ベンチャー企業とは? 失敗しない資金調達から意味や定義などを紹介

資金調達手帳

ベンチャーならではの資金調達について


ベンチャー企業は規模や実績、信頼性などの要因から、現状の自分の会社の成長度合いやトラクション(売上や実績)などに応じて方法の向き不向きや資金の調達額の相場の違いがあります。

資金調達は「借入れ」や「出資」「融資」、「補助金・助成金」などいくつか方法がありますが、どのような資金調達の方法があるのかと自分の会社がどのような成長段階にあるのかを正しく把握しておく必要があります。

今回は、ベンチャー企業に向いている資金調達方法と、向かない資金調達方法を解説します。

資金調達に関する情報をまとめた冊子、資金調達手帳(無料)では、資金調達方法の一覧をわかりやすく表にまとめています。制度の内容・メリット・注意点も書いてありますので、この記事と併せて参考にしてください。

ベンチャー企業とは?


ベンチャー企業に実は定義は存在しません。「設立から数年以内」、「革新的なアイデアを生かした事業展開」、「先進性の高いサービスを提供」などこれらの条件にいくつか当てはまるとベンチャー企業とみなされることが多いようです。

ベンチャー企業は中小企業と混同されることがたまにありますが、中小企業はベンチャー企業と異なり定義が定められています。

ベンチャー企業とスタートアップ、中小企業の違いは?

ベンチャー企業はスタートアップ、中小企業と同一視されることがありますが、実際はそれぞれ異なります。この項ではベンチャー企業とスタートアップ、中小企業のそれぞれの違いについて説明していきます。

ベンチャー企業とスタートアップの違い

ベンチャー企業は「設立して数年」、「小規模」な会社を差すことがありますが、スタートアップ企業は革新的なアイデアと技術をもって短時間で大きく成長することを目的とした企業を指します。

ベンチャー企業と中小企業の違い

中小企業は定義のないベンチャー企業と異なり、しっかりと法で定義づけられています。業種別に【資本金の額又は出資の総額】と【従業員の数】によって定められます。細かい部分は中小企業法に定められているのでそちらを確認してください。例を挙げると、「建設業で資本金、または出資の総額が3億円以下、従業員300人以下」の場合、中小企業として扱われます。

ベンチャー企業を作るために必要なもの

ベンチャー企業を作るために重要視されているのは、「ビジネスアイデア」です。ベンチャー企業を運営する際には出資を募ることが多いですが、ビジネスアイデアが不明瞭な企業に出資したがるベンチャーキャピタル(投資会社)は少ないでしょう。自身のビジネスに説得力を持たせられるような斬新なアイデアが創業時には何より求められます。

ベンチャー企業は成長度合いで資金調達の方法を選ぶ

先に述べた通り、資金調達は、それぞれ会社の成長度合いに応じて相性があります。

ベンチャー企業の場合は事業のタイミングやスピードが極めて重要です。売上げよりも開発先行で事業をすすめる必要があるため、どうしても成長の過程で赤字は避けられません。安定経営の企業と比べると、銀行からのプロパー融資(信用保証協会をはさまずに、直接銀行からお金を借り入れる融資)という方法を受けにくい状況になります。

そのため、ベンチャー企業の資金調達方法としては、融資を受けることよりも出資を受けることの方が相性が良いと言えます。

その代表例とも言えるのが、エンジェル投資家や個人投資家、ベンチャーキャピタルからの出資です。しかし、経営権を奪われるリスクもあり、すべてのベンチャー企業が出資してもらえるわけではありません(エンジェル投資家やベンチャーキャピタルについての詳しい説明は後述します)。
また特にシード期の資金調達の場合、組織の有無や商品のプロトタイプ、トラクションの有無によって相場観が異なります。

ベンチャー企業が適した方法で資金調達をしていくためには、「自分の会社はどのような成長フェーズなのか?」、「どんな資金調達の方法が現実的なのか?」、「それぞれの方法にどのようなメリット・デメリットがあるのか?」を客観的に把握しておく必要があります。そうでなければ、仮に運良く資金調達に成功したとしても会社を成長させるための資金調達になりません。

ベンチャー企業の資金調達、メリット・デメリット

ベンチャー企業は、新しい技術や知識などで創造的なビジネスの展開を目指す企業です。
そのため、アイデアに対して資金が足りないといった場合も多くあります。

また、創業期はスピーディにビジネスを展開していかなくてはならない、という状況が多々あります。資金に余裕があれば、すばやく事業が展開でき、競合にも勝つことができる可能性を上げることができます。先々の事業展開に備えるためには、少しでも多くの資金が必要でしょう。
つまり、資金調達によってまとまった資金が得られることは、ベンチャー企業にとって大きなメリットであると言えます。

