株主名簿とは?必要性から取り扱い方法まで一挙解説!

創業手帳

株主名簿にはどんな役割があるのか?会社設立での必要性や管理方法・株主リストとの違いを解説


株主名簿とは、会社に必ず置くことを定められた書類です。会社法で定められており、会社設立時には作成が欠かせません。
株主名簿は会社の株式発行や所有者の管理など、経営を左右する内容が書かれているもので、おざなりにしておくと大きなリスクを負うことも考えられます。

会社を経営する上で重要な株主名簿は、常に正しい情報を記載し、健全な経営を心がけましょう。株主名簿の重要性と株主リストとの違いを解説します。

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株主名簿とは


株主名簿とは、会社法で定められている書類のひとつであり、株式会社では必ず作成しなければいけません。
出資者全員が定款に名を連ねる合同会社では必要ありませんが、株式会社では株主名簿の作成と管理は重要な意味を持つものです。

株主名簿の目的は、株主情報の管理と株主の権利の保護です。名簿を作成することで、会社は株主が誰であるかが確認でき、株主は自分の権利を主張できます。

同じような目的、似た内容の書類に「株主リスト」というものがあります。

株主名簿を作る必要性とは


会社法では株主名簿の作成が定められていますが、義務というだけでなく、会社を経営している間には株主名簿が必要になるシーンが出てきます。
「決められているから」または、「義務だから」といった態度ではなく、経営上欠かせない大切なものと考え、作成しましょう。

会社設立後に税務署に提出する

株主名簿は会社設立後の法人設立届出書に添付する書類として必要でした。平成31年4月以降は添付書類が変更になっています。
変更では、法人設立届出書の添付書類に株主名簿は含まれませんでした。そのため、平成31年4月以降は、株主名簿は作成と保管のみが必要となります。

登記変更で使う株主リストの作成が楽になる

株主リストは、登記変更の際に、法務局に提出する書類です。株主リストは、株主名簿と同様の目的で、同様の情報を記載して作られます。
そのため、株主名簿を正しく作成してあると、それに沿って株主リストを簡単に作成できるようになります。

株主名簿の開示にスムーズに応じられる

株主名簿は、作成後添付する必要はなくなりましたが、株主に対しての開示義務はあります
請求手続きが取られた場合、会社は株主へ株主名簿を開示しなければなりません。

株主名簿の閲覧については、会社法の第125条に定められています。
この閲覧を拒否することは「過料に処すべき行為」に当たり、「100万円以下の過料」が課せられる可能性があります。

紛争の予防

会社が正しい株主名簿を作成しておくことは、株主の権利について誤った主張をされるリスクを減らすためにも重要です。
株主を把握せずに、放置しておくと、知らない人物から株主の変更があったことを主張され、トラブルが起こることも考えられます。

作成しないとペナルティ

株主名簿を作成、管理しないことは、会社法第976条に基づいてペナルティの対象となるものです。
会社法では、「100万円以下の過料」に処すべき行為として、株主名簿に「記録すべき事項を記載」しなかった場合をあげています。
また、前述の通り株主名簿は株主の求めに応じて開示しなければいけません。

株主名簿の書き方


株主名簿は法人設立届出書の添付書類として、また、会社での作成・管理が必要な書類として作られてきました。
添付書類としての必要性はなくなったものの、それに準じた形式で作成しておくと、必要な事項を盛り込むことができます。

法人設立届出書に添付する株主名簿の記載事項

法人設立届出書に添付する株主名簿の記載事項としては、以下の項目があります。一つひとつが株主の権利を把握し、守るために重要です。
抜けのないように記載し、管理しましょう。

株主の氏名または名称・住所

株主が個人の場合にはその氏名、株主が法人の場合にはその名称を記載します。住所も法人の場合には法人の本社所在地を書きます。
会社を1人で設立し、自分ひとりだけが株主となる場合でも、自分を株主として株主名簿を作成することが必要です。

株主の有する株式の数

株主の氏名や住所を記載したら、次に株主一人ひとりが所有している株式の数を明記します。
株主名簿を作成する上で重要であり、経営していく上で変更されることもある項目です。株式の数は、配当金の分配や議決権の行使など、経営上の様々なことに関わります。

