ゼロゼロ融資の借り換え保証とは?制度の内容や手続きの流れを解説

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ゼロゼロ融資の借り換え保証を利用して、返済の負担を軽減させよう


ゼロゼロ融資は、コロナ禍で苦しい状況に陥った企業の資金繰りを支えてきました。その返済が、2023年に入ると本格的にスタートします。
返済が始まると、コロナ禍で経営状況が悪化した企業にとって、大きな負担になることが懸念されています。

経営状況が芳しくない場合でも、借り換え保証を利用することで負担を軽減させることも可能です。
今回は、ゼロゼロ融資の借り換え保証の内容や手続きの流れなどを詳しく解説します。

「ゼロゼロ融資」とは?


この章では、ゼロゼロ融資の概要や特徴、リスクを解説します。

ゼロゼロ融資の特徴

ゼロゼロ融資は、新型コロナウイルス感染症の影響によって売上げが低迷してしまった企業を支援する目的で2020年にスタートした制度です。
金融機関に支払う利子を公的機関が3年間担保し、返済できなかった時は信用保証協会が肩代わりするという内容です。
実質的な利子と担保がゼロとなるため、「ゼロゼロ融資」と呼ばれるようになりました。

スタートしたばかりの頃は、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫といった政府系の金融機関が行っていましたが、2020年5月からは民間の金融機関でも融資が可能になった経緯があります。
受付は、民間の場合は2021年5月、政府系金融機関は2022年9月に終了となっています。

ゼロゼロ融資におけるリスク

ゼロゼロ融資は魅力的な制度に見えますが、リスクもはらんでいます。
例えば、融資を受けるハードルが下がるため、身の丈に合わない金額を借りてしまう場合があるという点です。
金融機関にとっては、確実に融資を回収できる方法で、利子も稼げることからメリットが大きくなっています。

身の丈に合わない融資を受けた企業が貸倒れとなった場合、財源から保証される仕組みです。したがって、影響を受けるのは最終的に国民まで及んでしまうことを意味します。

ゼロゼロ融資の借り換え保証制度とは?


ゼロゼロ融資の借り換え保証制度は、2023年1月10日から始まりました。この制度を使うと、返済の負担を軽減することにつながります。
続いては、借り換え保証制度が設けられた背景や内容についてご紹介します。

借り換え保証制度が設けられた背景

融資を受けた企業は、返済するのが当たり前です。しかし、ゼロゼロ融資には借り換え保証制度が設けられました。その背景にはどのような事情があるのでしょうか。

1.返済による資金繰り悪化を防ぐため

ゼロゼロ融資には利子や担保がないため、多額の融資を受けやすい制度となっています。融資を受けることで事業の維持は可能となりました。
しかし、返済が始まった途端、苦しくなってしまう企業が増えるのではないかと予想されています。

返済が本格化する2023年夏頃には資金繰りの悪化により、芳しくない事態を迎える企業が増える恐れがないとは言い切れません。
そのような事態に陥ることを未然に防ぐために始まった制度が、ゼロゼロ融資の借り換え保証制度です。

2.事業再構築のための資金調達を行ってもらうため

借り換え保証制度という名前になっていますが、新たに資金を必要とする企業も利用できます。
政府がコロナ禍を機に事業の再構築を進めてもらいたいと考えているため、新たな資金調達を考えている企業でも借り換え保証制度を利用できるように間口を広げています。

事業の再構築にもお金は必要になるので、企業にとっては魅力的な制度だといえるでしょう。
取扱期間は2024年3月31日までとなっているので、利用を考えている場合はタイミングを逃さないように注意してください。

借り換え保証制度の内容

借り換え保証制度は、一定の要件を満たした中小企業が金融機関と対話し、経営行動計画書を作成することで利用できる制度です。
借入れ時の信用保証料を大幅に軽減するため、融資を受けている企業にとって大きなメリットが生まれます。

保証の限度額は1億円、保証期間は10年以内、据置期間は5年以内となっています。金利は金融機関所定の金利となり、保証料は0.2%などです。
要件には、売上げもしくは利益率が5%以上減少した場合などが盛り込まれています。

100%保証の融資を受けている場合は、100%保証の借換えが可能です。
経営行動計画書の作成や金融機関による継続的な伴走支援を行うことも条件に含まれているため、利用前に確認しておいてください。

ゼロゼロ融資の借り換え保証制度を利用できる条件


ゼロゼロ融資の借り換え保証制度を利用するためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
続いては、どのような条件を満たすと借り換え保証制度を利用できるのか、詳しく解説します。

