SIESTA 久保正貴|日本の副業はこれからもっと伸びる!

創業手帳
※このインタビュー内容は2021年12月に行われた取材時点のものです。

「副業解禁」「老後2000万円問題」、「本業に費やす時間が減少」で日本の副業は今後ますます一般的に?

最近は業界別やすき間時間でできるものなど、副業したい人のためのプラットフォームが多数できており、ある種のホットワードになっています。
なぜ副業したいと思う人は増えているのでしょうか。そしてどのように副業に取り組むべきなのでしょうか。人材大手のリクルートから独立し、副業サービスを始めたSIESTA久保正貴さんが副業業界を解説します。

久保 正貴(くぼ まさき)
株式会社SIESTA代表取締役
2014年医療機器メーカーのテルモ株式会社へ新卒入社。東京都内の心臓血管外科医師へ人工血管や人工心肺回路等の提案営業に従事。2016年株式会社リクルートキャリアへ中途入社。東京都内に本社のある中小〜大手クライアントの新卒採用課題に対して、自社メディアを通した人材調達の提案営業に従事。2020年株式会社SIESTA代表として独立。複業エージェント事業を行う。

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「復業エージェント事業」で起業した経緯とは

ー本日はよろしくお願いします。まずは、ご自身の事業について教えてください。

久保:現在、フリーランスの方や本業のある方を含めて、副業をしたい人のために”複業エージェント事業”を行っています。
マッチングにとどまらず、副業をする上での不安や手間も解消する、これまでにないモデルです。現在支援させていただいている方のご経歴企業としては、Google、リクルート、博報堂、豊田通商など、大手有名企業の方がいまして、主にスタートアップ企業での複業案件をサポートさせていただいています。

ー起業するまでの経緯を教えてください。

久保:もともとは大学卒業後に医療機器メーカーのテルモに新卒入社して、その後リクルートに転職したのち現在に至ります。28歳のときに子供が生まれまして、「誰よりも自由に生きてほしい」という願いを込めた名前を決めたのですが、その際に「親の自分は自由な人生を生きているか?」と、自分に問いを立てたことがきっかけです。
一度人生で試してみたいことの一つに「これまでの経験で培ったもので事業をつくってみたい」ということがありましたので、我が子に負けないように会社の外に出て自分で事業をやる決断をしました。
会社に退職相談したときに、「リクルートにいながらやればいいじゃないか?」と、言って頂いたのですが、私は不器用なのでリクルートの仕事と起業とを両立させることができないと思いましたし、リクルートに100%の力を注がない働き方も申し訳ないと思い、独立しました。

私が複業できなかった分も含め、「本業がある方でも、安心で手間のない複業経験の提供を通じて人生を充実させる」ことを、この複業エージェント事業で実現しようと考えています。

コロナで日本における副業事情は変化したか

ーなぜ副業が最近ホットワードになっているのでしょうか。

久保:日本での副業はようやく伸び始めた状況にあります。
厚生労働省が「モデル就業規則」を改正し、副業元年と言われた2018年には、フリーランス人口の推計は1,151万人でした。
その後は1,118万人(2019年)、1,062万人(2020年)と微々たる増加で、2021年に1,670万人と一気に数字が伸びたので、最近になって急に増え始めたということでしょう。(※【ランサーズ】フリーランス実態調査2021)
その背景には、テクノロジーの進化、働き方改革、賃金の伸び悩みや健康寿命の伸長(人生100年時代)といった大きな流れがあったと思います。
生産性の向上により無駄な仕事をする時間は減りましたが、収入面での不安は増え、定年まで同じ会社に勤めることへの疑念が大きくなるなどの変化が生まれました。それらの課題の解決策の一つとして“副業”があり、副業が広がる土壌が徐々に出来てきていた、ということがここに来て伸び始めた要因だと考えています。 

ーコロナでどういう変化があったのでしょうか?

久保:コロナの影響でリモートワークや在宅勤務が急速に広まり、「新たな時間が生まれたこと」や「オンラインが当たり前の商習慣になったこと」が副業へのハードルを下げたととらえています。前述したふたつの要因が、副業への興味・関心を強め、実際に挑戦してみることを加速させたのでしょう。企業側からすれば、足りない人材の調達手段として、副業者と契約するという選択肢が広がるメリットがあります。

ーどういうプラットフォームがありますか?それぞれの特徴は?

久保:副業をする場合のプラットフォームは、先駆け的な存在である「クラウドワークス」をはじめ、今では多くの数があります。大きな特徴としては、2つのポイントがあると考えています。

1つ目は契約相手の違いです。企業と直接契約する場合と、企業との間に会社(A社とする)が入り、再委託契約する場合があります。後者の場合は、企業とA社が業務委託契約をして、A社が副業者に再委託契約します。
2つ目はマッチングのみの提供か、それ以上のサービスも提供してくれるかという差です。前者はいわゆる求人メディアです。副業求人が掲載されていて、スカウト経由もしくは自ら応募して、というようにマッチングに特化しています。
後者は例えば「クラウドワークス」のように、マッチングだけでなく、その後の請求や集金までサービス上で行えます。

副業を行うときに注意すべきことは?

ー副業で注意しないといけない点はありますか?

