Wit 遠藤 聖弥|早稲田大学発の学生サークル代表が語る「学生起業の今」
自衛隊で培ったチームマネジメント力で学生起業に挑戦
大学3年生で中学受験・自衛官採用試験に特化したオンライン塾「UKANO塾」を立ち上げ、学生起業家としての道を歩んでいる遠藤聖弥さん。自衛隊で培った組織運営のノウハウを活かして事業をおこした起業家です。
かつてパイロットを志して航空自衛隊に入隊した遠藤さんでしたが、その夢が叶うことはありませんでした。自衛隊での経験と挫折は「自分の手で新たな組織を作る」という夢を生み、早稲田大学発の起業サークル「Wit」への参加にもつながっていきます。
そこで今回は、遠藤さんが学生起業に至るまでの経緯や学生起業の今について、創業手帳の大久保が聞きました。

株式会社WithFox 代表取締役社長 最高経営責任者
2002年2月22日生まれ。埼玉県出身。春日部共栄高校を卒業後、航空自衛隊に入隊。起業を志して航空自衛隊を退職し、大学へ進学。大学2年より、株式会社ALBONAにてWebマーケティングを学び、Webマーケティングを活用したAI事業や人材紹介事業の立ち上げなどを経験。2024年7月(大学3年)に株式会社WitFoxを設立。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
学生起業のリアルが詰まった「サークル」の実態
大久保:遠藤さんは「早稲田スタートアップサークル Wit」の5代目代表と伺いました。Witは元々どなたが始められたのでしょうか?
遠藤:弘中稜也と永井寛という2人の学生により、起業を目指す学生の「横のつながり」を作ることを目的として、コミュニティが創設されました。スタートアップというだけあって、社会課題の解決を目指す人がやはり多かったようです。
学生起業がしやすい社会になりつつありますが、まだまだ情報は限られていますし、再現性も高くありません。1人でも多くの学生が起業にチャレンジでき、社会課題の解決に向けた事業を開始できるように、情報共有の場として活用されています。
大久保:Witは早稲田大学の学生以外でも入れるサークルなんですね。
遠藤:色々な大学に起業サークルがありますが、その大学の学生しか入れないサークルと、どの大学の学生でも入れるサークルの2種類に分かれます。
特定の大学生しか入れない起業サークルで言うと、都内では慶應義塾大学のKBC、明治大学のMEC、立教大学の立教起業部が有名です。
複数の大学生が参加するインカレサークルには東京大学のTNKがあり、早稲田大学のWitもその一つになります。
大久保:Witに入ってみてどうでしたか?
遠藤:私が入った当初はWit主催のイベントが年に数回しかなく、あまり活発ではない印象でした。しかし、Wit所属の学生が色々な企業でインターンシップをしており、そのつながりで情報収集をしたり人脈が増えたりと、得られるものは多かったです。
そのおかげもあり、大学3年生の時に「株式会社WithFox」の創業まで辿り着けました。
大学の起業サークルを盛り上げる工夫
大久保:サークル内ではどのように情報交換を行っていますか?
遠藤:主にSlackとLINEグループでの交流が活発で、企業関連イベントやインターンについての情報交換を行っています。
大久保:起業サークルには、熱量が高い人とそうでない人がいると思います。そのあたりは遠藤さんが仕切りながら、全体を盛り上げようとしていますか?
遠藤:そうですね。昨年から組織運営に携わることとなり、代表、2名副代表、そして当時幹部だった私の4人で、組織改革を進めてきました。
前者3名は、対外的なイベント開催の仕組み構築に動き、私は自衛隊で組織構築を見てきた経験を活かして、Witの内部構成を整えるために動いてい
ました。
今年からは私が代表になったので、今はWit全体を統括する役割になりました。
大久保:遠藤さんが代表になってからは、どんな改革を進めていますか?
遠藤:コミュニティとして優秀な人は集まっているのですが、先ほどお伝えしたとおり当初はサークル主催のイベントが少なかったので、企画をどんどん増やしています。
今年からは、内部イベントとして小さいご飯会や勉強会を企画したり、外部イベントとして企業やVC、スタートアップ経営者をお呼びして、2ヶ月に1回ペースで座談会や講演会を実施する仕組みを構築したりしています。規模としては20名前後のイベントが多いですね。
最近の学生起業のトレンドは「AIとメタバース」
大久保:最近の学生起業には、どのような傾向がありますか?
遠藤:AIやメタバースの分野で起業している学生起業家が圧倒的に多い印象です。
大久保:遠藤さんは実際に学生起業を経験されていますが、どんな人が学生起業に向いていますか?
