Oh my teeth 西野 誠|極限までハードルを下げた歯科矯正で理想のユーザー体験を

創業手帳
※このインタビュー内容は2024年05月に行われた取材時点のものです。

高額で通院が面倒…60年変わらない歯科の行動様式に変革を起こす


近年、歯科矯正への関心が高まり、実際に施術を受ける方も増加傾向にあります。
しかし歯科矯正は高額なほか、通院の必要性や矯正時の不便さもあり、実行に移せない潜在ユーザーや、通院をやめてしまうユーザーも少なくありません。

こうした背景を受け、ハードルを極限まで下げた歯科矯正を提供しているのが、株式会社Oh my teeth 代表取締役兼CEOの西野誠さんです。

西野さんは、学生時代に物流スタートアップでのインターン、新卒でシステムエンジニアを経験し、起業されました。

今回は西野さんが起業された経緯や、事業としての強みについて、創業手帳代表の大久保がインタビューしました。

西野 誠(にしの まこと)
株式会社Oh my teeth 代表取締役CEO
1994年生まれ。大学在学中に物流テックベンチャー、オープンロジにて創業期を経験。新卒でワークスアプリケーションズに入社。退職後、2019年10月にオーラルテックベンチャー、株式会社Oh my teethを共同創業。代表取締役CEOに就任。日本初の歯科矯正D2Cブランド「Oh my teeth」をローンチ。ユーザー数は3万人を
突破。Onlab 21th「DemoDay」最優秀賞&オーディエンス賞を受賞。ICC 2022「D2C&サブスク カタパルト」優勝。ICC 2024「DX カタパルト」優勝。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計200万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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学生インターン、エンジニア経験で学んだ思考法が現在の事業に影響を与えた

大久保:起業する前の経歴を教えてください。

西野:学生時代に、物流スタートアップの株式会社オープンロジで、第1号目のインターンとして創業期を経験しました。

その後、新卒で株式会社ワークスアプリケーションズに入社し、エンジニアとしてのスキルを習得し、起業に至ります

大久保:それぞれの経験について、現在に影響していることはありますか?

西野:オープンロジでは、物流業界にテクノロジーでイノベーションを起こすというテーマがあり、WMSという倉庫マネジメントシステムを開発していました。

レガシーな業界に対して、テクノロジーを活用し最適化を図るという意味では、今の事業にも影響を受けていますね。

大久保:ワークスアプリケーションズではどのような業務をされていましたか?

西野:エンジニアとして機能設計を考えるチームに所属していました。必要な機能は何か、どんな仕様であるべきかなどの設計です。

ワークスアプリケーションズの文化として、理想的な機能やシステムを追及するという考え方が浸透していて、プロダクトメーカーとしての気概というか、大企業に向けて理想的なプロダクトを提供するという気持ちを社内全体が持っていました。

まず理想的な状態を想定した上で、何が必要で、何が正しいのかを考える、そういう思考法を早い段階で学べたのは良かったと思っています。

アドレスホッパーとして生活する中で、歯科体験に大きな課題を感じた

大久保:ワークスアプリケーションズ退職後、どのように起業に至ったのでしょうか?

西野:実は退職後にすぐに起業をしたわけではなく、1年間ほどアドレスホッパーとして生活していました。その生活の中で、今の事業のきっかけとなる、歯科の属人的かつ個別最適化な側面に気づいたんです。

私は歯が元々悪いため、1,2ヶ月ごとに歯科に通わなければいけなかったのですが、アドレスホッパーだと毎回違う歯科に行くため、毎回初診でレントゲンから診察がスタートするんですよね。そもそもどこの歯科がいいのかもわからないし…。

歯科ってコンビニよりも数が多いと言われているのに、体験があまり均一化されていないと感じました。

その気づきから、テクノロジーとデータを活用した「D2Cマウスピース矯正」というコンセプトを思いつき、「株式会社Oh my teeth」を起業しました

大久保:会社の立ち上げはどのような流れだったんでしょうか。

西野:すでに開業されている歯科医院にサービスを提供するのではなく、Oh my teeth専属で協力をしてもらえる歯科医師を探して、0から作り上げました

自分たちの中で完結すれば、実験的な要素も持ちつつスピード感を大事にできると考えたんです。

大久保:立ち上げ時に一番苦労したことは何でしょうか?

西野:メンバー集めが難しかったです。エンジニアの知り合いは元々いましたが、歯科医師のつながりは一切なかったので、一番最初のハードルでした。

創業当初は、とにかく沢山の歯科医師とお会いして、思いを伝えるようにしていきました。それでもなかなか理解を得られず、数多くの歯科医師に断られました。

「約100名お会いして、ようやく1名の歯科医師に賛同してもらえる」レベルでしたが、当時はかなり地道に取り組んでいました。

通院は1回だけ!安くて続けやすいOh my teeth流の歯科矯正体験

大久保:改めて「株式会社Oh my teeth」の事業の特徴を教えてください。

西野:特徴は大きく3つあります。

1つ目が価格帯です。従来の歯科矯正では80万〜100万円程度がボリュームゾーンでしたが、Oh my teethでは3分の1の価格で提供していて、はじめやすい価格帯になっています。

2つ目が通院回数を1回のみにしていることです。従来は定期的な通院が当たり前で、忙しいビジネスパーソンが利用しづらいという課題がありました。

Oh my teethでは、今まで歯科医院で行っていたことをなるべくオンラインに持っていくことで、リモートで歯科矯正ができる仕組みを作っています。

3つ目が継続のしやすさです。実はマウスピース矯正を行っている方の3割が挫折し、矯正を完遂できていないんです。四六時中マウスピースをつけ続けるって、かなり根気がいりますよね。

その対策として、Oh my teethでは24時間体制でLINE通じたサポートを充実させています。
毎日のリマインドや進捗状況の可視化を行った結果、97%の継続率となっています。

より良いユーザー体験が、プロダクトの成長に繋がる

大久保:なぜアプリではなく、LINEを利用したサポートなのでしょうか?

