Progate 加藤將倫|エンジニアになる一歩目の学びの場として価値を提供し続ける

創業手帳
※このインタビュー内容は2023年04月に行われた取材時点のものです。

より実践的なプログラミング学習でエンジニア不足の世の中を変える


プログラミング領域はIT・AIの発展とともに必要性が増していくことが予想されます。
しかし、現在の日本にはエンジニア人材が少なく、今後も人材不足が深刻化する可能性があります。

このような現状に対して株式会社Progateは、「誰もがプログラミングで可能性を広げられる世界」というミッションを掲げ、プログラミング学習の一歩目となる場を提供しています。

今回はProgateのCEOを務める加藤さんに起業までの経緯や今後の展望などについて、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

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加藤 將倫(かとう まさのり)
株式会社Progate 代表取締役
1993年愛知県生まれ。東京大学工学部中退。
小学校と中学校をオーストラリアのパースで過ごす。
2014年7月、東京大学在学中にオンラインプログラミング学習サービス「Progate」を創業。2018年3月にはForbes 30 Under 30 ASIAに選出される。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

大学在学中に「Progate」を創業


大久保:起業までの経緯を教えてください。

加藤:2014年に株式会社Progateを創業したのですが、実は2013年までは起業とかには全く興味がなく触れ合うこともなかったんです。

起業がしたくて起業したわけではなく、創りたいプロダクトがあってそれを広めるために会社を創業したという感じです。

プログラミング自体も昔からやっていたわけではなくて、大学3年次に学部の授業で初めて触れたってくらいです。

ただ、マーク・ザッカーバーグの映画を見て、彼が19歳の時にはFacebookの原型を創っていたということを知り、かっこいいなと漠然と憧れていました。情報系の学部に入ったのもそういった経緯からですね。

大学の授業ではC言語を学んでいたんですが、「どうやったら今学んでいることでFacebookのようなものが創れるんだろう」というところがつながらなかったんですよね。

そのタイミングでプログラミングの独学を始めたのですが、今ほどの環境はもちろんないので独学自体も難しいという現実がありました。

僕の場合はたまたま、大学の同級生達(Progate創業メンバー)とプログラミングを学ぶコミュニティ活動をしていくなかで、教えてくれる人に巡り会え、受託開発の仕事をいただくことができていました。

粗さはありつつも「モノを創ってお金を稼ぐ」という体験ができたのは自分としてとても大きかったですね。

大久保:価値のある体験をされたんですね。どういった思いからProgateを創られたのでしょうか。

加藤プログラミングはしっかり学べば人の人生を変えられるスキルだなと思ったんですが、独学時代に凄く苦労した経験から、導いてくれる人がいないと学べないスキルだとも思っていました。

僕と同じように学びの段階でつまづく人も多いのではないかというところから、それを解決するモノをつくれたら面白そうだなと思って創り始めたのが「Progate」です。

創り始めて少し経った頃に、イーストベンチャーズの松山大河さんにお会いしてProgateを評価していただき、投資もしていただけるというお話が出たあたりから、会社としてしっかりとプロダクトを伸ばしていこうというフェーズに入りました。

大久保:Progateのプロダクトとしての成長の過程を教えていただけますか。

加藤:まず無料で提供してとにかくユーザーに受け入れてもらうという期間が1年半くらいありました。

松山さんに投資していただいた資金を元に、とにかくコンテンツを積み重ねていきました。

少しずつ「なんでこれが無料なの?」「お金を払いたいから有料にしてよ」なんていう声をユーザーからいただくようになったタイミングで、今と同じ月額という形での提供を始めました。

有料にしてからもユーザー数は減ることはなく、2018年にアプリをリリースするなど、どんどんユーザー数が伸びていく期間が続きましたね。

国内でユーザー数が安定して伸び始めた後には、海外を視野に入れてインド・インドネシアに展開。

直近の1・2年では、僕の理想とするレベルの学びに近づけるために「Progate Path」という新しいサービスを始めたり、非エンジニア人材の教育に力を入れ始めたりしています。

