弁理士に頼む?自分で出願する? 商標の自己出願で避けたい3つの落とし穴
安心を優先するか、経費削減を優先するかの判断基準を大公開
(2015/06/04更新)
会社設立や行政への許認可手続きなどと同様、商標登録出願についても頑張って自分でやってみようと試みる方が少なくありません。
しかし、それを成功させるまでにはさまざまな落とし穴が待ち受けています。
創業時は金銭的に苦しいので自分でやろうとするのは一つの選択肢としてはいいのですが、次のような落とし穴の数々を知ってから判断してもらうのがいいと思います。
この記事の目次
落とし穴1 指定商品・サービスの記載
商標(マーク)自体をどういう形態で出願するのかというのもさることながら、商標出願においてもっとも重要な位置を占めるのが指定商品・サービスの選定だと思います。
どのような指定商品・サービスでも45の区分のうちのどれかに入ることとなりますが、自社事業に関係する商品・サービスを正しく選択しないとまったく意味のない権利を取得することになってしまいます。
実際に、指定商品の指定の仕方を見て「これはちょっと…」と思うものを見てみると弁理士がついていないケースが多いです。
事業の周辺範囲まで指定するのかなど考慮すべき要素がたくさんありますので、そのへんをしっかり理解した上で記載されることをお勧めします。
【具体例】ハンバーガー店の例
ハンバーガー店を経営している方が商標を自己出願しようとした場合、おそらくは「ハンバーガー」という商品(第30類)を指定して終わりになってしまうのではないでしょうか。
テイクアウトのハンバーガーはそれで保護対象となりますが、イートインの場合には「飲食物の提供」(第43類)も指定する必要があります。
さらに、どの範囲まで保護するかなど考慮事項はたくさんあり、そこが我々弁理士の腕の見せ所と言えます。
落とし穴2 拒絶理由通知への対応
商標出願に何も問題がなければ晴れて登録査定となりますが、何かしらの問題があった場合、拒絶理由通知という書面が特許庁より送られてきます。
その中身にはどうしてその商標を登録できないのか理由が記載されており、何らかの形で対応・反論することが求められます。
もちろん、出願人の方にもいろいろ言い分があるのはわかるのですが、審査官の方との共通言語を使わないとまともにとりあってもらえません。
先に登録になっている商標の方が自分の真似であり、元祖は私だなどと言ってもとりあってもらえませんし、審査官は客観的事実から判断しているので、自分はこう思うなどと並べても受け入れてもらえません。
やはり、商標法や裁判例などを理解した上で、客観的な事実・証拠に基づき論理的に説得する必要があります。
【具体例】商標法第3条第1項柱書の例
1つの区分であまりに多くの商品・サービスを指定すると、本当に商標をそんなに多くの商品・サービスについて使うのか疑わしいという拒絶理由を受けることがあります。
この拒絶理由の解消の仕方はさまざまあるのですが、一番簡単な指定商品・サービスの数を減らす方法を選んだとしても、類似群コードという存在について理解してないとどこまで削除すればいいのか見当がつかないでしょう。
もちろん、削除した分権利範囲が小さくなってしまいます。
この拒絶理由の解消法としては他にも二つほどあり、ビジネスの状況に合わせて選んでいくことになるかと思います。
弁理士に依頼している場合、拒絶理由の克服方法の選び方についてアドバイスが受けられます。
それに基づき指示を出すことで拒絶理由を克服できるでしょう。
落とし穴3 更新・管理ミス
商標の更新は10年ごとが原則です。
一つの会社がやらなければならないことは山ほどあり、そして、月日がたてば従業員も新しく入ったり辞めたりすることを考えると、自社管理の場合にきちんと更新を忘れずに行うことができるかは不安なところです。
ちなみに、特許庁も更新時期が来たからといって運転免許の更新のように通知をくれるわけではありません。
10年経過後、半年間は猶予があり、更新料を倍額納付することで救われますが、それを過ぎると基本的には登録はなくなってしまい、一から出願するほかなくなってしまいます。
再出願するまでに他社に出願されてしまったら、長年使ってきた自社商標が使えなくなってしまいます。自社商標の管理には十分注意を払わなければなりません。
【具体例】管理が大事なのは更新のときだけじゃない
管理というと更新の話が第一に来ますが、実際にはそれ以外にもたくさん気にしなければならない点があります。
たとえば、使用方法の管理です。登録商標は3年間継続して日本国内で使用されていない場合は、不使用取消審判の対象になってしまいます。
登録商標と類似しているものだけを使っていた場合、取消の対象になってしまうこともあります。
まとめ
以上のように、自分で出願するのには落とし穴がたくさん待ち受けていますし、実は、ここでも書ききれなかった落とし穴はまだまだあります。
本当に資金が苦しい場合や、効率などは考えず好奇心から自分でやってみたいという場合にはいいと思いますが、労力とリスクと社長さんの時給を考えたら通常は弁理士に頼んでしまった方が安価かつ安心だと思います。
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(取材協力:「ベンチャー支援・外国商標・マドプロに強い商標専門事務所」
フルブルーム国際商標事務所 髙橋伸也 弁理士)
(編集:創業手帳編集部)