こんな時代だからこそ⁉フィジーと交流&コーヒー輸入で起業・久保晴(はるる)さん

創業手帳woman
※このインタビュー内容は2021年01月に行われた取材時点のものです。

留学で訪れたフィジーの魅力に惹かれ、フィジーに関連した仕事がしたいと起業した久保氏。新しく展開するコーヒー事業についてインタビュー。

大手旅行会社や飲食店も軒並み苦戦しているwithコロナ時代。海外とのビジネスや飲食関係は難しいと思われがちですが、そんな逆風の中、新しいアプローチで夫婦で起業し、フィジーとの交流やコーヒー輸入・卸事業を手掛けるのが久保晴(はるる)さんです。

創業前は、創業手帳の社員として働いていたこともありました。退職後に一般社団法人「BULAVITY」を立ち上げ、さらにコーヒー事業部門のパシフィック・コーヒーをスタートしました。withコロナ時代の海外ビジネスを探ります。

久保晴(はるる)
都内のベンチャー企業でWebマーケティング、メディア編集長を経験。留学でフィジーの素晴らしさに目覚め、一般社団法人BULAVITYを立ち上げ、フィジーの良さを伝えるサイト「FIJIANWALKER」をオープン。2020年、コーヒー事業部門のパシフィック・コーヒーをスタートさせた。

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「フィジーとずっと関わっていたい」という熱い想いから起業を決意

「BULAVITY」ホームページより

ーどんな事業内容なのでしょう?

久保一般社団法人BULAVITY(ブラビティ)は、南太平洋の島国フィジー共和国と日本の国際交流や文化交流を促進させる目的で立ち上げた団体です。これまでは、メディア事業とイベント企画・運営、留学代理店などを行っていました。

ー今回立ち上げたサービスはどんなものですか?

久保フィジー産コーヒーの輸入販売です。

ーなぜ起業したのでしょう?

久保:留学をきっかけに、フィジーの魅力にどっぷりハマり、生涯この国と関わっていたいと思ったからです。しかし、現地で働こうにも、なかなか求人はない。だったら自分たちで仕事を作ろうと、現地で出会った友人と、現在は夫となった彼に声をかけて、起業しました。

コーヒー事業は、2年ほど前から考えており、現地と交渉を重ねてきていました。いよいよ輸入手続きというタイミングでコロナが来てしまい、始める時期が少し遅くなってしまいましたが…。

ー留学はどのぐらいの期間行っていたのですか。語学の効果はありましたか?

久保:留学期間は約3か月です。現地の家庭でホームステイしていました。語学の成果としては、英語でのコミュニケーションの基礎を学ぶことができましたし、フィジー留学ののちに行ったニュージーランドでは、はじめから日本人がほとんどいないエリアで生活することができるほどになっていました。英会話はまだまだ勉強中ですが、苦手意識はなくなりましたね。

ーフィジーの素晴らしい点は何でしょう?どういう部分を伝えたいですか?

久保:現地の人たちの底抜けの明るさ、そして、恥ずかしい言い方ですが、「愛」が溢れているところ、でしょうか。

フィジーは、世界の幸福度調査で何度もNo.1に輝いたことがある「幸せの国」でもあります。経済的にも決して裕福ではなく、教育・医療・福祉の環境も整っていないフィジーの国民は、なぜそんなにも幸せでいられるのか。わたしが現地にいて感じたのは、彼らは自己肯定感が異常に高く、家族との繋がりが強固で、助け合いの精神が強い。それらを言い換えると、自己愛、家族愛、他者への愛を持っているということです。いつも愛で満たされていて、明るくポジティブに生きています。だからこそ日々の小さな幸せを見つけるのが上手なんだと思います。

温暖な気候や、リゾートののんびりした雰囲気なども相まって、フィジーにいると何気ない時間がすごく大切に思えるので、そういうところが大好きです。

ー留学中にフィジーの魅力に惹きつけられたエピソードのひとつを教えてください。

久保:ホストファミリーの親戚が離島にいるとのことで、留学中にひとり旅をした時の話です。いざ当日、ホストマザーから手書きの地図を渡され「バス停に行ったらまずフィジー人の友達を作って、目的地まで一緒に行くのよ。ひとりだと危ないから」と言われました。これが日本だったら、「知らない人に話しかけてはいけません」と言われそうなところですよね、何だかおかしくて笑ってしまいました。

でも実際、バス停に着いてものの2〜3分で現地の大学生の女の子に話しかけられ、本当に友人ができたんです。彼女は、私のつたない英語でもしっかり耳を傾けてくれ、12時間ほどの道のりでしたが楽しく目的地まで向かうことができました。手書きの地図を持って仲間とともに目的地に向かう、まるでRPGのような展開にワクワクしたことを覚えています。フレンドリーな国民性と、不便さの中にあるゆとりが心地よく、フィジーに魅了された瞬間でした。

離島でも、ホストファミリーの親戚や村の人々がすごくよくしてくれて、帰りには「あなたは私の家族だから、またフィジーにきたらいつでも訪ねてきて」と言ってくれました。人の温かみを感じられた、とても大切な時間になりました。

ーフィジーに関するメディアを立ち上げようというアイディアは、どのように思いつかれたのでしょうか?

