飲食店にかかる税金はいくら?種類や節税対策も紹介します
飲食店経営者は知っておきたい税金を確認しておこう
事業経営するにあたって、税金は無視できません。
飲食店の税金は、個人事業主として開業するか法人を設立するかによって違うため、開業する前に売上げを予測しどちらでスタートするか決めてください。
できるだけ事業に多く資金を回すためにも節税術を確認することが重要です。
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この記事の目次
個人と法人によって飲食店にかかる税金が違う
飲食店を開業する時、調理や店舗、売上げの心配はあっても、その後の税金までは考えない人が多いかもしれません。
しかし、飲食店を経営していれば経理処理や税金の扱いは必須です。
飲食店は個人事業主か法人かによって税金が違う上、軽減税率といった細かなルールも多くあります。ここでは、飲食店に関わる税金について紹介します。
個人と法人の両方に課せられる税金
飲食店の所得にかかる税金は、個人事業主と法人で違います。
飲食店の税金は、個人事業主にかかる税金と法人にかかる税金、そして個人でも法人でもかかる税金の3種類です。
個人事業主と法人の双方にかかる税金には、以下のものが挙げられます。
・消費税
モノやサービスの消費にかかる税金です。
・印紙税
領収書などに貼付する印紙代です。
・固定資産税
不動産などの資産を保有している場合にかかる税金です。
個人事業主にかかる税金
個人事業主の場合にかかる税金は以下のものです。
・所得税・復興特別所得税
個人の所得に対してかかる税金です。
1年間のすべての所得から所得控除を差し引いた残りである課税所得に税率を適用して計算します。
復興特別所得税は東日本大震災復興のための施策で、基準所得税額×2.1%で計算されます。
・個人住民税
住民票がある自治体に支払う税金で、行政サービスの活動費に充てられる税金です。道府県民税と市町村民税があり、一括で納付します。
所得に応じた負担を求められる所得割と定額の均等割から構成されています。
・個人事業税
個人事業主が都道府県に対して納める地方税です。対象者は都道府県内で一定の業種、所得額の個人となります。
法人にかかる税金
飲食店を開業するにあたって、法人を設立している場合には、以下の税金が発生します。
紹介するのはあくまで法人に課せられる税金で、代表者個人の所得税や住民税、源泉徴収税は別にかかります。
・法人税
法人が得た所得に対して課せられる国税です。税率は、法人の区分に応じて決定されます。
・地方法人税
法人が得た所得に課せられる国税です。地方交付税の財源確保が目的で税率は10,3%です。
・法人住民税
その地方に事務所などを有する法人に課せられる地方税です。
資本金などの額や従業者数に応じて定額が課される均等割と法人税額に応じて課される法人税割で構成されています。
・法人事業税
法人住民税と同じように、事務所などを有する法人に課せられる地方税です。
資本金1億円以下の普通法人などに対しては所得割のみ、資本金1億円以上の普通法人に対しては所得割のほかに付加価値割と資本割が課されます。
・特別法人事業税
法人事業税と併せて納付する国税です。
飲食店が消費税の納税が必要な場合
消費税は、個人でも法人でも課せられます。しかし、すべての飲食店が消費税の納付義務があるわけではありません。
まず、資本金が1,000万円以上の法人を除き開業から2年間は原則免税事業者となり、消費税の納税は免除されます。
消費税を納める課税事業者になるかどうかの基準は、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで判断します。
個人事業主の場合は前々年度の1月1日から12月31日まで、法人は原則前々事業年度を基準に課税売上高が1,000万円を超えれば課税事業者、そうでなければ免税事業者です。
免税事業者は消費税を納税しなくても良いものの、適格請求書発行事業者とならないことで取引先に影響するかもしれません。
取引先からインボイスの発行を求められるようなケースがある場合には、課税事業者になることも検討してください。
飲食店が消費税の還付が受けられる場合
消費税を納税するには、売上げで受け取った消費税から、仕入れなどで支払った消費税を差し引いて計算しなければいけません。
ただし、受け取った消費税よりも支払った消費税のほうが多いケースもあります。
支払った消費税が多い時には、消費税の還付も受けられます。
