残業ゼロ、仕事より家族第一の「スウェーデン」は、なぜ世界的イノベーション大国なのか?
スウェーデンの国民性は日本と似ている!?こんなに幸福度が違うのはなぜか。
(2017/02/04更新)
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この記事の目次
スウェーデンってどんな国?
はじめに
スウェーデンと聞くと、どんなイメージがありますか?
ノーベル賞の授与式が行われる国、社会福祉の充実した国・でも税金が高い、冬が長くて寒く暗い感じのする国、美しい森と湖の国など、これは私の持つ印象ですが、皆さんは如何ですか?
「オーロラを見てみたい」など、憧れはあるかもしれませんが、実際のところ、この北欧の小さな国に対する関心度は、それほど高くはないかもしれません。また、スウェーデンへは日本からの直行便がないこともあり、「そうだ、スウェーデンへ行こう!」とは、なかなかなりません。
「行ってみたいけど、行かなかった国」の、上位にはいりそうですね!
そんなスウェーデンで、私は暫く暮らしていました。スウェーデンに本社を置く日本法人に勤務していたのですが、有難いことにストックホルムの本社で働く機会を得ました。
そこでは、「目から鱗」の出来事と毎日のように遭遇し、カルチャーショックの連続でした。
それまでも、仕事でスウェーデン人と接することはあり、頭では多少理解していたつもりでしたが、実際暮らしてみると「えっ、それあり?」「なるほど、そう考えるのね!」と面食らうことばかり。
今まで、私が日本で使っていた「常識」が、ことごとく崩れ去りました。まさに「聞くと見るとでは大違い」とはこの事です。
そこにはスウェーデンという人口約1千万人の小国が、国際競争力を持ち、経済力や暮らしやすさなど、様々な指数で世界のトップレベルを保っているという秘密が隠されていました。
それらの中から、創業者のあなたに役立つ情報を、これから何回かに分けてお伝えしていきます。
是非、脳をスポンジのように柔らかくして、楽しみながら読んでみてくださいね。
スウェーデンという国が、イノベーションランキング (GII:Global Innovation Index) 世界2位であるように、柔軟な考え方が、新たなイノベーションを引き起こすかもしれませんよ。
“ラーゴム(丁度良い)” に基づく、シンプル・ライフスタイル
スウェーデン人の国民性は、少し日本人に似ています。
穏やかで、控えめで、礼儀正しく、時間にも正確です。また、自分の成功をひけらかさず、謙虚に相手をたてます。
そして、スウェーデン人の生活に根付いている言葉に「Lagom(ラーゴム)」があります。
「ちょうど良い、程よい」という意味です。
スウェーデンの友人によると、
「Lagom」is very subjective, something that feels right.
「ラーゴム」はとても主観的で、何か丁度良い、と感じるところ、との事
その昔、バイキングの時代、角の盃にお酒を入れ、全員に回るように配分を考えて丁度良い量を飲む 「laget om」(みんなで) が語源と言われています。
これが、スウェーデン人のマインドセットのベースとなっています。
ですから、この言葉は、様々な場面で耳にします。
例えば、
パスタ、どのくらい食べる? - ラーゴムで!(適当な程よい量をお願い!)
このアパートはラーゴムサイズだよね!(広すぎず狭すぎず、丁度良いサイズ)
今日は、ラーゴムな気温だね!(暑くもなく寒くもない、丁度良い気温)
ただし、お分かりのように、「ラーゴム」な量は、人それぞれです。
その人にあった、”ラーゴムサイズ”がポイントとなります。
とはいっても、バイキング(食べ放題)に行くと、ついつい取りすぎ、食べ過ぎてしまうのは私だけでしょうか?
自分のラーゴムサイズを知り、それに見合った行動を取るというのは、なかなか難しいものです。そして、自分だけでなく、相手のラーゴムサイズを知り、それに応じた対応をしていくことが、ビジネス成功の秘訣かもしれませんね。
スウェーデン人のハート「Lagom(ラーゴム)」で、ぜひあなたもクライアントの心をつかんでください!
