税理士の契約形態とは?スポット契約と顧問契約のメリット・デメリット
経理や税務申告などを税理士に依頼するなら契約形態を確認しよう
企業運営を図る中で、税理士に一部の業務を依頼している会社も少なくありません。
経理や税務申告といった業務を専門的な知識がある税理士に任せることで、正確かつより効率的に業務を進められるようになります。
税理士に業務を依頼する方法は、スポット契約と顧問契約の2種類です。
今回は、スポット契約と顧問契約それぞれのメリット・デメリットをはじめ、自社に向いている契約形態や税理士の選び方などについてご紹介します。
この記事の目次
税理士の契約形態は2種類
税理士との契約形態は、税理士に業務を依頼する頻度によって、スポット契約と顧問契約の2種類に分けられます。
スポット契約
スポット契約とは、複数回の依頼や継続を必要とせず、1回限りの業務委託契約のことをいいます。
例えば、記帳代行業務をはじめ、決算書・各種申告書の作成・申告業務代行などの業務代行を依頼するのが一般的です。
特に決算書や各種申告書の作成は、年に1回必要な業務です。
そのほか、会社設立のサポートや事業承継に関する相談、株価評価算定、相続税・贈与税の税務書類作成と税務代理など、具体的な業務代行を依頼する際に選ばれる契約形態となっています。
必要な時に必要な業務だけを依頼する形態のため、本業以外でなるべくコストをかけたくないベンチャー企業や、小規模の企業が単発で税理士に依頼する際に適しています。
顧問契約
顧問契約は、継続した契約を結ぶ際に必要となる契約形態です。顧問契約は、大きく月次決算型と年1決算型に分けられます。
月次決算型は企業がある程度成長して規模が大きくなった時に選ばれます。
事業規模が大きくなると、変化していく事業の進捗に対応すること自体が難しくなる一方で、月次決算によって常に経営状況を把握していかなければなりません。
そのため、税理士と月次決算型の顧問契約を結ぶことで、適切な経営判断をしていく必要があります。
年1次決算型は、決算書類作成・税務申告などの業務代行に加え、税務・経営における財務状況の評価や資金繰りのアドバイスなどが含まれるものです。
スポット契約とは異なり、広範囲にわたるサポートが受けられます。
税理士とスポット契約するメリット・デメリット
スポット契約は、継続せずに具体的な業務代行を依頼したい時に適した契約形態です。実際に、税理士とスポット契約することは、メリットもあればデメリットもあります。
契約前には、きちんとその両方を理解しておくことが大切です。
スポット契約のメリット
スポット契約のメリットには、税理士費用の軽減や事務作業の依頼が可能であることが挙げられます。
税理士費用を軽減できる
税理士へ業務依頼をするには、まとまった費用が必要です。
継続して契約する顧問契約と比較しても、依頼する業務自体が年に1回の業務依頼だけで済むため、その分費用負担の軽減ができます。
費用負担が心配で、税理士へ依頼するのを戸惑っている経営者も多いのではないでしょうか。
起業したばかりで事業規模が小さい場合は、依頼したい業務内容も絞っておく必要があります。
必要なものだけ効率良く依頼できるからこそ、税理士費用の負担を軽減できるのは大きなメリットです。
煩わしい事務作業をお任せできる
税理士にスポット契約で依頼すれば、経費や取引きに関連するデータを渡すことで税理士に業務を代行してもらえるため、負担軽減につながります。
そもそも決算や申告の書類作成や申請などには、専門的な知識も必要です。
税理士に依頼すれば、すべてを経営者や経理担当者が行うよりも事務作業を大幅に短縮させられるようになります。
さらに、専門的な知識を持つ税理士が作業を行えば、申告も正確なものになるため、仮に税務調査が必要とされた場合でも安心です。
スポット契約のデメリット
スポット契約のデメリットには、決算申告時にならないとアドバイスが受けられないことや、節税対策が不十分な場合などが挙げられます。
決算申告時にならないとアドバイスを受けられない
スポット契約の場合、年1回の決算申告時に書類作成や申告の業務依頼を行います。
顧問契約と違い、いつでも相談や依頼ができるわけではないので、決算申告時にならなければ、相談したりアドバイスを受けたりすることはできません。
税理士の業務は、決算や申告のみならず、企業を経営するための支援や資金調達に関する相談など、様々なものがあります。
専門家のアドバイスを受けたくても、決算申告時まで待たなければならない点がデメリットといえます。
決算が終わるまで正確な業績が明確にならないこともある
