「中小企業信用保険法及び株式会社商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案」が閣議決定

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2023年3月10日、「中小企業信用保険法及び株式会社商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、第211回通常国会に提出されました。

趣旨

地域を支える中小企業のコロナ禍からの立ち直り(再生・再チャレンジ支援)やアフターコロナでの成長(積極的な投資促進)に向け、経営者保証改革(再チャレンジや積極投資を容易にするための経営者保証に依存しない融資慣行確立)、商工中金の業務範囲見直しによる再生支援等の強化を進めます。

さらに、コロナのような危機時の資金繰り支援のさらなる円滑化(危機関連保証の要件緩和、商工中金による利用を認めない)を図ります。

概要

(1)信用保険制度における経営者保証改革等(中小企業信用保険法)

①経営者保証に依存しない融資慣行の確立加速

無担保保険等において経営者保証を求めないこととします(法人から代表者への貸付け等がないこと、財務諸表を提出していること等が要件)。

②危機時における資金繰りの更なる円滑化

危機関連保証について、指定期間中に認定申請が行われていれば利用できるよう要件を緩和します(現在は融資が実行されていることが条件)。

(2)中小企業のための商工中金改革(株式会社商工組合中央金庫法・中小企業信用保険法)

①コロナ禍からの地域経済再生のための業務範囲等の見直し

組合金融の円滑化という目的の範囲内で、事業再生企業への出資など、業務範囲の制約等を見直します。また、銀行と同水準の規制も導入します(例:金融分野の裁判外紛争解決制度(金融ADR)等)。

②地域金融機関との連携・協業の強化

業務を行うに当たり、地域金融機関と連携を図ることを法律上も明記。
民業圧迫回避規定(適正な競争関係を阻害することのないよう特に配慮)は存置。

③「中小企業のための金融機関」の維持

議決権保有株主資格の制限や特別準備金(4,008億円)の制度は維持。

④危機対応を的確に実施するための措置

政府保有株式全部売却後も、危機対応業務を実施する責務を課します。また、同一の危機事象について危機対応業務と危機関連保証が発動されている場合、商工中金の危機関連保証の利用を認めないこととします。

⑤政府保有株式の売却等

商工中金の財務状況が大きく改善し、信用力が向上したため、意義は低下した政府保有株式を全部売却し、議決権保有株主資格の対象から政府を削除します。また、政府株式売却に伴う措置を講じます(新株発行時・代表取締役選定時(※)の大臣認可の廃止)。
(※)大臣認可+違法行為時の解任命令から届出+解任命令に移行

⑥将来的な完全民営化の勘案要素

特別準備金の状況を含む自己資本の状況、ビジネスモデルの確立状況、危機対応業務の在り方等を勘案し、完全民営化の実施(商工中金法の廃止等)を判断します。


株式会社や合同会社は有限責任であるため、会社が倒産してしまった場合でも、返済の責任は出資した範囲内が限度となります。

しかし、中小企業のオーナー(社長兼株主)などの場合は、金融機関などからの融資などにおいて、会社の保証人や連帯保証人となっている場合が多く、実質的に債務を無制限に返済する義務を負う無限責任となっています。

この企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が会社の連帯保証人となる制度を「経営者保証」といいます。

経営者保証は、金融機関にとって安心して融資ができる、中小企業の経営者・企業には弱い信用を補完できるというメリットがあります。

一方で、起業や、中小企業の思い切った事業展開、野心的な投資、円滑な事業承継を妨げる要因となっていることから、経営者保証を必要としない融資制度などが求められています。

今回の「中小企業信用保険法及び株式会社商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案」では、個人保証を求めない融資を中小企業信用保険の付保対象とする規定の整備などが盛り込まれています。

今後この法案の動向に注目が必要です。

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