西野:そこは私たちが大事にしている部分で、やっぱり機能って使われないと意味がないと思うんですよね

専用のアプリを開発すれば、自分たちのプロダクトにカスタマイズされたインターフェースを使用できます。

しかし、アプリのインストールや使用の習慣化にハードルが生じるため、結局使われないアプリになってしまう恐れがあるんです。

そのため、ほとんどの人のスマホにインストールされているLINEをインターフェースとして利用した方が、継続して使用しやすいと考えました。

大久保:ユーザーのことを考えたプラグマティックな考え方ですよね。

西野:嬉しいです。Oh my teethでは、特にユーザー体験を大事にすることにこだわりを置いています

歯科矯正は医療技術のため、症例データが重要です。

症例データ=ユーザー体験による、上手くいったこと・いかなかったことが集積されることで、プロダクトの新たな進化に繋がり、より良いサービスを提供できる。これが私たちのグロースモデルなんです。

より良いユーザー体験をしてもらうために、なるべく無駄を省き、洗練されたサービス設計を心がけています。

大久保:このグロースモデルも、Oh my teeth専門クリニック(Oh my teethを専門に扱う提携クリニック)であることが重要ということですよね?

西野:まさにその通りです。仮に、既存の歯科にプロダクトを納入する事業モデルの場合、症例データの分析が難しくなります。

私たちの事業モデルだからこそ、ユーザー体験→症例数の集積→プロダクトの進化→より良いユーザー体験のサイクルが回しやすい

さらにこのグロースモデルの場合、データが集積されればされるほど、サービスの質は向上していきます。

ユーザー数3万人超え。喜んでくれる方の存在が大きなやりがいに

大久保:株式会社Oh my teethのユーザー層を教えてください。

西野:軽度の部分矯正が主な対象となります。現在、来店数も含めたユーザー数が3万人を超えることができました

日本では、マウスピース矯正よりもワイヤー矯正の方がイメージが強いです。しかし、近年のマウスピース矯正の検索ボリュームの増加や、欧米などではマウスピース矯正の方が一般的という国も増えている事実から、今後もユーザーは伸びていくと考えています。

また、私たちのサービスの特性として、リーズナブルな価格や継続のしやすさがあり、今まで歯科矯正の必要性を強く感じていなかった層も、潜在ユーザーになり得ます。

既存の歯科医院の場合、より重度の不正咬合(悪い歯並び)の方がメインユーザー層となるため、歯科矯正における全くの新規層にリーチする可能性があるのも、この事業の強みです。

大久保:ユーザーからの印象的だった言葉はありますか?

西野:以前、Oh my teethで新規メンバーを募集した際に、Oh my teethのサービスに感動して応募していただいた、元ユーザーの方が沢山いたんです。

例えば、「久々にワクワクする体験をした」「煩わしいイメージの歯科矯正の顧客体験をガラリと変えてくれた」など…。

中でも嬉しいのは、周りの目を気にせず笑えるようになったという言葉が胸に響きます

創業時から今まで、楽だった時間はほとんどないですが、喜んでくれる方が増えているっていうのは、大きなやりがいです。

Oh my teethが新しい歯科のあり方になる

大久保:今後の展望を教えてください。

西野:2つ注力していることがあります。
まず1つ目が店舗数を増やすことです。ただし、むやみに店舗拡大するのではなく、出店場所を吟味し、需要と供給のバランスをしっかり見極めていきます。

それから、もう1つが既存店舗の予約キャパシティ増加です。おかげさまで、現在多くの患者様にご来院いただいているのですが、その反面、ご希望の日程で予約が取りにくい状況が続いています。

これを解消すべく、提携クリニックの歯科医師、歯科衛生士などの店舗スタッフの採用を強化しています。これらの取り組みによってより多くの皆様に「未来の歯科体験」を提供できるように努めていきます。

大久保:長期的なビジョンについても教えていただけますでしょうか。

西野:僕の起業を志した原点は、先ほどもお話しした歯科の行動様式に変革を起こしたいという想いです。

現在の歯科体験は、60年前くらいからほとんど変わっていなくて、サービス体系がずっと同じなんですよね。そこに対して、Oh my teethが新しい歯科のあり方を打ち出したい。

もっとストレスフリーで、気軽に通えて、医療の質ももちろん担保されていて、歯の健康に対して心配をする必要がなくなる

そんな世界を1日でも早く実現したいと考えています。

大久保:最後に読者に向けてメッセージをお願いいたします。

西野自分が描いたグロースモデルや事業戦略を、どれだけ信じることができるか、が重要だと思います。

僕自身、外からの言葉で揺らいでしまった経験がありますが、そんな時は、なぜ起業したのか、自分の原点はどこにあるのかを考えて、自分の芯を大事にしていました。

アドバイスなんて大それたことは言える立場じゃないですが、一緒に今までなかった世界を作るために、頑張っていけたら嬉しいです。

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(取材協力: 株式会社Oh my teeth 代表取締役CEO 西野誠
(編集: 創業手帳編集部)



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