税務調査の実施はいつ?対象になりやすい事業者の特徴や調査前後の対応も解説
税務調査は7~11月に行われるケースが多い
税務調査という言葉を聞いたことはあっても、具体的にいつ行われるのか、何をするのか、などについていまいちわからない方もいるかもしれません。
税務調査は、税金の申告や納税が正しく行われているのかを調べるために実施されているものです。7~11月に行われるケースが多くなっています。
今回は、税務調査はいつ行われるのか、対象になりやすい事業者の特徴はあるのか、などの疑問に答えていきます。
調査前後の対策についても解説しているので、目を通してみてください。
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この記事の目次
税務調査が「いつ」という決まりはない
税務調査が行われる明確な時期は決まっていません。そのため、どのタイミングで行われてもおかしくありません。
しかし、前述したように7~11月に行われるケースが多いので、そのくらいの時期に行われると頭に入れておいても良いでしょう。
年末を過ぎて新年がスタートすると、年末調整などの処理が始まって忙しくなるのでその数は減少傾向となります。
そこから確定申告の準備時期も始まるので、上半期に税務調査が行われるケースは少ないといわれています。
実施頻度に関しても、まちまちなので予想がしづらいです。
毎年のように税務調査が行われている法人があれば、何十年もの間税務調査が行われていない法人もあるため、どのくらいの頻度で自社の調査が行われるのか、ということを予想するのは困難です。
税務調査の目的は「申告内容のチェック」
税務調査を行う目的は、申告内容をチェックすることです。納税者が提出した申告内容に不正やミスがないか、細かい部分まで確認されます。
調査を行うのは国税庁が管轄する税務署が主体となっていて、法人だけではなく個人も対象になります。
税務調査を行い、事実と申告内容に相違があると判断されれば、正しい納税額を計算し、不足分に関しては追徴課税されるという流れです。
ケアレスミスだけではなく、故意的に不正をするケースもあるため、このような調査が行われています。
国税通則法に基づいて税務調査は実施されているので、調査官は納税者に対する質問や帳簿書類の検査などを行えます。対象になったら、調査官に協力しなければいけません。
税務調査の種類は2つ
税務調査には、任意調査と強制調査の2種類があります。事前連絡の有無や調査理由などに違いがあるので、把握しておくことが望ましいです。
では、それぞれの概要を説明していきます。
任意調査
任意調査は、その名の通り任意で実施される税務調査です。一般的な税務調査はこちらを指します。
任意調査が行われる際は、事前の告知があります。
告知された日時に管轄の税務署から調査官が店舗や会社の事務所に訪問し、調査対象者への質問や書類のチェックを行うといった流れです。
不正や誤りがないか調べるため、対象者へのヒアリングだけではなく書類のチェックも必要不可欠です。
調査に応じるかどうかは任意となっていますが、税務署は税法に基づく調査権限を有しています。
そのため、正当な理由がないのに拒否すると罰則の対象になってしまうので、注意しなければいけません。
企業への任意調査は、4~5年に1回のスパンで行われるケースが多いです。不正を疑われているわけではないため、調査対象になっても過剰に心配する必要はないといえます。
強制調査
強制調査は、税務署の上部組織にあたる国税庁の査察部(通称:マルサ)が行う調査です。
査察調査とも呼ばれていて、裁判所の令状を得て査察部が事前連絡をすることなく、調査を実施します。
強制調査は、脱税額が1億円以上と巨額になっていたり、悪質な隠ぺいを行っていると疑われたりする場合に行われるもので、拒否することはできません。
強制調査で脱税が明らかになると、検察庁に告発されて刑事事件として扱われます。
悪質性が高いと怪しまれると強制調査の対象になる恐れがあります。
しかし、通常の取引きや申告をしている場合は対象になる可能性は極めて低いので、過度に警戒する必要はありません。
税務調査の対象になりやすい法人の特徴
税務調査の対象になるのは、すべての法人ではありません。何度も対象になるケースもあれば、ずっと調査を受けていないといったケースもあります。
そこで続いては、税務調査の対象になりやすい法人の特徴について解説していきます。
売上げや利益などの変動が大きい
売上げや利益などの変動が大きい法人は、不正を目的とした操作が疑われやすいので、調査の対象になる可能性が高いです。