とにかくプロダクトを磨き込んだ起業当初

大久保:起業において失敗したことがあれば教えてください。

加藤:やらなくて失敗だと思ったのは、起業してから早い段階で経験豊富な人材を採用しなかったことです。

とくに学生起業にありがちだと思うんですけど、採用できる範囲で人材を採用してしまう、具体的には同年代で同じようなレイヤーの人しか採用しないんですよね。

熱狂的になれたり、安定したりはするんですけど、もっと早く経験豊富な人を採用するフェーズに移行した方が近道だっただろうなという後悔はあります。

大久保:逆にやって良かったことはありますか。

加藤:色々なアプローチがあるとは思いますが、めちゃくちゃプロダクトを磨き込むというフェーズを最初に持ってきたのは個人的に良かったと思っています。

プロダクトしか武器がなかったというのもありますが、Progateが営業リソースをそこまでかけずに伸びていったのは、プロダクトとして評価され愛されている部分が大きかったです。

プロダクト自体に営業させる、口コミが伸びるようなプロダクトにするなど、「とにかくプロダクトを磨いていきなよ」と松山さんにいただいたアドバイスを愚直に信じてやってきたのは、とても良かったと思っています。

誰でも気軽にプログラミングが学べるサービス


大久保:Progateのサービス概要や事業について教えてください。

加藤:今のサービスの主軸は、一般の個人に向けたサブスクでプログラミングが学べるものです。

コンテンツは初期に提供していたものがベースとなっていますが、ユーザーからの要望があり利用シーンが広がっていきました。授業で使いたい、会社単位で契約したいというような声からその都度プランが増えていった形です。

学習コンテンツ自体はどのプランでも同じで、それをどのように切っていくかっていう違いがあります。

たとえば、学校向けであれば2言語限定で無料で提供しています。

法人向けであれば、進捗管理機能やチームメンバーの管理ができるダッシュボード機能などに加えて、より実務に直結するような学習目的別にテクニカルスキルを学ぶことができるコースなどを展開し始めています。

また、プログラミング学習の裾野が広がっていくなかで、より気軽にできるようにアプリもリリースしています。

そして、「創れる人」として実務で活躍できるエンジニアを育てるという課題に対してのソリューションとして、「Progate Path」という新規事業も始めました。

大久保:教育から人材紹介のビジネスにも繋がりそうな気がしていますが、そういったことはやられてますか。

加藤:現状としては主力としてやっているわけではないですが、Progate Pathを利用しているユーザーはとくに、最終ゴールが就職なんですよね。

なので、そこをサポートするための試みは始めていて、現段階では主力事業として成り立っているわけではないといったフェーズです。

僕らのビジョンとしては、「モノをしっかりと創れる人達が生み出した価値がさらに世の中を良くしていく」というようにイメージしているので、まずはちゃんと教育ができること・自信を持ってできる人だよと言えるようになることを最重要視しています。

そこができているのであれば、その人達が活躍できる場をできる限り提供したいなと考えています。

大久保:現場でのノウハウなど実務との乖離がある部分についても学べるようにしていくのですか。

加藤:そうですね。実際に新規事業のProgate Pathでは、現場でやることを擬似体験してみようというサービスを提供しています。

ただ言語を学ぶのではなく、要件定義を行いローカル環境で構築するなど、実務に近い学びを再現して、実務との大きな乖離を埋めることに注力しています。

Progateの強みや特徴について

大久保:スクールやオンラインサービスと比べた際の強みや特徴について教えてください。

加藤:スクールとは結構違っていて、単価も大きく違いますし、Progateの方が誰でも気軽に始められて、初心者でも挫折しにくい。そういった入口の設計にはとくにこだわっていますね。

動画で学ぶ系のオンラインサービスもありますが、実行環境をブラウザ上で用意しているという違いがあります。環境構築でつまずいてしまうということもありませんので、本当に事前知識がゼロでもプログラミングがある程度学べます。

大久保:言語から学んで応用していく形でしょうか?

