税額控除とは? 知っておくと得をする税額控除についてわかりやすく解説

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税額控除は節税のために役立つ制度。所得控除との違いや計算方法などを解説します。


確定申告を行うことにより、もともとの所得税額から控除を受けられる制度が、税額控除です。
同様に、税額を圧縮できる控除に所得控除がありますが、税額控除とは種類が異なるため、その違いを理解すると良いでしょう。
税額控除は、確定申告の際に記載がなければ適用を受けられません。

今回は、税額控除の基本や計算方法などについて解説します。

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この記事の目次

税額控除について


まず、税額控除とはどのようなものかをこの章で説明します。

税額控除とは何か

税額控除とは、所得総額から計算した所得税額から金額を控除する制度を指します。つまり、所得税を圧縮することにつながり、節税に効果がある税制です。
所得総額から直接控除を受けられることから、節税に有利に働く場合があります。

所得控除との違い

税額控除と同様に、所得税の圧縮につながる税制に所得控除があります。
所得控除とは、所得総額から金額を控除し、控除後の課税所得から所得税率を掛けて計算するものです。
一方、税額控除は、上記の所得控除を適用して算出した所得税額から直接金額を控除する制度です。

税額控除と所得控除の節税効果とは

税額控除と所得控除の節税効果を比較した時、ケースバイケースではありますが、税額控除のほうが有利になることがあります。
所得税は累進課税が採用されており、課税所得の金額が低ければ、その分所得税率も低くなる仕組みです。

この場合、所得控除額が多くても、結果的に圧縮できる所得税額は少額になることが多くあります。
一方、税額控除の場合は算出した所得税額から控除額をそのまま差し引けるため、有利になる場合が多々あります。
ただし、税額控除には上限が設けられており、所得税率が高い場合には所得控除のほうが有利になる場合が多いため、実際に計算して比較してみると良いでしょう。

所得控除について、詳しくはこちらの記事を>>
所得控除には様々な種類がある!賢く利用して節税対策をする方法を解説

法人に認められる特別償却との違い

法人では、償却処理で普通償却とは別に認められている特別償却と呼ばれる制度があります。
一般の減価償却費からさらに上乗せし、普通償却と特別償却を併用することで、さらなる所得総額の圧縮が狙えるものです。
特別償却には、初年度の減価償却と割増償却が認められており、初年度の所得総額に対する節税効果は高くなります。

しかし、減価償却費は年々減少していくため、長期的に見ると節税効果は変動していきます。
特別償却は、減価償却費として損金算入できるものであり、所得総額を圧縮するという点で、税額から直接差し引く税額控除と異なる点に注意してください。

税額控除と特別償却のどちらを選ぶべきか

特別償却は、もともとの減価償却の処理を先に済ませる処置であり、税額控除は毎年一定額を法人税から控除できる制度です。
そのため、長期的に見れば税額控除のほうが有利になることが多くあります。
ただし、資産の取得価額が大きい場合や、耐用年数が長い場合には、特別償却と普通償却を合わせて行えば、その分長く損金を計上可能です。

つまり、場合によっては特別償却のほうが得をする場合もあるため、迷った時は専門家に相談して綿密に計算することをおすすめします。

税額控除の種類について


こちらでは、税額控除の主な種類について説明します。

調整控除

2007年に、税源移譲という形で国から地方に税源が移し替えられました。
これにより、国税=所得税が減少する一方で、地方税=住民税がより多く課税されるようになっています。
この時、基礎控除や配偶者控除の人的控除額について、住民税の課税所得のほうが所得税よりも多いため、住民税の負担のほうが大きくなります。
この税額の差額を埋めるべく、住民税を圧縮して税額負担を減らす措置が調整控除です。

配当控除

配当控除とは、株式や投資信託の配当金から所定の計算式で求められた配当所得について、一定の計算式により求められた金額を控除するものです。
ただし、上場株式で申告分離課税を選んだ場合は、配当控除の対象外です。