優先順位は ファミリー・ファースト、ワーク・セカンド (家族第一、仕事第二)
スウェーデンといえば、幸福度ランキングでいつも上位トップ10に入っています。かくいう日本は、53位(2016年)と50位以内にも入っていません。
この違いは、一体どこから来るのでしょうか?
色々ありますが、スウェーデン人が最も大切にしているのは、「家族」です。
どんな時にも、家族が優先順位の1番目にきます。
そういうと、こんな声が聞こえてきそうです。
「そんなの当たり前だよ、僕だって家族を一番と思っている。だから家族のために一生懸命仕事をして、遅くまで働いているんじゃないか」と。
そう、ここに違いがあります。
スウェーデンでは、「家族のために働く」は、会社の仕事とイコールではありません。
家族のために働くとは、会社の仕事+子育て+家事など、つまり家族のために使う時間も含まれます。そして、何より「家族との団欒」を大切にします。
日本では、仕事帰りに同僚に誘われて飲みに行くことは良くあることです。もちろん、スウェーデンの人たちもコミュニケーションは大切にします。でも、スウェーデンでは、飲みに行くにも、事前に「約束」が必要です。その日突然、「ちょっと帰りに一杯行かない?」ということは、基本的にありません。
なぜなら、家族が一番だからです。もちろん、飲みに行ってもOKです。でも1週間ぐらい前に「約束」をして、夫婦でスケジュール調整後、OKとなります。共働きが普通のスウェーデンでは、子供のお迎えや夕食の支度など、夫婦で話し合ってその日の役割を決めています。ですから、夫婦の間でのスケジュールの調整は大変重要な事なのです。
また、夕食は「家族で一緒に食べる」ことを基本としています。
ですから、どんなに仕事が残っていたとしても、一旦家に帰り、家族で食事をとり、その後パソコンを開いて仕事を再開する、というのが、良くあるパターンです。
日本では、「家では極力仕事を忘れてゆっくりしたい、だから会社で残業する」、とまさに逆ですね。
そして、会社によっては家から仕事をすることを、禁止しているところも。これでは、家に帰った時には子供はもう寝ていて、家族団欒には、なりづらいですよね。
だからといって、責任感の強いあなたは、仕事をほったらかして帰ることはできません。
うーん、難しいですね!
仕事と家庭のバランス、どうやって取っていくのが良いのでしょうか?
このあたり、どうしてスウェーデンではこのような事が可能なのか、次回以降の記事で、書いていきますね。
まずは、「今あなたにできること」、「家族との時間の過ごし方」、「何のために働いているのか」を、一度基本に戻って考えてみてはいかがでしょうか?
家族と過ごす時間をつくるため、または自分の時間をつくるために、一週間に一度「早く帰る日(ノー・残業デー)」をつくることから始めても良いでしょう。
その時間に帰らなければならないと思うと、仕事が効率化され、生産性があがるはずです。
そして、あなたが早く帰宅することで、家族との時間がふえ、家族の幸福度がアップすることでしょう!
そうやって、一人一人の幸福度があがると、自然と日本全体の幸福度も上がります。
まさに、会社-自分-家族-国のWin-Win-Win-Winです!
あなたも、日本の幸福度ランキングアップに貢献しませんか?
スウェーデンの隠れた立役者「移民」
スウェーデンは、移民の受け入れに寛容なことで有名です。
経済力があるとされるスウェーデンでも、80年代後半からオイルショック、バブル崩壊、リーマンショックと世界の他国と同じように、打撃を受けました。それを回復させるのに一役買ったのが、移民の人たちでした。なぜなら、彼らは税金を納める労働者として、即戦力となったからです。そして、出生率をあげることにも貢献しました。
現在、移民は、スウェーデンの人口の約17%を占めるまでになりました。(ここで言っている移民は、自分が国外で生まれたか、もしくは両親が国外生まれである、ということです)
これからわかるように、スウェーデンには多様な人種や文化を受け入れる土壌があります。そして、それらの持つ力が、国を動かす大きな原動力となっているのです。
例えば、シルヴィア王妃。現国王カールグスタフ16世と結婚し、スウェーデン王妃となりましたが、彼女はドイツ人で、国王とはミュンヘン・オリンピックで知り合ったとのこと。
はじめは、ドイツ人ということで、スウェーデン国民の間に拒否反応もあったようですが、今ではチャリティー活動に熱心で、親しみやすい人柄が、人気を集めています。
とても、開けた王室ですよね!