企業の運営は経営状況を常に把握し、適切な対応を取っていくことが大切です。
しかし、帳簿の記帳をこまめに行わず放置している場合や、年1回のみ税理士に業務依頼していた場合、企業の正確な業績を把握できなくなってしまうかもしれません。
決算が終わるまで正確な業績が明確にならなければ、リアルタイムで適切な判断ができなくなることもあります。
期中でも正確な業績を追っていくには、スポット契約よりも顧問契約が適しています。
十分な節税対策ができない可能性がある
スポット契約で年1回の依頼のみの場合、節税対策が不十分になることがあります。
節税対策は通年で行いながら、決算日前にその期の所得を予測して適切な対応を取っていかなければなりません。
しかし、スポット契約では決算日が終了してから資料を渡し、申告してもらう流れのため、節税対策をしたくても決算日後では対策が限られてしまいます。
こうした理由から、スポット契約だと節税対策が十分にできない場合もあります。
税理士と顧問契約するメリット・デメリット
スポット契約に比べると、顧問契約のほうがメリットも大きいように感じられるかもしれませんが、デメリットもあります。
顧問契約のメリット
まずは、企業が税理士と顧問契約を結ぶメリットをご紹介します。メリットは主に4つ挙げられます。
経理や税務申告業務を任せ本業に専念できる
顧問契約を結べば、経理・税務申告・記帳代行などの業務をすべて税理士に任せられるようになります。経営者は営業や経理など、様々な業務を行わなければなりません。
そのような時、専門的な知識が豊富な税理士に依頼することで業務負担を軽減でき、本業に専念できます。
経理や税務申告といった業務は複雑な作業となるため、知識も必要となり時間がかかりますが、弁護士と顧問契約を結んでいれば、正確な経理及び税務申告が効率良く行えます。
会社のお金に関するアドバイスを受けられる
企業を円滑に運営していくためには、適切な節税対策や資金繰りが必須です。
しかし、節税対策も資金繰りにおいても、様々な方法があるため、どのような方法が自社に合っているかの見極めが困難です。
税理士はお金に関する専門家であり、豊富な知識や経験を踏まえたアドバイスができます。
顧問契約を結んでいれば、顧問弁護士から適切な節税対策や資金繰りの改善、事業展開における相談などにも乗ってもらえます。
税務調査に対応してもらうことが可能
仮に税務調査が必要となった場合、顧問契約をしていれば顧問弁護士に対応をお願いすることが可能です。
税務調査当日の立会いはもちろん、事前の書類準備も行ってくれるので税務署とスムーズなやり取りができます。
顧問弁護士がいれば企業の取引きの実態も常に把握しており、専門知識を持って対応してもらえます。反論すべきポイントにも適切な対応を取ってくれるでしょう。
顧問契約を結んでいれば、税務調査が必要となっても問題ないことがほとんどです。
社会的信用度を高められる
企業に顧問弁護士が付いているかどうかで、取引先からの信頼度が変わってくるといわれています。
仮に弁護士と顧問契約を結び、顧問弁護士がいる場合には、財務状況に関する信用度は高くなるため、取引先からも信頼されやすいといわれています。
たとえ経営者や経理担当者が税務申告した書類であっても、弁護士以外の人が対応したものでは、税務署からの印象も大きく変わるようです。
顧問契約は、社会的信用度を高めることにもつながります。
顧問契約のデメリット
顧問契約には顧問料の負担が大きいことや、年1決済型でのアドバイス時期などのデメリットがあります。
顧問料の支払いが負担になる
資金的な余裕がある企業なら問題ありませんが、税理士と顧問契約を結ぶ場合には、顧問料の負担が大きくなることを覚悟しなければなりません。
特に顧問契約の月次決算型で契約する場合、顧問料が毎月発生するため、経営の重荷になる場合があります。
どれくらいの費用がかかるかは税理士によっても変わりますが、法人の場合は月々35,000円以上かかるとされています。
起業したばかりや事業規模が小さい場合には、費用負担が大きくなるため、注意が必要です。
年1決済型ではアドバイスを受けられる時期が限られる
年1決済型の場合は、年に1回だけ税理士に業務依頼する形となります。
スポット契約と比較すればサポートしてもらえる幅は広くなりますが、年1回のやり取りになるため節税対策や資金繰りなどの年間を通じたアドバイスを受けにくくなり、相談時期も限られてしまいます。
年1回だけの依頼の場合、決算申告や確定申告などの業務依頼にかかる費用のみが必要です。費用の負担が少ない分、月次決算型よりもサポートが薄くなってしまいます。
どちらの契約形態が向いている?