久保:サイトを立ち上げた当時は創業手帳で働き始めた頃だったのですが、Webマーケティングやプログラミングに関しても全くの素人でしたので、勉強も兼ねて自分でサイトをイチから作ってみようという気持ちからでした。

何のサイトを作ろうかと考えたときに、自分が留学していた頃はフィジーに関連する情報がネット上にほとんどなかったことを思い出し、自らの経験をもとにメディアを作ってみようと思ったのがきっかけです。

現地の他にはここでしか飲めない!超希少なフィジー産のコーヒー

ー扱っているコーヒーの優れた点はどこでしょうか?

久保:温暖な気候と肥沃な土壌、昼夜の寒暖差など、恵まれた自然環境で育ったコーヒー豆は、風味豊かで上品な味わいです。良質な生豆を輸入し、煎り度合いの違う3種類で販売しています。どれもすごくおいしいですよ。

フィジーのコーヒー産業が始まったのはここ10年とかなり新しく、もともとイギリス植民地時代に植えられたコーヒーの木が野生化しているものが2000年代に発見されて、2011年から本格的に再生していっている段階です。現在は、数軒の農家さんが手作業で栽培しているので生産量も非常に少なく、今回が初めての国外輸出だそうで、現地以外で飲めるのは世界中でここだけという希少品です。

また、フィジーは観光立国なので、コロナの影響で労働人口の4人にひとりが職を失っているほど、甚大な経済ダメージを受けています。コーヒーを日本に広めることで、少しでも支援することができれば嬉しいです。

ーコーヒー事業を始める前に準備したことはなんですか?

久保:パシフィック・コーヒーとは別軸ですが、街おこしの一環で、去年地元のローカル線の駅舎にコーヒースタンドを作るプロジェクトを友人と立ち上げていたんです。開業資金の一部をクラウドファンディングで募り、地元の方や鉄道会社、市の関係者にもご協力いただいて、今年3月に店舗を無事オープンさせました。コロナウイルスの感染拡大と同時期の開業でしたが、地元のみなさんの応援もあって、ありがたいことに今でも営業を続けられています。

今回パシフィック・コーヒーを立ち上げるにあたっては、店舗開業からの学びも活かそうと思い、中古のキッチンカーを購入しました。ECのコーヒー豆販売と並行して、キッチンカーでカフェ営業もしながら、フィジー産コーヒーのファンを増やしていきたいです。こんな時代だからこそ、人と人との触れ合いを大切にしながら、地道にコツコツ、足で稼いでいこうと思っています。

ー店舗開業からの学びとは、具体的にどのようなものですか。

久保:開業までの実務的なことはもちろん、人とのコミュニケーションの取り方は大きな学びとなりました。私たちだけでやるのではなく、街の人たちと一緒に作っていくという点を大切にしていたので、開業前には、市や鉄道会社とかけあったり、地元の商店街の方々に挨拶にまわったり、定期的に駅前でコーヒーの無料試飲会を行ったり、ポスティングをしたりと、できるだけ地元の人に知ってもらえる活動を続けていました。

それまでは傍観していた人も、こちらから挨拶すると好意的に接してくれるようになったり、具体的にお店作りのアドバイスをくださるようになったことも嬉しく、自分から動くことの大切さを実感しました。

そのうえで、インスタグラムで開業までの道のりを公開していたので、陰ながら応援してくれていた人もいたのではないかと思います。コーヒースタンドの構想から開業までの約1年間、地道な活動を続け、結果的にクラウドファンディングでは94名もの方に支援していただき、店舗のオープン日は、地元の方も「駅にこんなに人が集まったのは初めて見た」というほどの盛況ぶりで、とても嬉しかったです。

応援したくなる仕組みを作ることと、気持ちを伝えたいときは一斉送信ではなく一人ひとりと丁寧に向き合うこと。これは、今後も大切にしていきたいと思います。

ーコーヒーの販売方法はどのようなものですか?