金額

株主の持っている株式の数とともに、その金額も記載しておきます。

役職名及び当該法人の役員または他の株主などとの関係

会社の役員であれば、「代表取締役」や「取締役」といった役職名を記します。また、親族が株主の場合には、その間柄を記載してください。

会社に置いておく株主名簿の記載事項

株主名簿は、法人設立届出書に添付するだけでなく、会社の本社に置いておくものも必要です。会社に置いておく分の株主名簿は、提出するものとは少し形式が異なります。

株主名簿には法定様式はないため、必要な記載事項さえ入っていれば、どのような形で作成しても構いません。
表計算ソフトで作成しても良いですし、ノートに手書きで書くこともできます。自社のフォーマットを作って使用することも可能です。

株主の氏名または名称・住所

株主の氏名・名称・住所は前述した通り、個人名もしくは会社名、自宅や会社本社の住所です。

株主の有する株式の種類とその数

株式の種類が複数ある会社では、株式の数だけでなく種類も明記することが求められます。記載すべき内容には、普通株式や優先株、劣後株などがあります。
優先株とは優先的に配当が受けられる株式、劣後株は配当が制限される株式です。これらを、「第1種優先株式」・「甲種優先株式」といった形で記載します。

株式を取得した日

株式を取得した日も、会社で保管する株主名簿には必要です。個々の株主が取得した日を記載します。一般的には、代金を支払った日が取得日です。

会社設立時に作成する際には、会社設立日が記載されます。
しかし、それ以降は増資や相続などを繰り返すことで、取得した日の異なる株主が増えるため、明記しておかないと管理が難しくなるかもしれません。

特定の条件下で必要

株主名簿には、特定の条件下でのみ必要となる項目もあります。自社の実情に合わせて、必要に応じた項目を設定しておきましょう。

株券の番号

株券を発行している場合には、株券の番号も記載が必要です。2006年の会社法改正時に株券の不発行が認められ、株券は電子化されることが多くなりました。
そのため、株券を発行することもなくなっています。株券を発行していない場合には、備考欄に「株券不発行」と記載します。

質権の設定

株式に質権を設定した場合、質権を設定した人から請求があったら名簿に質権者の氏名、住所、質権の目的である株式について記載しなければいけません。
質権設定とは、株式を担保にお金を借りたという状態です。

これは会社法第148条で定められています。

信託財産に属する株式

株式が信託財産になった場合、株主から名簿に記載するよう求められたら、その旨を記載しなければいけません。
信託財産とは、自分の財産を第三者に託し、管理や処分してもらうことです。

株主名簿の管理方法


株主名簿は、会社設立にあたって作成し、保管しておくことが定められています。ペナルティもある義務のため、正しい方法できちんと管理しておきましょう。
株主名簿は、会社法の第125条に基づいて管理します。

株主名簿の保管場所

株主名簿は、会社の本店に保管しなければいけません。ただし、株主名簿管理人を別途定めている場合には、その管理人や管理会社の営業所に保管することもできます。
株主名簿管理人になれるのは、株式の管理を会社から委託された信託銀行や証券代行会社などです。

株主名簿は、紙媒体ではなくデジタルデータとしての保管も可能です。

大企業の管理方法

大企業と中小企業では、株主名簿の管理方法が異なります。
一般的に大企業のように多数の株式を発行しており、たくさんの株主を持つ場合には、大手信託銀行などに委託するのが一般的です。
管理や閲覧請求への対応など、事務が煩雑になるのを避けるために委託します。

中小企業の管理方法

中小企業の株主名簿は、一般的には大企業のように信託銀行などへ委託することは多くありません。
自社内で管理するのが一般的です。大企業ほどの株式発行数も多くなく、株主も限られた人数であることから、自社内でも管理できます。
また、委託すれば費用がかかるため、自社で管理した方がコストパフォーマンスが高いともいえるでしょう。
そのため、中小企業では株主名簿は委託ぜずに自社で管理するケースが多いです。

