フリーランスの税金の計算と節税方法とは

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フリーランスは税金計算を自分で行う必要が!納税対象となる税金の種類と節税方法を解説

フリーランスは自分の税金を計算して納税する必要があります。会社に属していないフリーランスは、基本的には年末調整がありません。
そのため、確定申告が必要となり、申告のためには所得税を計算しておく必要があります。

フリーランスが計算しなければいけない税金の種類は何か、計算方法や納付時期を紹介します。
ただし、すべてのフリーランスにすべての税金がかかるわけではありません。そこで、税金の計算の前に、自分がどの納税対象になっているか、条件も知っておきましょう。

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フリーランスが払う税金と課税条件


フリーランスになると、会社で勤務しているサラリーマンとは異なった税金を支払う必要が出てきます。
フリーランスが払うべき税金を知るには、働き方に関係なく課税される税金と個人事業主だけに課税される税金をチェックすることが必要です。
税金の計算を始める前に、まずは課税対象となりうる税金の種類と課税の条件をチェックしてみましょう。

所得税

所得税は、収入額に対して課税される国税です。所得が大きければ大きいほど税率が高くなる累進課税制度となっています。
所得税の課税対象には、会社員もフリーランスも含まれていますが、フリーランスの場合のみ自分で税金の計算をして申告する必要があります。それが確定申告です。
サラリーマンの場合には会社が月々の給料から源泉徴収し、納税も会社がまとめて行っています。

納付時期と方法

フリーランスの所得税は、確定申告によって納税すべき金額を税務署に申告し、納税するルールになっています。
確定申告の時期は毎年2月16日~3月15日ごろまでですが、状況に応じて延期されるケースもあります。
2021年の確定申告期間は、新型コロナウイルスの影響で2月16日~4月15日までと一カ月延長されました。

確定申告では、前年の収入と経費を計算して所得金額を出し、税金の計算をします。提出すべき書類は、確定申告書と青色申告決算書や収支内訳書などです。
保険料などの控除証明書も添付します。ただし、電子申告では添付書類は省略が可能です。

住民税

住民税には市町村民税・道府県民税があり、1月1日時点に住んでいる住所地に納付する税金です。会社員であろうがフリーランスであろうが納税の義務があります。
ただし、所得税同様に会社員の住民税は会社がまとめて納めていることが多いため、フリーランスになると自分で納付する手間が発生します。

フリーランスは住民税の納付を自分でしなければいけませんが、原則、計算や手続きは特に必要ありません。
確定申告で申告した課税所得に基づいて計算され、納税通知書が届きます。

納付時期と方法

住民税は税務署から市区町村に確定申告書の内容が伝えられ、それに基づいて計算されます。個人の支払う住民税には、所得割と均等割があります。
所得割は所得金額に応じて課税されるもので、均等割は所得にかかわらず定額で課税されるものです。

住民税には普通徴収と特別徴収があり、フリーランスは普通徴収、会社員は特別徴収で、勤務先の会社が払います。
普通徴収では、だいたい6月ごろに納税通知書が自宅へ届くので、その通知書で直接納付します。住民税の納税は原則として6月、8月、10月、翌年の1月の4回払いです。

消費税

消費税は、会社員には関係なく、フリーランスや会社経営者だけが考えるべき税金です。
ただし、フリーランスであっても、すべての人に関係があるわけではありません。消費税には課税条件があり、創業2年目以降で一定条件を満たすと支払う必要が出てきます。

消費税が課税されるのは、所得ではなく売上げに対してです。消費税は、課税対象の売上げが年間1,000万円を超えた事業者に課税されます。
消費税の判定基準は前々年度の売上げです。つまり、フリーランスになった初年度、さらに次の年度には売上があっても対象にはなりません。

納付時期と方法

消費税は対象者となった場合にのみ、「消費税の課税事業届出書」を所轄する税務署に提出し、消費税の確定申告を行います。
フリーランスの確定申告の期限は翌年の3月末までです。1月から12月までの納税額を算出して、申告と納付を行います。

