ものづくりで起業する人は必見!「ものづくり」スタートアップが成功するためのコツ
ものづくり支援の専門家が、ものづくりで起業し成功するための考え方や製作のステップを解説します
(2020/07/14更新)
どんな企業でも、最初は小さなアイデアから始まります。
中でも最初の一歩が分かりやすいのは「ものづくり」ではないでしょうか。近年は、ものづくりのスタートアップも続々と登場しています。
そこで、マーケティングや特にものづくりについての創業支援などを行っている専門家の白神氏に取材。ものづくり系スタートアップを目指す方に向けて、新しい道を切り開こうとするときに抑えておきたいコツと、スタートアップならではの1から始める「ものづくり」のポイントを聞きました。
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この記事の目次
国・自治体関連の企業連携やまちづくり、ものづくりマーケティング支援の専門家。都内百貨店にてサービス業、大手化粧品会社にて国内・海外のファッション事業に触れ、その後、広告業界にてマスコミ全般を経験し41歳に広告デザイン業を個人事業で独立。その後10年以上に渡り「コミュニケーション」と「商品」や「広告」について研究を続け2019年にプロデユースした「キャリア女性のビジネス手帳」もその研究の1つとなる。現在、創業者のための「ものづくりプロジェクト」をMプロジェクトとして実施している。
ものづくりとは
「ものづくり」とは、シンプルに言えば、目に見えずカタチのない無形な「人の想い」や「考え」を、ひとつの「カタチ(有形)」にすることでしょう。
また、そのカタチ(有形)から感じられる「想い」が、感動や共感へと繋がり、そこから付加価値として魅力を放ちさらに人々に行動を導くものであると私は思います。
もう少しお伝えするならば、その「カタチ(有形)」にも、様々な立場の人が関わることで、伝統的な日本の代表作品になったり、商業的な商品になったりと立ち位置も変わります。そこからターゲットを意識するとマーケティング要素が加わり、経済的な思考を持つと産業へと発展をしていきます。
はじめは、「ものづくり」を難しく考える方も多くいるかもしれませんが、まずは、シンプルに考え「想い」をきちんと固め考えることが、とても大切だと思います。
スタートアップのパターンは大きく2通り
「ものづくりのスタートアップ」と聞くとどのような事をイメージするでしょうか。スタートアップには大きく2通りのパターンがあるように思います。
1つ目は、創業時にとても勢いがあり、夢に満ち溢れていて、自身が開発する商品は売れないわけがないと信じ、そのまま販売までどんどん進めるタイプ。
2つ目は、創業したものの初めてのということもあり、いったい何から考えたら良いのか見当もつかず、専門家に度々相談をしながら慎重に一歩一歩と進めて行くタイプ。
どちらが良いということはありません。どちらも自身のアイデアから始まり、オリジナルとして商品化され独自の魅力の詰まった「ものづくり」の第1号です。
スタートアップの「ものづくり」の進め方
「ものづくり」の進め方について、特にスタートアップの頃は全体の流れが見えにくいものです。
ここでは、「ものづくり」の流れと進め方をご紹介します。
1. 事前に考えること
ここがとても大切で「1から始める」1の部分でもあります。きちんと時間を掛けてじっくり商品と向き合いましょう。
・何を? 商品化すべきかを考える
自分(自社)がチャレンジしたいこと、できることを整理してみましょう。
・その商品はなぜ? 自社の商品となり得るのかを考える
ここでは、自社の強みに向き合ってください。
・その商品に「社会的課題」は解決できるのかを考える
実はここが後々様々に関わってくる大切な場面です。「ものづくり」は何のために行なうのか?その商品は社会に役立つものなのか。
例えば、内閣府などのホームページから、社会的課題と商品を照らし合わせ、合うものがあれば、もう少しその課題を追求し更にこだわってください。商品と社会的課題が一致したら、今後の使命もはっきりと見えてきます。内容次第で国や自治体からの支援へ繋がるかもしれません。
・新商品は、これまでにない新規性のあるものかを検討する
「売る」「売れる」ことに、とても直結しています。
今までにない商品を世に送り出し、それが社会課題の解決をするものであるならば、なお最強の商品となります。
・商品のスローガンを考えてみる
上記のことがまとまれば、「言葉」として書いてみましょう! その言葉が、今後自身が目指す道しるべとなります。
・商品のバックグランドや社会背景を調査し考えていく
商品に関わる歴史や現在の背景などをきちんと調査しておきましょう。それによって、更なる付加価値が見つかるはずです。
・だれに喜んでもらえる商品なのかを考える
ここはターゲットがバシッと決まっていく場面です。だれのための商品なのかをきちんと考えまとめてみましょう。
ここまで考えられたら一度企画書にまとめてみましょう! 社内であれば、プレゼンテーションをすることをおすすめします。
2. いよいよものづくり。製作の流れ
ここでは、使い手側の気持ちを最優先しましょう!