1.中小企業信用保険法(保険法)第2条第5項第4号の規定で認定を受けている

ひとつ目は、中小企業信用保険法(以下、保険法)第2条第5項第4号の規定で特定中小企業者の認定を受けていることです。
認定の要件は、指定された地域で事業を行っており、影響を受けてから原則として1カ月間の売上高などが前年の同時期と比べ、20%以上減少した場合です。

また、その後2カ月間を含めた3カ月間の売上高などが前年と比べ、20%以上減少することが見込まれる場合も要件に含まれています。

2.保険法第2条第5項第5号の規定で認定を受けている

2つ目は、保険法第2条第5項第5号の規定で認定を受けていることです。
認定されるのは、指定された業種に属する企業で、直近3カ月の売上高などが前年と比べて5%以上減少している場合です。

また、指定された業種で事業を行っていて、製品などの原価のうち20%以上を占める原材料の仕入れ価格が20%以上上昇しているのに、製品などの価格に転嫁できないことも要件に盛り込まれています。

3.売上高や売上高総利益率などで以下に該当している

3つ目は、売上高や売上高総利益率などで以下に該当していることです。

  • ここ1カ月間の売上高が前年同月と比べて5%以上減少している
  • ここ1カ月間の売上高の純利益率が前年同月と比べて5%以上減少している
  • ここ1カ月間の売上高の純利益率が直近決算の売上高の純利益率と比べて5%以上減少している
  • 直近決算の純利益率が直近決算前期の売上高の純利益率と比べて5%以上減少している
  • ここ1カ月間の売上高営業利益率が前年同月の売上高営業利益率と比べて5%以上減少していること
  • ここ1カ月間の売上高営業利益率が直近決算の売上高営業利益率と比べて5%以上減少していること
  • 直近決算の売上高営業利益率が直近決算前期の売上高営業利益率と比べて5%以上減少していること

ゼロゼロ融資借り換え保証制度における手続きの流れ


ゼロゼロ融資借り換え保証制度を利用するためには、手続きをしなければいけません。
手続きをスムーズに行うには、どのような流れで行われるのかをあらかじめ知っておく必要があります。そこで、以下に手続きが行われる流れを順序立ててまとめました。

1.経営行動計画書を作成する

ゼロゼロ融資借り換え保証制度の申請には、経営行動計画書が求められます。経営行動計画書は、金融機関と対話する中で作成される書類です。
記載する内容は以下のとおりです。

  • 事業者名…住所・法人名・金融機関を通じた情報提供への同意を含む
  • 現在の状況…事業概要・事業の強みと弱み(課題を含む)・財務状況(課題も含む)
  • 財務分析…売上げの増加率(売上げの持続性)・営業の利益率(収益性)・労働生産性 (生産性)・EBITDA有利子負債倍率(健全性)・営業運転資本の回転期間 (効率性)・自己資本の比率 (安全性)
  • 具体的なプラン…改善計画と目標値・1年目~5年目までの取組計画・資本の使い道
  • 収支計画と返済計画…直近の決算状況・1年目~5年目までの売上高・営業利益・税引き後の当期純利益・減価償却費・借入金返済額

2.融資の申込み後、与信審査を受ける

融資を受けるためには、この制度に限らず与信審査を受ける必要があります。与信審査は、融資先の返済能力を確認するために行われるものです。
貸倒れのリスクがないかなどを調べるために必要なフェーズです。

外部情報(取引先のコーポレートサイトなど)や内部情報(営業担当社からの情報など)を加味し、与信審査を金融機関が実施します。
融資可能な金額などを決めるための指標になるので、非常に重要です。

3.セーフティネット保証上の認定申請を行う

ゼロゼロ融資借り換え保証制度を利用したい場合は、セーフティネット保証上の認定申請を行う必要もあります。
これは、セーフティネット保証の枠組みの中で実施される制度なので、必須条件となっています。

セーフティネット保証は、市区町村によって認定されるものです。認定申請を行うのは、金融機関となっているため、企業側がすることは基本的にありません。

4.信用保証協会から保証審査を受ける

セーフティネット保証上の認定申請が完了したら、信用保証協会から保証審査を受けます。
信用保証協会は、中小企業の財務諸表などから、事業内容の分析・把握・経営計画などの検討をすることで保証の可否を決定する機関です。
保証を認めた場合、信用保証書の交付を受けた企業に対し、金融機関が融資を行います。

