チームの生産性を一気に高めるミーティングの方法
【森時彦氏インタビュー】ビジネス書のロングセラー『ザ・ファシリテーター』著者が語る、チームの生産性を一気に高めるミーティングの方法とは?
事業再生を数多く手がけ、『ザ・ファシリテーター』シリーズでファシリテーションの有用性を一躍世に広めた森時彦氏に、リーダーが実践すべきことを聞いた。
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株式会社リバーサイド・パートナーズ 代表パートナー。大阪大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)卒。工学博士(Ph.D)、経営学修士(MBA)。 神戸製鋼所を経て、GE(ゼネラル・エレクトリック)に勤務。テクノロジーリーダー、マーケティング・リーダー、GE Japan役員などの様々な分野のリーダーシップポジションを経験。その後、半導体用自動検査装置最大手 テラダイン社の日本法人の代表取締役を経て、2007年から現職。リバーサイドは、成長支援型のプライベートエクイティファーム。日本法人は同ファームへの投資アドバイスと企業価値向上を業務とする。
課題を解決するミーティングの方法とは
森:何か課題がある時にまず行うとよいのは、「問題文を書く事」です。自分たちが取り組もうとしている問題は具体的に何なのか、明確に言語化することです。
例えばある病院の経営者が、経営悪化のため、外科医に対して「年間の手術数を500件から600件に増やせ」と要求したとします。自分が外科医だとしたら、ただでさえオーバーワークで疲れきっているのだからそんなの無理だと思うでしょう。しかし、問題文を書き換えるだけで、無理な問題が解決可能な課題に変わります。
難しいと感じてしまうのは、「手術数を500件から600件に増やす(2割増やす)ためにどうするか?」と考えているからです。考え方を変えれば、これは「自分たちの時間を2割、手術に使うにはどうすればよいか?」という問題に書き換えられます。言い換えれば「自分の時間の使い方を見直して、自分がする必要のない仕事を減らし、2割の時間を捻出すれば良い」のです。このように発想を変えると、問題を解く手順が変わってきます。
自分の時間の使い方を見直すためには、プロセス・マッピングを用いるとよいでしょう。プロセス・マッピングでは、会議の出席や書類の作成、論文の用意など様々な仕事のプロセスを因数分解します。そうして「自らがすべきこと」と「必要のないこと」を分け、省くことができるプロセスをみつけます。このようにプロセスを可視化すると削れる部分が見えてきます。
森:良い解決アイデアを生み出すために必要なことの1つは、その場で集まっていきなりアイデアを考えださないことです。なぜなら、良いアイデアは議論が終わってから出る場合が多いからです。よく、ミーティングでブレインストーミングする時、その時は良いアイデアが出なかったのに、帰りの電車のなかで「あっ!」とひらめくことがありますよね。ブレインストーミングやアイデアを出す時というのは、頭をかき回して温めるだけでなく、それを「冷ますプロセス」も必要です。
『考具』という本を書いた加藤 昌治さんというアイデア出しの天才がいるのですが、彼はミーティングの前に「一人ブレスト」をしてから来ます。良いアイデアを出せる人というのは、事前に考えて来ているんです。具体的には、A4用紙1枚で、その日の議題について考えてきたものを元にミーティングをするだけで、会議の質は一気に上がると思います。
森:そのような場合は、「やりやすさ × 実現したときの効果」で2軸のマトリクスを書くと良いです。そうすると4象限できますが、そこに自分のアイデアを分類し「やりやすい」かつ「実現したときの効果が高い」ものを議論します。これはペイオフマトリクスと言われている方法です。
- 何か解決すべき問題がある時には、まず「問題が何か?」を具体的に考え、解決しやすいように文章化する。
- チームで良いアイデアを生み出すためには、ミーティングの前に各自A4用紙1枚でそのテーマについて考えた物を持参する。
- アイデアが拡散しすぎた場合には、ペイオフマトリクスを利用して「やりやすい」かつ「実現した時の効果が高い」ものから議論する。
チーム力を高めるミーティングの方法
森:まず具体的なことからお話しすると、グラウンド・ルールを決めると良いでしょう。グラウンド・ルールとは、チームが自分たちで決める“簡単な憲法”みたいなものです。例えば「いつも笑いながら仕事しよう」や「人の良い点は褒めよう」などなんでも大丈夫です。「ダメ」「難しい」「出来ない」を言わない、というルールを設定するだけで、チームの雰囲気はすごく変わります。
