個人事業主が働けなくなったら?備えておくと安心の対策方法を紹介!
個人事業主は働けなくなった時の備えが必要
個人事業主にとって、働けなくなった時の備えは大切です。個人事業主がいきなり病気やケガで働けなくなると、収入が途絶えて生活が困窮してしまうことがあります。
さらに、長期間働けないことで顧客に迷惑をかけてしまう上、復帰できても一度離れてしまった顧客に戻ってきてもらうのは難しいかもしれません。
ここでは、働けなくなる前に準備しておきたい保険や資金準備のほか、すでに働けなくなっている人に向けた対策も紹介しています。
これから個人事業主になる人も、万が一の時にどのような備えがあるのか確認してください。
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この記事の目次
個人事業主が働けなくなったらどのようなリスクがある?
個人事業主が働けなくなることには、会社員にはないリスクがあります。どういったリスクがあるのか紹介します。
傷病手当金は受け取れない
疾病手当金は、健康保険制度に規定された手当です。会社員など健康保険の被保険者は病気やケガで出勤できない場合には、本人や家族に一定額が支給されます。
一方で、個人事業主は主に国民健康保険に加入しています。国民健康保険には疾病手当金の制度自体がないので疾病手当金は支給されません。
以前は特定の感染症に感染した場合に、一部の自治体で国民健康保険でも疾病手当金が支給される例はあったものの、基本的には受け取れないと考えてください。
そのため、自分で資金の準備をしておく必要があります。
障害基礎年金しか対象にならない
就業不能になり働けないリスクを意識している個人事業主も多いかもしれません。
病気が原因で障害認定を受けた場合、障害年金を受け取ることはできますが、個人事業主は障害基礎年金と障害厚生年金のうちの障害基礎年金だけしか支給対象になりません。
会社員や公務員であれば両方の支給を受け取れます。障害基礎年金だけの個人事業主が障害認定で受け取れる年金額は会社員や公務員よりも少なくなります。
加えて、会社員や公務員のような第2号被保険者は、障害等級3級で障害年金を受給できますが、個人事業主は第1号被保険者なので障害等級が1~2級でないと受け取れません。
こういった違いを踏まえて、個人事業主は補償が足りない部分を自分で補う必要があります。
失業保険は受け取れない
個人事業主は、雇用保険に加入できないため失業した時に失業保険の給付を受けることができません。
一定の条件を満たした労働者は雇用保険の加入が義務付けられますが、個人事業主は事業者なので雇用保険の対象外です。
個人事業主は、病気やケガで働けなくなっても、失業保険を受けることはできないため、生活のめどが立つまでの資金を自分でカバーできるように備えなければいけません。
個人事業主が働けない場合に備えるべき事前対策
個人事業主が、急に働けなくなるケースは決して珍しくありません。ここでは、働けない場合の対策として、ケース別にまとめています。
働けない場合の収入確保(休業対策)
公的な制度だけでは十分な収入が得られない時には、自分で休業対策をする必要があります。ここでは、収入確保に使える制度や保険を紹介します。
労災保険の特別加入制度
労災保険では、労働者に対する保険で業務中や通勤中の病気やけがで働けなくなった時に休業補償を受けられます。
通常であれば個人事業主や役員、ひとり親方は労災保険の対象外です。しかし、労災保険の特別加入制度を使えば例外的に労災保険の適用を受けられます。
労災保険特別加入制度を利用する時には、労働保険事務組合を通じて届け出をしてください。保険料を支払って申請が承認されれば保険が発効します。
医療保険
医療保険に加入すると病気で入院や手術が必要になった時に給付金を受け取ることが可能です。
入院した時の差額ベッド代や食事代、先進医療の費用は自己負担となることがあります。
個人向けの医療保険であれば補償内容や特徴から選択して加入できるので、入院補償を中心としたものや先進医療の特約を含んだものなど、自身のニーズに適した医療保険を選択可能です。
就業不能保険
就業不能保険は、病気やケガで働けない状態になった時に給付金を受け取れる保険です。
医療保険は入院や一定の治療に対する給付ですが、就業不能保険は所定の就業不能状態になった時に給付金を受けられます。
会社員や公務員が就業不能になった時には、年次有給休暇や会社の制度を利用できるほか、疾病手当金も活用可能です。