久保:現状はEC販売のみですが、2021年1月からキッチンカーでのカフェ営業を予定しています。

その他、レストランやカフェへの業務販売や、オリジナルドリップバッグの制作サービスなども予定しています。

夫婦で起業するということ

ー夫婦起業で良かった点は何でしょう。

久保:お互いの性格や得意不得意を知っているので、仕事を進めるにあたって遠慮がいらないというか、やりやすさは感じます。なにより、好きなことを好きな人と共有できていることが一番嬉しいです。

ー逆に大変な点はありますか。

久保:2020年に子どもが産まれたので、育児との両立は想像以上に大変だなと思っています。あと、仮に事業がうまくいかないとなると、一家もろとも倒れるので、家計へのリスクは大きいですよね。

ー家庭と仕事の両立で工夫されている点はありますか。

久保:いまはまとまった時間を仕事に充てることが難しいので、タスクを10〜20分で完結できるぐらいまで細切れにして予定を立てるようにしています。スケジュール通りにいかないことも多いので大変なんですけど。

ただ、家事と子育てに関しては、夫と、近くに住む実母に甘えてばかりで、私の負担はすごく少ないんです。毎日食事は母が作ってくれていますし、夫も子供と過ごす時間が私より多いのではないかと思うほどで。小さな命は家族みんなで育てています。

また、私はもともと在宅フリーランスとして働いていたので、出産後も生活スタイルを大きく変えることなく暮らせています。娘がいることで、夫と仕事のことで対立してもすぐに仲直りできますし、本当に周りに感謝ですね。

ーコロナでやりにくい部分はどうでしょう?どう対応していますか?

久保:コロナだからそうしたわけではなかったのですが、キッチンカーでの販売やECなどは結果的に今の時代に適しているのかなと思います。それ以外の営業活動・広報活動がしにくいというのは確かにあります。コロナが落ち着いてきたら、本格的に外に出て営業したいです。

大きな目標に向けて、たくさんのマイルストーンを置いていこう

お金の入り口と出口をしっかり押さえよう

ー創業者に伝えたい事や共有したいノウハウはありますか?

久保:まず第一に、お金の巡りはシビアに考えるようにしています。お金の入り口と出口を押さえて、とにかくキャッシュアウトしないように踏ん張ればいいのですが、その計算が甘いと簡単に潰れちゃうので、そこは気をつけています。これは、創業手帳で勉強させてもらったことでもあります。

お金の入り口に関しては、コーヒー豆を活用したサービスを複数開発して、小さく試しながら収入の柱になりそうなものを探しています。まだ始めたばかりなので手探りですが、大きくなりそうな可能性が見出せれば、そこにリソースを集中させようと資金的にも人材的にも準備をしています。また、基本的なことですが、売上げを上げるために、何件コンタクトを取る、記事を何本書くなど、行動指標を設定して動くようにしています。

出口に関しては、クラウドサービスやアウトソーシングなどもうまく活用しながら、今はできるだけ人を雇わずコストをかけない形をとっています。

また、売上げ予測を作るときにも、理想の数値、目標数値、最悪のケースを想定して計画を立てており、仮に全く売れなかったとしても半年〜1年は事業が継続できるようにキャッシュを用意しています。

まずは「何者か」になる!

ーなるほど。事業の始め方についてはどうでしょうか。

久保:小さくても良いから実績を積んで「何者か」になることです。フィジーに関わる仕事がしたいと漠然と思いつつ何も持っていなかった私でも、特化型の情報サイトを立ち上げることで、「フィジーのメディアの中の人」になれたり、現地のコネクションが確実に増えていきました。イベント開催を繰り返して実績をサイトに載せていくことで、協力者も増え、企業や自治体などからも声がかかるようになっていきました。

コーヒー輸入という新たな挑戦ができているのも、これまでやってきたことがあったからこそなんです。なので、大きな目標を持つだけでなく、たくさんのマイルストーンを置いていくこともすごく大切じゃないかと思っています。

あとは、自分が立ち上げた事業はどうしても思い入れが強くなってしまうので、常に初見の人の気持ちを持つように心がけていますね。

おすすめサービスやツール

ーどんなサービスやITツールを使っていますか?

久保:記事作成でライターを探すときにはクラウドワークスを利用して、チャットワークでやりとりしています。会計ソフトはMFクラウドを使用し、サイトの作成にはWordpressを使用しています。Wordpressに関しては、自分でサイトを作る前まではWebデザインもライティングもSEOも知識・経験ともにほとんどありませんでしたが、サイト運営をしていくうちにいろいろなスキルが身についたので、勉強するなら自分でサイト運営をすることが一番の近道だと思います。

ちなみに地元のコーヒースタンド開業時に利用したクラウドファンディングはReadyfor、キッチンカーはジモティーで買いました!

今後の事業展開は?

ー今後の夢や展望を教えて下さい。

久保:単純に商品を売るのではなく、商品を通じてできるつながりを大切にしたい。「コモディティ」ではなく、「コミュニティ」を作っていきたいです。今はコーヒー豆販売という一方通行のコミュニケーションになっていますが、将来的には、お客さん自身が主体的に参加したくなるような取り組みをしたいと考えています。

例えば、リアルな世界で擬似体験できる、コーヒー農園特化版の『あつまれ どうぶつの森』のようなプロジェクトを計画していて、コロナ終息後に本格的に始動するために準備中です。

そんな未来のためにも、まずは今あるコーヒー豆を多くの人に楽しんでもらえるように、日々頑張ります!

ー本日はありがとうございました!

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(取材協力: 一般社団法人BULAVITY 久保晴
(編集: 創業手帳編集部)



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