久保:注意しないといけない点は、「署名する前に契約内容の確認を十分に行うこと」だと考えています。

日本労働組合総連合会の「フリーランスとして働く人の意識・実態調査2021(2021.11.18)」によると、そもそも、企業から契約の内容が書面やメールで必ず明示されると回答したのはおよそ約29.9%と約3割のみです。
また、この1年間に企業との間で仕事上のトラブルを経験したと答えたのは39.7%と約4割です。

トラブルの内容を複数回答での場合(同調査)、「報酬の支払いの遅れ」と「一方的な仕事内容の変更」が29.5%と最も多く、「不当に低い報酬額の決定」が26.4%、「一方的な契約の打ち切り」が25.7%、「報酬の不払い・過少払い」が23.4%となっています。

このように、実態としては、そもそも契約書を交わさない、あるいはその後もフリーランスの弱い立場を利用したトラブルが実際にありますので、契約書締結は前提として、「署名する前に契約内容の確認を十分に行うこと」には注意して頂ければと思います。
弊社で副業をサポートさせていただく場合は、個人と企業間で必ず契約書を交わしていただき、内容も十分にご確認いただきます。

ー成果を出すコツは何でしょうか?

久保:成果を出すコツは、「副業を副業と思わないこと」が大事だと考えています。副業と思わずに、本業と同様“対価が発生している仕事である”という認識で、本業通りのご自身の能力を発揮することができれば、自ずと成果は出ると思います。

前提として、副業と言いますが、企業はあくまで1人のプロとして個人事業主と業務委託契約(雇用関係にはない契約)を結ぶことになります。
成果を出すことは当たり前ですが、それ以前に「本業が忙しくて全然仕事が進んでいません」などということは絶対にあってはならないことです。対価をいただいている限り、それに見合う価値を提供することができないのであれば副業はお勧めしません。

本業の会社とは雇用関係にあるので、研修や育成が当たり前ですが、個人事業主として働く場合にクライアント企業独自の風土や習慣のうち、把握しておかなければいけない事柄については、事前に確認しておくことも大事になります。

ー副業は「働く人」、「副業を依頼する会社」、「副業者が所属している会社」の3つの関係者の視点があると思います。副業において押さえておきたいポイントを、それぞれの視点で教えてください。

久保:まず、「働く人」の視点でいいますと、ご自身のスキルや経験の棚卸しと、使える時間や時間帯の把握は押さえておきたいポイントだと思います。スキル・経験の種類またはレベルによっては、高い報酬など好条件の副業ができる場合と、そもそも全く需要がない場合があります
  もし、副業をしたい場合は、ご自身のスキルや経験を棚卸しした後に、副業の求人はどんなものがあるのか調べてみて、それに見合うスキルや経験がないのであれば、本業あるいは勉強で身につけるといった努力が必要になってくると思います。
  副業の場合、本業と違うのは、働く時間や時間帯を考慮する必要があることです。例えば、営業に強みを持っている方でも本業で平日日中時間を取られる場合は、同じ営業の副業案件でも平日日中の時間帯の需要が多い場合、本業との兼ね合いで副業はしづらくなる場合があります。その場合は、違う種類のスキル・経験を得る必要が出てきます。

次に、「副業を依頼する会社」の視点ですと、副業者へ依頼する業務の目的や背景を十分に共有し、その対価としての報酬をしっかり見積もっておくことがポイントだと思います。
  これまでは、事業の課題に対して、自社人材リソースが足りない場合、採用をするか、業者に頼むかがメインだったと思います。採用の場合は雇用契約ですので、いつでも仕事内容の変更やその進め方などについて「指揮・命令」ができますが、副業者へ業務委託をする場合は「指揮・命令」はできません。
  委託する業務の目的や背景の共有を十分に行うことで、副業者は期待されている成果を把握し、成果を出すために実力を発揮してくれると思います。そして、それに見合う対価を設定できれば、お互いにとってWin-Winの関係になると思います。

最後に、「副業者が所属している会社」の視点でいいますと、自社社員が副業を行う場合のモデルケースや事例を社内に公開していくことがポイントだと思います。
  社会の変化や副業解禁に伴い、一定数の自社従業員が副業してみたいと思う気持ちが高まることは避けられないと思います。それに一方的に蓋をするのではなく、副業を通じて自社事業でも成果を上げた従業員の事例を公開したり、自社事業とシナジーがありそうな副業モデルケースを開示することで、従業員が副業で得たスキルや経験が、自社事業の成果に繋がる仕組みを作っていくことがこれから重要になるでしょう。

今後副業はより市民権を得るか

ー今後、日本において副業はより一般的になっていくのでしょうか。

久保:そうですね、前述した「生産性向上や在宅勤務により、無駄な仕事や通勤に割いていた時間が減る」「年金に期待できないなど、収入面での不安が増えている」という社会的背景を踏まえると、まだまだ副業市場は大きくなると思います。
「ランサーズ」の「フリーランス実態調査2021」によると、アメリカの2019年のフリーランス人口は労働人口の35%(5,700万人)いて、2021年の日本は労働人口の24%(1,670万人)という数字があります。同等の水準までは、広義でのフリーランス(副業含む)人口は伸びていくと思います。

ー読者の方に向けてメッセージをお願いします。

久保:副業したいみなさま、副業者との契約を検討したい企業のみなさま、些細な不安や疑問にもお答えし、お役に立ちたいと思っていますので、気軽にご連絡いただけますと幸いです。
最後までお読み下さりありがとうございます。

ーためになるお話をありがとうございました。
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(取材協力: 株式会社SIESTA代表取締役 久保正貴
(編集: 創業手帳編集部)



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