・どんな材料や素材が良いのか研究をする
人にとって、環境にとって、自社にとっての視点で考えてみる。
・どんなデザインが理想的なのかを考え調査をしてみる
ユーザビリティを中心に考え、例えば色、カタチ、ターゲット層にとって便利で欲しいものなのか? の視点に立ちましょう。
・試作・テスト製作を重ねる
資金をかけて作る商品ですから、ギリギリまで後悔のないように粘ることがとても大切です。
売ることに急がずに、ロングセラー商品となるものを目指しましょう。
・試作をしながら費用コストも合わせてサンプル商品を検証する
いくら素晴らしい商品でも高額過ぎて売れなくては意味がありません。理想と現実の兼ね合い、「顧客が喜んで支払う価格はいくらなのか」など、利益を確保ながら、真の適正価格を算出しましょう。
・外注先との共同開発商品なら、相性の合う取引先を選び抜く
自社にとって相性の良い外注先は、妥協せずに色々な話をしながら長くお付き合いのできる外注先を見つけていきましょう。
ここでは、生産についての費用計算を十分にしましょう。例えば売上数量とそれに掛かる経費の計算、また合わせて損益計算。初年度、2年目、3年目の売上と経費の見込みを予測しましょう。
さらに、経営革新計画の承認を目指すことをおすすめします。
経営革新とは、企業が「新事業活動」に取り組み、その計画を国や都道府県が承認し、その後は補助金や融資、また専門家相談含め手厚く支援をしてくれる制度です。
スタートアップ時に、経営革新を実施することでビジネスの概要も明確となり、後々に大変役立つ取り組みとなります。
3. 売り方を考える。プロデューサーのように演出してみる
ここからは、さらに商品価値を引き上げることを考える楽しい場面です。
・商品のネーミングをどう考えるか
ここでは、多少の戦略が必要です。
基本的には、他社と同じアイテムや分類内で類似しないことに注意してください。事前に特許庁の商標検索ページを確認しましょう。また、各県などで創業支援担当に相談し、知財の専門家を紹介してもらうこともおすすめです。
あとは、イメージ先行でいくのか、またWeb上で人気のある商品などを少し調べSNSなどの数値も目安に分析して考えていきましょう。
身近に感じるネーミングは、人がふと漏らす言葉にヒントがあります。また、興味を持ってもらえるネーミングでは、「どんな意味?」と思わせるものも良いかもしれません。ネーミングの考え方は無数にありますが、考えるポイントは例えば「五感」に近い言葉を思い浮かべるのも良いのではないでしょうか。
ここで注意したいのは、ネーミングとイメージは別ということ。ロゴデザインに落とし込むと、デザインのチカラでイメージはいか様にも演出できます。「和」のものも「洋風」に、逆に「洋」のものも和のイメージで見せることも可能です。
・パッケージデザインの考え方は3通り
1つ目は、世間からどう感じてもらいたいのかを、包材で表現するブランディング視点の考え方です。
2つ目は、エコの視点から考えて、そのままリユースできるものかなどを優先する場合もあります。特に、女性ターゲットの場合は、容器が欲しくて購入する方も少なくないです。
3つ目は、簡易包装でありながら、どのくらい「想い」を忠実に表現できるかだと思います。
どのタイプにしても、やはり「見た目の印象」はとても大切です。 私の関わった成功事例の中に、「手書きデザイン」の要素があるものは、人の心を動かすと言うことで、売り上げに繋がる率が高いようです。
4. 販路拡大の方法
Webやチラシなどの紙面告知等について、顧客と交流ができるコミュニケーションツールもあるととても理想的です。
どうしても特にスタートアップの頃は、ここに費用が掛けられない場合が多いのですが、最低限用意したいのは次の5つです。
- 商品説明の紙面
- ごあいさつ状
- Webサイト
- SNS
- 注文やご意見はがき