消費税は国税と地方税がありますが、どちらも同じ書類で申告可能です。前年度の消費税の納付金額に応じて申告と納税回数が異なります。
また、課税売上げが減って、免税業者に戻るためには、納税義務者ではなくなった旨の届出書を提出する必要があります。

個人事業税

個人事業税は、事業で得た所得に応じて都道府県に支払う地方税です。個人事業税も、消費税同様にすべてのフリーランスが対象になるわけではありません。
業種や条件によっては支払う必要が出てきます。

個人事業税の納付対象となるのは年間収入290万円以上です。事業主控除が一律290万円なので、収入がその金額を超えないと対象にはなりません。
また、納税義務のある業種が決められており、それに該当しない場合には対象外です。
納税義務のある業種を法定業種といい、法定業種はそれぞれの事業内容に応じて税率が分かれています。

納付時期と方法

個人事業税も、住民税同様に所得税の確定申告を行っていれば、特に申告する必要はありません。
確定申告書の「確定申告書の事業税に関する事項」欄に該当箇所があれば記入しておきます。

納付は年2回、期限はそれぞれ8月と11月の末日となっています。
納付書に現金を添えて納付することもできますし、口座振替や電子納付、クレジットカード払いなども可能です。納付書は確定申告の後に送られてきます。

収入によっては納税の必要がない税金や自分で申告の必要がない税金も

固定資産税は、フリーランスでも会社員でもかかることがある税金です。
不動産を所有している場合にのみかかるため、オフィスや自宅を賃貸で使用している人は関係ありません。
個人での申告は必要なく、収入に関係なく納税額が決められて納付書が送られてきます。納付書は4月~5月の間に届き、納付時期は一般的に6月、9月、12月、翌2月です。

フリーランスの税金計算方法


フリーランスに関係のある税金を自分で計算してみましょう。
自分で申告しなくても提出した確定申告書から計算してもらえる税金もありますが、どれくらいかかるか知っておくことで納付の際に慌てずに済むこともあります。
それぞれの計算方法と税率を紹介します。

所得税の計算方法

所得税の計算方法は、課税所得×税率です。課税所得は収入から経費や各種控除を引いたもので、経費計上や控除できる金額は確定申告の方法によって異なります。

経費計上や控除の面で有利なのは青色申告です。
確定申告には白色申告と青色申告がありますが、青色申告にすることで、白色ではできなかった家族への給与を経費できたり、特別控除を受けられたりします。

所得税の税率は、所得金額が上がるにつれて高くなる累進課税です。以下の表のようにパーセンテージが変化します。
ただし、330万円の人がすべての金額に10%の税率をかけられるわけではなく、195万円までは5%、それを超えた分が10%というように段階的に税率が適用されます。

課税される所得金額 税率
195万円以下 5%
195万円超330万円以下 10%
330万円超695万円以下 20%
695万円超900万円以下 23%
900万円超1,800万円以下 33%
1,800万円超4,000万円以下 40%
4,000万円超 45%

住民税の計算方法

住民税は、フリーランスであっても自分で計算する必要はありませんが、いくらくらいかかるか予測するために計算方法を知っておくことは大切です。
住民税は、所得割の部分を自分で計算し、均等割を加算することで納付金額が分かります。

所得割の計算式は、(前年の総所得金額等-所得控除額)×税率-税額控除額です。税率は道府県民税が一律4%、市区町村税が一律6%となります。
また、均等割は道府県民税が1,500円、特別区・市区町村税が3,500円です。

消費税の計算方法

フリーランスの消費税の計算は、「本則課税」という方法を用います。計算式は、売上げによって預かった消費税-仕入れで支払った消費税です。

個人事業税の計算方法

個人事業税の計算は、課税所得×税率です。290万円は一律で控除される金額なので、290万円に満たない所得金額の人は対象外です。
税率は事業の内容によって3~5%となっています。