一方で個人事業主は会社の制度や公的保証がないため、給付金を毎月受け取れる就業不能保険が役立ちます。
将来に備える(老後対策)
すぐに働けなくなる心配はなくても、老後に不安を抱える人も多いでしょう。ここではより長い目で備える老後対策をまとめています。
個人年金保険
個人年金保険は、公的年金を補う目的で任意で加入する私的年金制度です。
個人事業主は、厚生年金や退職金がないため将来受け取る年金額を増やす目的で個人年金保険が有効な手段です。
個人年金保険は、所定の期間だけ支払われる確定年金と一生涯にわたって支払われる終身年金があるので、ニーズに応じて適したものを選ぶようにしてください。
小規模企業共済
小規模企業共済は、個人事業主や中小企業経営者などが積み立てられる退職金制度です。掛金は、月額1,000円から70,000円までの範囲で500円単位で自由に設定できます。
廃業した時や退職時に積み立てた金額を共済金として受け取りできるため、老後資金や廃業時の備えとして活用できます。
小規模企業共済は、確定申告で所得控除の対象になるので、節税対策としても有効です。
確定拠出年金(iDeCo)
掛金の支払いと運用を自分で行って資産形成する確定拠出年金(iDeCo)も個人ができる老後の備えとなります。
確定拠出年金(iDeCo)で運用して利益がでた時には利益が非課税となり、掛金分の所得税や住民税が軽減される点も大きなメリットです。
ただし、原則として60歳までは引き出せないため、それまでに資金不足にならないようにしなければいけません。
また、元本割れのリスクもあるので資金計画を綿密に立てておくようにしてください。
万が一に備える(災害対策)
個人事業主に求められる備えには災害対策もあります。自宅を店舗としていたり、テナントや倉庫を借りていたりする場合には災害対策も実施してください。
火災保険
火災保険は、火災の被害に遭った時の損害を補償する保険です。保険によっては水災や盗難などの損害も補償されます。
店舗や事務所を借りているケースでは、建物の中にある備品や什器を補償する保険に加入すると、損害を受けた時に保険金が支払われます。
地震保険
地震や噴火、それらによって発生した津波による損害を補償するのが地震保険です。火災保険には地震によるものは含まれません。
また、地震によって発生した火災や津波による浸水の損害の補償は地震保険に加入していないと受けられません。
地震保険は、火災保険とセットでしか申し込めず原則として居住用建物と生活用動産(家財)しか保証されません。
住居部がない事務所や什器などの備えには地震危険補償特約なども検討してください。
家族のための備え(死亡保障対策)
家族がいる場合には、自分のことだけでなく家族の生活サポートも必要です。
国民年金の遺族基礎年金は受給できる条件が限定されているため、ほかの補償でカバーも検討してください。万が一の時に家族を支える備えについてまとめました。
生命保険
生命保険と聞いてイメージしやすいのが、被保険者が死亡した時に死亡保険金等を受取れるタイプの死亡保険です。
生命保険には種類があり、保険期間によって終身保険と定期保険に分けられます。
終身保険は一生涯続く保険で、定期保険は自分で設定した一定期間だけ保証されます。家族構成や年代によっては、補償を手厚くしたい時期もあるかもしれません。
ほかの保険と終身保険と組み合わせて使うなどライフプランに合わせた保険設計が可能です。
収入保障保険
収入補償保険は、被保険者が死亡や一定の高度障害状態になった時に、毎月一定額の年金や給付金を保険期間満了時まで受取れる死亡保険です。
万が一の時の資金面の課題として、遺された家族の生活費や教育費の捻出があります。
収入補償保険は、万が一の時に毎月一定額の年金や給付金を保険期間満了時まで受け取り可能です。子どもが成長するまでといった保険期間を選択して契約できます。
個人事業主がすでに働けない・働けなくなりそうな場合の対策
個人事業主が働けなくなるまでのできる備えはたくさんあります。しかし、すでに働けない場合やすぐに働けなくなりそうな場合にはどういった手段があるのでしょう。
①すぐに生活資金を確保する
働けなくなった時の当面の問題として生活資金があります。人が基本的な生活を送るだけでもまとまった資金が必要です。
生活資金を確保するための方策をまとめました。
生活福祉資金貸付制度の利用(市区町村)
生活が困窮した時には、生活福祉資金貸付制度の利用を検討してください。
この制度では、所得が少ない世帯や一定の条件を満たす世帯に対して、世帯の生活の自立を図るために資金を貸し付けています。