売上げが伸びずに赤字になってしまった場合や、店舗や不動産、設備といった高額のものを購入した場合には消費税の還付が受けられるかもしれません。
飲食店にかかる税金の計算例
個人事業主と法人にかかる税金を踏まえて、ここからは飲食店にかかる税金を実際に計算してみます。
例えば、売上げが1,000万円で経費が600万円の課税業者の場合を考えてみましょう。
個人事業主の場合には、利益が400万円となり、基礎控除と青色申告特別控除を差し引いた課税所得は287万円です。
所得税は、2,870,000円×0.1-97,500円=189,500円、住民税は2,870,000円×10%+5,000円=292,000円の計算です。
また、個人事業税は事業主控除として年290万円の控除が認められています。
個人事業税は、青色申告特別控除の対象にならないため、(3,520,000円-2,900,000円)×5%=31,000円の計算です。
消費税は、売上げの100万円と支払った60万円で差し引きして40万円です。これらを差し引くと税引き後の預金残高は3,087,500円になります。
一方で、法人の場合は、所得が400万円で、法人税は4,000,000円×0.15=600,000円となります。
また、法人住民税は法人税から計算して、600,000円×7%+70,000円=112,000円です。
法人事業税は4,000,000円×3.5%=140,000円、さらに地方法人税が600,000円 ×10.3%=61,800円と特別法人事業税140,000円×37%=51,800円とが課せられます。
消費税は、個人のケースと変わりません。
上記を差し引くと、税引き後の預金残高は2,634,400円です。
税金で比較!個人と法人ではどちらが良い?
前述したように、飲食店にかかる税金は個人事業主と法人で違うため、どちらにするか悩む人もいるかもしれません。
飲食店経営を個人と法人のどちらにするかを決めるポイントはいくつかあります。
まず、基準となるのが年間の所得額です。
個人の所得税と法人の法人税率を比較すると、所得が330万円までは個人の所得税の税率が低く、それ以上になると法人のほうが税率が低くなります。
法人は所得が低い時でも最低15%の税率が適用され、法人住民税の均等割も発生します。
事業拡大の予定がないのに法人でスタートすると、所得に対して税負担が重くなるかもしれません。
さらに、法人のほうが会計処理や税務が煩雑で、手間がかかる点もデメリットです。
一方で、事業拡大の予定がある場合には法人のほうが有利となります。法人税は、利益が増加しても税率が一定です。
個人に課せられる所得税の場合には、税率が5~45%で変動するため金額が大きくなった場合には法人税よりも納税額が大きくなってしまいます。
そのため、所得が少ない間は個人で、事業規模が大きくなった段階で法人化、いわゆる法人成りを考えるといった方法もよく使われています。
飲食店が知っておきたい軽減税率とは?
2019年の10月から消費税10%が適用されるようになりました。しかし、飲食料品の中には軽減税率が適用されて消費税が8%になるものもあります。
飲食店経営者に知っておいて欲しい、軽減税率制度についてまとめました。
テイクアウトや宅配では軽減税率が適用となる
消費税10%が適用になったのは、2019年からです。しかし、飲食料品の一部は軽減税率として8%が適用されます。
軽減税率の適用となるのは、テイクアウトや出前、宅配や移動販売といった飲食料品です。
一方で、レストランや喫茶店、フードコートといった飲食店での外食は軽減税率の対象にはならず標準税率の10%が適用になります。
ホテルのルームサービスやカラオケボックスの飲食、ケータリングや出張料理も10%が適用です。
アルコールは度数によって扱いが変わる
軽減税率が適用される飲食品は、食品表示法で「食品」とされているものだけです。例えば、栄養ドリンクのように「医薬部外品」となっているものは食品ではありません。
お店で隣に並んでいる清涼飲料水と栄養ドリンクであっても、清涼飲料水は8%、栄養ドリンクは10%で計算します。
また、アルコール、酒類は原則として10%が適用されます。
ただし、アルコール度数が1%未満であれば、酒類に分類されないので軽減税率の対象です。
もしもテイクアウトで、アルコール度数が0.9%のカクテルと1.1%のカクテルを購入したら、それぞれ0.9%のカクテルは8%、1.1%のカクテルは10%で計算します。
ほとんど同じような製品であっても、きっちりと線引きしなければいけません。
お店で食べた残りを持ち帰る場合はどうなる?
