個人事業主が税務調査を受けることもある!?確率や備えておくべきことを解説!

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個人事業主が税務調査の対象になる可能性はある!


事業を営んでいる場合、法人でも個人事業主でも税務署から税務調査に関する連絡が来る場合があります。
税務調査という言葉自体は知っていても、具体的にどのような調査が行われるかよくわかっていない個人事業主も少なくありません。
そのため、自分が調査対象になった時に焦ってしまいます。

いざという時に焦らないようにするためには、税務調査とはどのようなものか、対象になる確率はどのくらいかを理解しておくことが大切です。

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そもそも税務調査とは?


税務調査は、法人だけではなく個人事業主も対象になります。まずは、税務調査とはどのようなものか、基本的な部分から解説していきます。

税務調査は「任意調査」と「強制調査」の2種類

税務調査には、任意調査と強制調査の2種類があります。

任意調査は、脱税の疑いがない法人や個人事業主を対象とした調査です。事前に税務署から連絡が入るので、突然訪問されることはありません。
電話で事前通知が難しいケースでは、通知書が送付されます。

調査官には、質問検査権が認められています。
正当な理由がないにもかかわらず帳簿書類などの提示に応じない場合は、罰則の対象になるので注意が必要です。

強制調査は、国税局査察部が裁判所の令状を持ち、強制的な捜査を実施します。脱税の疑いがある納税者が対象となっています。
脱税の金額が1億円を超えている場合や脱税のために悪質な隠ぺい工作を行っている場合などに、対象となるケースが多いです。

任意調査は税務調査を拒否しても問題ありません。
しかし強制調査の場合は、その名のとおり強制的に実施されるので、拒否権がないという点も大きな違いです。

一般的な流れについて

税務調査の一般的な流れも把握しておくと、対象になった時に焦らずに済みます。

まずは、電話または郵送で事前通知が行われます。
事前通知の時に、「過去3年~5年分の調査を行います」などと言われるため、その期間中の帳簿などを調査日までに用意してください。
普段から定期的に書類の整理をしていれば、突然通知が来たとしても問題なく対応できるでしょう。

通知から約2週間後に、税務調査が行われるケースが多いです。
税務調査で申告ミスが発覚したら修正申告などを行います。申告内容に問題がなければ、申告是認となります。

調査の対象は個人事業主本人だけではなく、取引先にも及ぶ可能性があります。取引先への調査は反面調査と呼ばれています。
必要な資料に不足している部分があると、反面調査が行われやすいです。

税務調査に必要な書類は以下です。

  • 帳簿(法定帳簿や仕訳帳、総勘定元帳など)や売上げの書類(注文書や見積書の控え、請求書の控えなど)
  • 必要経費の書類(請求書や納品書、領収書など)
  • その他の書類(申告書の控えや預金通帳、契約書など)

個人事業主が税務調査の対象になる確率は?


税務調査は、個人事業主も法人も対象になります。しかし、すべての業者が対象になるわけではないため、どのくらいの確率なのか気になるかもしれません。
そこで、ここでは個人事業主と法人が税務調査の対象になるのはどのくらいの確率なのか解説していきます。

2022年11月に公表された、2021年度の個人に対する実地調査の件数は、約31,000件となっています。
2021年の申告件数は、事業所得及び不動産所得のみを集計すると約657万件です。31,000÷657,0000という計算式で確率を算出すると、個人事業主が調査対象となる確率は約0.5%になります。

同じく2022年11月に公表された、2021年度の法人に対する実地調査の件数は約41,000件です。
申告件数は約307万件だったので、41,000÷307,0000という計算式で算出してみると、法人が調査対象となる確率は約1.3%になります。

法人と比べると個人事業主は確率が低いですが、税務調査になる可能性がないとは言い切れません。

税務調査の対象になりやすいのはどのような個人事業主?


