所得控除には様々な種類がある!賢く利用して節税対策をする方法を解説

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所得控除には様々なものがあるため、あなたも対象になる可能性が。所得控除を賢く使う方法を解説します。


所得控除とは、所得から一定の金額を控除した上で所得税を計算できる制度です。
所得控除には様々な種類があり、自分が適用できる控除が意外とあるかもしれません。所得控除をうまく利用すれば、大きな節税効果も期待できるでしょう。

今回は、所得控除について詳しく解説します。

この記事の目次

所得控除とは何か


所得控除は、所得税の計算のもととなる所得金額から、条件に応じて金額を差引けるものです。

所得控除の概要

所得控除制度が存在するのは、納税を行う人が経済的に抱える様々な事情を鑑み、所得税の負担を軽減するためです。
その事情を鑑みた上で、税制上では15種類の所得控除制度が設けられており、税金の負担を少しでも減らせるようになっています。

所得控除による節税効果は大きい

所得控除を受けることで、所得税の計算に用いる所得を減らせるため、結果的に大きな節税につながります。

つまり、所得控除をより多く受けられると、その分節税が実現します。所得控除は、条件に当てはまれば複数受けることが可能です。

所得控除は基本的に確定申告が必要

所得控除を受けるにあたっては、個人事業主のように毎年確定申告を行っている人は、申告書に所得控除額を記載すれば大丈夫です。
サラリーマンに関しては、ほとんどの所得控除は会社に提出する書類で申告します。

ただし、事業主・サラリーマンを問わず、後述する雑損控除・医療費控除・寄附金控除については確定申告をしなければ控除が受けられないため、注意が必要です。

所得控除には15種類ある


所得控除は15種類あり、それぞれの条件に当てはまる人は、決められた計算方法で求めた控除額か、決められた控除額を所得から差し引けます。

所得控除の種類

所得から一律で控除される基礎控除

基礎控除は、所得額に応じてほぼ無条件で控除されるものです。ただし、2020年から所得が年間2,500万円を超える人に対しては、基礎控除は適用されなくなりました。

資産に損害を受けたときに適用される雑損控除

納税をする人、もしくは生計を共にする家族の自宅の建物や家財において、何らかの損害を受けた場合に、決められた計算式によって求められた金額を控除できます。

雑損控除が適用される損害とは、以下のようなものです。

  • 震災や水害、雪害などの自然災害
  • 火災や爆発などの人的災害で異常なレベルのもの
  • シロアリなどの害虫、害獣による災害で異常なレベルのもの
  • 盗難被害
  • 横領による被害

上記は、いずれも予期しない損害であることが前提で、詐欺や恐喝のように最終的に自身で金銭を差し出した場合は含まれません。
もし、損害の総額が多大で控除すべき所得額よりも上回る場合は、翌年から3年間まで繰越して控除が可能です。
雑損控除を受けるには、事業主・サラリーマンを問わず確定申告が必要です。

医療費控除は一定額を超えると適用可能

所得税を計算する年に、本人もしくは生計を共にする家族が医療行為を受けた時、その治療費や医療機関への交通費を含んだ合計額が一定以上であれば、医療費控除を受けられます。

医療機関に支払った治療費や薬代だけではなく、市販の薬で控除対象となるものを購入した際にも適用可能です(セルフメディケーション税制)。
医療費控除に関しても、事業主・サラリーマン問わず適用を受けるには確定申告が必要です。

社会保険料控除は支払った社会保険料を控除できる

所得税を計算する年に、納税する人もしくは生計を共にする家族の社会保険料を支払っていれば、その金額を控除できるものです。

社会保険料に当たる主なものを、以下にあげます。

  • 健康保険料
  • 国民年金保険料
  • 厚生年金保険料
  • 介護保険料
  • 国民年金基金の掛金
  • など

生命保険料を差し引ける生命保険料控除

民間の生命保険や個人年金に加入し、その保険料を支払った場合、所定の計算式で求めた金額を所得から控除可能です。
生命保険・個人年金に加入したのが2011年12月31日以前である場合(旧契約)と、2012年1月1日以降である場合(新契約)では、計算方法が異なっています。