貸付には審査がありますが、無利子または低利子で利用可能です。住んでいる市区町村の社会福祉協議会で手続きをして申し込みます。
自治体の緊急支援・給付制度の確認
自治体によっては、サポートが必要な人に向けた給付制度が用意されています。
例えば、大阪府の就労チャレンジ事業は、仕事を新しく探す予定の人や社会とのかかわりに不安がある人に対して、自立のサポートを提供しています。
日常生活、社会生活での自立から就労までのサポートが無料で受けられるので、これから生活を立て直したい人に適した制度です。
自治体によって住居確保給付金や一時生活支援事業などが提供されているので、まずは各地域の相談窓口を調べてみてください。
クラウドファンディングによる支援
クラウドファンディングは、インターネットを通じて資金を募る仕組みです。
クラウドファンディングを募るには、クラウドファンディングサイトを通じてプロジェクトを立ち上げて支援を募るのが一般的です。
クラウドファンディングで資金を募るためには、資金の使い道を伝えて支援者の共感を集めるのが大切になります。
ただし、うそをついて資金を集めたり、リターンが達成できなかったりすればトラブルに発展することもあります。
アイデアや支援者の共感によってお金を集められる方法ではありますが、トラブルにならないように慎重に取り組んでください。
②納税・社会保険料の猶予・減免申請
生活資金に困窮していると、税金や社会保険料の支払いにも困ることになるでしょう。ここでは納税や社会保険料の支払いの支払いができない時に利用できる制度を紹介します。
国民健康保険・年金の減免制度
失業や収入の減少で国民健康保険料や国民年金保険料の支払いが難しい場合には減免や猶予を受けられることがあります。
国民健康保険は、市町村の国民健康保険の窓口、年金は国民年金担当窓口に問い合わせてみてください。
国民年金は、失業等による特例免除があります。これは、事業の廃止などの事実を確認できた時に前年所得にかかわらず、免除や納付猶予を受けられる制度です。
特例を受ける時には、事業廃止の事実などがわかる書類を用意して申請してください。
住民税・所得税の納付猶予
税金の支払いが難しい場合には、住民税や所得税の納付猶予が受けられることがあります。
東京都の場合は最長1年間の猶予期間が設けられ、災害や病気といった一定条件の事実があれば延滞金が免除となります。市区町村の担当窓口に問い合わせてみてください。
所得税も申請すると原則として1年以内に限り分割納付が認められています。所得税は管轄の税務署で相談を受け付けています。
③ 就労支援・職業訓練の相談
生活を立て直すためには、新しい仕事についても考えなければいけません。やみくもに仕事を探すよりも地域にある施設や団体に力を借りることも検討してください。
ハローワーク・地域の自立支援センターの活用
ハローワークでは、資格取得や就労支援のための相談を受け付けています。
さらに厚生労働省委託の就労支援機関として地域の自立支援センターや地域若者ステーションが設置されていることがあります。
地域若者ステーションにはハローワークのような求人情報の紹介はありません。
しかし、その前段階である就労相談や面接指導が受けられるため、就職活動に不安がある人にも適しています。
現在住んでいる地域にどのような支援施設があるか調べて利用してください。
フリーランス支援団体やNPOの相談窓口
個人事業主や身寄りがなくて生活に困る人に向けて、フリーランス支援団体やNPOでサポートはサポートを提供しています。
上記では、生活が苦しい人が利用できる制度を説明しました。
しかし、どのように制度を利用すればいいのか、そもそも何が利用できるのかわからないといった人もいるかもしれません。
フリーランス支援団体やNPOの相談窓口では、制度申請の手続きサポートやスキルアップ相談も受け付けていることがあります。
近隣に相談できる窓口がないか調べてみてください。
まとめ・特徴を理解して保険を賢く活用しよう
病気やケガをした場合に利用できる公的保険制度はいろいろあります。
しかし、個人事業主が対象とならない制度もあるため、公的制度でカバーできない部分は自分で備えなければいけません。
保険や制度の必要性は、現在の資産の状況やライフスタイルによっても異なります。それぞれの特徴を理解して、ライフプランや環境に適したものを活用してください。
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(編集:創業手帳編集部)