前年度と比べて売上げが大幅に下がっている場合は、意図的に本来の売上げよりも少なく申告しているのではないかと想定できるからです。
また、売上げが急激に伸びて黒字転換している場合も、調査対象になりやすいといわれています。
申告内容に何かおかしい部分があるのではないかと税務署側は疑うためです。
実際に売上げや利益などの変動が大きい場合もあるので、調査で問題ないとみなされれば罰則を受けることはありません。
過去に税務調査で指摘されたことがある
過去に税務調査で指摘された経験がある法人が対象になるケースも珍しくありません。正しく納税の申告が行われているか、チェックされやすくなっているためです。
過去の指摘内容が改善されているかといった確認の意味合いも含め、一定期間が経過した後に再度税務調査の対象になることもあります。
過去にミスや不正があった場合、同じような事態を繰り返す可能性もないとは言い切れません。そのため、過去に指摘を受けた法人を調査対象にするのは当然だといえます。
このことから、これまでに税務調査で何らかの指摘を受けた経験がある法人は、同じようなミスを繰り返さないように細心の注意を払いながら、書類の作成などを行わなければいけません。
同業他社と比べた時の所得率が低い
同業他社と比べた時の所得率(所得÷売上げ)が低い法人も、税務調査の対象になる可能性が高いです。
なぜかというと、利益を圧縮し、税金をごまかしているのではないかと疑われてしまうからです。
税金をごまかされないようにするため、税務署は所得率を重視していることを忘れてはいけません。
実際に所得率が低いといったケースも当然あると考えられます。そのような場合は、適切な書類を提示することで疑いを晴らすことができます。
不正が多くみられる業種
不正が多くみられる業種に該当する場合も、税務調査の対象になりやすいです。
国税庁が発表した「令和4事務年度 法人税等の調査事績の概要」によると、以下のような業種で不正が多く発見されています。
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- その他の飲食:36.2%
- 廃棄物処理:29.4%
- 中古品小売:28.7%
- 土木工事:28.1%
- 職別土木建設工事:27.7%
- 医療保険:27.6%
- 一般土木建築工事:26.8%
- 管工事:26.4%
- 自動車、自転車小売:25.1%
- 美容:25%
1件あたりの不正所得金額が大きい業種は、計量器・医療機械・理化学機械等製造や運輸附帯サービス、野菜・果物卸売販売などとなっています。
税務調査の対象になりやすい個人事業主の特徴
税務調査の対象になるのは法人だけではありません。個人事業主が対象になるケースもあります。
次は、税務調査の対象になりやすい個人事業主の特徴をピックアップしてご紹介します。
確定申告をしていない
個人事業主としてビジネスを行っているのに確定申告をしていない場合、税務調査の対象になりやすいです。
確定申告をしていなければバレないと思われがちですが、取引先の税務申告などで個人事業主の売上げは容易に推測できます。
そのため、確定申告をしていないことが原因となり、税務調査の対象になる可能性があります。
特に、売上げがある程度上がっているにもかかわらず、所得税や消費税を納めていない場合は、確率が高くなりやすいです。
最近は様々な資料が蓄積されてビッグデータ化されているので、所得隠しや申告漏れもさらに特定されやすい状況になっています。
申告漏れが多い業種に該当している
申告漏れが多い業種に該当する個人事業主であれば、税務調査の対象になる可能性が高いことを覚えておいてください。
税務調査を実施できる数には限りがあるので、申告漏れが多い業種に該当する業種に絞って行われることも容易に想像できます。
「令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」を確認してみると、申告漏れが多い業種は経営コンサルタントやくず金卸売業、ブリーダー、焼肉、タイル工事などが含まれています。
その年によって入れ替わりはありますが、毎年のように上位に位置する業種もあるので、該当する場合は適切に書類の準備などを行うようにしてください。
売上げを1,000万弱に調整している
個人事業主の中には、売上げを1,000万弱に調整している方もいます。そのような場合も、税務調査の対象になる可能性が高いです。
なぜかというと、消費税逃れを疑われてしまうからです。
1年の売上高が1,000万円を超えると翌々年から課税事業者となり、消費税の納税義務が発生します。
それを避けるために過少申告をしているのではないかと疑われる恐れがあります。
