消費税を節税するには?負担を軽減する方法とポイントを解説

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事業者が納める消費税は節税によって負担を軽減させることが可能


消費税課税業者には、消費税の納付義務が発生します。消費税の納付には手間がかかるため、負担に感じる人も多いかもしれません。
しかし、事業者が納める消費税は、節税によって負担を軽減できます。

今回は、消費税を節税するための方法を紹介します。

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事業者が消費税を節税する方法10選


消費税の節税と聞くと難しそうに感じるかもしれません。しかし、法人でも個人事業主でも、すぐにできる消費税対策は多くあります。

ただし、消費税の節税方法の中には、使える事業者が限定されていたり、場合によって使えなかったりするものもあります。

1.簡易課税・原則課税を見直す

【この節税方法を使う事業者の条件】
基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者

消費税の課税事業者になる時に、簡易課税制度を選択するかどうかは消費税節税のポイントです。
簡易課税制度とは、消費税の納税額の計算をより簡単にすることができる制度です。
消費税の納税額は、受け取った消費税額から支払った消費税額を差し引いて計算するのが原則となっています。

しかし、基準期間の課税売上高が5,000万円以下である場合は簡易課税を選択できます。簡易課税では、受け取った消費税額の合計に業種ごとの一定の割合を乗じた計算になるため、事務作業が大幅に削減されます。

簡易課税から原則課税に切り替える

小規模事業者にとっては、簡便な簡易課税を採用するほうが良いと感じるかもしれません。
しかし、消費税の納税については、原則課税を採用したほうが消費税が少なくなるケースがあります。

一例として、設備投資のように課税仕入額が多い事業年度では、原則課税によって節税できることがあります。
簡易課税では課税売上だけが計算の対象になりますが、原則課税では仕入税額が税計算に反映される仕組みです。
そのため、原則課税を選択したほうが仕入額控除が増えて納付する消費税が減少するのです。
決算の時には、簡易課税と原則課税の場合を両方計算してどちらのほうが有利になるかを調べてください。

原則課税から簡易課税に切り替える

反対に、原則課税から簡易課税に変更することで節税できるケースもあります。
サービス業や小売業のような給与の支払いが多い業種では、給与の支払いが課税仕入にならず、納税額が増えてしまいます。

簡易課税と原則課税で実際にシミュレーションしてみてください。ただし、簡易課税と原則課税のどちらも、採用してから2年間は継続しなければなりません。
そのため、シミュレーションも2年分が必要な点に注意してください。

簡易課税で売上区分を分けることでも節税につながる

簡易課税は業種によって、6段階のみなし仕入率が採用されています。

  • 第一種 卸売業……90%
  • 第二種 小売業……80%
  • 第三種 建設業等……70%
  • 第四種 ほかの業種に区分されない飲食店金融保険業……60%
  • 第五種 通信運輸業 サービス業……50%
  • 第六種 不動産業……40%

上記の業種ごとに区分することで節税となる場合もあります。
例えば、サービス業であればみなし仕入率は50%ですが、商品販売をしていれば小売業となり、みなし仕入率は80%となるのです。
みなし仕入率を変えることによって、仕入額控除を増やせるため、節税できます。

2.インボイス制度の「2割特例」を活用する

【この節税方法を使う条件】
2023年10月1日から3年間(2026年9月30日まで)の日の属する各課税期間

上記で説明したように、納付税額は一般課税か簡易課税どちらかで計算します。
ただし、例外がインボイス制度の2割特例です。2割特例は、消費税の納税額を売上税額の2割にできるものです。

つまり、売上げから計算した消費税額から売上税額の8割を差し引いて納税額を計算できます。
この方法を使えば、売上げと収入を把握すれば消費税の申告が可能になり、事務負担も軽減できます。
2割特例は、一般課税と簡易課税のどちらを選択している場合でも適用できます。

3.適格請求書発行事業者から優先して商品を仕入れる

【この節税方法を使う事業者の条件】
原則課税を選択している事業者

2023年の10月から導入されたインボイス制度によって、経費の処理は大きく変化しました。
インボイス制度では、消費税の課税仕入を計上するために、適格請求書を受領しなければなりません。
適格請求書を発行できるのは、適格請求書登録事業者として登録している事業者のみです。つまり、適格事業者でない事業者に支払った経費は仕入額控除が適用されません。