分配時調整外国税相当額控除

特に、集団投資信託の分配金の所得税額から外国所得税を控除する時、外国所得税の中から分配金に対応する額を控除できます。

外国税額控除

課税所得のうち、外国で得た所得は、その国の法令により課税された所得税がある場合に控除が受けられます。

寄附金に関する各種控除

下記に示す団体に寄附を行った場合、寄附金控除として各種控除が受けられます。

ふるさと納税制度

近年、一般的に広まってきたふるさと納税は、地方自治体への寄附にあたります。そのため、税額控除の対象です。

政党等寄附金特別控除

いずれかの政党や政治団体に寄附を行った場合にも、控除の対象となります。

認定NPO法人等寄附金特別控除

自治体で認定を受けているNPO法人への寄附でも、控除を受けることが可能です。

公益社団法人等寄附金特別控除

公益社団法人や社会福祉法人などに寄附を行った場合も、控除の対象です。

住宅に関する各種控除

(特定増改築等)住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)

【住宅を購入・新築・増改築した】
決められた条件をクリアした住宅の購入・新築・増改築を行った場合、その年の12月31日時点での住宅ローン残高や居住年数に応じて、控除額が決定されます。

【特定の要件を満たす増改築をした】
いくつかの特定要件を満たした増改築を行った時、その年の12月31日時点での住宅ローン残高から算出した控除額を、5年間にわたって控除できます。
増改築における特定の要件とは、以下のようなものです。

  • バリアフリー
  • 省エネ
  • 多世帯同居
  • 耐久性向上(省エネ改修と同時に行うもの)

ただ、2022年以降にこれらの増改築を行った場合には条件が異なるため、注意してください。
なお、給与所得者は新築・購入・増改築いずれの場合でも、住宅ローンを組んだ年の翌年から、年末調整にて控除を受けられます。

住宅耐震改修特別控除

居住している住宅で、1981年5月31日以前に建築された建物における耐震改修を行った場合、決められた額の控除が適用されます。

認定住宅新築等特別税額控除

住宅の中で、CO2削減や省エネの機能を有した認定住宅を新築・購入した時、前述の機能を付与した分にかかった金額について、10%を控除できます。

試験研究を行った場合の所得税額の特別控除

特に、青色申告者が事業にかかる試験・研究を行った場合、それらに要した費用の一部の控除を受けられます。

高度省エネルギー増進設備等を取得した場合の所得税額の特別控除

青色申告者が、高性能な省エネ設備を購入して事業に使用した時、特別償却を適用しない場合は、この控除を受けることが可能です。

給与等の引上げおよび設備投資を行った場合等の所得税額の特別控除

こちらも青色申告者限定の制度で、従業員への給与における一定額以上の引上げ、また設備投資における償却費の95%以上などの条件を満たせば、控除対象となります。

所得税額から控除される特別控除の特例

そのほか、いくつかの税額控除のうち、2つ以上併用する場合に税額控除できる合計額が所得税額の90%を超える時に、超えた部分について翌年以降に繰越せる特例もあります。

個人事業主や中小企業に適用される税額控除など


前述した税額控除の中で、個人事業主および中小企業に適用されるものを紹介します。

個人事業主に適用される税額控除

個人事業主に適用される税額控除には、以下のものがあります。

  • 配当控除
  • 住宅借入金等特別控除
  • 外国税額控除
  • ふるさと納税制度
  • 政党等寄附金特別控除
  • 認定NPO法人等寄附金特別控除
  • 公益社団法人等寄附金特別控除

 

中小企業に対する各種控除

中小事業者が機械等を取得した場合の所得税額の特別控除

中小企業で新品の機械設備を購入して事業に用いた場合、特別償却を利用しなければ控除が受けられる制度です。

特定中小事業者が特定経営力向上設備等を取得した場合の所得税額の特別控除

ある特定の条件を満たした中小企業で、経営力を向上させるために設備を導入した時に、こちらも特別償却を適用しない場合に控除を受けられます。

その他税負担軽減の主な措置

法人税率の軽減

法人税率は基本的に23.2%と定められていますが、中小企業においては、所得金額800万円以下の部分に関してのみ、税率が15%に引き下げられます。

この場合の中小企業の条件は、以下のようなものです。

  • 事業年度が2012年4月1日から2023年3月31日までに開始する場合
  • 事業年度終了時に、資本金が1億円以下であること

 
なお、この税制が適用されるのは、2023年3月31日までです。

交際費課税の特例

基本的に、法人の交際費など(飲食や接待、贈答にかかる費用)は損金算入できません。
しかし、中小企業においては、以下の2つの方法からいずれか有利なほうを選択できます。

