方法として融資を受ける以外にも、補助金・助成金の活用があります。
補助金や助成金は融資とは異なり、返済の義務が発生しません。
要件を満たしている必要があるものの、一般社団法人を対象とする補助金・助成金もあるのでぜひ活用を検討してみてください。
ここでは、一般社団法人の資金調達に役立つ補助金・助成金を4つご紹介します。

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代における経済社会の変化に対応するため、事業の再構築を支援する補助金です。
事業類型とそれぞれの補助上限、補助率、対象経費は以下のとおりです。

事業類型 補助上限(従業員30人の場合) 補助率 対象経費
成長分野進出枠 通常類型 3,000万円(短期の大規模賃上げは4,000万円) 中小:1/2(短期の大規模賃上げは2/3)
中堅:1/3(短期の大規模賃上げは1/2)
建築、機械装置・システム構築、技術導入、外注・専門家にかかる経費、広告・宣伝、販売促進、研修、廃業(廃業は成長分野進出枠のみ)
GX進出類型 中小:5,000万円(短期の大規模賃上げは6,000万円)
中堅:1億円(短期の大規模賃上げは1億5,000万円)
中小:1/2(短期の大規模賃上げは2/3)
中堅:1/3(短期の大規模賃上げは1/2)
コロナ回復加速化枠 通常類型 2,000万円 中小:2/3
中堅:1/2
最低賃金類型 1,500万円 中小:3/4(一部2/3)
中堅:2/3(一部1/2)
サプライチェーン強靭化枠 3億円(建築費を含む場合5億円) 中小:1/2
中堅:1/3
建物、機械装置・システム構築

事業類型ごとに補助対象要件は異なりますが、すべての枠に共通して以下の要件が必須となります。

  • 事業再構築指針に示された「事業再構築」の定義に当てはまる事業であること
  • 金融機関等や認定経営革新等支援機関と共に事業計画を策定し、確認を受けている
  • 補助事業が終了してから3~5年で付加価値額の年平均成長率が3.0~5.0%以上増加、または従業員ひとりあたり付加価値額の年平均成長率が3.0~5.0%以上増加(事業類型で成長率は異なる)

IT導入補助金

IT導入補助金は、あらゆる経営課題の解決を目指してITツールを導入することを支援するための補助金です。利用できる枠の中から自身の目的に合ったものを選びます。
IT導入補助金の補助金枠とそれぞれの補助率・補助額は以下のとおりです。

補助率 補助額
通常枠 1/2以内 1プロセス以上:5万円以上150万円未満
4プロセス以上:150万円以上450万円以下
インボイス枠(インボイス対応類型) 【インボイス対応の会計・受発注・決済ソフト】
中小:3/4以内
小規模事業者:4/5以内
2/3以内
【PC・ハードウェアなど】
1/2以内
【インボイス対応の会計・受発注・決済ソフト】
補助率3/4以内、4/5以内:50万円
補助率2/3以内:50万円超~350万円
【PC・ハードウェアなど】
PC・タブレットなど:10万円以下
レジ・券売機など:20万円以下
インボイス枠(電子取引類型) 中小・小規模事業者など:2/3以内
その他事業者:1/2以内
下限なし~350万円以下
セキュリティ対策推進枠 1/2以内 5万円以上100万円以下
複数社連携IT導入枠 ソフトウェア:3/4以内、4/5以内、2/3以内
PC・タブレットなど:1/2以内
レジ・券売機など:1/2以内
消費動向等分析経費:2/3以内
その他経費:2/3以内
ソフトウェア:50万円以下×グループ構成員数
(補助率2/3以内の場合50万円超~350万円以下×グループ構成員数)
PC・タブレットなど:10万円×グループ構成員数
レジ・券売機など:20万円×グループ構成員数
消費動向等分析経費:50万円以下×グループ構成員数
その他経費:200万円以下

複数社連携IT導入枠の補助額は、その他経費以外の合計額3,000万円までが上限です。

雇用調整助成金

雇用調整助成金は経済上の理由で事業活動を縮小せざるを得なかった事業者が、雇用の維持を守るために受けられる助成金です。
雇用調整助成金の受給額は、休業をした場合に事業主が支払う休業手当の負担額や教育訓練を実施した場合の賃金負担額の相当額に、以下の助成率を乗じて計算します。

  • 中小企業:2/3
  • 大企業:1/2

教育訓練の加算額に関してはひとり1日あたり1,200円です。

なお、2024年4月1日以降を対象期間とする場合は以下の助成率となるので注意してください。

教育訓練実施率 企業規模 助成率 教育訓練加算額
1/10未満 中小企業 1/2 1,200円
大企業 1/4
1/10以上1/5未満 中小企業 2/3
大企業 1/2
1/5以上 中小企業 2/3 1,800円
大企業 1/2

業務改善助成金

業務改善助成金は、機械設備や人材育成・教育訓練など、生産性を高めるために設備投資などを行い、なおかつ事業場内最低賃金を一定額以上まで引き上げた際にその費用を一部助成してくれます。
事業場内最低賃金の引き上げ計画と設備投資などの計画を並行して立てて申請し、交付が決まってから事業結果を報告することで費用の一部を助成してもらうことが可能です。

助成上限額は最低賃金の引き上げ額や引き上げ対象の労働者数、事業規模によって異なり30~600万円が上限に設定されています。助成率は最低賃金額によって異なります。

  • 900円未満:9/10
  • 900円以上950円未満:4/5(9/10)
  • 950円以上:3/4(4/5)

なお、カッコ内は生産性要件を満たした事業場に適用される助成率です。

創業手帳ではその他にも起業家・経営者の方がよく利用されている補助金・助成金をまとめた「補助金ガイド」を無料配布中です。こちらもあわせてご覧ください。


補助金ガイド

まとめ・資金調達をして一般社団法人の経営を安定させよう

一般社団法人は非営利組織ということもあり、一般的な中小企業に比べて融資を受けにくい場合があります。
ただし、絶対に融資が受けられないわけではないため、丁寧に事業計画書を作成して融資審査に挑戦してみてください。
また、要件を満たしていれば補助金・助成金を活用することも可能です。これらをうまく活用して一般社団法人の経営を安定させてください。

創業手帳(冊子版)では、資金調達の方法から融資を受けるためのポイントについて詳しく解説しています。経営の安定化や事業成長を見込んだ資金調達を行いたい方も、ぜひ創業手帳をお役立てください。

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(編集:創業手帳編集部)

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