また、加入期間が5年に満たない場合などでは、控除の適用外となる場合もあります。

地震災害の保険料に適用される地震保険料控除

地震災害のための地震保険に加入しており、保険料の支払いがあった場合は、所得控除は保険料の金額によって決められた額において受けられます。

2007年からは、損害保険料控除が廃止されていますが、損害保険に関して下記のような条件を満たしていれば地震保険料控除の対象です。

  • 2006年以前に加入している
  • 保険契約期間が10年以上、かつ満期返戻金がある
  • 2007年以降、損害保険契約の変更をしていない

小規模企業共済等掛金控除額で掛金を控除

小規模企業共済とは、小規模企業における役員もしくは個人事業主が退職・廃業した際に共済金が受け取れるものです。
上記の共済および同様の性質を持つ共済に加入し、掛金を支払っている場合も、所得控除の対象に含まれます。

小規模企業共済に含まれるものは、主に以下のとおりです。

  • 小規模企業共済法に基づいた、中小企業基盤整備機構が運営する小規模企業共済
  • 確定拠出年金法に基づいた企業型・個人型年金
  • 地方公共団体が運営する心身障害者扶養共済

団体や自治体に寄附した際の寄附金控除

国もしくは地方公共団体などに金銭の寄附を行った時(特定寄附金)、その寄附金から計算された金額を控除できます。

また、一定の条件を満たした認定NPO法人などに寄附した時は、所得控除か税額控除のいずれかを選択可能です。
寄附金控除には、地方自治体に行うふるさと納税も含まれます。
ただし、ふるさと納税では給与所得者であれば一定の条件のもと、確定申告なしで手続きできる「ワンストップ特例制度」があります。
寄附金控除を受けるためには、事業主・サラリーマンを問わず確定申告を行ってください。

決められた基準を満たした障害者には障害者控除

障害者控除は、障害者の中で税法における障害者と認定された人が、納税する人本人もしくは生計を共にする家族にいる場合に受けられるものです。

障害者控除を受けられる人の条件には、主に以下のようなものがあります。

  • 合計所得金額が48万円以下
  • 児童相談所や精神保健福祉センターなどの施設で知的障害者と認定された
  • 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている
  • 身体障害者手帳の交付を受け、かつ身体障害の記載がある
  • 満65歳以上で上記と同等の障害があることを自治体および福祉事務所の認定を受けている
  • 戦傷病者手帳の交付を受けている
  • 原爆の被爆者で厚生労働大臣の認定を受けている

その他、障害の中でも重度である場合や、細やかな介護が必要である人などは、特別障害者とされます。

税制上のひとり親とされる場合はひとり親控除

2019年以前には寡夫控除と呼ばれていたもので、所得税を計算する年の年末まで以下の条件を満たす人を、税制上のひとり親として所得控除の対象にします。

  • 婚姻していない、もしくは事実婚状態である相手がいない
  • 生計を共にする子供がおり、その子供の総所得金額等が48万円以下かつ納税をする本人以外の配偶者等の扶養家族ではない
  • 納税をする人の合計所得金額が500万円以下である

寡婦控除はひとり親の条件以外で寡婦とされる人に適用

寡婦とは、上記のひとり親の条件に該当しない女性の中で、以下の条件の人を指します。

  • 夫との離婚後に婚姻せず、子供などの扶養家族がいて合計所得金額が500万円以下
  • 夫と死別後婚姻していない、または夫の生死がわからない人で、合計所得金額が500万円以下

この条件を満たす寡婦の方は、控除の対象です。

仕事をしている学生に適用される勤労学生控除

納税する人が、働きながら学校に通っている人を勤労学生とし、勤労学生控除が設けられています。勤労学生とされる条件は、主に以下のとおりです。

  • 働いていること、かつ合計所得金額が75万円以下で、そのうち勤労以外の所得が10万円以下
  • 以下の学校に通っていること
  • ※小学校・中学校・高校・高専
    ※学校法人などが運営する専門学校など
    ※法に基づき設置された職業訓練校
    など

 

扶養家族がいれば扶養控除を受けられる

納税をする人に、所得税を計算する年の年末時点で子供・親族などを扶養している時に、扶養控除が受けられます。

この場合の扶養家族についても、条件が設けられています。

  • 6親等以内の親族、3親等以内の姻族
  • 地方自治体から扶養や養護を委託された里子や老人
  • 納税する人と生計を共にする人
  • 扶養家族の合計所得金額が48万円以下、給与所得のみであれば103万円以下
  • 青色申告事業専従者(納税する人が個人事業主で、従業員として働いている)ではない

