創業4ヶ月の会社が1000万の公庫融資を受けられた理由とは?

資金調達手帳

融資がターニングポイントとなったある企業の急成長のストーリーに学ぶ「創業期に融資を受けるためのポイント」

(※14/07/19 加筆して更新しました)

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創業前後の時期というのは、会社を成長させるために多くの資金が必要だ。

必要な資金を調達する方法は主に3つある。第一に融資を受けること、次に補助金・助成金をもらうこと、そして出資を受けることだ。

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融資とは「個人または法人が金融機関等から返済が必要な資金を調達すること」である。ここで注意したいのは、起業直後の創業期にあるスタートアップベンチャーが融資を受ける場合、銀行などの民間の金融機関から高額の融資を引き出すことはほぼ不可能なことだ。そこで多くの創業者は、公的金融機関である「日本政策金融公庫」や「信用保証協会」から融資を受けることになる。

今回は、民間の金融機関の間接金融を補完することを目的とする「日本政策金融公庫」からの借り入れに成功した、萱場氏にお話を聴いた。


萱場弘盛(かやば ひろもり)
1979年、宮城県仙台市生まれ。専修大学卒業後、アデコ株式会社に入社。株式会社ヴィックスコミュニケーションズに転職後、雇用や教育に携わるためレイラインを創業。同社代表取締役。

レイライン社について
設立:2013年5月
資本金:3,000,000円
事業内容:営業支援事業、ウォーターサーバー販売事業など

事業開始にあたり、必要な資金が足りなかった

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― そもそもなぜ融資を受けようと思ったのですか?

萱場:会社を設立し、事業を始めようと思ったときに、必要な資金が足りなかったからです。私はこの会社を2013年の5月に立ち上げたのですが、起業直後は営業のコンサルティングをメインにやっていました。しかし、事業を進めていくうちに、いまのメイン事業にである「ウォーターサーバー営業代行業務」の依頼が増えてきたんです。

私は前職で新規事業立ち上げを8件やっていたのですが、そのなかにウォーターサーバーの事業があったんです。なのでウォーターサーバーのメーカー様から、とても良い条件でウォーターサーバー営業代行の依頼のお話を多くいただくようになり、「ウォーターサーバーの事業も始めたい」と思うようになりました。

しかし、いざ会社の資金状況をみてみるとそのためのお金がありません。そうした時ちょうど弊社の顧問会計事務所の方が「融資という方法があるよ」と教えてくれたんです。そこで初めて融資というものを考え始めました。

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― 融資を受けるということについて、始めはどのような気持ちでしたか?

萱場:最初は半信半疑でした。「こんなの本当にもらえるのか?」と思っていました(笑)。前職では本部長くらいの役職だったので「融資を受ける・受けない」のような話にはタッチしていなかったのです。

とりあえずやってみようと思って書類を書いたのは、創業から3ヶ月後だと思います。必要書類に事業計画書もあるのですが、ウォーターサーバー事業についての計画は既にある程度あったので、実質の書類準備などは1週間ほどで終わりました。

融資が現実味を帯びてきたのはそれからです。1000万円の申請をしたのですが、当初は「さすがに満額はおりないだろう」と思っていました。実績もあまりない会社だったので、受諾されても半額程度だと予想していたんです。

しかし、書類を出し終えて1ヶ月後ほど経った頃に電話がかかってきて「融資の申請が通りました(実行されました)」と言われました。しかも1000万円満額の融資が受け取れるということだったんです。

― 一度に1000万円の融資が降りるというのはすごいですね。

萱場:通帳をみて「1000万」という金額が入っていたときは驚きました。今申し上げたように、書類をだしたときは、内心「創業して3ヶ月の会社が1000万とりにいくのは無謀だ」と思っていたんです。

しかも実行される(申請が許可される)までの面談の機会はたった2回です。1回目は、融資の担当の方(※1)と、弊社の顧問税理士と3人の面談で、2回目は、弊社のオフィスで二人で面談です。融資が決定したら、あとは窓口にいき、印鑑を押して融資の受け取り完了でした。

※1 萱場氏の場合は、政策金融公庫の担当者

成功事例:萱場氏の場合
  • 公庫融資が1000万円満額
  • 準備1週間 面談2回、審査1ヶ月で融資実行

公庫融資が事業急成長への大きなターニングポイントに

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― 融資を受けて約半年が経ったと思いますが、いま振り返ると「融資の価値」は何だったと思いますか?