原則として外食した場合は、軽減税率は適用されません。しかし、店内で食事をして残った商品を持ち帰りにするケースもあります。
このケースでは、食べた残りの持ち帰りなので軽減税率になりません。
飲食できるお店であっても弁当の持ち帰りや宅配、仕出しなどで購入した場合にはテイクアウト商品なので軽減税率が適用になります。
つまり、店内で飲食をしてそれとは別に持ち帰り用の飲食品を注文した場合には、店内での食事分は10%、持ち帰り分は8%の消費税で計算します。
軽減税率のボーダーラインは判断が難しい部分もあるので、不安な部分があれば事業開始前に専門家に問い合わせてください。
飲食店でできる税金対策
飲食店を成功させるためには、経費にシビアにならなければいけません。
どのようにすれば飲食店の税金額を抑えられるのか、すぐにでも始められる税金対策をまとめました。
ビジネスへの投資
納税額を抑える基本は、所得を減らすことです。所得は、売上げから経費を差し引いたものをいいます。
適切に経費を計上することは、費用を増やして所得を少なくするとともに将来の売上げ、成長を促進させる効果があります。
運転資金に余裕があるのであれば、所得を確定する前に広告宣伝や新事業展開で経費を計上する方法が有効です。
所得が500万出たとして、そのままでは所得に対して一定の税率で計算された税金が課されます。
しかし、広告宣伝費や新店舗開設費用として経費を300万円計上すれば、課税所得は200万円になり、大幅な節税が可能です。
残念ながら税金は多く支払ってもリターンがあるわけではありません。
しかし、新しいビジネスに投資することによって、節税だけでなく将来的の売上規模の拡大といったリターンが期待できます。
経営セーフティ共済に加入
節税には、共済への加入も効果的です。
例えば、経営セーフティ共済共済は、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐための保険サービスとなります。
無担保、無保証人で掛金の10倍まで借入れでき、支払った保険料は全額経費に計上可能です。
また、中小機構が運営する小規模企業共済は、全額所得控除可能で退職金を積立てられる上、貸付制度もあります。
所得が増えて税額が大きくなった時には、共済への加入も検討してください。
法人化
個人の飲食店であれば、法人化して節税する方法もあります。
所得税は、5%~45%ですが、法人税率は所得800万円以下の部分は15%で超えると23.2%です。
一定以上の所得であれば法人税のほうが低いため、法人化したほうが税金を抑えられます。
法人化することにより、経営者の収入は役員報酬として経費計上可能になり、認められる経費の範囲が広がります。
個人事業主でスタートした人も売上げが成長した段階で法人化のタイミングについて考えてみてください。
所得を分散
前述したように、所得税の税率は5%から45%で、所得が高くなれば税率も高くなってしまいます。
つまり、ひとりに収入を集中させると税負担が大きくなってしまうのです。
所得を集中させないためには、個人の事業所得や法人からの役員報酬は家族の従業員に分散させる方法が有効です。
また、関連会社を設立して所得を分散させる方法もあります。
給与として所得を分散させれば給与所得控除も受けられるので節税効果もより高くなります。
まとめ・飲食店の税金対策は早めにシミュレーションしよう
節税対策と聞くと、専門家でないとできないイメージがあるかもしれません。
しかし、事業のどの部分にどのような税金が発生するのか、何を経費として計上できるのかを把握すれば節税対策は可能です。
節税対策には共済の加入や新事業の投資といった支出をともなうものとそうでないものがあります。
節税対策によってどれだけの支出があり、どのような効果があるのかシミュレーションしてから採用する手段を選択してください。
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(編集:創業手帳編集部)