定款認証とは?手続き・費用や便利になった変更点についても解説

創業手帳

定款認証は会社設立をする場合に必須の手続き!


株式会社の設立時には、定款の認証が必要です。定款を作成し、公証役場に出向いて定款認証の手続きをしなければなりません。

2024年から、定款認証の手続きが便利になりました。どういった点が変更になったのか、定款認証の手続きや必要書類とともに紹介します。
これから株式会社を設立する人は手順を確認してください。

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定款認証の基礎知識


会社を設立するまでには、様々な手続きや書類提出が必要となります。そのひとつが、定款の認証です。
そもそも定款とは、会社の目的や活動内容、組織構成といった基本的なルールを定めたものです。株式会社の設立時には定款を欠かすことはできません。

定款の認証とは、正当な手続きで定款が作成されていると公証人が証明することを指します。
発起人の署名または記名押印がある定款を作成し、設立登記をした後に公証人による定款認証を行います。
合同会社などの持ち分会社では定款の認証は不要です。しかし、一般社団法人、一般財団法人、弁護士法人や税理士法人では定款認証が求められます。

定款認証の流れ


定款の認証を受けるためには、発起人らで定款を作成して公証役場で手続きを行います。

定款には書面定款と電子定款の2種類が存在します。
書面定款は紙で作成された定款で、電子定款は電磁的記録として作成された定款です。PDFファイルで作成されている定款をイメージするとわかりやすいかもしれません。

電子定款も書面定款と同様に認証手続きは必要です。
定款をPDFファイルとして作成後に電子署名を付して電子署名と一緒に送信します。送信された電子定款を公証人が確認して電子証明を付して認証するオンライン申請です。

1.定款の作成

定款の認証を受けるためには、まず定款を作成します。定款には、記載すべきとされる絶対記載事項と相対的記載事項、任意的記載事項の3つがあります。

絶対的記載事項は、会社の目的や商号、本店所在地といった基本的な事項です。絶対的記載事項が記載されていないと定款自体が無効となります。
相対的記載事項は、法的には記載しなくても問題はないものの、記載しなければ効力が認められない事項。株券発行や変態設立事項などがあります。
任意的記載事項は、絶対的記載事項にも相対的記載事項にも該当せず、違法性がない内容を記載する項目。具体的には、株主総会の開催規定や役員報酬、配当金などです。

電子定款を作成する際にも一定の条件が課せられています。ワードなどで作成した定款はPDFに変換しなければいけません。
電子定款でも書面定款でも作成してから定款認証を受ける前に、公証役場で事前審査を受けることをおすすめします。
直接出向かなくてもメールやFAXで不備がないかを確認してもらえます。

2.公証役場に面談のアポイントメントを取る

定款を作成して不備がなければ、本店所在地を管轄している公証役場で予約を取ります。事前予約なしに出向いても認証は受けられないことに注意が必要です。

管轄区域外の公証役場では受け付けてもらえないため、日本公証人連合会ホームページから管轄の公証役場のページを調べてください。
予約はウェブからでもできますが、電話でも受け付けています。不明点や質問があれば、電話して事前に問い合わせてみましょう。

3.公証人の認証を受ける

予約した日時に公証役場に必要書類と手数料を持参します。公証人に定款を見てもらって認証を受ければ手続きは完了します。

定款に問題がある時にはその場で修正できる場合もありますが、大きなものであれば再度発起人らで話し合って定款を直さなければいけません。
その場合は、再度予約を取って公証役場を訪問します。
問題なく認証手続きが終われば、定款の1通は原本で公証役場で保管されます。会社で保存する定款は、金融機関で口座開設する時にも使用するため大切に保管してください

2024年3月1日より、公証人の面前審査の手続きは原則ウェブ会議となっています。
ウェブ会議を利用することで、公証役場まで出向く手間がかかりません。
電子申請も書面定款と同様で、事前の確認を受けた後に、認証日までに電子署名を付した定款を法務局の登記・供託オンライン申請システムを利用して申請します。

オンライン申請には、法務省指定する認定機関のいずれかから電子証明書を取得する必要があります。
無事に申請できているか確認するために、公証役場に申請完了した旨を連絡してください。

