PRのプロから学ぶ「露出戦略から逆算した話題作り」 の方法
創業手帳の広報担当がインフォテリア主催の広報勉強会に潜入!
(2017/06/16更新)
創業間もない会社は特にやることが沢山あり、すぐに結果が出るかわからない広報業務を後回しにされがちです。そこで今回は、「経営・マーケティングと広報・PRの密接な関係」をテーマに、数多くのPRを手掛けているインフォテリア株式会社の長沼 史宏氏が登壇する勉強会に潜入取材!会社の成長のために、重要な広報の活用法を伺ってきました。
この記事の目次
インフォテリア株式会社、広報・IR室長。
一般社団法人ブロックチェーン推進協会、広報部会長 兼 事務局長も務める。
大手製造メーカーで10年以上の広報・IR担当としてのキャリアを積んだ後にIT業界へ転身。
テレワーク、LGBT、FinTechなど旬の話題に絡めたPRを通じて業界特有の難解なテーマでも“お茶の間”にリーチする話題づくりを展開。株価のパフォーマンスアップを実現するIR担当として講師を務めることも多い。
2017年1月から立ち上げた自身が主催する勉強会「広報勉強会@イフラボ」には200名以上がフォロー中。他社主催勉強会での講演や大学の講師なども精力的にこなしている。
優れた経営と優れたPRがあって、会社は成長する
会場に入るとまずはワインとおつまみが準備されていました。美味しいワインを堪能しながら勉強会がスタート。会場に用意された50席ほど用意された椅子はほぼ満席。
しばらくすると、講師のインフォテリア株式会社 広報・IR室長 長沼 史宏氏が登場されました。
長沼史宏氏は株式会社三協精機製作所(現:日本電産サンキョー株式会社)に転職したときから広報を担当。その後YKK株式会社やYKK AP株式会社からインフォテリア株式会社と13年間広報を行っていらっしゃいます。
広報を担当された方の中で、同じ経験をされた方もいるかもしれませんが、会社内の雰囲気や経営陣からも「広報って何でやるの?」と思われている中で、広報・IRの地位を築き上げられ、オリンピック選手のPRから政治・経済に絡めたPRまで幅広く手掛けられている方です。
スピーチの中で、長沼氏は「優れた経営・マーケ と 優れたPR・IRで会社は成長する」と断言しました。
創業間もない会社は特にやることが沢山あり、すぐに結果が出るかわからない広報業務を後回しにしがちです。創業者に限らず、広報活動について「何でやるの?」と思っている経営者もまだまだ沢山いるかと思います。お金を使わずに時流に乗せたPRができることを学んでいきましょう。
まずは新聞での記事を成立させる
「今は新聞を読んでいる人が少ないから、とりあえずテレビに出たい」と考えている広報担当者も多いのではないでしょうか。しかし、テレビ局やテレビの制作会社は必ず新聞から情報収集をしています。そのため、新聞での記事を成立させることが先決です。
長沼氏は「新聞」「テレビ」等で話題になっているテーマをリストアップし、1年先までの社会や生活に影響を与えるイベント(予定)を把握するとともにトレンドを予測。それを元に活動を行なっています。リストアップすることで世の中のトレンドを先取り、先回りしたPR準備も可能になるのです。
お茶の間へPRするための4つの考え方
では、新聞からテレビへとお茶の間にリーチするPRするにはどうすればいいのでしょうか。
その答えについて、長沼氏は「一般的な生活に関わる情報や変化、話題になっていることにアンテナを張り巡らし、何か絡むことはないか常に考えることが大切」とアドバイスを贈っていました。
社会のニュースはもちろんですが、社内の数値や変化も月1回は状況をチェックすることで、社会の変化から逆算して関連性を探ることが出来ます。変化が顕著に現れている場合は何かしらネタがあるはずです。
特に「うちの会社はネタがない」なんて思っている広報担当の方は、この方法を実践してみましょう。
そして、ニュースを発信する際に意識しておきたいのが以下の4つだと、長沼氏は指摘しています。
①あなたが書いたプレスリリースは、いま社会に発信する必要がありますか?
②あなたが書いたプレスリリースは、社会が関心を示す内容ですか?
③あなたが書いたプレスリリースは、社会に対するインパクトが示されていますか?
④あなたが書いたプレスリリースは、会社の都合だけで作成していませんか?
特によくありがちなのが4つ目の「会社都合だけで作成」したプレスリリース。
これだとせっかく発信した情報が安っぽくなってしまい、メディアからの信用を得ることができにくい、とのことです。
さらに、プレスリリースは「なぜ今なのか」を理解して行なった方が効果はより大きくなります。
その精度を上げるために、前述した「リストアップ」が必要となってくるのです。
プレスリリースは「5つの項目」を押さえて作成する
「PRの王道(基本)」としてまずは一斉配信で記事になるリリースを作って欲しい!