  • ・800万円までの全額損金計上
  • ・接待飲食費の50%の損金計上

 

また、取引先との飲食で、ひとり当たり5,000円以下は交際費に含まれません。

固定資産税の特例

法律にて制定された生産性向上のための認定先端設備を導入した場合、各自治体の裁量によって導入した設備にかかる固定資産税を、3年間にわたり圧縮するものです。

ただし、2023年3月31日までに導入した設備に限り、中小企業の中でも一定の条件を満たす必要があります。

中小企業経営強化税制

中小企業の中で一定の条件を満たした事業者が、経営力を向上させるための設備を導入した場合に、一括償却するか、取得価額の10%の税額控除を受けるかを選択できます。

この税制を適用するには、導入する設備が下記のいずれかに分類される必要があります。
分類はAからDまでの4種類です。

【生産性向上設備(A類型)】
生産性向上設備とは、以下の2つの条件に当てはまるものを指します。

  • 決められた期間より後に発売されたモデルである
  • 従来の設備に対し、新しい設備を導入したことで生産性やエネルギー効率が1%以上向上する(導入する設備ソフトウェアである場合、情報収集・分析機能があるもの)

【収益力強化設備(B類型)】
設備投資を行い、その利益率が年間平均で5%以上となるものを指します。

【デジタル化設備(C類型)】
設備の中で、下記の操作ができるデジタル技術を搭載した設備です。

・遠隔操作
非対面での業務や遠方での業務が行えること

・可視化
データの集約や分析を行い、業務に反映させたり技術・人員などの最適化に役立てたりできるもの

・自動制御化
業務を自動化できるほか、技術・人員などの最適化につながるもの

【経営資源集約化設備(D類型)】
対象となる設備のうち、経営力向上計画に基づき、修正総資産利益率(ROA)、もしくは有形固定資産回転率において、いずれも向上かつ一定基準を満たすものです。
上記いずれの場合でも、導入する設備の種類ごとの取得価額には、以下のような下限があります。

  • 機械装置:160万円以上
  • 工具:30万円以上
  • 器具や備品:30万円以上
  • 建物に附属する設備:60万円以上
  • ソフトウェア:70万円以上

 

中小企業投資促進税制

事業における生産性を向上させる設備導入の後押しのために制定された制度で、下記のような設備を導入した場合に適用されます。

  • 160万円以上の機械装置
  • 1台につき120万円以上の測定工具・検査工具
  • 70万円以上のソフトウェア
  • 車両総重量3.5t以上の普通貨物自動車
  • 内航船舶

 
これらの設備において、取得価額の30%を特別償却するか、7%の税額控除(資本金3,000万円以下の場合のみ)をするかを選べます。
なお、この制度は2023年3月31日までに取得した設備に適用されるものです。

少額減価償却資産の特例

中小企業を対象とし、減価償却資産の中で取得価額が1台につき30万円未満のものは、一括して経費計上できます。
ただし、その減価償却資産の取得を2022年3月31日までに行ったもので、かつ合計で300万円以下であることが条件です。

消費税の特例

消費税は、消費者から預かった税金ですが、一定の基準期間において課税売上高が1,000万円以下であれば、消費税の納税について免除を受けられます。
また、消費税の計算において、課税売上高全体をもとにして計算することが認められている簡易課税制度もあります。

税額控除を受けるために必要なこと


税額控除を受けるためには、以下のような手続きを行います。

確定申告を行うこと

確定申告は、会社に雇用されている従業員以外のすべての事業者に必要な手続きです。
税額控除の適用を受けるためには、その内容および金額を税務署に申告しなければなりません。

確定申告のやり方について、詳しくはこちらの記事を>>
確定申告のやり方は?手続きすべき人の条件や申告方法などについて解説

税額控除の種類によって必要書類が異なる

税額控除を受けるにあたり、条件に合致するかを確認できる証明書などの提出が求められます。
しかし、税額控除の種類によって準備する確認書類の種類は異なり、それぞれに見合った書類を確定申告時に提出することが求められます。

確定申告前に周到な準備が必要

上記のように、税額控除を受けるために必要な書類は多様にあります。
そのため、適用を受けたい税額控除に必要な書類は漏れなく用意して、大切に保管しておくようにしてください。
必要書類の詳細は、国税庁ホームページにそれぞれ記載されているため、確定申告の前にあらかじめ調べておき、書類を準備することをおすすめします。