萱場:融資は会社にとっての一つのターニングポイントでした。もし融資を受けていなかったら、いまの会社は年商1000万ほどしかいかない予定でしたが、今は一気にその30倍ほどの年商になっています。大袈裟なように聴こえるかもしれませんが、本当にターニングポイントだったなと実感しています。

なぜ、融資がターニングポイントになったのかというと、融資を受けたおかげで「先行投資」ができたからです。結果的に仕事の幅が広がりました。「先行投資」というのは、例えば1000万円集めなければできないことを先回りしてできたということです。時間短縮ですね。具体的には、借りたお金を「人材採用」と「営業経費」に使いました。

まず「人材採用」についてですが、会社により多くの人がいることで事業を加速させることができます。一般的に創業間もないベンチャー会社というのは、web媒体などで求人を出してもなかなか人が集まらないんです。それに、私も当初は一人で会社をまわしていましたから、面接のスケジュール調整や応対まで自分で行うのでとても大変でした。

そこで、融資で得た資金の一部を使って、この採用活動を人材紹介エージェントに委託したんです。無名企業には不利なweb広告求人から、成果報酬型の採用方法へ切り替えたんです。

人を採用すると、次に「営業経費」がかかります。そこで、営業経費にもお金を使いました。私たちの場合の営業経費とは、例えばウォーターサーバーをイベント会場で売るときの「ブース代」やそこに立って説明してくれる「人件費」などです。これらにお金を使うことで、売り上げをアップさせることができました。
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「仕事の幅が広がった」というのは、この2つの「先行投資」によって主軸の事業が上手くまわり、別の事業もできるようになったということです。

当初私たちの会社は「ウォーターサーバーを販売する直販」からスタートしたのですが、いまはそこで培ったノウハウを他者の新規事業の立ち上げに使ってもらうという「代理店構築」をしています。

つまり、直販型から代理店型のビジネスモデルに移行しようとしている最中なんです。創業当初はまさかこのような形でのビジネスをするとは思っていませんでした。

融資が受諾された理由とは?

― 融資がスムーズに受諾された理由はどのようなものでしょうか?

萱場:第一に「認定支援機関」という行政の認定を受けている税理士にサポートしてもらえたことが大きかったと思います。なぜなら、認定支援機関は、融資の実質採択をする「政策金融広報の担当者」とつながっているからです。

私がサポートを受けた よしとみパートナーズ(※2)という会計事務所も認定を受けていたので、何度か金融機関の担当の方につないでいただいたりしました。融資を受けたい場合はやはり認定を受けている税理士事務所(会計事務所など)と組むのが一番よいと思います。

第二に、これは断言はできませんが、提出書類の事業計画書に一貫性があったからかと思っています。先ほども少しお話しましたが、私は前職でもウォーターサーバーの事業をやっていて、一定の成果を上げた実績がありました。そして今回の融資でもウォーターサーバーの事業をやりたいと言ったので、その一貫性がわかりやすかったのかもしれないと推測しています。

※2 (外部リンク) > よしとみパートナーズ会計事務所

よしとみパートナーズ会計事務所担当者:斎藤様からのコメント

萱場さんの融資書類は、そのお金がなぜ必要なのか、使ってどうするのか、会社は本当に成長していくのかということが理解できるものでした。そのことが、融資を決定させた理由の一つだと考えています。

事業者の方の不安として「金融機関を納得させる方法」や「書類の見せ方」などはわからないことがあると思いますが、どんなに良い事業計画でも金融機関と上手くコミュニケーションをとれなければ受け入れの可能性は低くなってしまいます。

私たち認定機関は、そのような面からサポートさせていただきたいと思っています。

「情報を調べる」を怠らないのがカギ

― 創業した起業家の皆様へ何かメッセージがありましたらお願いします。

萱場:あまり大それたことを言える立場ではないのですが、3つあります。

一つめは、「いつでも相談できる心の友」をつくっておくことです。創業直後の方ならうすうす感じ始めているかと思いますが、社長って「孤独」なんですね。社長になると止めてくれる人も愚痴を言う人もいません。だから、利害関係なしに「ちょっと話を聞いてくれる心の友みたいな人」がいるとよいのでは、と思います。

二つめは、「起業は急ぐ必要はない」ということです。これは私見ですが「起業は早ければ早いほどよい」と思っている方もいると思うんです。

ですが、やはりある程度のプロセスを踏んでからの方が成功する確率が高いと思っています。あまり急ぎすぎず、ある程度のプロセスを踏んでから起業する方が個人的によいと思います。

最後に三つめは、やはり「情報を調べる」ことを怠らないことです。経営者の知ることができる情報って限られていると思うんです。私はたまたま融資を受けられましたが、融資という制度を知らない人も周りにはたくさんいます。ですから、面倒くさがらず制度について調べ、利用できる制度は利用した方が得だと思います。

また、もし自分で調べることが面倒であれば、信頼できる会計事務所などと組むのがよいでしょう。

そのときも、HPをさらっとみて「安さ」だけで選ぶのではなく、サポートの内容や認定の有無などを含め、建設的に検討するとよいのかと思います。


(インタビュー・編集 田中 嘉)

ココ重要!
  • 融資は「個人または法人が金融機関等から必要な資金を調達すること」であり、当然返済が必要である。
  • 創業直後は銀行などの民間の金融機関から高額融資を受けることは難しいので、公庫などの融資制度を利用するよい。
  • 創業期に融資を受けることで、経営のスピードと幅が広がり、大きなターニングポイントともなりうる。
  • 融資制度については情報を十分に調べ、利用できる制度は利用した方が得である。
  • 融資をラクに獲得するコツは、認定支援機関である会計事務所や税理士事務所などにサポートしてもらうことだ。
さあアクション!

 
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