せっかく想いを込めて開発した商品だからこそ、最低限このくらいは準備をしてお客様をお迎えしましょう。
Webに関しては、最近は自分でも作れるホームページツールがあるので上手に利用してください。
また、SNSはここ数年で利用する年齢層もはっきり分かれてきているので、それを知ったうえで活用すると良いです。SNSの広告は100円単位から試せますから、色々とテストをしながらぜひファン層を獲得していってください。
・BtoB BtoCなどについて、どう演出をしていくのかを考える
新商品の展開先は、通信販売などの個人(BtoC)だけとは限りません。
例えば企業へ卸す(BtoB)などの場合も充分に考えられます。
その時に、パッケージのデザインを卸商品用に変えたり、卸すことで取引金額も変わってくるので、包材の費用計算もきちんとして、どのくらい卸したいのか、どのくらいの利益が理想的なのかなど、お互い企業同士がきちんと納得のいく取引をしながら進めて行きましょう。
商品の演出については、人生経験や知識も必要なので、経験者がいない場合は、コンセプト作りからクリエイティブの専門家に相談するのもおすすめです。
・一番売りたいところへは、あきらめずにトライ! すること
たまに、妙に遠慮をしている人がいますが、「欲しいものは欲しい!」と、展開したい販路先には真っすぐラブコールを送ってください。一歩踏み込むことで、かならず新しい出逢いが待っています。
地元の卸したい店舗から、全国展開している店舗まで色々とチャレンジをしてみましょう。
5. ビジネスプレゼンにチャレンジしてみましょう!
各県や金融関連企業などでもビジネスプレゼンテーションの機会が毎年あります。
ここでは、「資金調達」も見込め、新商品がどのように受け止められ、どのように未来性があるのかなどを試すとても良い機会です。
場合によっては、応援者が現れることもあるかもしれません。金融関連では、銀行等だけでなく投資家との新たな出会いもあるなど、自分にとって有利と思える情報も得ることができます。
ビジネスプレゼンに出ることは、自分の開発した商品を通して、ビジネス構造も改めて振り返るきっかけになります。
また、プレゼンテーションでは未来の構想も語ることにもなるので、自身がその先まで見通すことができます。
「ものづくり」の締めの行事として、ぜひ参加をしてほしいです。
まとめ
スタートアップの「ものづくり」などで、相談を受ける際に私が必ずたずねることは「その商品は社会的課題を意識していますか?」ということです。
社会的課題は、内閣府が掲げているものだけに限らず、地域でのお困り事も視野に入れて自身にできることは何があるのかをしっかりと考えていただきたいと思っています。
その理由は、創業時は自分のことを考えるだけで精一杯な方が多いからです。私自身も振り返るとそうでした。
いま当時の私に改めてアドバイスをするとしたら、もうひと頑張りして、まわりを見渡し、事業と社会を繋げて活動をすることで、さらに価値あるビジネスが実現できるよ、と伝えたいです。
また、誰かの役に立つことは、例えば補助金や助成金など国や自治体の支援の幅がだいぶ広がりますし、特に創業時は多くの方々に応援いただくことで、様々なビジネス展開に広がる可能性があります。
そこに、結果的には商品の付加価値が生まれ、販路も広がり、売り上げも徐々に上がり、事業の使命感に繋がります。
商品のコンセプトやイメージづくりは、最初の「想い」と、じっくりと向き合ってしっかりと考えてほしいです。そのあとは、クリエイティブや知財等の専門家と相談しながら進めることが有効な進め方だと思います。
ぜひ、あなたにしかできない「ものづくり」で素晴らしいロングセラー商品を作り上げてください。
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(監修:
株式会社シーノ・オフィス/代表 白神しのぶ)
(編集: 創業手帳編集部)