基本がなっていなければ記事になることはありません。
そこで、記事になるプレスリリースの書き方のポイントをご紹介します。
タイトル
まず、タイトルを見ただけで記事にすべきか判断されます。「誰に」、「何を」伝える記事なのかを明確にしましょう。なければ門前払いです!目標値などの定量的な数字も不可欠です。
リード文
リード文には商品やサービスの発売開始日を入れましょう。いつ記事にすれば良いかの指標になる場合があります。事前取材なく掲載される事もありますので、日程などを間違えないようにしましょう。
本文
社会や業界の関心を高める上で客観的な指標を埋め込む事も重要です。若干構成が甘い内容でも、調査数値を入れるなど客観的な事実が含まれて入れば説得力が増します。
表やグラフ
追加するアイテム数はしっかり明記しましょう。特徴、仕様、製品価格は表や箇条書きでまとめましょう。
ビジネスの展望
展望には、社会や業界に対するインパクトをできる限り多く盛り込みましょう。
指標とするべきものは、売上、シェア、件数、増加率など、読者がスケールを理解しやすいものにしましょう。それがないと、記事を読んでいてもつまらなくなってしまい、デスクに記事を突き返される事になります。
基本を押さえたリリースが書けるようになると記者から信用されてきます。問い合わせがなく、そのまま記事化されるようになるのです。また記者が記事を書く時間を確保できるため、プレスリリースは午前中に配信しましょう。
さらに、ポイントを押さえることで、恣意的なメッセージも「おかず」的に言及してくれるものです。これこそ記事化される事で最も面白いところです!
インフォテリア長沼氏から、創業手帳読者へコメント
今回の勉強会に登壇されたインフォテリア株式会社の長沼氏より、創業手帳読者に向けてメッセージを頂きました!
無料開催であることと、ワインを飲みながらアットホームな雰囲気で行っていることです。それと、他社の広報担当者やスタートアップ社長とのネットワーキングもできることです。
私の勉強会の参加者同士、オウンドメディア(自社が所有しているWEBサイトなどのメディア)等で紹介し合っている方々も沢山いらっしゃいますね。
ある方のご紹介で昨年の11月に講演したのですが思いのほか好評で、もっと聞きたいという方が多かったので今年の1月から自分が講師を務める広報勉強会を毎月開催しています。
具体的には、企業内の広報担当者として13年間積み重ねてきた経験や知見をご紹介して、すぐに実践できることをレクチャーさせていただいています。
勉強会が終わると「こんなリリース書いてみました」というメールなんかも沢山届いたりしますので、その反応がすごく嬉しいですね。
広報に対するリテラシーが低い会社で働いていたときはかなり苦労しました。
なぜ、広報が必要なのか、何のためのプレスリリースなのか、などを全社員に理解させる活動を行ったり、広報のパワーを知らしめるレジェンドを作ったり。笑
実は、私が悩んで乗り越えてきたことと同じような内容の相談も多く寄せられるので、企業内の広報担当としての経験は業界関係なく多くの方の参考になるのではないかと考えています。
やりたいことは沢山ありますが、新しい技術に対する社会のリテラシーを高めるようなPR活動ができればと思っています。
たとえば現在は、当社社長が代表理事を務めるブロックチェーン推進協会でも広報を担当していますが、ブロックチェーンをいかに分かりやすく社会に啓発していくか、ということにも注力しています。
この他にも、IoTやAI、ビックデータなど、言葉は聞いたことがあっても理解するには難解なことが多いのも私が身を置くIT業界。皆さんの生活やビジネスに身近なものとしてとらえていただけるようなPR活動も展開していければと思っています。
広報活動を通じて、社会的な信用を高めることが重要です。記事で取り上げられることは当然大切なことですが、各種アワードへの応募も考えてみてください。第三社に評価されることで、会社に対する不安要素が払しょくされ、ビジネスがよりやりやすくなるはずです。
イノベーションに関するコンテスト、製品やサービスを表彰するアワード、有名なものではグッドデザイン賞などとなりますが、自分達の業態にマッチするものに積極的に応募してみてください!
相手の関心事を踏まえて話題を提供することです。メディア(記者)によって関心事は違うことを我々は理解しなければなりません。そのためには、ターゲットとするメディア(記者)の記事は事前にしっかりと目を通してください。
記者の関心事から逆算して自社の話題を考えれば、記者と広報担当の相互依存のリレーションシップが形成されることとなります。
メディアを活用した効率的なPR活動をしながら、自社の認知度を高めていってほしいと思っています。そこで重要になるのが、自社製品・サービスが社会にもたらすベネフィットが何であるか?どうしても技術的な優位点や性能についての説明に力が入りがちですが、メディアや社会の関心事はベネフィットです。
社会における存在意義もしっかり説明して、より多くの読者を抱える媒体での露出を目指しましょう!(私の勉強会では、こうしたことを実現するための手法を紹介しています)
まとめ
今回のイベントでは、プレスリリースの基本を押さえたところで、様々な事例を紹介されました。
そこでわかったのは「話題がその時の旬に乗っていればきちんと拾ってくれる可能性は大いにある」、「ネタが拾われるかわからない中でも粛々と頑張ることが大切だ」ということです。
長沼氏は初心者の広報の方でもわかりやすく説明して頂き、その後の質疑応答が絶えない大盛況の勉強会でした。
ワインと片手に交流会へと突入し、無料の勉強会とは信じられないほどの満足度です。
長沼氏の無料勉強会は定期的に開催されていますので、是非チェックしてみてくださいね。
(監修:インフォテリア株式会社 広報・IR室長 長沼史宏(ながぬまふみひろ))
(編集:創業手帳編集部)