日本の漫画やアニメは世界的に評価が高い?海外広告で普及する新たなプラットフォーム

創業手帳
※このインタビュー内容は2021年10月に行われた取材時点のものです。

日本のコンテンツの強みとは。ブロックチェーンを活用するサービスも紹介


海外広告で日本の漫画やアニメを活用する際に重要なのが、ブロックチェーンの技術による信頼性・安全性です。ブロックチェーンとは、インターネットに接続した複数のパソコンで、データを共有する技術を意味します。これにより、データ改ざんの耐性が上がり、透明性の高いシステムを実現できると期待されています。

暗号通貨(ビットコインなど)の送金システムとして話題になったこともあり、幅広い用途で活用できるため、多種多様な経済活動においてプラットフォームとなり得る技術です。

今回は、株式会社Samaria 代表取締役社長の山﨑氏に、ブロックチェーンを活用した新規事業について伺いました。

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山﨑 優子(やまさき ゆうこ)
株式会社Samaria 代表取締役社長

芸術学科卒業。大学の卒論のテーマは「千と千尋はなぜヒットしたか」。大学時代から映画監督を目指し、テレビマンユニオンに入社。その後、博報堂グループにて広告に携わり2017年8月起業。海外広告を強みとし、広告代理店、EC/越境EC、クリエイターマッチ、補助金事業、新規事業併走、海外メディア、日本製韓国ドラマ、航空機産業ネットワーク、再生エネルギー、副業マッチなどを展開。

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海外広告を強みに、日本の漫画やアニメの可能性を追求する

ー本日はよろしくお願いいたします。御社ではブロックチェーンを活用した新規事業を広げようと取り組まれていると思います。それはなぜでしょうか?

山﨑:こちらこそよろしくお願いいたします。

元々弊社は広告代理店として4年前に創業しました。様々な広告に携わっているうちに、多くの企業様が海外に出ようとしない、日本だけで甘んじている現状を見て、海外広告が強い弊社としては、今後の日本は大丈夫なのかと危惧していました。

そんな中、日本ではありふれている漫画やアニメの広告を海外で実施したところ、これが大当たり。「絶対に日本のコンテンツは強い、世界に出そう!」と思って今回の日本版ネットフリックス、漫画やアニメのプラットフォームを作りました。

ーなるほど……そのような経緯があったんですね。日本の漫画やアニメは何がいいのでしょう?

山﨑:日本の漫画やアニメは、アメリカみたいに世界征服!のような壮大な世界観じゃなくても、韓国みたいに成り上がり・出し抜きなどのハングリー精神がなくても、しいては恋愛やエロがなくても成り立つ漫画がたくさんあります。

例えば、集英社から出版されている「ハイキュー!!」。これはバレーボール漫画なのですが、全国制覇するわけでも、オリンピックで金メダルをとる話でもありません。春高(春の高校バレー)の準々決勝で敗退するバレーボールチームの1年間を描いた話なのですが、恋愛もなければ、壮大な世界観もないのです。それでもそこには「人間が成長する時ってそうだったそうだった」という……何というか日本ならではのブルーと優しさが漫画全体に広がっています。

SLAM DUNK(スラムダンク)もそうですが、ほとんどの日本のスポーツ漫画が「オリンピックで金メダル‼」みたいなゴールじゃないんですよね。それでも、ここまで人間性を深掘りして、世界中の人の心を動かせるのって実はすごいことなんです。

しかも、ONE PIECE(ワンピース)やNARUTO(ナルト)、スラムダンクなどに比べると、そこまでメジャーじゃないタイトルでも、これだけハイレベルなのが日本の漫画とアニメの強さ。ワンピースやNARUTOはさらに別の次元まで飛んでいて、だけどそこでも日本ならではの優しさとチームワーク、そういう日本の良いところが全面に出てる作品が大ヒットしてるのですが、そうじゃない作品の層の厚さも見ものですね。

版元の信用を得る苦労と、クリエイターの重要性

                            ※画像はイメージ(仮)です。

ー新規事業を広げるために、どのような苦労がありましたか。

山﨑:とにかく版元から信用を得るのが大変ですね。以前に経産産業省の方とお話しした時に、日本の版元はとても保守的だと伺いしました。

例えば、かなり前にディズニーの社長が日本までやってきて「日本の漫画やアニメの独自チャンネルを作る」「IP(※)だけくれ、十分に売り上げはシェアする」みたいなプロジェクトがあって進んでたみたいなんですが、結局ものにならなかったんです。

それぐらい保守的な人たちに、いくら私たちがブロックチェーンを説いたって全く反応がない上に、邪見にされる毎日で、それが大変です。でもきちんとコンテンツを守る・世界に広げる、この2つがスモールサクセスしてくれば、絶対に絶対に大きくブレイクする!と信じているので突き進むしかないんですけどね笑。

(※)IP(Intellectual Property)とは、知的財産権のこと。

ー新規事業の成功の秘訣などはありますか。

山﨑:絶対に、クリエイター(漫画家・アニメーターなど)が認めるものじゃないとダメです。そもそも日本は、漫画家やアニメーターが会社を裏切って個人で独立するってことがほとんど起こらない、世界的に見ても稀有な国なんです。

中国も米国も、どんなに編集者が若い頃から育てた漫画家でもどんどん独立していくので、日本のような編集システムがきちんと出来上がっていません。

それに、以前に日本の政府が言論の自由を少しでも遜色するようなことをしたときに、出版社連合のみんなでボイコット運動をしたり反発したりしました。こうやって日本の言論の自由は守られてきた背景があるので、それをゼロから構築できる作り手は絶対に守らなきゃいけないんです。