ただしベンチャー企業ならではのデメリットもあります。

ベンチャー企業の立ち上げ時は、メンバーも少ないため意思決定が早いですが、逆に言えば抑えがきかない状況になりがちです。そのため、自分たちで稼いだお金ではない資金が入ってくると成長を急ぐあまり、安易に使ってしまう場合があります。

また、資金調達によりやれることの幅が広がる分、経営層の意見割れのきっかけになってしまうことがあります。株式の持ち分によってはそれがきっかけで会社がデッドロック(膠着)状態になってしまい、新会社を立ち上げるはめになるなどの事例も実際に多くあります。
また、チーム一丸となって一つの目標へ向かうベンチャー企業ならではの一体感が、資金調達による人材採用によって新旧の社員の対立のきっかけになり、空中分解してしまったという事例もあります。

このように資金調達により、急激な環境変化が産まれ、ベンチャー企業ならではのノリで小規模で上手くまわっていた事業が不協和音を立て始めることもあるというリスクを知っておきましょう。
資金が増えるということは環境の変化が産まれるということです。
逆に資金がなければないで、事業の歩みは遅くとも、少ない資金をやり繰りしながら堅実に稼ぐためのアイデアが生まれることもあります。

このようにベンチャー企業の資金調達は方法を間違えるとベンチャー企業ならではの体質からデメリットになることもあるということは把握しておかなければいけません。

ベンチャーの資金調達方法5選


以下のセクションでは実際にベンチャー企業が資金調達するにあたって、どのような方法があるのかについて述べたいと思いますが、その前に「資金調達の方法によってどのような違いがあるのか」を知っておきましょう。

まずは誰から資金調達するかの違いがあります。家族や友人など親しい人から個人的に借りるのか、銀行から借りるのか、はたまた投資家や自治体から借りるのかなど、選択肢はざまざまでしょう。個人的な借入れ以外は、借入先が定める対象や条件もありますので、それに当てはまらなければ、そもそも話が進まないものもあります。

また、借りたお金を「返済する義務があるのか、ないのか」の違いもあります。基本的に、返済しなくてはならないのが「融資」、返済の必要がないのが「出資」や「補助金・助成金」で、返済の義務があるものに関しては当然、金利や返済期間の違いもさまざまです。なお、個人的な借入れについては、個々に条件を決めておく必要があります。

さらに「資金調達のための申請手続きが必要なのか、不要なのか」、「調達できる限度額はいくらか」「調達できた資金は先払いなのか、後払いなのか、どのタイミングで入金されるのか」など、それぞれの資金調達方法によって条件もいろいろです。前述した起業の段階ともあわせ、自分にはどの方法が適しているのかを判断し、うまく活用していきましょう。

上記を踏まえて、ベンチャー企業が取りうる資金調達の方法5つをご紹介します。個々の資金調達の方法におけるメリット・デメリットも解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

1.出資はベンチャーと相性が良い

ベンチャー企業が資金調達する方法として最も向いているのがこの「出資」といえます。出資でもらったお金については、返済の必要がなく、利息もかかりません。資金繰りに悩むことが多いベンチャーにとって、相性の良い資金調達方法と言えます。この点は、後述する「融資」との大きな違いです。

また、出資を受けるということはある意味では世間からのゴーサインといえます。出資者にサービス成功のお墨付きをもらうということはベンチャー企業にとっては非常に心強いことです。
更に副次的なメリットとして次の資金調達が有利になるというのもあります。次の資金調達が金融機関からにしろ、エンジェルやベンチャー・キャピタルからにしろ、一度誰かのゴーサインが出ていると次のゴーサインも出やすいからです。

このようにメリットが多く見える出資ですが、自社が発行した株式を購入してもらい、出資を受けるということになるので、出資者が株主として経営に参加することになります。そのため、上手く株式の持ち分をコントロールしなければ、経営権を失ってしまうかもしれないというデメリットは肝に命じておきましょう。
今回はベンチャーが出資を受ける際に利用することが多い、2つの方法を詳しくご紹介します。

ベンチャーキャピタル(VC)からの出資

ベンチャー企業に馴染みやすい資金調達の方法の代表格ともいえるのが、ベンチャーキャピタル(以下VC)からの出資です。VCは、ベンチャー企業に投資するビジネスを展開している投資会社(投資ファンド)です。上場しそうなベンチャー企業に投資し、上場後に株式を売ることや、株式譲渡などで利益を得ます。