そして、世界的に有名なスウェーデンのサッカー選手 ズラタン・イブラヒモヴィッチ (Zlatan Ibrahimović)。もしも彼が日本人だったら、国民栄誉賞を受賞しているであろう(勝手な私の想像ですが)、すごい活躍ぶりです。サッカー好きの子供には、イブラヒモヴィッチのようになりたい、と憧れの存在です。でも、彼の両親はともにスウェーデン人ではなく、お父様はボシュニャク人、お母様はクロアチア人です。
他にも、多くのセレブリティー、政治家、起業家など、スウェーデンでは移民が社会で重要な役割を担っています。
また国際的な大企業の創業者がスウェーデン人ではない、というのは良くあるケースです。でも、そんなことは、誰も気にしません。なぜなら、国民のだれもが、国力を保つためには、移民の力が必要、と考えているからです。
今、ヨーロッパをはじめ世界各地で「難民」問題が深刻化しています。私たちには、「移民」「難民」にはあまり馴染みがありませんが、人口が減少に転じた日本では、外国人のマンパワーの受け入れが大きなテーマですね。ご参考までにその違いをまとめてみました。
定義 | |
移民 | 通常の居住地以外の国に移動し、少なくとも12ヶ月間当該国に居住する人のこと(長期の移民) この定義によると長期留学生や長期赴任、長期旅行者も「移民」である。*国際的に合意された「移民」の定義はまだ無く、上記は国際連合の国連統計委員会への国連事務総長報告書(1997年)に記載されているもの |
難民 | 人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた人々
*1951年に締結された「難民の地位に関する条約」による |
かくいう私も、スウェーデンでは長期労働者ということで、移民の部類に入っていました。
日本も、移民受け入れによるデメリットのみに目を向けるのではなく、経済力アップのために何をやっていかなければいけないか、固定概念を取り払って、考える必要がありそうですね。
まとめ:スウェーデンってこんな国!
ここまでで、スウェーデン人は日本人と似ている部分があるとわかりました。そして、とても家族を大事にすることも。
でも、「移民を大勢受け入れるなんて、ちょっと理解に苦しむなぁ。働く時間は、どうやら日本人に比べて少なそうだけど、経済力はありそうだ、どうしてだろう?」
きっと、そんな疑問が頭をよぎっていることでしょう。
このあたりを次回から、少しずつお伝えしていきますね。
今回は、スウェーデンが一体どんな国なのか、概要をつかんでいただくために、「スウェーデン早わかりマップ」を作成してみました。
出典・参照:
男女平等ランキング:WEF – The Global Gender Gap Report
GDP: IMF – World Economic Outlook Databases
GNI: 国連(United Nations Statistics Division)
幸福度ランキング:http://worldhappiness.report/
いかがですか?
少しはイメージをつかんで頂けたでしょうか?
歴史・文化・取り巻く環境など、様々な点で日本とは異なる国ですから、スウェーデンと全く同じようにするには無理があります。
でも、少し考えてみて下さい。
この北欧の小さな国から、IKEA、H&M、テトラパック、スカイプ、そしてエリクソンなど多くの企業がグローバルブランドとして多国籍で活躍し、また多くの起業家たちを輩出しています。
そこには、「多様な文化、思考、人を大切にする土壌」が育まれています。国の生い立ちが違いますから、私たちに理解しがたいこともたくさんあります。ですが、だからこそ学ぶこともたくさんあります。
そして、「ビジネスは成功者から学べ!」と言われるように、柔軟な思考により、イノベーションが生まれ、成功への道が見つかるかもしれませんよ!
これから一緒に「常識の断捨離」をしてみませんか?
(監修:ソルローズ株式会社 正木 美奈子 )
(編集:創業手帳編集部)