税務調査の対象になりやすい個人事業主と、そうでない個人事業主が存在します。
続いては、どのような個人事業主が税務調査の対象になりやすいのか解説していきます。

1.売上げが拡大している

売上げが拡大している個人事業主は、税務署から目をつけられる可能性が高いです。
なぜかというと、事業規模が大きくなるとそれに比例するように修正箇所が増えやすいためです。
修正箇所が多くなるほど、申告漏れや修正申告をしなければいけないといった状況に陥りやすくなります。

税務署の職員は人数が限られているので、修正申告が多いと想定される会社から調査を実施します。増加額が妥当かどうか、という点も調査を行う時のポイントです。
このことから、赤字計上している個人事業主に調査が入る確率は極めて低いと考えられます。

税務署側も、闇雲に調査を行っているわけではありません。調査すべき対象をしっかりと見定めています。

2.開業してから3年くらい経っている

開業したばかりの個人事業主は、そこまで大きな利益が出ているとは考えにくいです。
経理処理も気合を入れて行うので、適正に処理されている可能性が高いとも考えられます。そのため、調査をしても調査官にとってメリットのある結果は得にくいです。

しかし3年ほど経過すると、順調に事業を行っていれば利益が出始めます。経理処理に関しても、少しずつ油断が出始める時期です。
また、事業をスタートしてから2年間は消費税が課税されませんが、3年目からは課税されるので帳簿を付けなければいけないという点も、調査が行われるようになる理由のひとつです。

このような理由から、開業してから3年目くらいになると、税務調査が入る可能性は高くなると言えます。

3.そもそも申告をしていない

個人事業主の中には、そもそも申告をしていない方もいます。税務申告をすると、1年間の売上げや経費が公表され、その数字をもとに税務署が申告漏れの有無を確認します。
税務調査を免れたいのであれば申告をしなければいいと考える方もいるかもしれませんが、税務署は常に事業内容や経営状況をチェックしているので、ある程度知られています。

自分で税務申告を行わなくても、取引先の税務申告や税務調査でわかってしまうのです。
取引先の調査で自分の会社が調査されることは、前述したように反面調査と呼ばれています。
IT化も進んでいるため、個人事業主を調査するための資料を税務署側は揃えていると考えておいてください。

4.売上げに不審な部分がある

売上げに不審な部分がある場合も、税務署から目をつけられやすいです。個人事業主だと、取引先が1年間の取引合計額を毎年支払調書として税務署に提出します。
つまり、支払調書を作成する会社と取引きしている場合は、自分自身の会社の売上げも判明しているということです。

売上げは、他社などとの関係で生じるものなので、嘘をついてもすぐにバレてしまいます。
売上げを過少申告すると税務署はすぐにわかるため、そこから税務調査につながる可能性も大いにあります。

また、消費税が課税される売上げは1,000万円を超えた場合なので、常に900万円台を推移している場合も疑われやすいです。悪意がなかったとしても対象になります。

5.経費に不審な部分がある

経費に不審な数字が計上されている場合も、税務調査の対象になります。
例えば、不動産賃貸業なのに接待費や旅費交通費などが多く計上されている場合などは、疑われる可能性が高いです。
会社の経費とプライベートの線引きが難しく、領収書が保存できるものに関しては注意が必要です。

また、仕入れを行わなければいけない事業なのに棚卸資産がない場合も、不審がられる原因になります。
経費計上もとにかくすれば良いわけではないため、怪しまれないように適切な内容にしましょう。
適切な経費計上ができていれば、税務署から怪しまれることはありません。

6.医療控除の額が大きいのに所得も高い

医療控除は、治療の必要がある支出に限られています。美容整形(事故などによるケガが原因の場合を除く)や歯科矯正は対象外です。
そのため、医療控除が大きい場合は何かしら病気を患っている可能性が高いです。

それでいて所得が高い場合は、病院への支出が医療控除の対象になるか確認するために税務調査を実施します。
状況によっては疑われてしまう可能性もあるため、正当な理由であることを説明できるか否かがポイントになります。

もちろん、正しく医療控除を利用しているなら問題はありません。正しいことを示すための根拠を伝えられるようにしておくと、調査がスムーズに進みやすくなります。

個人事業主ができる税務調査の対策方法について


個人事業主ができる税務調査の対策方法を知っておくと、税務調査がきても円滑に対応できます。具体的にどのような対策方法があるのかご紹介します。

領収書の整理を行う

確定申告をする際、必要経費に計上して提出した領収書は7年間保管しておかなければいけません。
経費計上した支出は、年度に分けてわかりやすく整理しておくのがおすすめです。そうすることで、いざという時にもチェックしやすくなります。