ウェブ会議を利用して電子認証を行った時には、登記・供託オンラインを通じて認証済みの電子定款または電子私署証書のデータが送信されます。
ウェブ会議を利用しないで認証を受ける場合は、公証役場までデータの受取りに出向かなければいけません。

定款認証に必要な書類・持ち物


定款認証は必要な書類や持ち物も指定されています。どういったものが必要なのか確認してください。

定款

定款の認証を受けるために定款の原本を持参します。公証役場での保存用1通と会社保存用1通、登記申請用1通の合計3通用意してください。
定款の書式は一般的にA4の用紙に横書きで各条項を記載します。

定款の表紙には、会社の商号を記載することがほとんどです。表紙と本文、裏表紙を順に綴じてください。
発起人による署名や記名押印、2枚以上になる時には契印(割り印)も必要です。

実質的支配者となるべき者の申告書

定款認証には、実質的支配者となるべき者の申告書も提出します。この書類は、設立する法人の実質的支配者を明示して反社会的勢力など該当しないことを申告するものです。

実質的支配者とは、法人の事象経営を実質的に支配できる人を指します。株式会社であれば、株式全体の50%を超える株式を保有している人です。
実質的支配者となるべき者の申告書は、日本公証人連合会ホームページでダウンロードできます。また、公証役場で受け取って記載することも可能です。

発起人全員分の印鑑登録証明書と印鑑

認証を受ける時には、発起人の本人確認として、印鑑登録証明書と実印を用意します。印鑑登録証明書は、発行から3カ月以内のものでなければ認められません
また、自動車運転免許証のように、公的機関発行の顔写真付き身分証明書と認印を持参するケースもあります。

法人が発起人となる時には、法人の代表者の印鑑登録証明書とその法人の登記簿謄本または資格証明書を用意します。
代表社印の印鑑証明書と実印、または公的機関発行の顔写真付き身分証明書と認印も必要です。
その法人の発起人になる行いが、法人の定款に掲げる事業目的の範囲にあるかどうかもあらかじめチェックしてください。

委任状(代理人が定款認証を行う場合)

定款の認証手続きは、発起人以外の代理人に任せることもできます
代理人に任せる場合には、代理人自身の本人確認書類と発起人から嘱託を受けたことを示す委任状を持参してください。

押印した実印の印鑑登録証明書と代理人の身元確認用の印鑑登録証明書と実印、もしくは公的機関発行の顔写真付き身分証明書と認印も必要です。
発起人が法人の場合には、法人の登記簿謄本または資格証明書も持参してください。

電子定款の場合に必要なもの

電子定款で公証役場でデータを受け取る場合に必要なものを紹介します。
認証した電子文書のデータを保存するための電子媒体としてUSBメモリやCD-Rなどを持参します。また、本人確認資料と実印も必要です。
なお、代理人が受け取る時には、委任状と印鑑登録証明書が求められます。方法や条件によって持ち物は異なるため、受取りに行くまでに必要なものを問い合わせてください。

定款認証にかかる費用


定款の認証では、書面と電子でかかる費用が異なります。
紙の定款よりも電子定款のほうが費用が安くなることもあるので、どういった費用が発生するのか押さえておいてください。

定款の認証手数料

書面定款でも電子定款でも、定款認証を受ける時には、公証役場に支払う認証手数料が発生します。以前は一律で5万円の認証手数料がかかっていました。
しかし、2022年からは資本金の額に応じて3~5万円に変更されています。

認証手数料は、書面定款でも電子定款でも変わりません。資本金別の認証手数料は以下のとおりです。

  • 資本金の金額が100万円未満:3万円
  • 資本金の金額が100万円以上300万円未満:4万円
  • その他の場合:5万円

定款に「〇〇円以上」と資本金の最低額を記載している時には、上記のその他の場合として5万円の認証手数料が必要です。
資本金の金額が定款に記載されていない時には、設立時に出資される財産の価額を基準にします。

収入印紙代(書面の場合のみ)