仕入税額控除が少なくなれば消費税の納税負担は増えてしまいます。
消費税を節税するためには、仕入税額控除が可能な適格請求書発行事業者との取引きを優先する方法があります。

4.寄附金や協賛金は広告費として計上する

【この節税方法を使う事業者の条件】
原則課税を選択している事業者で広告宣伝費にできる寄付金、協賛金がある

寄付金や協賛金を支払っても消費税は控除できませんが、広告宣伝費としての要件を満たせば、広告宣伝費として計上して仕入税額控除の対象にできます。
広告宣伝費として寄付金や協賛金を計上できるケースとして挙げられるのが、ポスターやホームページに企業名、ブランド名が掲載されることを目的に協賛金を支払う場合です。

ただし、広告効果がないような寄付金、協賛金は広告宣伝費として計上できません。
一般消費者向けでなかったり、社名が表示されなかったりする場合など、費用対効果が認められないような協賛金は広告宣伝費とは認められない可能性があります。
広告宣伝費となる実態があるかどうかで判断してください。

5.出張手当(旅費日当)を導入する

【この節税方法を使う事業者の条件】
まだ出張旅費規程を導入していない事業者

出張手当(旅費日当)とは、出張中の食費や交通費、宿泊料以外の諸経費に対する実費弁償として支給される手当や日当のことをいいます。
実費弁償であるため、支給される個人の所得税は非課税で、損金として計上できます。

ただし、出張手当(旅費日当)を計上するためには、出張旅費規定を策定して役職ごとに金額を決めておかなければなりません。
全従業員を対象とする旅費規程が作成されていれば課税仕入として処理できるため、消費税の節税が可能です。

さらに、出張手当(旅費日当)は妥当な金額でなければ認められないことがあります。
同業種、同規模の会社と比較して高額になりすぎていないかどうかや、役職によるバランスが取れているかをチェックしてください。
出張手当(旅費日当)は、必ず出張旅費規程に対して忠実に計上してください。

6.収入印紙を購入する際は金券ショップを利用する

【この節税方法を使う事業者の条件】
収入印紙を購入する機会がある課税事業者

領収書や契約書に貼る収入印紙は、ビジネスで度々使用します。収入印紙は、国の収入になる租税や手数料を徴収するため日本政府が発行する証票です。
作成した契約書が課税文書である場合や、領収書の額面が一定金額を超える時には収入印紙を使います。
一般的には、収入印紙を郵便局で購入している会社が多くあるかもしれません。

収入印紙は、法務局やコンビニでも購入できますが、節税を考えるのなら金券ショップを利用してみてください。
消費税法によって、郵便局や印紙売りさばき所で購入する時には消費税が非課税となります。

ただし、金券ショップで購入すれば消費税が課税されます。金券ショップで購入することで、課税仕入となって消費税を減らす効果があります。
古物商許可を取得している金券ショップでの収入印紙購入も問題ありません。なお、金券ショップでは不要な収入印紙の現金化もできるので、利用を検討してみてください。

7.所有権移転外リース取引を活用して仕入税額の控除を行う

【この節税方法を使う事業者の条件】
リースで取引を行う課税事業者

リース取引とは、リース会社が設備や機器を購入して、それを会社に貸すビジネスモデルです。
コピー機や複合機に代表されるOA機器のように、金額が大きい設備を導入する時にリース取引がよく使われています。

所有権移転外リース取引は税務上では売買とみなされ、消費税の計算は原則としてリース資産の引き渡しを受けた日の課税期間で一括控除します。
リース期間定額法により償却することになり、未払い分であっても仕入税額控除が可能です。
まだ支払っていないリース期間の消費税も前倒しで控除できるので、リース取引開始日が属する課税期間で節税効果が表れます。
一括支払いでも消費税の総額は変わらないため、いつ控除を利用するかシミュレーションが必要です。

8.人材確保を外注に切り替える

【この節税方法を使う事業者の条件】
人材確保を行う課税事業者

消費税は、非課税取引とは別に不課税取引も存在しています。そのひとつが給与です。従業員の給与に消費税の支払いは不要です。
消費税を支払っていないため得しているように感じるかもしれませんが、支払い消費税が増えない分、消費税の納税額が増えてしまいます。