森:「ファシリテート」はチーム力を高めるために必要ですが、その理由は「第三者」の存在です。それによって物事が進んでいく。チームにおいて第三者はとても重要です。
例えばサッカーの試合でも、審判という“第三者”がいるから、試合が進みますよね。紛争も、当事国で解決できない場合“第三国”が介入して調停します。
森:はい。ですから、チームをファシリテートする方法は、まずリーダーがいかに第三者でいられるか?が大切だと思います。リーダーは、リーダーでありながら、時にエゴを離れ、客観的に自分たちを鳥瞰して物事を進めていくべきだと思います。
リーダーでありながらファシリテーターの役割を果たせる人を「ファシリタティブ・リーダー」と呼びます。ファシリタティブ・リーダーは、例えば人の話をよく聞く力があり、人が意見を言いやすい場をつくることができる“リーダー”であり、必要なときにはしっかりとリーダーとしての意思決定をします。
森:最近のアメリカの流行では、プロのコーチを付けたり、またそうでなくても、尊敬する先輩と話が出来る環境作りをされていますね。
経営者の方々は、なかなか部下に本当の事を言ってもらえないので、自分で気付かないことを教えてくれる友人をビジネス以外のところに持っている人も多いと思います。欧米ではこの20年くらい禅も流行っていますね。精神修行として武道をやっている人もいます。非日常的な空間に身を置いて、自分自身の状況を違う視点から眺めるということです。
森:いろいろな言い方がありますが、プロセスを考えることでしょうね。私が実際にファシリテートをする際には、常に「プロセスを考える」ことを重視します。例えば一つのアイデアをより良くするにはどのようなプロセスが必要なのか?ということや、このチームがより良くなるにはどのようなプロセスが必要なのか?と考えます。
プロセスを考えることは「質問を考える」ことともいえます。この人に対して、何を聞いたらより良い成果が出るだろうか?など、人が動くために必要な「問いかけ」を考えます。
- 良いチームをつくるには、グラウンド・ルールを決めることが重要だ。
- リーダーが「ファシリタティブ・リーダー」になるには、自分に対して客観的であることを大切にする。
- ファシリテートの本質は、プロセスを考えること、人が動くような問いかけを考えることである。
最も大切なのは“本当の価値観”の共有
森:「価値観の共有」が一番大切かもしれません。そして、これは結構、根が深い問題だと思っています。チームにおける価値観の共有が簡単ではないのは、「本当の価値観」は簡単には出てくるものではないからです。ベンチャー企業でも、表面的には「一緒に事業をやろう!」ということで一致しているんだけど、儲かれば良いという人もいるし、お金はただの手段でその先に達成したいものがある、という人もいる。
例えば、ビートルズという音楽チームも、その後で出てきた様々なバンドも、最初は価値観が一致しているように見えましたが、やがて解散しましたよね。人の本当の価値観は、「自分の命をかけてもなんとかしたい!」という時にでてくるのだと思います。
わかりやすく言えば「起業に成功して大金持ちになりたい」という欲がある程度満たされたとき、本質的な価値観が観えてくるかもしれません。
ですから、チーム作りにおいては、本当の価値観を追求し続けること。英語で言えば、「バリュー」や「ビジョン」を追求し続けることが大切でしょう。
- チームづくりにおいて一番大切なのは価値観の共有である。
- 本質的な価値観はすぐ表には出てこない場合が多い。バリューやビジョンを追求しつづけそれらを常に共有する。
(インタビュー・編集 田中 嘉、創業手帳編集部)
- ココ重要!
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- 解決すべき問題は「問題が何か?」を具体的に考え、解決しやすいように文章化する。
- チームで良いアイデアを生み出すためには、事前に各自テーマについて考えたものをまとめておき、ミーティングに持参する。
- アイデアが拡散し過ぎたら優先順位をつける。ペイオフマトリクスを利用してなどして「やりやすい」かつ「実現した時の効果が高い」ものから議論する。
- 良いチームをつくるには、グラウンド・ルールを決めること。
- リーダーが「ファシリタティブ・リーダー」になるには、自分に対して客観的であることを心がける。
- ファシリテートの本質は、「プロセスを考えること」と「人が動く質問を想像すること」。
- チームづくりにおいて一番大切なのは価値観の共有である。
- 本質的な価値観は顕在化しないことが多いので、バリューやビジョンの追求とそれらの共有をし続けるように努めること。
(創業手帳編集部)
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