配偶者がいる場合に受けられる配偶者控除

納税する人の配偶者に適用される配偶者控除には、以下のような条件が定められています。

  • 納税する人の合計所得金額が1,000万円以下
  • 納税する人と生計を共にする民法上の配偶者がいる
  • 配偶者の合計所得金額が48万円以下
  • 青色申告事業専従者でない

配偶者控除の条件外でも配偶者特別控除がある

上記の配偶者控除の条件を満たしていない場合でも、配偶者が特定の条件をクリアしている場合には、配偶者特別控除を受けられることがあります。

配偶者特別控除には、配偶者控除の条件に、主に以下のようなものが加えられています。

  • 配偶者の合計所得金額が48万円超~133万円以下
  • 白色申告事業専従者でない
  • 配偶者の給与所得・公的年金における所得について源泉徴収されていない

所得控除の計算方法・金額


それぞれの所得控除には計算方法や決められた金額があり、下記ではそれらについて説明します。

基礎控除の金額

基礎控除の金額は、合計所得金額に応じて以下のように決められています。

納税をする人の合計所得金額 控除される額
2,400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円超

国税庁「No.1199 基礎控除」

雑損控除の計算方法

雑損控除の計算は、まず損失金額と損失に伴う支出から、保険金などの補助金額を差し引いた差引損失額を求めます。

そして、以下の計算式に当てはめ、どちらか多いほうが雑損控除額です。

  • (差引損失額-総所得金額等)×10%
  • (差引損失額のうち災害にかかる支出額)-5万円

国税庁「雑損控除の金額」「差引損失額の計算のしかた」

医療費控除の計算方法

医療費控除の計算方法は、以下の通りです。

(支払った医療費等-保険金等による補てん額)-10万円

ただし、控除できる最高額は200万円です。
また、納税する人の総所得金額等(合計所得額から繰越控除を行い、その他所得を加算したもの)が200万円未満である場合は、その所得額の5%が適用されます。

国税庁「医療費控除の対象となる金額」

社会保険料控除の金額

社会保険料控除額は、所得税を計算したい年に支払った保険料すべての合計金額が適用されます。

国税庁「社会保険料控除の金額」

生命保険料控除の金額

生命保険料控除に関しては、前述で説明した新契約では最高額4万円、旧契約では最高5万円と設定されていました。
新契約・旧契約それぞれに、支払った保険料に応じた控除額の計算方法があります。

<新契約>

1年間に支払った保険料 控除される額
2万円以下 支払った保険料の全額
2万円超4万円以下 支払った保険料の1/2+1万円
4万円超8万円以下 支払った保険料の1/4+2万円
8万円超 一律4万円

<旧契約>

1年間に支払った保険料 控除される額
2万5,000円以下 支払った保険料の全額
2万5,000円超5万円以下 支払った保険料の1/2+12,500円
5万円超10万円以下 支払った保険料の1/4+25,000円
10万円超 一律5万円

国税庁「生命保険料控除の概要」・「生命保険料控除額の金額」

地震保険料控除の金額

地震保険料控除については、地震保険料と一定条件を満たした損害保険料では計算方法が異なっています。

区分 1年間に支払った保険料 控除される額
地震保険料 5万円以下 支払った額の全額
5万円超 一律5万円
一定条件を満たした損害保険料 1万円以下 支払った額の全額
1万円超2万円以下 支払金額の1/2+5,000円
2万円超 15,000円
上記の両方を支払っている時 上記それぞれの計算方法で算出した金額の合計(最高5万円)

国税庁「地震保険料控除の金額」・「旧長期損害保険に係る経過措置」

小規模企業共済等掛金控除の金額

小規模企業共済等掛金控除は、所得税を計算したい年に各共済に支払った掛金すべての合計金額です。

国税庁「社会保険料控除の金額」

寄附金控除の計算方法

寄附金控除の金額は、以下の計算式で求められた金額でいずれか低いほうです。

  • 所得税を計算したい年の特定寄附金の合計
  • 所得税を計算したい年の総所得金額等の40%相当額

国税庁「寄附金控除の金額」

障害者控除の金額

障害者控除に関しては、その区分により金額が異なります。

区分 控除される額
障害者 27万円
特別障害者 40万円
同居特別障害者
(特別障害者である配偶者・扶養家族で、納税する人や配偶者、生計を共にする親族と同居している人)
75万円