遠藤:人によって合う合わないがありますが、個人的には、自分がやりたいことにフルパワーで熱量を注げる人が起業に向いていると思います。
今は学生起業に挑戦しやすい環境が整っています。その反面、時間的な制約があったり、誘惑が多かったり、やりたいことのビジョンが大きすぎたり、資金が足りなかったりなど、様々な要因で挫折する人が多いのも現実です。
ですが、学生起業を志して、夢中になれることが見つかった方は、絶対に挑戦した方がいいです。
僕は、一度社会に出てから学生に戻って起業しているのですが、他の学生起業家は純粋にすごいなと思います。
大久保:他の大学の起業サークルも盛り上がっていますか?
遠藤:正直に言うと、最近は色々な大学の起業サークルの衰退が進んでいます。
その理由は、純粋に学生を応援したいという大人ではなく、学生を利用しようとする大人が増えてきてしまい、それに疲れた学生がどんどん起業サークルから離れてしまってるからです。
とは言っても、サークルの盛り上がりはその代のメンバーの熱量に大きく左右されます。ですから私たちの代では、これまでで一番と言われるくらい勢いのある運営を目指して取り組んでいます。
「社会のために」──自衛隊を辞めても変わらなかった根幹
大久保:改めて、ご自身のこれまでの経歴を教えてください。
遠藤:高校卒業後、戦闘機パイロットを志して航空自衛隊に入隊しました。
しかし、入隊後に既往歴の関係で地上での勤務しかできないことがわかり、戦闘機パイロットになる夢は断念しました。
その後2年間、地上での勤務をした後に退職し、起業に向けた準備として桜美林大学に入学して現在に至ります。
大久保:大学では何を専攻していますか?
遠藤:リベラルアーツ学群に所属していまして、2年生までは法律学や政治学、哲学などの興味ある分野を一通り学び、3年生の今は法政治学と心理学を専攻しています。
大久保:いつ頃から起業を意識していましたか?
遠藤:自衛隊を辞める時点で、起業することを決めていました。
当時、社会のためになることをやりたい一心で入隊したのですが、次第に自分で組織を作って、チームを動かしたいと思うようになりました。
祖父が東京消防庁のヘリコプターの部隊で、航空隊長として国のために働く姿を見て育ったので、昔から将来は「パイロット」もしくは「社会のためになる仕事」をしたいと思っていました。
パイロットという夢は叶いませんでしたが、次は別の形で社会のためになる仕事をしたいと考えています。
自衛官採用試験に特化した「UKANO塾」で見据える未来
大久保:遠藤さんがやられている事業内容を教えてください。
遠藤:一般的な中学受験と自衛官採用試験に向けたオンライン塾を行う会社「UKANO塾」を大学3年生の時に設立しました。
自衛隊採用試験については、希望するところによって難易度が変わってきます。中卒レベル、高卒レベル、幹部レベル、防衛大、パイロットなどがありますが、当社では防衛大・幹部レベル以外の全てのレベルに対応しています。
大久保:一般的な学習塾とは何が異なりますか?
遠藤:学力レベルを上げるようにサポートするのは当然ですが、自衛隊員として必要なマインドセットに関するカリキュラムも用意しています。
これにより入隊後のイメージが湧きやすくなり、自衛隊採用試験に向けたモチベーションもあがりますし、入隊後の理想と現実のギャップが生まれることも防げます。また、航空学生コース(パイロットコース)では航空身体検査に通過するための身体管理や、航空適性検査の対策など、専門領域までかなり幅広く対応しています。
大久保:今後はどのような展開を考えていますか?
遠藤:オンライン塾のオフライン展開と、フランチャイズ展開をしていきたいと考えています。
オンライン塾以外にもマーケティング分野のインターンもしているので、そちらでキャッシュを作りつつ、いずれ大きく社会課題を解決できるようなビジネスを作り上げたいです。
大久保:最後に、起業したい学生へメッセージをお願いします。
遠藤:自分がやると決めたことに、本当に熱量を注げるのかを考えてください。
熱量があれば、目的と目標までのロードマップも明確にイメージできますし、そこまで行けば再現性が高くなり、結果も人も集まってきます。
具体的なアクションプランに落とし込めたのであれば、後は行動あるのみです。学生起業家の方であれば、早稲田スタートアップサークル Witでもお待ちしています。ぜひ一緒に頑張りましょう。
創業手帳は、起業の成功率を上げる経営ガイドブックとして、毎月アップデートをし、今知っておいてほしい情報を起業家・経営者の方々にお届けしています。無料でお取り寄せ可能です。
(取材協力:
早稲田スタートアップサークル Wit)
(編集: 創業手帳編集部)