主な税額控除の計算方法

調整控除の計算方法

調整控除は、課税所得総額200万円以下の場合で、人的控除額の差と、住民税の課税所得額のいずれか少ない額の5%で算出されます。
課税所得総額200万円を超える場合は、課税所得総額から200万円を差し引き、これを人的控除額の差から差し引いた額の5%です。

配当控除の計算方法

配当控除では、基本的には以下の4パターンで金額が計算されます。
【1.課税所得金額1,000万円以下の場合】
(剰余金の配当所得×10%)+(証券投資信託の分配金の配当所得×5%)
【2.課税所得金額1,000万円以上で、配当金を差し引くと1,000万円以下になる場合】
(配当所得金額×10%)+(配当所得の中の課税所得-1,000万円①)×2.5%+(配当所得金額-①)×5%

【3.課税所得金額から証券投資信託の分配金の配当金を差し引くと1,000万円超の場合】
課税所得金額-(配当所得+1,000万円②)×5%+(配当所得-②)×10%+配当所得×2.5%
【4.課税所得金額から、剰余金の配当所得と証券投資新作の分配金の配当所得を足して1,000万円超の場合】
(剰余金の配当所得×5%)+(証券投資信託の分配金の配当所得×2.5%)

外国税額控除の計算方法

外国税額控除は、下記の2パターンで考えます。
【1.外国所得税額が所得税の控除限度額(所得税額×調整国外所得金額÷所得総額)を超えない場合】
外国所得税額の全額

【2.外国所得税額が所得税の控除限度額を超える場合】
外国所得税額-所得税の控除限度額と、復興特別所得税の控除限度額のいずれか少ないほう

寄附金税額控除の計算方法

・ふるさと納税
ふるさと納税の控除は、所得税と住民税から控除を受けられます。

【所得税から控除を受ける時】
(ふるさと納税を行った金額-2,000円)×所得税率
ただし、上限はその年の所得総額の40%までです。

【住民税から控除を受ける時】
(ふるさと納税を行った金額-2,000円)×10%
こちらにも上限があり、その年の所得総額の30%までとされています。

そのほか、住民税からの控除には特例分もあり、住民所得割額に対する割合によって計算式が異なります。

・政党等寄附金特別控除
(寄附金合計-2,000円)×30%

・認定NPO法人等寄附金特別控除
(寄附金合計-2,000円)×40%

・公益社団法人等寄附金特別控除
計算式は、認定NPO法人等寄附金特別控除と同様です。

ふるさと納税以外の寄附金特別控除に関しては、寄附金合計の上限について、その年の所得総額の40%までと定められています。
また、寄附金の全額を寄附金控除として所得控除とするか、いずれか有利なほうを選択できます。

住宅借入金等特別税額控除(住宅ローン控除)の計算方法

この税額控除の場合、住宅に住み始めた年月により計算が異なります。
下記に、住み始めた時期ごとに分けて、計算方法や控除期間を紹介します。

【2014年1月1日~2019年9月30日】
住宅ローン年末残高×1%・上限40万円・控除期間10年

【2019年10月1日~2020年12月31日】
・1~10年目
住宅ローン年末残高×1%・上限40万円・控除期間13年

・11~13年目
①住宅ローン年末残高(上限4,000万円)×1%
②(住宅取得対価-消費税額・上限4,000万円)×2%÷3
①②のうち、より少ないほう(一定の条件を満たした場合)

【2021年1月1日~2021年12月31日】
住宅ローン年末残高×1%・上限40万円・控除期間10年

【2021年1月1日~2022年12月31日】
・1~10年目
住宅ローン年末残高×1%・上限40万円・控除期間13年

・11~13年目
①住宅ローン年末残高(上限4,000万円)×1%
②(住宅取得対価-消費税額・上限4,000万円)×2%÷3
①②のうち、より少ないほう(一定の条件を満たした場合)

まとめ

税額控除は、ケースによっては所得控除よりも節税につながる効果が高い場合もあるため、税額控除をうまく使って、少しでも税額を圧縮するようおすすめします。

種類によっては、計算方法が複雑で要件も細分化されているものがあります。
煩雑な計算を自動的に行ってくれる会計ソフトもありますが、迷った時は税理士などの専門家に相談するのも良いでしょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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