株主名簿管理人

株主名簿管理人とは、株式会社から委託され、会社に代わって「株主名簿の作成」・「株主名簿の備置き」・「新株予約権原簿の管理」・「株主総会管理事務」をする人・法人のことです。
平成18年5月に会社法で新しく規定されました。

株主名簿管理人を設置するためには、取締役会で決議、株主総会で承認、株式管理規定の設定、対象先の選定と手続きが必要です。
委託先が決まったら、株主名簿管理人委託契約を締結し、登記、株主への名簿管理人の連絡先の通知を行います。

株主名簿の閲覧・変更について


株主名簿は、株主からの閲覧請求などがあった場合、会社ではその求めに応じる必要があります。
また、株主からの名義書換請求を受けた場合には、記載事項を変更することも必要です。こうした管理業務は株主の信用を得て、健全に経営していく上で欠かせません。

閲覧謄写請求

株主名簿の閲覧謄写請求は、株主や会社に対する債権者に権利があるものです。
株主などは、会社の営業時間内に限り、株主名簿の閲覧やコピーを請求でき、会社は出来る限り対応しなければいけません。
ただし、会社が不利益を被る恐れがある場合のみ、例外的に拒否することもできます。

株主名簿記載事項証明書

株主名簿記載事項証明書とは、株主名簿の記載事項と代表取締役の署名または記名押印のある書面です。
株式の譲渡の際に、譲渡人が本当に株式の所有者であるのかを譲受人が確認するための手段として使われます。

株券があれば株券そのものが所有の証明になりますが、発行していない会社の場合には株式を所有していることを証明できません。
そのため、この証明書を使って譲渡人を証明、確認します。

記載事項の変更と更新

株式の譲渡や相続などがあって、株主名簿の内容に変更が合った場合には、記載事項の変更・更新を行わなければなりません。
記載事項の変更は、株主などから名義書換請求を受けた時のみです。名義書換請求書を提出された後、情報の更新を行います。
適切に更新を行い、常に正しく最新の情報を保管しておくことが可能となります。

株主名簿作成・管理の注意点


株主名簿の作成と管理では、いくつか注意しておきたい点があります。
株主名簿は、会社設立の際に提出する義務はなくなりましたが、会社にとって非常に重要な意味を持つ書類です。
そのため、作成や管理の際には、適切に扱い、決して間違いのないようにしておく必要があります。

毎年、見直しと修正を

株主名簿は、常に会社の最新の株主情報が記載されていなければいけません。
書換の請求があった場合はもちろん、なかったとしても毎年、定期的に内容の見直しを行ってください。

情報が古く、更新されていなければ、株主の権利を不正に主張されるなど、トラブルに発展することがあります。
また、株主の管理を怠っていることが株主に知られたら、信用の失墜は避けられないでしょう。株主にとっては権利を守るための大切なものなのです。

株主リストとの違い

株式の情報をまとめ、株主の権利を守るものには、株主名簿の他に株主リストがあります。どちらも内容や意義は同じですが、作成や管理義務を定める法が異なります。

株主リストは、「商業・法人登記を悪用した犯罪や違法行為」の未然防止のために少雨業登記規則によって定められた書類です。
議事録などを偽造するなどして不正な変更登記が行われるのを防ぐことが目的です。
そのため、株主名簿とは違って、会社に常に置いておくものではなく、必要に応じて作成することが義務付けられています。

株主リストが必要となるのは、会社の重要な変更登記申請の時です。
作成時には株主名簿が参考にはなりますが、株主リストの記載内容は株主名簿とは異なるため、株主名簿で株主リストの代わりにはできません

まとめ

株主名簿は、株式会社設立において重要な書類のひとつです。
作成義務を守ることはもちろんですが、健全な経営していくために必要であると認識し、きちんと作成しておいてください。
また、一度作成したら放置しておくのではなく、定期的な見直しを含めて、正しく管理することが必要です。
経営上のトラブルを防ぎ、株主との信頼関係を続けるために、株主名簿を整備しましょう。

創業手帳(冊子版)は、会社設立の関わる法律や事業計画など起業前後に必要な情報を掲載しています。起業間もない時期のサポートにぜひお役立てください。
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(編集:創業手帳編集部)

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