法定業種の中の第一種事業と呼ばれるものは、税率5%、事業内容は物品販売業や保険業、金銭貸付業、不動産貸付業、印刷業、広告業、案内業などです。
第二種事業は税率4%で、畜産や水産業などがあります。第三種事業は税率5%と3%があり、5%は医業や士業、コンサルタントやデザイン業などです。
3%にはあんま・マッサージ、指圧・はり・きゅうなどがあります。

フリーランスにおすすめの節税対策


フリーランスが節税する場合には、とにかく所得と課税売上げの抑制を行うことが大切です。無理のない範囲で正しく節税しましょう。
まずは、住民税にも関係してくる所得税の確定申告で節税を目指します。

青色申告を選ぶ

所得税の確定申告を行う際には、白色申告と青色申告が選べます。しかし、青色申告のほうが経費の範囲も広く、青色申告控除もあるなど、節税効果が高くなります。
また、それ以外にも赤字の繰り越しや貸倒引当金の計上も可能です。白色申告は手続きが簡単ですが、節税を目指すなら青色申告に切替えましょう。

経費を計上する

フリーランスにかかわらず、節税のために行ったほうが良いのは経費計上です。経費を増やすことで、売上げを圧迫して所得を減らすことができます。
フリーランスでは、個人で使ったお金とビジネスで使ったお金が分からなくなることもありますが、きちんと分けて、ビジネスで使用した際には経費計上を忘れずに行いましょう。

小規模企業共済に加入する

小規模企業共済は、個人事業主でも加入できる共済制度です。廃業の際の退職金として積み立てることができ、その掛け金を全額所得控除できます。
節税のためだけでなく、将来の備えとしても役立ちます。また、共済に加入していると、事業資金の借入れも可能です。

掛け金月額は1,000円以上7万円までの範囲で自由に選択できます。前払いした掛け金も向こう1年以内であれば控除対象なので、最大で168万円の所得控除が可能となります。
掛け金は加入後も増額や減額ができ、一時的に支払いを止めることも可能です。安定しない収入でも加入し、継続しやすくなっています。

個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入する

個人型確定拠出年金も小規模企業共済と同様に掛け金を全額所得控除できる対象です。こちらも節税だけでなく、将来の備えとして役立ちます。

個人型確定拠出年金(iDeCo)は、自分で作る年金制度のことで、日本在住の20歳以上60歳未満の人であれば誰でも加入が可能です。
加入者は毎月一定の金額を積み立て、用意された金融商品で運用します。掛け金拠出の休止や再開はいつでもできますが、60歳までは引き出すことができません。
60歳以降になったら、年金か一時金で受け取ります。運用で得た定期預金利息と投資信託運用益は非課税です。

自分の使える控除を知る

所得控除や税額控除には様々なものがあり、余すことなく使いきることで最大限の節税効果が得られます。
確定申告の際には、自分が対象となっている控除について知りましょう。所得控除の種類は以下の通りです。

  • 基礎控除
  • 医療費控除
  • 雑損控除
  • 寄附金控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 障害者控除
  • ひとり親控除
  • 寡婦控除
  • 勤労学生控除

また、控除には算出された税金から直接控除できる税額控除もあり、高い節税効果が期待できます。税額控除の種類は以下のようなものがあります。

  • 配当控除
  • 外国税額控除
  • 政党等寄付金特別控除
  • 認定NPO法人等寄付金特別控除
  • 公益社団法人等寄付金特別控除
  • 住宅借入金等特別控除
  • 住宅耐震改修特別控除
  • 住宅特定改修特別税額控除

 

まとめ

フリーランスは、税金の計算も自分自身で行う必要があります。会社員のように会社が税金の計算をしてくれるわけではないため、毎年確定申告をして納税しなければいけません。
そのため、面倒ではありますが、反対に節税の工夫は会社員よりしやすくなっています。
フリーランスとして納税する場合には、節税のために必要な対策を心がけ、正しい方法で金額を抑えた上で納税しましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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