国税庁「No.1160 障害者控除」

ひとり親控除の金額

ひとり親控除については、一律で35万円です。

国税庁「ひとり親控除の金額」

寡婦控除の金額

寡婦控除では、一律で27万円の控除を受けられます。

国税庁「寡婦控除の金額(令和2年分以後)」

勤労学生控除の金額

勤労学生控除の金額も、一律で27万円です。

国税庁「勤労学生控除の金額」

扶養控除の金額

扶養控除の金額は、扶養家族の区分によって異なる金額が設定されています。

区分 控除される額
一般の扶養親族(所得税を計算する年の年末に16歳以上) 38万円
特定扶養親族(所得税を計算する年の年末に19歳以上23歳未満) 63万円
老人扶養親族(所得税を計算する年の年末に70歳以上) 同居老親等以外 48万円
同居老親等(納税する人やその配偶者直系の父母・祖父母等で同居している人) 58万円

国税庁「扶養控除額の金額」

配偶者控除の金額

配偶者控除は、納税する人の合計所得金額によって金額が変わります。

納税をする人の合計所得金額 控除される額
一般の控除対象配偶者 老人控除対象配偶者(所得税を計算する年の年末に70歳以上)
900万円以下 38万円 48万円
900万円超950万円以下 26万円 32万円
950万円1,000万円以下 13万円 16万円

国税庁「配偶者控除額の金額」

配偶者特別控除

配偶者特別控除に関しては、納税する人と配偶者それぞれの合計所得金額により、控除額が細分化されています。

配偶者の合計所得金額
控除を受ける納税者本人の合計所得金額

配偶者の合計所得金額 控除を受ける納税者本人の合計所得金額
900万円以下 900万円超950万円以下 950万円超1,000万円以下
48万円超95万円以下 38万円 26万円 13万円
95万円超100万円以下 36万円 24万円 12万円
100万円超105万円以下 31万円 21万円 11万円
105万円超110万円以下 26万円 18万円 9万円
110万円超115万円以下 21万円 14万円 7万円
115万円超120万円以下 16万円 11万円 6万円
120万円超125万円以下 11万円 8万円 4万円
125万円超130万円以下 6万円 4万円 2万円
130万円超133万円以下 3万円 2万円 1万円

国税庁「配偶者特別控除の控除額」

青色申告者に認められる特別控除


確定申告の際、青色申告を行っている人は、特別控除として所得から差引かれる制度があります。

青色申告者特別控除とは

確定申告の中で、税制上の優遇措置を数々受けられる申告方法が、青色申告です。
青色申告の承認を受けるためには、必要な帳簿を作成して7年間の保管などが求められます。

青色申告で受けられる優遇措置の大きなものが、特別控除です。これも所得控除のうちに数えられ、所得税額の圧縮に大きな効果を持ちます。

3種類の特別控除

・10万円
青色申告において、記帳方法を簡易簿記とした場合、特別控除は10万円です。

・55万円
記帳方法を複式簿記かつ発生主義(取引が発生した日付けで記帳する)で記帳することが求められます。
貸借対照表・損益計算書を作成し、税務署に直接提出するか郵送するかの方法で受けられる特別控除です。

・65万円
上記の条件に加えて、帳簿をPCや記録媒体で電子保存していること・書類提出をe-Taxで行うことで65万円の特別控除が適用されます。

所得控除を受けるための確定申告


これらの所得控除は、サラリーマンの場合は一部を除き年末調整で処理されますが、個人事業主等は確定申告により控除額を計算して申告しなくてはなりません。

個人事業主やフリーランスの確定申告

個人事業主やフリーランスは、自分自身で所得税の申告をしなければならないため、確定申告が必須です。
そのため、所得控除を受けるためには毎年の確定申告書にその旨を盛り込む必要があり、控除額によっては金額の還付を受けられる可能性があります。

サラリーマンの確定申告

サラリーマンの場合、基本的に年末調整にそれぞれの所得控除に応じた書類を会社に提出すれば問題ありません。
ただし、雑損控除・医療費控除・寄附金控除が適用される場合に確定申告を行います。

また、年末調整後に所得控除の対象になる事由ができた場合、自ら確定申告するようすすめられます。

まとめ

所得控除は、その内容を知って自分が適用されるかどうかを精査し申告すれば、節税効果を得られるでしょう。
個人事業主は、確定申告時に控除額を計算すれば良いですが、サラリーマンの場合は年末調整で対応していない所得控除があるため、その場合は忘れずに確定申告をしてください。

所得税の負担を少しでも減らすために、自分が適用される所得控除を確認しておきましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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