創業期に選ぶオフィス・事務所の形態別まとめ
創業期に適したオフィス・事務所のメリット・デメリットを形態別にまとめました
(2014.11.25 更新)
近年、働き方の多様化とともに、オフィスのスタイルも変化してきている。従来は、起業時から一定のスタッフがいれば「賃貸事務所」、1人で起業した場合には経営者の「自宅兼事務所」が候補になる事が多かったが、現在では選択肢も広がり、賃貸オフィスを借りるか?自宅で創業するか?という単純な選び方は過去のものになった。
業種によっては、PCさえあれば時と場所を選ばず働くことも可能になったが、その一方で「どう働くか」「どんなところで働いているか」が、企業イメージに直結するようにもなってきている。「オフィス選び」とは単なる仕事場選びではなく、企業イメージやポリシーを具現化する作業となりつつあるのだ。
業務の効率化や費用対効果はもちろんだが、「業容拡大を目指す起業家にとっては、オフィスは自己表現の場でもある」ということを念頭に、楽しんでオフィスを選びたい。今回は、創業期に適したオフィスを形態別に紹介するとともに、それらのメリット・デメリットをまとめた。
この記事の目次
自宅を自宅兼事務所として利用する
自宅兼事務所とは?
自宅兼事務所は、住まいをオフィスとして利用する形態だ。ホームオフィスとも。執務室付きの賃貸住宅を「サービスマンション」などと呼ぶこともある。
あなたが保有する物件なら会社登記できるが、通常の賃貸住宅では契約上、登記が認められていない場合が多い。また賃貸住宅の場合は融資が受けにくいこともあるので注意が必要だ。
なお、事務所部分と住居部分の割合にもよるが、経費として認められる光熱費は全体の5割ほどが一般的である。
自宅兼事務所のメリット
- 通勤の負担がない
- 固定費(オフィスの家賃)を抑えられる
自宅兼事務所のデメリット
- 公私の区別がつきにくい
- 物件によっては会社登記が認めらない場合がある
- 融資を受けにくい場合がある
- 人との交流が減り孤独感に陥りやすい
- ビジネスに必要な設備を揃えにくい
バーチャルオフィスを利用する
バーチャルオフィスとは?
バーチャルオフィスは、実際には入居せずに住所や電話番号、FAX番号などをレンタルすることができるサービスである。固定のオフィスを必要としない起業家向けである。
バーチャルオフィスと契約することにより、一等地に住所を置くことができるとはいえ、会社所在地としての実態がないため、信用度の観点からは、逆効果になることもある。よって、恒常的なバーチャルオフィスの利用は、社会的信用の面から疑問符が付く。
バーチャルオフィスのメリット
- 低料金で都心部など信用度の高い住所に会社登記が出来る
バーチャルオフィスのデメリット
- 一般的な賃貸オフィスと異なり実務スペースが無い
- 各種金融機関の口座開設や融資の際に審査が通りにくい事がある
コワーキングスペースを利用する
コワーキングスペースとは?
コワーキングスペースとは、他社(者)とスペースを共有するオフィス形態で、基本的に、特定の座席に縛られる事が無い状態で、他の利用者と執務スペースを共有する。スペースの使用料金は家賃ではなく、利用料などとなっているのが一般的である。コワーキングスペースは、固定のオフィスは必要としないが、業務のための拠点が欲しいという起業家に最適だ。
最近では、専用スペースを設ける施設や起業家向け施設、特定の業種に特化した施設など多様化しつつある。
また、コワーキング施設内で醸造されるコミュニティに参加することを大きなメリットととらえ、複数のコワーキングスペースを掛け持ちする利用者も珍しくない。利用者の交流イベントを開催する施設も見られ、スタートアップ期の起業家にとってはメリットが多い。
コワーキングスペースのメリット
- 賃貸オフィスや貸事務所に比べて料金が安い
- OA機器や商談スペースなど、ビジネスに必要な設備を備えている施設が多く、初期投資が抑えられる
- 他の利用者との交流によってアイデアや人脈を広げる事ができる
- 移転が容易でビジネスに柔軟性を持たせることができる
コワーキングスペースのデメリット
- 基本的に執務スペースに仕切りがないため、他の利用者への配慮や情報セキュリティへの備えが必要
- 固定電話回線の設置や倉庫が必要なビジネスには不適
- 各種金融機関の口座開設や融資の際の審査に通りにくい事がある
シェアオフィスに入居する
シェアオフィスとは?
