日本人は世界で活躍できるチャンスがある。キリロム工科大学 猪塚 武が実践する「海外で成功するための考え方」(インタビュー後編)

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※このインタビュー内容は2017年12月に行われた取材時点のものです。

一つのことに固執せずに、視野を広げるためにやっておきたいこと

(2017/12/19更新)

前編では、起業家になったきっかけや、カンボジアを選んだ理由について語っていただいた、キリロム工科大学 猪塚 武氏。
後編となる今回では、海外でビジネスをしていくために考えておきたいことや、現在運営している大学の現状、さらには起業家に向けて伝えたいことについて、お話を伺いました。

前編はこちら→IT業界で成功後、カンボジアで学費無料の大学を設立!猪塚武の国境を超える発想法(インタビュー前編)

猪塚 武(いづか たけし)
キリロム(vKirirom Pte. Ltd.)創業者 兼 CEO /キリロム工科大学学長
1967年、香川県出身。早稲田大学理工学部物理学科、東京工業大学大学院理工学研究科修了。アクセンチュアを経て1998年に株式会社デジタルフォレストを設立。会社を売却後、2010年に日本を離れ、4年間のシンガポール生活を経て、2014年よりプノンペンに移住。
同年、キリロム工科大学を中心とした約1万haの広さの「vキリロムネイチャーシティ」を設立。世界的な起業家組織EO(Entrepreneurs’Organization)の日本支部会長・カンボジア支部会長・アジア理事を務める。2018年4月1日より日本人起業家のグローバルネットワークである一般社団法人WAOJE 代表理事。東京ニュービジネス協議会から 2016年国際アントレプレナー賞 最優秀賞 受賞。
VKIRIROM PTE. LTD.は「デロイト 2017年 アジア太平洋地域テクノロジー Fast 500」で28位を獲得(日本・アセアン地域内1位)。

有望な国はベンチャー企業に向いていない

ー創業された「デジタルフォレスト」は、中国やインドに子会社があったんですね。ということは、海外へのアウトソースも経験されているんですね。

猪塚:そうですね。当時はそのような流れが主流でした。その時に感じたのは、「エンジニアの力が足りない」ということです。ですが、日本人を採用すればコストがかかります。そうなると、「コストを下げて、中国やインドでやってみよう!」となりますよね。しかし、日本人がインドや中国で成功することは簡単ではありません。

ーそうなんですか。なぜ簡単ではないのでしょうか?

猪塚有望な国が、ベンチャー企業に向いているわけではないからです。
有望な国は海外から様々な企業が進出してきますよね。そうなると、ITなどの市場はありえないほどのレッドオーシャンになっています。先ほどお話ししたシンガポールでも、地元民でさえ苦戦しているほどでした。そんな場所に、外国人が太刀打ちしていくことは無理だと思いました。

他にもサウジアラビアやスーダンなども研究しましたが、治安も気候も良いカンボジアにたどり着いたということです。

ーそのような経緯でカンボジアにたどり着いたんですね。

猪塚:そうですね。カンボジアは劇的に良いところです。
我々が事業をやっているキリロムはカンボジアにありますが、これからAIや自動運転など、いろんな技術が活躍していくと思います。新しい技術を取り入れるとなると、今私がやっている事業の場合、街全体で実験をすることができます。学園都市であり、実験都市でもある、ということですね。

「お金がない人が修業できることができる施設」を作りたかった

ー目がつけられていない土地だと参入障壁が低いし、それと同じように、人もまだ教育が施されていない場合があります。人が持っている能力を教育で引き出して、知識と経験を積ませる、ということですね。

猪塚:そうです。実は、すぐお金にならなさそうなことのほうが、カンボジア人とはうまくいきます。すぐお金になりそうだと、コピーキャットが大勢群がってきます。そのような形で地元と衝突するのは避けようと思っています。

ーレッドオーシャンのシンガポールとは違いますね。

猪塚:シンガポールの場合は、「住みたい」が目的になっている人が多いです。すると、住むだけではヒマなので、「何かしなければ!」と思って起業します。「シンガポールに起業しに行く」と対外的には言っていますが、実はそうじゃないと感じます。安全で、教育のレベルも高いですし。

ーセブ島で日本人を集めて英語を勉強させる、というプログラムがありますが、その大学版がキリロム工科大学だということなんでしょうか?

猪塚:そうですね。「お金がない人が思う存分修行できる施設」を作りたかったんです。先ほどもお話しした通り、キリロムは実験都市です。優秀な人材を育てるために行うプロジェクトが、ダミーではなく全て実戦で機能しているので、結果がすぐに反映されます。それを改善していって、学生たちがスキルアップできるようにしています。

ーそのような学校を作るにあたって、様々な課題があったかと思います。課題に直面した時は、どのようなことを意識して乗り越えていったのでしょうか?

猪塚問題に直面した場合、「これがミスっていたら何が起こるか?」ということを論理的に考えるようにしています。つまり、リスクヘッジをしながら進んでいくということです。「この人が言っていることは、8割正しいかもしれないけど、あとの2割の確率で間違っていたときには何が起こるだろうか?」という感じです。

ーちなみに、在校生はいまどのくらいいるのですか?

猪塚:117名です。全員がインターンをしていて、すでに学生とは思えないぐらい、優秀な学生も多く在籍しています。

学園都市で進行しているプロジェクトが沢山あるので、学生たちにはそのプロジェクトに参加してもらっています。ですが、就職先が決まったら、就職先が進行しているプロジェクトを優先するというルールになっています。なので、4年生は半分以上が就職先の仕事をしています。

日本人は世界中で活躍できるチャンスがある

ー最後に、起業家たちにメッセージをお願いします。

猪塚:メッセージは2つあります。
1つ目は、起業した時のアイデアに固執しない、ということです。例えば、起業してから2年間は方向転換できるようにする、という視野の広さを持っておくことがまず重要です。

2つ目は、ビジネスの対象を日本だけにしない、ということです。海外の人々との関わり、特に貧しい国の人々と関わりを持つようにしましょう。日本人は優しいので、その国のために頑張ろうと思うはずです。そうすると、自分が思いもつかなかったチャンスに出会えると思います。

やはり、日本人は「この人たちのために何かしたい」と思う気持ちが強いです。
そのような気持ちを持って、日本だけでなく海外でも事業を展開していくことができたら、ものすごく活躍できると思います。

(取材協力:キリロム工科大学学長/猪塚武)
(編集:創業手帳編集部)

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