加藤:思想としてはこれを創りたいからこの言語を学ぶという感じですね。

僕自身がC言語を学んでいた時に、何を創れるようになるのかがわからないという点が初期のモチベーションに大きく影響する部分だったので、アウトプット(こういうものが創れるようになる)を大切に各レッスンを作成しています。

大久保:柔らかい雰囲気やスライドで学ぶという点も特徴的ですね。

加藤:そうですね。これは初期からこだわっている部分で、直感的に理解しやすくしたかったという思いと、プログラミングを別世界だと思っている人も当時は多かったので、そこの壁を壊したいなと思って取っ付きやすいデザインやスライドを採用しています。

本当の初心者の方って、そもそも何から始めればいいのかが分からないという方もいると思うので、ある程度の指針を示してあげることも大事かなとも考えています。

大久保:楽しく学べる工夫やユーザーから支持されているところがあれば教えてください。

加藤:そうですね。学習を進めるごとにレベルが上がるという仕組みは初期からずっと入れているもので、あとはランキングがあったり、一時期では友達と競い合える機能もありました。

一番ユーザーのモチベーションにつながったなと思うのは、SNSにレベルアップやレッスン完了をシェアする機能でしたね。

独学はやっぱり苦しいものなので、自分が学んだことをSNSでシェアすることで誰かが反応してくれる、なんていうのは僕自身が学んでても嬉しい瞬間だと思います。

実際に僕らもそういった投稿に反応してユーザーさんの声を聞くというのを初期はよくやっていて、プロダクト内だけでなく、プロダクト外を含めた体験は結構意識して創っています。

モノを創れる人がより一層強くなる世の中に


大久保:エンジニア不足の日本や業界について思っていることがあったら聞きたいです。

加藤僕はより一層モノを創れる人が強くなる世の中だなと感じています。1人でもモノを創れるような時代になっているので、そういった人材は絶対増えた方がいいと思っています。

現段階では需要に対して供給が不足しているため、少ない人材を多くの企業が奪い合っている状況ですが、学習環境やツールの進化により、供給が増えていきやすい世の中にはなってきているとは思います。

エンジニアが増えやすくなってきているものの、足りないから止まっているという現状もありますので、そこはもちろん解決したいです。

現状だとProgate自身も採用に四苦八苦している状況があって、僕自身凄くよくない状況だなと感じています。

Progateが目指す世界が実現できているなら僕らは採用には悩んでいないはずなので、自分達のためにも早くそういった世界にしていきたいですし、それが達成できたらエンジニア不足の課題も解決されていくはずです。

大久保:個人的には地方格差という問題に対してもProgateは貢献していくのでは、と思っているのですがいかがでしょうか。

加藤:思想としては僕は近いものを持っていて、創業当初からオンラインで完結するという部分にはこだわってやってきました。

自分自身も東京にいなかったら今みたいなことはやっていなかっただろうなと感じるので、地方との機会の差は結構あるなと思っています。

ですが学びに関しては、学べる場所が近くにないから学べないというのは凄い勿体無いと思っていて、そういった思いからもオンライン完結にこだわっています。

元々は地方ですとエンジニアを採用する企業自体が少なかったため地域格差がありましたが、最近はコロナによってリモートワークが推進されたことで格差が小さくなってきていると感じています。

世の中的に改善されていっている部分があり、少なくとも学びは場所を選ばなくても良くなりました。

そういった状況を活用しながら、Progateは学びの一歩目の場として、場所を問わず価値を提供し続けるべきだと思っています。

大久保:Progateが広まった先の世界はどうなると思っていますか。

加藤:そうですね。やはりProgateが終わってから実務までの乖離が解決できないと、ボトルネックが解決できていないので、エンジニアが急激に増えるといった世界はまだまだ遠いと感じます。

ですので、その乖離を無くすことが僕らがやらなければいけないことで、海外展開のためにも絶対に越えなきゃいけないハードルだと思っています。

起業家もプログラミングを学んだほうがよい

大久保:最後に起業家に向けて一言お願いします。

加藤プログラミングをやったほうがいいというのは本当に思いますね。

優秀なエンジニアの方は創業者の熱意も見たいと思いますので、創業者自身がプログラミングを学んで下手でも良いから創ってみるといったことは大事だと思います。

また、起業は基本的にずっとしんどいと思います。創業期のしんどさもありますし、うまくいかない時の方が多いです。

なので、しんどさとの付き合い方は早めに確立しておくといいと思います。
続けていれば、やめなければ、いつかはうまくいくはずです。

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(取材協力: 株式会社Progate 代表取締役 加藤 將倫
(編集: 創業手帳編集部)



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