シェアオフィスとは、一つの賃貸オフィスに複数の起業家が同居したのが原型で、基本的に割り当てられた家賃を支払う義務が生じる。執務スペースは、共有の場合と、間仕切りがある場合がある。
シェアオフィスは、家賃ではなく会費などの名目で利用料を徴収する施設も増え、コワーキングスペースとの区分があいまいになってきている。コワーキングスペース同様にシェアオフィスも差別化が進み、入居を検討する場合は、メリットやデメリットの見極めが重要だ。
シェアオフィスのメリット
- 賃貸オフィス・貸事務所に比べて料金が安い
- OA機器や商談スペースなどビジネスに必要な設備を備える施設が多く、初期投資が抑えられる
- 他の利用者との交流によってアイデアや人脈を広げる事ができる
シェアオフィスのデメリット
- 他の利用者への配慮や情報セキュリティへの備えが必要
- 固定電話回線の設置や倉庫が必要なビジネスには不適
- 各種金融機関の口座開設や融資の際の審査に通りにくい事がある
- 家賃を案分している場合、移転の足かせとなる
【関連記事】シェアオフィスで恋して・・・起業して初めてのシェアオフィス選び
レンタルオフィスに入居する
レンタルオフィスとは?
レンタルオフィスとは、個別に仕切られた個室空間を各企業がレンタルするオフィス形態だ。会議室やラウンジ等は共有スペースとして利用できるため、他社(者)とは適度な距離で交流を持つことができる。信頼感やセキュリティに一定レベルのオフィス環境を求める起業家向け。
レンタルオフィスは、コンシェルジュが常駐するハイクラスな施設から手軽な施設まで細分化が進んでおり、コワーキングスペースやシェアオフィスとの融合も進みつつある。賃貸オフィスの賃料より高額となることもあり、入居を考える際は、十分な検討をしたいところだ。
レンタルオフィスのメリット
- オフィス機器や商談スペースなどビジネスに必要な設備を備える施設が多く、初期投資が抑えられる
- 個室のため一定のセキュリティレベルを保つことが出来る
- 個室のため賃貸オフィスと同程度の自由度で業務を行うことができる
- 拡張性がありスペースの拡充などが自由にできるオフィスもある
レンタルオフィスのデメリット
- ストックや大きなスペースを必要とする業務には不適
- 基本的に店舗として物販などの行為を行うことは禁止
【参考記事】創業期に最高のオフィス環境で仕事をする(日本リージャス株式会社)
賃貸オフィス・貸事務所に入居する
賃貸オフィス・貸事務所とは?
賃貸オフィス・貸事務所とは、自社で独占できるスペースを専有で借りるオフィス形態だ。自由度が高く、業務内容や業容に合った物件を選ぶことができる。
レンタルオフィスなどの勃興によって賃貸オフィスを選ぶメリットは薄れつつあるが、信用度の高さは、他形態オフィスの追随を許さない。オフィスや事務所内装を造り込むことで、企業のアピールにもつながる。
賃貸オフィス・貸事務所のメリット
- 自社オフィスという信頼感を得ることができる
- 自社スペースを独占できるため内装なども自由に変更することができる
賃貸オフィス・貸事務所のデメリット
- 賃料のほか、保証金やオフィス設備の導入費など膨大な費用と手間がかかる
- 移転に大きな労力を伴う
【関連記事】起業して初めてのオフィス選び10のポイント ‐賃貸オフィス編のまとめ(前編)‐
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(監修:オフィス経営コンサルタント 久保純一)
(編集:創業手帳編集部:SACHI、A.Bizgami)