スポット契約にも顧問契約にもメリット・デメリットがありますが、どちらの契約形態が適しているのでしょうか。
ここからは、スポット契約と顧問契約、それぞれが向いているケースをご紹介します。
スポット契約が向いているケース
2種類の契約形態のうち、スポット契約が向いているのは、企業の事業規模が小さく、取引きが単純なケースです。
事業規模がそこまで大きくなっていない企業は、期中の業績を把握しやすく、税理士のような専門家のアドバイスを必要としない場合も多くあります。
所得がまだ少ない場合、節税対策の効果も発揮されないかもしれません。
年間を通じた相談やアドバイスまで不要なら、決算申告時のみのスポット契約を結んでいるだけでも効果を得られる可能性は高くなります。
また、社内の経理体制をしっかりと構築できている場合は、正確な帳簿記帳ができ、業績も正確に把握できる状況です。
問題なく業績を把握でき適切な対応ができているなら、顧問契約を結ぶ必要はありません。
顧問契約が向いているケース
顧問契約が向いているのは、売上高が1,000万円を超える企業や従業員を雇用している企業、年間を通じて節税対策を講じたい企業、事業規模が大きく取引数の多い企業、店舗を抱えている企業、融資を検討している企業などです。
大きな企業であればあるほど、税務処理は複雑で作業にも時間がかかります。事務作業に割く時間を軽減し、本業に専念したいと考えているなら、顧問契約が適しています。
また、事業拡大や新たな挑戦を検討している企業では、税務的な観点をはじめ、資金調達・人員といった様々な側面からの連携が必要不可欠です。
顧問契約を結んでいれば、年間を通じて専門家の知識をもとに相談・アドバイスが受けられるため、メリットも大きくなります。
自社に合った税理士を選ぶためのポイント
どのような契約形態でも、自社に合う税理士を選ぶことは大切です。ここでは税理士を選ぶ際のポイントについてご紹介します。
サービス内容と報酬を確認する
税理士を選ぶ際には、サービス内容と報酬の確認が必要です。例えば、「税務コンサルティング」のように具体的なサービス内容が把握しにくい場合もあります。
節税対策や資金調達など、具体的な項目が含まれているか確認してください。サービス内容と要求が合っていれば、自社に合う税理士を選びやすくなります。
また、サービスと報酬が釣り合っているかどうかも重要です。
スポット契約の場合でも、申告書作成のみを依頼するのか、領収書の整理からすべて依頼するのかによって費用が異なってきます。
自社の状況に合わせて業務を依頼すれば、費用面でお得になる可能性が高くなります。
事業所の規模や経験年数を確認する
事業所の規模、また税理士の経験年数の確認も必要不可欠です。
経験年数は、税理士として働いた年数ではなく、自社が属している業界・業種において、税理士としてどのくらいの年数関わってきたかを確認します。
どれほど勤続年数が長くても、自社が属する業界・業種での経験が浅い場合は注意が必要です。
ただし、企業で求めているサービス内容に合致していなければ意味がありません。これまで担当してきた中心顧客の事業規模が自社に近ければ、業務の質も同様と判断できます。
実際に税理士に会ってみることで、知識や経験などを確認してください。
気軽に相談できるかどうか
どれほど経験年数が豊富で業務の質が高くても、経営者と相性が合わなければ気軽に相談することはできません。
相性が良ければ、様々な問題でも気軽に相談できます。また、専門家の意見を踏まえて適切に判断・対応してくれます。
自社の悩みを理解し、親身になって考えてくれる税理士は信頼でき、安心して業務を任せられるでしょう。
サービス内容・報酬・経験は重要ですが、それ以上に経営者との相性も十分に確認しておく必要があります。
特にやり取りが多くなる顧問契約を検討しているなら、契約前の段階で多くのコミュニケーションを取っておくことがポイントです。
まとめ
スポット契約も顧問契約も、企業の事業規模や税理士に求める依頼内容によって、適した契約形態が変わってきます。
スポット契約は、事業規模が小さく取引きが単純な企業向きで、一方の顧問契約は通年で節税対策を講じたい企業や取引数の多い企業が該当します。
また、契約形態だけではなく、自社に合った税理士を選ぶことも覚えておきたい大切なポイントです。
(編集:創業手帳編集部)