また、個人事業主は事業に関する支出のほか、個人的な支出に関連する家事関連費もあります。家事関連費に関する領収書もきちんと整理し、保管しておいてください。

以前は、領収書は受け取ったまま保管しておかなければならず、コピーや電子データとしての保管は認められませんでした。
しかし、2022年に施行された電子帳簿保存法により、電子データとして保存しなければいけないことになりました。

税理士に相談する

税務調査の対象になり、すべて自分だけで対応するのは大変です。そのため、税理士に相談し、調査に立ち会ってもらうことをおすすめします。
税務署から税務調査に関する電話がかかってきた時に税理士に連絡すると、日程調整をしてもらえます。

税理士に相談すると、税務調査の前に準備しておきたい資料や心構えなどをレクチャーしてもらえるメリットもあるので、価値は大いにあるでしょう。
個人事業主が調査官からの質問に適切な回答ができるとも限らないので、適切な受け答えをするためにも税理士への相談は有用です。

必要な書類をすぐに出せるようにしておく

必要な書類をすぐに出せるようにしておけば、誠実な印象を持ってもらえます。
書類の提出などで手間取っていると、やましいことがあるのではないかと思われてしまうことも考えられます。
そうなるとデメリットしかないので、必要な書類はあらかじめ準備しておいてください。

申告内容に問題がないと確認ができれば、税務調査がすぐに終わる場合もあります。
税務署から調査依頼があった時はむげに断るのではなく、対応可能な日を伝えることも誠実さを伝える要素です。その日までに書類をしっかり準備しておけば、問題ありません。

留置きされた場合に備えて書類をコピーしておく

税務調査を行う調査官は、あらかじめ簡易的な調査を実施します。その中で実地調査をチェックする内容を見極め、訪問しています。
必要最低限の書類は準備しなければいけませんが、指示されたものだけを渡すわけではありません。

必要だとみなされる書類は、調査官がコピーして持ち帰るケースもあります。しかし、状況によっては原本が税務署預かりになるパターンもみられます。
そのため、会社にないと困ってしまう書類に関しては、調査が始まる前にコピーしておきましょう。

必ずしも税務署預かりになるとは限りません。しかし絶対にそうならないとも言い切れないため、準備しておくと安心です。

個人事業主が税務調査でミスを指摘された場合


個人事業主が税務調査に入られ、ミスを指摘される可能性も大いにあります。最後に、個人事業主が税務調査でミスを指摘された場合の対応について解説していきます。

修正申告する

税務調査の後に、納付した税金が多すぎるという指摘をされることはまずありません。
例外もないとは言い切れませんが、不正を疑って行われるケースも多いので、その割合は少ないと考えられます。
しかし、本来納めなければいけない金額よりも、少なく申告する過少申告は指摘される場合があります。

指摘事項があった時は、修正申告をしてください。この場合、納付期限を過ぎているので無申告加算税などの課税分も納付する必要があります。

更正の請求を行う

税務調査の結果に問題がなければ、修正申告の対応で問題ありません。しかし、納得できない時は更正の請求を行えます。
これは、税務署などに対する不服申し立てで、再調査の請求を請求するものです。

税務調査で何らかの問題があると罰を受けなければいけないと考える方もいます。しかし、税務調査の結果で刑罰の対象になることはほとんどないので安心してください。
対応があれば財産の差し押さえなどをされることもありますが、税務調査事態にそこまで大きな力はありません。

まとめ

税務調査は、個人事業主でも法人でも対象になる可能性があります。対象になった場合、適切な手順で調査を受ければ問題ありません。
日頃から領収書や書類を整理しておき、いざという時に対応できるようにしておきましょう。
不安がある場合は、税理士などの専門家に相談すると適切なアドバイスがもらえます。

創業手帳の(冊子版)では、開業後に感じる不安や悩みを解消するための情報も発信しています。税務調査に関する知識も紹介しているので、調査に関する不安がある方はぜひご覧ください。

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(編集:創業手帳編集部)

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