ブロックチェーンを活用するサービスとは

ー改めて御社の提供している新規事業サービスについて、わかりやすく教えてください。

山﨑:世界展開している漫画サイトって感じです。漫画やアニメ、グッズ、舞台などの様々なコンテンツが入るので、日本版のネットフリックスとは毛色が少し違った感じのものかもしれません。

ーそのテーマに取り組んでいるのはなぜでしょう。

山﨑:日本のコンテンツの海賊版流通量は年間2兆円。これはわかっているだけで、実際は10兆円ほどあるといわれています。

この10兆円という数字は、日本のコンテンツ産業のマーケット規模と大体同じです。これは本当に政府が憂いて、日本の国益が損なわれているので、私も微力ながら国益に貢献したい、そして絶対日本の漫画のストーリーは世界で1番だと信じているので走ってます笑

ーここを起点に次の展開もあるのかな?と思うのですが、今後考えている展開はありますか?

山﨑:おそらくですが、データ社会といわれる中で、今後ブロックチェーンは「インターネットに続く世界を変える技術」になっていくでしょう。

例えば、不動産・金融・その他あらゆるものがデジタル化されるだけでなく、それが一つの安全性・分散管理となって、独立して歩き始める時代が来ると思います。

その時に、技術を単体でも切り売りできれば、きっとブロックチェーンの良さを理解してくれる人が増えると考えています。

起業までの経緯、起業準備などで重要なポイント

ー女性起業家ということで、やりにくかった点、逆に良かった点などはありますか。

山﨑:逆に下駄をはかせてもらうことの方が多いのであんまりないんですが笑。

創業当初の1~2年目ぐらいは、経営者の交流会によく行ってたんですが、必ず女の子の数合わせに使われてました。逆に、絶対行きたいキーマンがいるような交流会でも、女の子が必要ない場合は呼ばれない笑。でもコロナ禍になって、ほとんどリアルの飲み会とかがなくなってからは、そういったことはないんですけどね。

ー起業までの経緯や大変だったことを教えてください。

山﨑:起業までは特に大変と思ったことはありませんでした。自分で自分の会社を立てて、好きなように経営するってこんなに楽しいんだって思うことだらけでした。でも創業2年目に、少し大きな案件であまり上手くいかなかったことがあって……。それが数珠つなぎのように負の連鎖で上手くいかないことが増えてしまい、当時のクライアントにも迷惑をかけました。

逆にその時に、「受託サービスだけじゃ無理だ!新規事業と社会貢献度の高いサービスを常に提案し続けていかないと幸先が良くない」と思い立ったので、今となっては苦労話というよりかは良いきっかけだったと思ってます。

ー起業の準備や立ち上げで重要だと思うことは?

山﨑:ピボット(事業の方向転換など)をしても、最初の自分の事業から離れてしまってもいいですが、人間としての軸や信念はやはり持っておくべきだと思います。

あと、日本経済新聞は絶対に毎日読むべきです。というか読まないと絶対に話題についていけなくなる。プラスαで、月に10~20冊ほどの本は読んでいないと、起業家や各社関係者などのいろんな人と話すときに、薄っぺらい人間だってことがすぐにわかってしまいます。

特に起業すると多くの人と出会って話す機会が多くなりますが、その度に自分の未熟さや無知さに気づくばかりなので……。その時に本は絶対の武器になるし、自分を賢く見せるんじゃなくて、違う視点が絶対にある!と教えてくれる最後の砦になると思うんです。

ーなるほど……そういえば以前に創業手帳を取り寄せていただいてありがとうございます笑。もし感想などありましたら教えてください。

山﨑:すいません、あんまり活用した記憶がなかったんですけど笑。でもこんな感じのインタビュー記事を見た記憶はあります。

正直、会社を作るノウハウなんて世の中に溢れてるけど、有名な起業家だけでなく、未熟な経営者なども含めたインタビューはあまりないかな?と思いました。

読者に向けたメッセージ

ー普段から実践していることなどありましたら、読者の参考のために教えてください。

山﨑:本を月に20冊程度読むこと。語学の勉強をすること。全部の悩みを母親や友人に相談すること。あとは困ったら助けてと周りに言いまくること。参考にならないですよね笑。

ー今後の事業展開や実現したい世界を教えてください。

山﨑:漫画やアニメのプラットフォームを作るときに、私自身で色々と調べて、本当に日本の国益になる事業がしたいなって思ったんです。

日本は昔に比べて、本当に国益になることを目的として考え、動いている人がどれぐらいいるのかってアメリカの本で書かれてるぐらい、愛国心が薄い国だそうです。なので微力でもいいから、きっかけになりたいといっつも思ってます。

ー最後に、起業家に向けてメッセージをお願いします。

山﨑:私は偉そうなことを言う立場では全くないのですが、起業するか・起業しないかでものすごく悩む人、起業した後に安定した仕事が欲しいと思う人、こういう人は起業に向かないと思います。「そもそも気づいたら起業してた、気づいたときに起業しないと叶わない夢だった」みたいな人ばかりなんで、経営者は。

逆に、自分の夢を叶えたくて仕方ない人は、周りが何を言ったって動いてしまうと思います。そういう人には必ず、そして絶対に、手を差し伸べてくれる人が現れます。絶対です。だからあまり怖がらないで、最初の一歩を踏み出してみるのはいかがでしょうか。

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(取材協力: 株式会社Samaria 代表取締役社長 山﨑優子
(編集: 創業手帳編集部)



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