意図的な過少申告をすると、重加算税の対象になって7年分の修正申告が必要となり、追徴課税も発生するので絶対に過少申告をしてはいけません。
新しい分野のビジネスを行っている
国税庁では、経済活動が広がっている新しい分野のビジネスに関する情報を集めるため、積極的に税務調査を行っています。
「令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」を見てみると、各種シェアリングビジネスや暗号資産、ギグワーカー、デジタルコンテンツなどの調査が積極的に行われていることがわかります。
新しい分野のビジネスは盛り上がりを見せるので参入を検討する個人事業主も多いです。
しかしそのようなビジネスを行う場合は、税務調査に入られやすいことも把握しておかなければいけません。
現金取引きが多い
サービス業や建設業などを行っている現金取引きが多い個人事業主も税務調査の対象になるケースが多いです。
なぜかというと、預金通帳を通すビジネスと比較した場合、現金でのやりとりは脱税の証拠が残りにくいからです。
そのため、売上げを抜いていないか、領収書を紛失してしまったという理由で架空の領収書を捏造していないか、などが確認されます。
現金取引きが多いビジネスを行っているのであれば、領収書を必ずもらうこと、帳簿をしっかりと作成することなどを徹底することが重要です。
税理士と顧問契約を結んでいない
税理士と顧問契約を結んでいない個人事業主が税務調査の対象になるケースも珍しくありません。
確定申告の作成や提出を税理士に依頼すると、確定申告書に担当の税理士が署名捺印(電子申告の場合には電子署名)します。
つまり、この署名捺印がないと個人で納税の申告を行ったという証になります。
税理士が作成した確定申告書であれば、単純なミスが発生する可能性は極めて低く、故意的な脱税も起こりにくいです。
過少申告などのリスクが低いと判断されるため、税務調査の優先度は低くなります。
しかし個人で申告している場合は、ミスなどのリスクが高まるので、税務調査の対象になりやすいです。
税務調査が入った時の対応は?
税務調査の対象になると焦ってしまいますが、適切な対応を講じれば問題ありません。最後に、税務調査が入った時の対応について解説していきます。
税務調査に必要な書類を用意しておく
税務調査に必要な書類は、以下のとおりです。
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- 帳簿(仕訳帳、総勘定元帳、売掛帳など)
- 帳簿作成に使った資料(領収書、小切手控、借用証など)
領収書などの帳簿類は、7年間保存しておく必要があります。書類によっては5年間の保存で問題ないものもありますが、区別があいまいになってしまうことも考えられます。
そのため、基本的にはすべての書類を7年間保存しておくのが望ましいです。
領収書を紛失して捏造してしまうといったパターンもありますが、やってはいけない行為です。
そのような事態にならないようにするためにも、必要な書類は適切にまとめておいてください。
正確な情報を提供する
税務調査の手間を少しでも省くためには、正確な情報を調査官に提供しなければなりません。
顧問契約を結んでいる税理士に申告書を作成してもらえば、より正確な情報を提供しやすくなります。
税理士が申告書を作れば税務調査の対象にならないわけではありませんが、信頼度は増します。
申告書の信頼性を高める書面添付制度を使うのもおすすめです。
この制度は税理士法第33条2に基づくもので、税務調査の対象になったらまずは税理士に連絡が入り、税理士が税務署とやりとりしてくれます。
顧問税理士に立ち会ってもらう
税務調査の対応に不安を感じる場合は、顧問税理士に立ち会ってもらうのがおすすめです。
税理士に依頼すれば、当日の対応だけではなく、税務調査までにどのような準備をすべきかなどのアドバイスもしてもらえます。
適切な対応をするためにも、税務調査の通知が来たら税理士に相談してみてください。
まとめ・税務調査がいつ行われてもいいように日頃から正確な帳簿管理を心掛けよう
税務調査は、いつ行われるのかという明確な決まりがありません。そのため、どのタイミングで調査が行われるのか不安に感じてしまう方もいます。
任意調査であれば通知が来てからの調査になりますが、強制調査は突然来るので焦ってしまうものです。
いつ税務調査が行われてもいいように、日頃の帳簿管理を徹底しておくことは重要です。
また、心配な方は税理士に相談しておくと、不安や問題点も解消されるでしょう。
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(編集:創業手帳編集部)