そのため、VCからの出資を受けるには、上場や事業の大きな成長が明確に視野に入っていなくてはいけません。ベンチャー企業にとって馴染みやすい資金調達の方法とはいえ、事業計画がしっかりしていないと出資をしてもらえる可能性は低いということです。
出資先の企業が成長することでVCも利益を得ることができます。ノウハウの提供や、次の資金調達先の斡旋、追加の出資など、会社が成長するための手助けをしてくれることが大きなメリットでしょう。

メリット
  • 資金の返済義務がない
  • 企業の成長のための支援が得られる
  • VCのネットワークにアクセスできる
デメリット
  • 出資比率によっては経営権を握られる
  • 事業を成長させる明確な経営計画が必要
  • VCとのコミュニケーションが必要

資金調達手帳では、複数のVCの特別インタビューを掲載しています。どうすれば出資が受けられるか、成長できる経営者の共通点など、実用的なこともあります。VCがどのような思考で出資をするのかも知れますので、VCからの出資を受けることを目指すベンチャー企業はぜひ読んでみてください。

エンジェル投資家、個人投資家からの出資

出資の中でもうひとつ、有効な資金調達方法と言えるのが、エンジェル投資家や個人投資家からの出資です。エンジェル投資家と個人投資家はいずれも、創業間もない企業に資金を提供する個人のことです。
VCと似ていますが、VCは他人のお金を預かって運用するファンドであるのに対し、エンジェル投資家や個人投資家は自分のお金を投資する点で異なっています。

エンジェル投資家は元起業家や元経営者であることが多く、ビジネスのノウハウを豊富に持っていますし、人脈もあります。創業期のベンチャー企業のよきパートナーとなってくれることが期待できます。また、投資による利益を得ることよりも、後進の育成に重点を置いているエンジェル投資家も多くいますから、頼れる存在となってくれることでしょう。

エンジェル投資家と出会う手段としては、マッチングサイトや交流会やイベント、プレスリリースによる宣伝といった方法があります。
また、エンジェル投資家が良いと思ってもらえれば良いわけで、世間的にまだ評価されていないようなサービスでもエンジェル投資家との相性によっては想像もしていなかったような額を調達できる場合もあります。

メリット
  • 資金の返済義務がない
  • 事業の成長のための支援が得られる
  • 精神的な支えとなってくれる場合もある
デメリット
  • 出資比率によっては経営権を握られる
  • 投資家との相性が悪いこともある
  • 大物投資家との出会いそのものが難しい

資金調達手帳では、エンジェル税制の仕掛け人、元・日本IBM株式会社社長である北城恪太郎さんの「エンジェル投資家の心をつかむ秘策」というインタビュー記事を掲載しています。エンジェル投資家や個人投資家からの出資を目指すベンチャー企業にとって、とても参考になるでしょう。

2.ベンチャーでも可能な融資がある

出資を受けることは、お金を返済しなくて良いのでメリットが多いように感じます。ですが、株の発行によって経営権を部分的に譲渡することになるため、「経営権を保持したいから、譲渡するのは避けたい」と考える方もいると思います。また、そもそも事業に何かエッジの立った部分がなければ投資家やVCの目に止まりにくいです。
そんなときに考えられるのは、融資を利用した資金調達方法です。

融資にはいくつかの種類がありますが、融資と聞いてイメージするのは、銀行や信用金庫などの金融機関からの融資が多いでしょう。
ですが、起業したばかりのベンチャー企業はまだ事業実績がないため、金融機関から直接融資してもらう「プロパー融資」の審査を通過するのは難しいといえます。そのため、創業期の開発段階にあるベンチャー企業でも検討しやすい資金調達の方法を考える必要があります。

融資の中でも、ベンチャー企業にとって実現性の高い資金調達方法が「日本政策金融公庫」です。

日本政策金融公庫の新創業融資

日本政策金融公庫は、政府系の金融機関です。経済政策の一環として、民間銀行では敬遠しがちな起業などをサポートする融資を行っています。
ベンチャー企業のなかでもスタートアップの場合は「新創業融資」という方法を検討しましょう。新しく事業を始める人や、事業を始めて間もない人が事業資金を借りる制度としてはもっとも現実的です。

上限額は3,000万円ですが、実際の融資実行額は、1件あたり平均300万円程度です。しかし、きちんとした説明ができた場合は1,000万円の融資も実行されることもあります。

また、最短2週間で融資が実行されるため、この点も創業期にスピードを求めるベンチャー企業には魅力的です。

自治体による制度融資もある

また日本政策金融公庫と同じくベンチャー企業でも手を出しやすい制度として、自治体が取り扱う制度融資があります。信用保証協会が保証を担当して、金融機関が窓口となる制度ですが、お金の出所は各種自治体となっています。