なお、従業員を外注にすれば、給与は外注費となって課税仕入として計算可能です。
従業員とは雇用契約を結びますが、外注の場合には請負契約や業務委託契約を結んで仕事を依頼します。
給与ではなく報酬として支払うことによって、その一部が消費税となり節税可能です。

人材を確保したい時には、直接雇用で従業員やパートを雇用するのではなく、派遣会社に依頼することも検討してください。
派遣会社に支払う場合には、役務提供の対価として消費税が発生します。

9.多額の設備投資を行い消費税の還付を受ける

【この節税方法を使う事業者の条件】
設備投資を行う原則課税の課税事業者

新しい機械の導入時や店舗改装時などの大きな設備投資がある時には、受け取った消費税よりも支払った消費税のほうが大きくなり、消費税の還付を受けられます。
ただし、この方法は簡易課税を選択している場合や免税期間中は使えません。
設備投資の予定がある場合には、事前に原則課税方式での申告に変更することを検討してください。

10.仮決算で消費税の中間納付額を減らす

消費税額を減らす方法ではありませんが、一時的に納税負担を減らしてキャッシュフローを改善させるのであれば、仮決算による中間決算を利用してください。
原則として消費税の課税は1年に1回です。しかし、前年度の消費税額が48万円を超える法人と個人事業主は、翌期に予定納税として消費税の一部を支払わなければなりません。

もしも前期の消費税額が高額であったり今期のキャッシュフローが悪い場合には、中間納付は大きな負担になります。
そこで、中間申告対象期間を課税期間として仮決算を行う方法が使われています。

今期のそれまでの実績に応じて自主的に中間納付税額を計算して納付税額を申告できるため、中間納付の負担軽減が可能です。
ただし、これはあくまで中間納付額が少なくなる方法。最終的に納める消費税額は減らせないので注意してください。

個人事業主が消費税を節税するなら「法人成り」もおすすめ


個人事業主が消費税を節税する場合には、法人成りする手段もあります。どのように消費税を節税できるのか、仕組みや条件を理解しておいてください。

法人成りをすると最長2年間は消費税が免税になる

個人事業主でも法人でも最長で2年間は消費税が免税となります。基準期間が存在しないことが理由です。
基準期間は、納税義務の有無を判断するための期間で、2期前の事業年度が該当します。

2024年に法人成りする場合には基準期間は2022年になりますが、その期間は個人事業主であったため法人としての基準期間が存在しません。
基準期間がない場合には原則として、消費税が免税されます。
個人事業主と法人の期間は切り離して考えるため、法人になった時には基準期間の2年間は消費税が免税されます。

法人成りをしても免税にならないケースもあるので注意

法人成りをしてから最長2年間は消費税が免除となります。しかし、以下のように例外となるケースもあるので注意してください。

①資本金が1,000万円を超える場合
資本金が1,000万円を超える場合には、初年度から課税対象となります。

②特定新規設立法人を設立した場合
特定新規設立法人とは、資本金1,000万円以下で以下の2つの条件に当てはまる法人です。
ア)他の者が株式などの50%超を直接または間接に保有している
イ)他の者および他の者と一定の特殊な関係にある法人のいずれかが新しく設立する法人の基準期間相当期間の課税売上高が5億円を超えている

③相続で事業承継した場合
相続で事業承継して法人成りした場合には、事業承継前の納税義務が引き継がれるため、納税義務が発生することがあります。

④消費税課税事業者を選択した場合
免税になっていても「消費税課税事業者選択届出」を提出していれば課税事業者になります。
インボイス制度にともない課税事業者を選択する場合や、支払った消費税が多くて還付を受けられるケースに消費税課税事業者選択届出を提出することがあります。

消費税の節税方法をうまく取り入れて負担を軽減しよう

消費税を節税するテクニックにはいろいろあります。しかし、状況や事業規模によってテクニックを活用できる方法は限られる場合もあるでしょう。

事業者にとって消費税の負担は決して軽いものではありません。事業を円滑に進めて、資金繰りを楽にするための節税術を把握してください。

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(編集:創業手帳編集部)

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