信用保証協会の保証審査も金融機関が行います。審査の時に必要な書類のひとつが、企業が提出した経営行動計画書です。

5.借り換え融資の実施

借り換え融資は、金融機関・市区町村・信用保証協会が承認した場合に実施されます。承認してもらうためには、不備なく書類を用意することがポイントです。
不備があった場合は、申請しても通らないため、抜かりなく準備できるように金融機関に最終確認をしてもらうことをおすすめします。

ゼロゼロ融資借り換え保証制度を利用するためには、多くのステップを踏まなければいけません。
その中でひとつでもミスがあると融資を受けられなくなってしまうので、細心の注意を払ってください。

6.金融機関が継続的な伴走支援を行う

融資が決定したら、金融機関は継続的な伴走支援を行います。継続的な伴走支援を行うことも、ゼロゼロ融資借り換え保証制度を利用するための条件となっています。
これは言葉のとおり、金融機関が継続して融資を受けた企業を支援するというものです。

継続した支援を実施することにより、中小企業の経営者の負担を軽減することが目的です。支援機関と相談しながら経営改善の取組みを行うための後押しになります。

ゼロゼロ融資返済に向けた対策


ゼロゼロ融資の返済が目前に迫っているため、今のうちから素早く準備を進めることが大切です。
最後に、借り換え保証制度以外の対策にはどのようなものがあるのかをご紹介します。

1.まずは借入れの状況を把握する

融資を受けたにもかかわらず、返済が難しいと感じる場合は、借入れの状況を把握できるように精査してください。
借入残高・毎月の返済額・返済予定日などを確認します。それらをリストアップすると、滞納することなく返済できる見込みが見えてきます。

借入れの状況が明確になっていれば、金融機関や士業へ相談する際の資料にもなるので、一石二鳥です。

2.経営相談窓口を利用する

ゼロゼロ融資を完済するため、経済産業省が設けている新型コロナウイルスに関する経営相談窓口を利用するという方法もあります。
この窓口では、ゼロゼロ融資・各種給付金・補助金・資金繰りに関連する相談を受け付けています。
平日はもちろんですが、土曜日や日曜日に対応可能な窓口もあるので、調べてみてください。

資金繰りの関するアドバイスをもらえるため、今後の道筋も立てやすくなります。経営を立て直す一助になるかもしれません。

3.事業再構築補助金の申請手続きをする

事業再構築補助金は、事業の再構築を支援するために作られた補助金です。新しい事業を行う時や事業拡大を目指す時などに利用できます。
大きな事業再構築を行う中小企業はぜひ利用したい制度です。

補助金を利用するためには、審査をクリアする必要があります。
応募条件は、新型コロナウイルス感染症の影響で売上げが減少していること、新たな事業展開や拡大を目指していること、認定経営革新等支援機関と共に事業計画を策定することです。

4.出向支援サービスを活用する

出向支援サービスを利用するのもひとつの方法です。出向支援サービスは、事業を一時的に縮小する企業から人手不足で困っている企業へ従業員を出向させる仕組みです。
在籍型出向を採用することにより、雇用の維持を図れます。

一定の条件をクリアした在籍出向であれば、産業雇用安定助成金やスキルアップ助成金の対象になります。スキルアップ助成金は、スキルアップを目的とした出向が対象です。

5.それでも難しければ弁護士に相談する

様々な方法を試しても苦しい状況が続く場合は、弁護士に相談してみてください。
弁護士に相談すると、民事再生など法的な手続きを検討する際にサポートをしてもらえます。
これまでに試した対策以外にも、効果が期待できそうな方法を教えてもらえる可能性もあります。

債務を減らしても返済の目途が立たない時は、経営者の自己破産が最終手段です。自己破産をすると車などの財産も失うことになるため、できるだけ避けたい方法です。

まとめ

コロナ禍で苦しい状況に陥った企業の資金繰りを支えてきたゼロゼロ融資制度の返済が、2023年の夏から本格化します。
返済がスタートすると、資金繰りが厳しい状況になってしまうリスクが高い企業もあります。そのような企業を支える制度が、ゼロゼロ融資借り換え保証制度です。

しかしこの制度を使っても、返済が滞ることはゼロではありません。万が一の時に備え、ほかの対策も考えておく必要があります。

創業手帳(冊子版)では、資金繰りに困った時の対策に関する情報なども掲載されています。
返済に不安があり、対策を今から講じたいと考えている方もぜひ創業手帳をご活用ください。

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(編集:創業手帳編集部)

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