メリット
  • 創業前でも申込みができる
  • 無担保・無保証
  • 申請から融資決定までの期間が早い(2週間~1カ月程度)
  • 審査通過により信用力が上がる
デメリット
  • 利用するにあたって創業からの時期などいくつか制限がある
  • 自己資金がある程度必要
  • 創業計画書を綿密に作り込む手間がある

3.リスクの少ない補助金や助成金による資金調達

国や地方自治体による「補助金・助成金」も、代表的な資金調達方法のひとつです。相手が国や知事体であれば安心な上に、原則として返済の必要がないので、その点は大きなメリットがある方法です。

ただし、公募期間が決まっているため、常に新しい情報を入手するべくアンテナを張っておく必要があります。また、申請にも手間と時間がかかります。
助成金は厚生労働書が管理しているため、雇用周りの状況の整理が条件となることがほとんどです。ベンチャー企業の場合、労働環境の整備が遅れている企業も多く見受けられます。
社会保険に加入していないなどの状況の場合は、労働環境を整備しなければ受給できません。受給の条件がやや厳格な方法と言えるでしょう。

さらに補助金の場合、申請すれば必ずもらえるというわけではなく、審査があることも知っておく必要があります。
いずれの場合も受けられたとしても後払いのため、別途つなぎの資金を用意する必要もあります。1年後に振り込まれるというものもあります。
すぐにキャッシュになるわけではないことも知っておかなければいけません。

メリット
  • 返済しなくてよい
  • 経営権や株式を維持できる
デメリット
  • 手間と時間がかかる
  • 申請できる時期が決まっている

4.やり方しだいのクラウドファンディングによる資金調達

最後にご紹介するのは、近年注目されてきている資金調達方法「クラウドファンディング」です。これは、インターネット上で事業の情報や製品のアイデアを公開し、多くの人から資金を調達する方法です。
ベンチャー企業の場合、エッジの利いたサービスを提供している場合も多く、上手くPRすれば、出資者の目に留まりやすいです。
クラウドファンディングにはいくつか種類があります。

購入型クラウドファンディング

製品アイデアなどに支援者が出資し、出資金額に応じたリターン(製品など)を送る方法

寄付型クラウドファンディング

プロジェクトに対して支援者がお金を寄付する方法

融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)

資産運用した個人から小口の資金を集め、それを融資する方法

株式投資型クラウドファンディング

資金を出資してもらうかわりに未公開株を提供する方法

それぞれのメリット・デメリットがありますが、今回はクラウドファンディング共通のメリット・デメリットを紹介します。

メリット
  • 市場に必要とされているかどうかわかる
  • すばやい資金調達ができる
  • 思った以上の金額を調達できる場合がある
デメリット
  • 必ず資金調達できるとは限らない
  • 手数料がかかる
  • 支援者へのリターンが必要

5.その他の資金調達手段として…

友人や家族からの借入も、資金調達の方法になりえます。イメージとしては銀行などから借りるよりも手を出しやすいかもしれません。親しい間柄であれば、返済期間などを柔軟に決定することができる場合もあります。

ですが、もし借りられたとしても、たいていの場合はそこまで大きな金額にはなりません。また、場合によっては身内の信頼を失って今後の人生に大きな余波を与える可能性もあります。
自立して経営に携わっているわけですから、できれば最終手段と考えたいところです。
また、この方法で資金調達する場合は、トラブルを出来るだけ避けるためにもしっかり説明しておきましょう。きちんと契約書を交わすことも重要です。

まとめ

いずれの方法においても、資金調達は手段であり目的ではないことを肝に銘じておかなければいけません。
ベンチャー企業の最も重要な武器はベンチャーならではのアイデアとスピリットです。
スピード感が重要なベンチャー企業が、資金調達に時間をかけてしまうことは避けたいものです。本当に資金調達が必要となったときに、確実に調達できるようにそれぞれの特徴をよく理解しましょう。

それぞれの特徴を理解したうえで、単体で考えるだけでなく、「融資」と「出資」などの組み合わせで考えてみることも必要です。目標から逆算して、どういう組み合わせがいいのか、最適な手段を考えてみましょう。

何よりも調達した資金を確実に企業の成長に活かせる、自社にとって最適な手段を選んでください。

資金調達手帳では、資金調達の基礎的な知識や、資金調達方法を網羅的に紹介しています。事前に勉強することで、スピード感が求められる創業期の時間のロスをなくすことができます。ぜひ役立ててください。

(執筆:創業手帳編集部)

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