定款認証にかかる費用の中で、書面定款だけに発生するのが収入印紙代です。書面定款は、印紙税法上の課税文書にあたり、収入印紙代(印紙税)として4万円がかかります。
収入印紙を購入して定款認証手続きを行う時に、印刷、製本した定款に貼付してください。
電子定款は、電子データなので課税文書にはなりません。印紙税は発生せず、次の保存手数料が発生します。

電磁的記録の保存手数料(電子の場合のみ)

電子定款で認証手続きを行うと、公証人が電子署名を付与した認証済み定款が電子データで交付されます。
データの保存手数料は1回300円です。書面定款はデータ保存が必要なく、電磁的記録の保存手数料は発生しません。

電子定款では、収入印紙代が発生しないため、節約のために電子定款にするという人もいるかもしれません。
しかし、電子定款にするためにはPDFへの変換やICカードリーダライタが必要です。
すでに保有している場合や、これから使う予定がある場合には問題ありませんが、新しく購入する場合には別途費用が発生します。
電子定款を選ぶ時にも、どの程度費用が発生するか調べておいてください。

謄本代

定款認証には定款の謄本が必要で、書面定款では1枚につき250円の交付手数料が発生します。1通ではなく1枚である点に注意してください。
認証文ページも含むため、定款のページに1枚足して250円を掛けた金額が発生します。
定款のページによって費用は異なりますが、2,000円程度が目安です。

電子定款の場合には、紙の謄本にあたる「同一情報」が電子データか書面で交付されます。電子データの場合には、同一情報の提供手数料が1通で700円発生します。
書面での交付の場合には、同一情報の提供手数料に加えて1枚当たり20円が加算される仕組みです。

定款認証ルールの変更で、株式会社設立がスムーズに!


定款認証の手続きは、会社設立までの道のりの中でも手間がかかるものです。しかし、2024年から定款認証の新しい取組みがスタートしています。
株式会社設立をよりスムーズにしてくれる取組みについて説明します。

【全国】定款作成ツールが使えるように

定款を作ったことがない人が作成するのは困難なことです。そこで定款作成支援ツールが無料で公開されました
小規模でシンプルな株式会社を設立したいというニーズに対応したもので、必要項目についてプルダウンで選択して入力すれば、定款が完成します。

日本公証人連合会ホームページからツールをダウンロードして利用してください。定款だけでなく、実質的支配者申告書、委任状、特別処理申請書も一緒に作成可能です。
必要な添付書類をまとめて作成できるため、書類作成の手間やミスを大幅に削減してくれます。

【東京・福岡】48時間処理原則

48時間処理とは、原則として48時間以内に認証手続きを完了するというものです。

定款作成支援ツールを利用して作成した定款に限定されますが、東京都と福岡県全域の公証役場ではすでに始まっています。
48時間処理を希望する場合には、48時間処理を希望する旨の申請を提出しなければいけません。
48時間の起算点は、必要な資料がすべて公証役場にメールで到達した時。不備があればその分時間がかかってしまいます。なお、土日祝を除くことに注意してください。

【全国】ウェブ会議原則

定款認証の手続きの中でも時間の都合をつけにくいのが、公証役場に出向いて手続きすることです。
そこで、電子定款の面前審査については、対面実施の希望がない限り、ウェブ会議で実施することを原則とする運用に変更されました。

ウェブ会議の利用要件が緩和され、代理人により面前審査を行う場合でもウェブ会議を利用できます。
認証済み定款データの受領方法も拡充し、メールでの受領を選択できるようになりました。

まとめ・定款認証は電子手続きや新しいツールも利用して効率的に行おう!

定款認証の手続きは、2024年の変更で大きく変わりました。この変更は、株式会社の設立手続きをスムーズにして起業や株式会社設立を支援するものです。
変更によってよりスピーディーに手続きが完了するようになり、オンラインでも手続きできるようになりました。

今まで手続きにかかる手間や専門家に依頼する費用が不安で二の足を踏んでいた人も、これをきっかけに新しい段階に進めます。
電子手続きや新しいツールを利用して、より効率的に起業手続きを行ってください。

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(編集:創業手帳編集部)

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